こんにちは、シラスです。
あなたの会社に、こんな会議はありませんか?
- 参加者が10人以上いるのに、発言するのは2人だけ。
- とりあえず「関係者全員」を呼んで、部屋がパンパン。
- 結局、何も決まらずに「持ち帰り検討」で終わる。
「参加者が多ければ多いほど、良いアイデアが出るはずだ」
そう信じている上司もいますが、統計的・心理学的には「逆」です。
人数が増えれば増えるほど、一人あたりのパフォーマンスは激減し、組織は機能不全に陥ります。
今日は、この現象を証明した「リンゲルマン効果(社会的手抜き)」について解説します。
1. リンゲルマン効果とは?:綱引きの実験
1913年、フランスの農学者マクシミリアン・リンゲルマンが行った有名な実験があります。
彼は、学生たちに「綱引き」をさせ、一人あたりの発揮する力を測定しました。
普通に考えれば、「1人の力が100なら、2人で200、3人で300」になるはずですよね?
しかし、結果は違いました。
| 人数 | 期待される力 | 実際に出た力 | 1人あたりの手抜き度 |
|---|---|---|---|
| 1人 | 100% | 100% | 0% (全力) |
| 2人 | 200% | 93% | -7% (サボる) |
| 3人 | 300% | 85% | -15% (もっとサボる) |
| 8人 | 800% | 49% | -51% (半分サボる!) |
8人で綱を引くと、1人あたりの力はなんと「半分以下(49%)」にまで落ちてしまったのです。
これが「社会的手抜き(Social Loafing)」と呼ばれる現象です。
「俺一人がやらなくても、誰かがやるだろう」という心理が、無意識のうちにブレーキをかけてしまうのです。
2. 会議室で起きている「責任の分散」
これは綱引きだけでなく、会議でも全く同じことが起きます。
💡 統計的な視点:傍観者効果
人が倒れている時、周りに人が多ければ多いほど、誰も助けようとしなくなる(通報が遅れる)というデータがあります。
これを「傍観者効果」と言います。
会議で「誰か意見はありますか?」と聞かれて全員が黙るのも、「責任の分散($1/n$)」が起きているからです。
- 参加者5人: 「自分も何か言わなきゃ」という当事者意識がある。
- 参加者20人: 「誰か優秀な人が言うだろう」と全員が思う。結果、誰も発言しない。
人数を増やせば増やすほど、「1人あたりの責任感(当事者意識)」は反比例のグラフ($y=1/x$)を描いて急降下していくのです。
3. 対策:最適な「n」はいくつか?
では、会議の生産性を最大化するための「最適な人数」は何人でしょうか?
Amazonの創業者、ジェフ・ベゾスはこう提言しています。
「2枚のピザで全員が満腹になる人数(5〜8人)以上の会議をしてはならない」
統計的にも、コミュニケーションコスト(人間関係の組み合わせ数)は、人数の二乗に比例して増えていきます(組み合わせ爆発)。
- 5人の会議 → コミュニケーションラインは 10本
- 10人の会議 → コミュニケーションラインは 45本(!)
10人を超えた時点で、意思疎通のコストがメリットを上回るのです。
まとめ
もしあなたが会議の主催者なら、勇気を持って「参加者を減らす」決断をしてください。
「とりあえずCCに入れておこう」という親切心は、組織全体のパワーを弱める毒になります。
少人数精鋭で、全員が当事者として発言する。
それが、統計的に正しい「勝てるチーム」の条件なのです。
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