理論科目の解説

抵抗率と導電率の違い│ρとσを混同しないための完全ガイド

⚡ こんな疑問を持っていませんか?

  • 「抵抗率ρ」と「導電率σ」って何が違うの?
  • 単位の「Ω・m」と「S/m」の意味がよくわからない…
  • 電験三種の問題でρとσを使い分けられない!
  • 温度で抵抗が変わるのはなぜ?

💡 この記事でわかること

抵抗率ρ(オーム・メートル)導電率σ(ジーメンス毎メートル)は、材料の電気特性を表す「表裏一体の関係」です。ρは「電気の流れにくさ」、σは「電気の流れやすさ」を示し、σ = 1/ρという逆数の関係にあります。

この記事では、初心者でも絶対に混同しないように、単位の意味から温度の影響、実務での使い分けまで、図解でわかりやすく解説します!

1️⃣ 抵抗率ρと導電率σの基本的な違い

🔍 抵抗率ρ(Resistivity)とは?

抵抗率ρ(ロー)は、「材料が電流をどれだけ通しにくいか」を表す指標です。

📏 単位: Ω・m(オーム・メートル)
📊 数値の意味: 値が大きいほど電気を通しにくい(絶縁体ほど大)
🧮 公式: ρ = R × A / L
※ R:抵抗(Ω)、A:断面積(m²)、L:長さ(m)

⚡ 導電率σ(Conductivity)とは?

導電率σ(シグマ)は、「材料が電流をどれだけ通しやすいか」を表す指標です。

📏 単位: S/m(ジーメンス毎メートル)
📊 数値の意味: 値が大きいほど電気を通しやすい(導体ほど大)
🧮 公式: σ = 1 / ρ
※ 抵抗率の逆数

🔄 ρとσの関係性(超重要!)

σ = 1 / ρ または ρ = 1 / σ

抵抗率と導電率は「逆数の関係」にあります。つまり:
✅ 抵抗率ρが大きい材料 → 導電率σは小さい(電気を通しにくい)
✅ 抵抗率ρが小さい材料 → 導電率σは大きい(電気を通しやすい)

同じ材料の特性を、見方を変えて表現しているだけなのです!

💡 実務での使い分けポイント

使用する場面 使う指標 理由
絶縁材料の評価 抵抗率ρ 値が大きいほど性能良好
電線材料の選定 導電率σ 値が大きいほど性能良好
半導体材料の研究 どちらも使用 文脈により使い分け

2️⃣ 単位の意味を完全理解│Ω・mとS/mの正体

📏 Ω・m(オーム・メートル)の意味

抵抗率の単位「Ω・m」は、「1m³の立方体材料の対向する面間の抵抗値」を表します。

🧮 公式の詳細:
ρ = R × A / L
➡ R = ρ × L / A

具体例で考えると:
• 断面積A = 1m²
• 長さL = 1m
の材料の抵抗Rが、その材料の抵抗率ρ[Ω・m]になります。

※ 実際には非常に大きな断面積なので、現実的には小さなサンプルで測定してρを算出します

📏 S/m(ジーメンス毎メートル)の意味

導電率の単位「S/m」は、抵抗率の逆数単位で、「1m³の立方体材料の導電性の高さ」を表します。

📚 単位の関係:
• S(ジーメンス) = 1/Ω(コンダクタンス)
• σ[S/m] = 1 / ρ[Ω・m]

覚え方のコツ:
✅ S(ジーメンス)は「抵抗の逆数」を表す単位
✅ だから導電率σ = 1/ρ も「抵抗率の逆数」
✅ 単位も値も、すべて「逆数の関係」で統一されています!

🔢 単位換算の具体例

例題:銅の抵抗率と導電率

【与えられた値】
銅の抵抗率: ρ = 1.68 × 10⁻⁸ Ω・m

【導電率を求める】
σ = 1 / ρ
σ = 1 / (1.68 × 10⁻⁸)
σ = 5.95 × 10⁷ S/m

つまり、銅は「約6000万S/m」という高い導電率を持つ優秀な導体!

3️⃣ 材料別の抵抗率一覧表(20℃基準)

⚡ 導体(Conductors)の抵抗率

導体は抵抗率が極めて小さい(10⁻⁸ Ω・mオーダー)のが特徴です。

材料 抵抗率ρ[Ω・m] 特徴・用途
銀(Ag) 1.59 × 10⁻⁸ 最高の導電性/高価
銅(Cu) 1.68 × 10⁻⁸ 電線の標準材料
金(Au) 2.44 × 10⁻⁸ 耐食性に優れる/接点
アルミニウム(Al) 2.82 × 10⁻⁸ 軽量/送電線
タングステン(W) 5.60 × 10⁻⁸ 高融点/電球フィラメント

🔶 半導体(Semiconductors)の抵抗率

半導体は導体と絶縁体の中間の抵抗率を持ち、温度やドーピングで大きく変化します。

材料 抵抗率ρ[Ω・m] 特徴・用途
ゲルマニウム(Ge) 4.6 × 10⁻¹ 初期のトランジスタ材料
シリコン(Si) 6.4 × 10² 現代半導体の主役
ガリウムヒ素(GaAs) 10⁸ 高速デバイス/LED

🛡️ 絶縁体(Insulators)の抵抗率

絶縁体は抵抗率が極めて大きい(10¹⁰ Ω・m以上)のが特徴で、電流をほとんど通しません。

材料 抵抗率ρ[Ω・m] 特徴・用途
ガラス 10¹⁰ ~ 10¹⁴ 電気絶縁・光学用途
ゴム 10¹³ ~ 10¹⁵ 電線被覆材
テフロン 10²⁴ 最高級の絶縁性

💡 覚えておくべき数値:
銅の抵抗率: 約1.7 × 10⁻⁸ Ω・m(電験頻出!)
アルミの抵抗率: 約2.8 × 10⁻⁸ Ω・m(送電線で重要)
銀>銅>金>アルミの順で導電性が高い(抵抗率が低い)
• 半導体は温度で抵抗率が大きく変わる!

4️⃣ 温度係数と抵抗の変化

🌡️ 温度係数α(アルファ)とは?

温度係数αは、「温度が1℃上昇したときの抵抗率の変化率」を表す指標です。

🧮 温度による抵抗変化の公式:

R = R₀(1 + αΔT)

記号の意味:
• R: 温度変化後の抵抗[Ω]
• R₀: 基準温度(通常20℃)での抵抗[Ω]
• α: 温度係数[/℃]
• ΔT: 温度変化[℃] (= T - T₀)

🔥 金属(正の温度係数)

金属は温度が上がると抵抗率が増加(α > 0)します。これは「正の温度係数」と呼ばれます。

材料 温度係数α[/℃] 20℃→100℃で
銅(Cu) +0.00393 抵抗が約31%増加
アルミ(Al) +0.00403 抵抗が約32%増加
タングステン(W) +0.0045 抵抗が約36%増加

💡 理由: 温度上昇で金属原子の熱振動が激しくなり、電子が流れにくくなるため。

❄️ 半導体(負の温度係数)

半導体は温度が上がると抵抗率が減少(α < 0)します。これは「負の温度係数」と呼ばれます。

材料 温度特性 応用例
シリコン(Si) 温度↑で抵抗↓ 温度センサー
ゲルマニウム(Ge) 温度↑で抵抗↓ サーミスタ

💡 理由: 温度上昇でキャリア(電子・正孔)が増加し、電流が流れやすくなるため。

📊 温度による抵抗変化の計算例

【例題】銅線の温度による抵抗変化

【条件】
• 基準温度T₀ = 20℃での抵抗 R₀ = 10Ω
• 銅の温度係数 α = 0.00393 /℃
• 使用温度T = 100℃

【解答】
ΔT = 100 - 20 = 80℃
R = R₀(1 + αΔT)
R = 10 × (1 + 0.00393 × 80)
R = 10 × (1 + 0.3144)
R = 10 × 1.3144

R ≒ 13.1Ω

➡ 温度が80℃上昇すると、抵抗は約31%増加!

5️⃣ 実務でのρとσの使い分け

🧭 どちらを使うべきか?判断基準

基本的な判断ルール:

抵抗率ρを使う場面
• 絶縁材料の性能評価(値が大きいほど良い)
• 絶縁抵抗測定
• 耐電圧試験
• 「電気を通しにくさ」を強調したいとき

導電率σを使う場面
• 導電材料の性能評価(値が大きいほど良い)
• 電線・ケーブルの材料選定
• 接点材料の比較
• 「電気の通しやすさ」を強調したいとき

💼 具体的な実務例

【ケース1】電線材料の選定

目的: 電力損失の少ない電線を選びたい
使用指標: 導電率σ(大きいほど良い)

比較例:
• 銅: σ = 5.95 × 10⁷ S/m ← 優秀!
• アルミ: σ = 3.55 × 10⁷ S/m ← コスト重視なら選択肢

結論: 導電率で比較すると、銅のほうが約1.7倍電気を通しやすい!

【ケース2】絶縁材料の評価

目的: 高電圧機器の絶縁材料を選びたい
使用指標: 抵抗率ρ(大きいほど良い)

比較例:
• ガラス: ρ = 10¹⁰ ~ 10¹⁴ Ω・m ← 一般用途OK
• テフロン: ρ = 10²⁴ Ω・m ← 超高性能!

結論: 抵抗率で比較すると、テフロンは圧倒的に高性能!

【ケース3】電験三種の問題

問題文のヒント:
• 「電線の抵抗を求めよ」→ 抵抗率ρを使う
• 「導体の性能を比較せよ」→ 導電率σのほうが直感的
• 「絶縁材料の評価」→ 抵抗率ρを使う

💡 どちらが与えられていても、σ = 1/ρで変換可能!

📝 電験三種でよく出る計算パターン

【頻出パターン】導体の抵抗計算

【問題】
長さL = 100m、断面積A = 10mm²の銅線の抵抗を求めよ。
ただし、銅の抵抗率ρ = 1.7 × 10⁻⁸ Ω・mとする。

【解答】
まず単位を揃える:
• L = 100m
• A = 10mm² = 10 × 10⁻⁶ m² = 1.0 × 10⁻⁵ m²

抵抗の公式を使う:
R = ρL / A
R = (1.7 × 10⁻⁸) × 100 / (1.0 × 10⁻⁵)
R = 1.7 × 10⁻⁶ / 1.0 × 10⁻⁵

R = 0.17Ω

📚 まとめ│ρとσを二度と混同しないために

🎯 この記事の重要ポイント

  • 抵抗率ρは「電気の流れにくさ」を表し、単位はΩ・m
  • 導電率σは「電気の流れやすさ」を表し、単位はS/m
  • ρとσは逆数の関係(σ = 1/ρ)
  • 絶縁材料の評価にはρ、導電材料の評価にはσを使う
  • 金属は温度上昇で抵抗増加(α>0)、半導体は抵抗減少(α<0)
  • 銅の抵抗率は約1.7×10⁻⁸ Ω・m(電験頻出!)

💪 次のステップ

初心者のあなたへ:
まずは「ρとσは逆数の関係」「銅の抵抗率1.7×10⁻⁸ Ω・m」を覚えましょう。これだけで電験三種の問題の半分は解けます!

電験三種受験者のあなたへ:
過去問で「R = ρL/A」と「R = R₀(1+αΔT)」の計算問題を5問ずつ解いてみましょう。手を動かせば完璧です!

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