「レンツの法則って何?」「誘導電流の向きはどうやって決まるの?」「右ねじの法則って、どう使うの?」
そんな疑問を抱えているあなたへ。電験三種で頻出のレンツの法則と右ねじの法則を、今日こそ完璧にマスターしましょう。
結論から言うと、レンツの法則とは「誘導電流は必ず変化を妨げる向きに流れる」という超シンプルな法則です。そして、その電流の向きを具体的に見つける道具が右ねじの法則なんです。
- レンツの法則の本質 - 「押されたら押し返す」のと同じ!
- 右ねじの法則で電流の向きを一発で判定する方法
- 磁石を近づける/遠ざける2つのケースを完全攻略
- エネルギー保存則との深い関係を身近な例で理解
この記事では、「変化は嫌われる」という自然界の普遍的な性質から、レンツの法則を理解していきます。中学生でも完璧に分かるよう、身近な例えをたくさん使いますので、安心してついてきてくださいね。
目次
レンツの法則とは? - 自然界は変化を嫌う
レンツの法則を一言で表すと、こうなります。
「誘導電流は、磁束の変化を妨げる向きに流れる」
難しそうに聞こえますが、実はこれ、「押されたら押し返す」「熱いものから逃げる」といった、私たちが日常で経験している反応と全く同じなんです。
自然界のあらゆるものは、変化を嫌がる性質を持っています。その性質が、電磁誘導の世界でも現れたのが、レンツの法則なんですね。

身近な例で理解:変化への抵抗
例①:押されたら押し返す
誰かに突然押されたら、あなたはどうしますか? きっと反射的に押し返そうとしますよね。
これは「作用・反作用の法則」と呼ばれる物理現象で、力を加えられると必ず反対向きの力が生まれます。レンツの法則も、これと全く同じなんです。
例②:熱いものから逃げる
熱々のフライパンが近づいてきたら、思わず手を引っ込めますよね。これも「変化(熱くなること)を避ける」反応です。
体が「このままだと火傷する!」と判断して、変化を妨げる行動(手を引く)を取るわけです。
例③:バネは元に戻ろうとする
バネを押し縮めると、元の長さに戻ろうとする力が生まれます。これを「復元力」と言います。
バネは「変形させられる」という変化を嫌がって、元の状態に戻ろうと抵抗するんですね。
電磁誘導でも同じことが起こる
磁石をコイルに近づけると、コイルの中の磁束が増えますよね。このとき、コイルは「磁束が増えるのは嫌だ!」と感じて、磁束の増加を妨げる向きの電流を流すんです。
逆に、磁石をコイルから遠ざけると、コイルの中の磁束が減ります。すると今度は、コイルは「磁束が減るのは嫌だ!」と感じて、磁束の減少を妨げる向きの電流を流します。
- 磁束が増える → 増加を妨げる電流が流れる → コイルは反対の極を作る
- 磁束が減る → 減少を妨げる電流が流れる → コイルは同じ極を作る
- どちらの場合も、変化を嫌がって抵抗する
具体例:磁石が近づく場合
N極の磁石をコイルに近づけたとします。すると、コイル内の磁束が増えていきます。
このとき、コイルは「N極が近づいてくるのを押し返したい!」と考えます。どうすればいいでしょう? 答えは簡単、コイル自身がS極になればいいんです。
N極とS極は反発しますから、コイルがS極を作ることで、近づいてくるN極を押し返すことができます。これが「変化を妨げる」ということなんですね。
具体例:磁石が遠ざかる場合
今度は、N極の磁石をコイルから遠ざけたとします。すると、コイル内の磁束が減っていきます。
このとき、コイルは「N極が離れていくのを引き戻したい!」と考えます。どうすればいいでしょう? コイル自身がN極になればいいんです。
N極とN極は引き合う…じゃなくて反発しますが、コイルがN極を作ることで、離れていこうとする磁石の磁束を補おうとするわけです。まるで友達を引き留めるように、磁石を引き戻そうとするんですね。

右ねじの法則:電流の向きを見つける魔法の手
右ねじの法則とは?
「レンツの法則で電流の向きが決まる」のは分かりました。でも、実際にどっち向きに流れるのか、具体的に知りたいですよね。
そこで登場するのが右ねじの法則(右手の法則)です。これは、磁束の向きから電流の向きを一発で見つける魔法の道具なんです。
- 親指 = 磁束の向き(Φの向き)
- 4本の指 = 電流の向き(Iの向き)
使い方:3ステップ
右ねじの法則を使うのは、たった3ステップです。
ステップ①:磁束の向きを確認する
まず、コイルの中の磁束がどちら向きに流れているか(増えているか、減っているか)を確認します。
- 磁石が近づく → 磁束が増える → 磁束は磁石の向き
- 磁石が遠ざかる → 磁束が減る → 磁束は磁石の逆向き(減少を補う向き)
ステップ②:右手の親指を磁束の向きに合わせる
右手を出して、親指を立てます。そして、親指の先を磁束の向きに向けてください。
コイルに親指を突っ込むようなイメージです。親指が磁束の流れる方向を指している状態にします。
ステップ③:残りの4本の指が巻く方向が電流の向き
親指の向きを固定したまま、残りの4本の指をコイルに巻きつけるようにカールさせます。
この4本の指が巻いている方向が、誘導電流が流れる向きです! これで完成です。
覚え方:ネジを回すイメージ
「右ねじの法則」という名前は、ネジを右回しで締める動きから来ています。
ネジを締めるとき、親指はネジが進む方向(下向き)を指しますよね。そして、他の指は右回り(時計回り)にネジを回します。
この動きをそのまま電磁誘導に当てはめれば、親指=磁束の向き、指の回転=電流の向きになるわけです。
- ペットボトルの蓋を開ける:親指が上を向き、指は左回り(反時計回り)
- ペットボトルの蓋を締める:親指が下を向き、指は右回り(時計回り)

実践例で完全理解:2つのケース
ケース①:N極が近づく場合
N極の磁石を、左からコイルに近づけていく状況を考えましょう。
状況分析
磁石が近づく → コイル内の磁束が増加する → 磁束は左から右へ流れる
レンツの法則を適用
コイルは「磁束の増加を妨げたい!」と思います。どうすればいい?
→ 反対向きの磁界を作る
→ コイルの左端にS極を作る
→ S極がN極を押し返す!
右ねじの法則で電流の向きを決定
①磁束の向きを確認:左から右(増加している磁束の向き)
②親指を磁束に合わせる:親指を左から右へ向ける
③4本指の方向が電流:指は反時計回り(正面から見て)に巻く → 電流は反時計回りに流れる!
電流が反時計回りに流れる → コイルの左端がS極になる → N極を押し返す!
ケース②:N極が遠ざかる場合
今度は、N極の磁石を、左へコイルから遠ざけていく状況を考えましょう。
状況分析
磁石が遠ざかる → コイル内の磁束が減少する → 磁束は右から左へ減っていく
レンツの法則を適用
コイルは「磁束の減少を妨げたい!」と思います。どうすればいい?
→ 同じ向きの磁界を作る(減った分を補う)
→ コイルの左端にN極を作る
→ N極がN極を引き戻そうとする!
右ねじの法則で電流の向きを決定
①磁束の向きを確認:右から左(減少を補う磁束の向き)
②親指を磁束に合わせる:親指を右から左へ向ける
③4本指の方向が電流:指は時計回り(正面から見て)に巻く → 電流は時計回りに流れる!
電流が時計回りに流れる → コイルの左端がN極になる → N極を引き戻そうとする!
2つのケースを比較
| 状況 | 磁束の変化 | コイルの対応 | 電流の向き |
|---|---|---|---|
| N極が近づく | 増加 | 反対の極(S極)を作って押し返す | 反時計回り |
| N極が遠ざかる | 減少 | 同じ極(N極)を作って引き戻す | 時計回り |
どちらの場合も、変化を妨げるという共通点があります。増加を防ぐか、減少を防ぐか、方法は違いますが、目的は同じなんですね。

エネルギー保存則とレンツの法則
もしレンツの法則がなかったら?
ここで、ちょっと面白い思考実験をしてみましょう。もし、レンツの法則が存在しなかったら、どうなるでしょうか?
磁石を近づけたとき、コイルが「変化を助ける向き」に電流を流したとします。すると、コイルは磁石と同じ極(N極)を作り、磁石を引き寄せてしまいます。
すると磁石はさらに加速して、もっと強い電流が流れて、さらに加速して…。永遠に加速し続ける永久機関の完成です!
でも、そんなものは自然界に存在しません。なぜなら、エネルギー保存則という絶対的なルールがあるからです。
エネルギーは形を変えるだけ
エネルギー保存則とは、「エネルギーは創造も消滅もしない、ただ形を変えるだけ」という法則です。
発電機で電気を作るとき、実は「無から電気を生み出している」わけではありません。あなたが磁石を動かすときに使った手の力(力学的エネルギー)が、電気エネルギーに形を変えているだけなんです。
エネルギーの流れ
①あなたが磁石を動かす
→ 手の力(力学的エネルギー)を使う
②レンツの法則が働く
→ コイルが抵抗力を生む(変化を妨げる)
③電流が流れる
→ 力学的エネルギーが電気エネルギーに変換される
もしレンツの法則がなかったら、抵抗がないので、エネルギーの変換が起こりません。つまり、電気も生まれないんです。
身近な例:発電機が重く感じる理由
手回し発電機を回したことはありますか? ハンドルを回すとき、妙に重いと感じたはずです。
この「重さ」こそが、レンツの法則による抵抗力なんです。コイルが「回転するな!」と抵抗しているんですね。
この抵抗力に逆らって回すことで、あなたの手の力が電気に変わります。もし抵抗がなかったら、スルスル回るだけで、電気は生まれません。
実用例
①渦電流ブレーキ
ジェットコースターやリニアモーターカーのブレーキは、レンツの法則を利用しています。
金属板が磁界の中を高速で動く → 渦電流が発生 → 渦電流が変化を妨げる向きに流れる → 金属板が減速する。運動エネルギーが熱エネルギーに変換されて、安全に止まれるんです。
②IH調理器
IHクッキングヒーターも、レンツの法則の応用です。
コイルに高周波電流を流す → 鍋の底で磁束が変化 → 渦電流が発生 → 渦電流が抵抗を受けて熱に変換 → 鍋が加熱される。電気エネルギーが熱エネルギーに変わるわけですね。
- エネルギー保存則を守るための法則
- 変化に抵抗することで、エネルギー変換が可能になる
- 抵抗がないと、永久機関になってしまう(不可能)
- 自然の摂理を表現した法則
まとめ:レンツの法則を完全マスター
レンツの法則と右ねじの法則、いかがでしたか? 難しそうに見えたけど、実は「変化を嫌がる」という超シンプルな原理だったんですね。
- レンツの法則:誘導電流は、磁束の変化を妨げる向きに流れる
- 右ねじの法則:親指=磁束の向き、4本指=電流の向き
- 近づく:磁束増加 → 反対の極を作って押し返す
- 遠ざかる:磁束減少 → 同じ極を作って引き戻す
- エネルギー保存:抵抗があるからエネルギー変換できる
- 実用例:発電機、ブレーキ、IH調理器など
電験三種の試験では、この知識をもとに、誘導電流の向きを判定する問題がよく出ます。右ねじの法則をマスターすれば、秒殺できるようになりますよ。
今日学んだ内容を何度も復習して、「変化を妨げる」というイメージを完璧に自分のものにしてください。右手を実際に動かして練習するのがオススメです!
あなたの合格を心から応援しています。頑張ってください!