30代、40代とキャリアを重ね、後輩や部下を持つ立場になると、こんな風に感じたことはありませんか?
- 「最近、後輩が自分に本音を話してくれない気がする…」
- 「良かれと思ってアドバイスしたら、相手が急に固まってしまった…」
- 「別に怒ってないし、普通に話しているつもりなのに、なぜか後輩が萎縮しているように見える…」
もし一つでも当てはまるなら、それはあなたの「話し方」や「人柄」の問題ではなく、もっと別のところ、つまりあなたの「存在そのもの」が原因かもしれません。
あなたが「いやいや、自分なんて後輩より劣っている部分も多いし」と思っていたとしても、それは関係ありません。
後輩から見れば、あなたの「年齢」「職制」「役職」という"記号"だけで、あなたは「自分を評価する側」「自分より経験がある側」に見えています。
その結果、あなたが普通にしているだけで、意図せず「威圧感」や「圧力」を与えてしまっている可能性が非常に高いのです。
この記事では、なぜそのような「無意識の圧力」が生まれるのかを解き明かし、その圧力を「安心感」に変えるための具体的な方法をご紹介します。
なぜ、あなたは「普通」なのに「圧力」がかかるのか?
あなたがどれだけフランクな人柄でも、後輩はあなたを100%「フラットな仲間」とは見ていません。そこには、構造的な理由が3つあります。
1. 後輩は「あなた個人」の前に「役職」を見ている
悲しいですが、これが現実です。 後輩は、あなたを「〇〇さん(趣味が合う、優しい人柄)」として見る前に、「課長」「先輩」「10年選手」といった「記号(役割)」として認識します。
その「記号」は、自動的に「(自分を)評価する側」「(自分に)指示する側」という意味合いを持ちます。 そのため、後輩はあなたを前にすると、無意識に「守りの姿勢」に入り、「何かミスを指摘されるかも」「変なことを言って評価を下げたくない」と緊張してしまうのです。
2. 経験の「非対称性」がプレッシャーを生む
あなたは30代・40代として、多くの業務を経験してきました。 そのため、後輩が時間をかけて悩んでいることの「答え」が、あなたには一瞬で見えてしまうことがあります。
その時、あなたは無意識に「なんでこれが分からないんだ?」という空気感を出していませんか? 後輩にとってはすべてが初めての経験。「できて当たり前」というオーラを敏感に感じ取り、「こんなことも分からないのか、と思われたくない」と萎縮してしまいます。
3. 「真顔」と「低い声」は、それだけで「怒り」に見える
年齢を重ねると、良くも悪くも落ち着きが出てきます。 あなたが集中して真剣に仕事をしている時の「真顔」や、落ち着いて話すときの「低い声」。
あなたにとってはこれが「普通」の状態でも、20代の後輩から見ると、それは「機嫌が悪いサイン」「怒っているサイン」と誤解されがちです。 ただ黙ってPC作業をしているだけで、「話しかけるなオーラが出ている…」と勘違いされてしまうのです。
あなたは大丈夫?「無意識の圧力」セルフチェック
あなたが「普通のコミュニケーション」だと思っている行動が、後輩にとっては「圧力」になっているかもしれません。
- 良かれと思って、後輩が話し終わる前に「こうした方がいいよ」とアドバイスを始めてしまう。
- 後輩が(自分から見ると)要領を得ない話をしている時、「で、結論から言うと?」と話を遮ってしまう。
- 忙しい時に話しかけられ、PC画面を見たままで「うん、なに?」と返事をしてしまう。
- 自分では「普通」のトーンのつもりが、会議や1on1で声が低く、真顔になっていることが多い。
- 後輩の雑談(プライベートな話)に「ふーん」「そうなんだ」と薄いリアクションをしてしまう。(後輩は「この話、興味なかったな…」と傷ついています)
「威圧感」を「安心感」に変える、3つの具体的なステップ
「存在の圧力」をゼロにすることはできません。これは仕方のないことです。 だからこそ、その圧力を和らげる「緩衝材(クッション)」となる行動が、私たち先輩・上司には求められます。
ステップ1:アドバイスは封印し、「7割聞く」に徹する
後輩が「ちょっといいですか…」と話し始めたら、あなたの頭の中にある「答え」や「正論」を返すスイッチを、一度オフにしましょう。
後輩は答えが欲しいのではなく、まず「困っている状況」「悩んでいる事実」を認めてほしい(共感してほしい)だけかもしれません。
「そうか、〇〇で悩んでるんだね」 「なるほど、それは大変だったね」
忙しくても、一度PCから目線を外し、体ごと相手に向けて「あなたの話をちゃんと聞いていますよ」というサインを送る。 これだけで、相手が感じる心理的安全性は劇的に改善されます。
ステップ2:自分の「弱さ」や「失敗」を先に開示する
あなたが完璧な「できる上司」「頼れる先輩」であればあるほど、後輩は自分のミスや弱みを報告しづらくなります。
そこで、あなたの「弱さ」を先に見せてください。
「自分も3年目の時、同じミスして部長にめちゃくちゃ怒られたよ」 「最近、〇〇の案件でクライアントにうまく説明できなくて悩んでてさ…」
あなたの「弱さ」や「人間らしい部分」を先に見せることで、「評価する側とされる側」という対立構造から、「同じ職場で働く仲間」という並列構造に変わることができます。
ステップ3:リアクションを「1文字」から「1文」に変える
チャットや口頭での「はい」「うん」「OK」「了解」だけの返事は、後輩を最高に不安にさせます。(「もしかして、怒ってる…?」)
これを、ほんの少しだけ変えてみてください。
- 「了解です。進めてくれてありがとう」
- 「なるほど、そういう視点はなかった。教えてくれて助かる」
- 「(雑談に)へえ、そうなんだ!それでどうなったの?」
普段のやり取りに「感謝」や「肯定」のひと言を足すだけで、相手は「受け入れてもらえた」と安心できるのです。
まとめ
30代・40代になると、あなたのスキルや人格がどうであれ、年齢や役職だけで「圧力」になってしまうのは避けられません。
大事なのは、それを「仕方ない」と諦めるのではなく、まず「自分は、いるだけで圧力になっているかもしれない」と自覚することです。
圧力を自覚した上で、今回ご紹介したような「聞く姿勢」「自己開示」「肯定的なリアクション」といった「緩衝材」を意識的に使うこと。
そうすれば、あなたが持つ「威圧感」は、「頼りになる安心感」へと必ず変えることができます。 明日の朝、「おはよう」のひと言に、ほんの少しだけ「優しいトーン」を乗せてみることから始めてみませんか?