- 「作業標準書」って何を書けばいいの?
- ベテランと新人で品質に差が出てしまう
- 作業標準書を作っても誰も読んでくれない
- 「標準化」の本当の意味がわからない
- 作業標準書がなぜ必要なのか(料理レシピで理解)
- 良い作業標準書の5つの条件
- 作業標準書の作り方(7ステップ)
- 作っただけで終わらせない運用のコツ
あなたは「カレーライス」を作れますか?
たぶん作れますよね。でも、あなたのカレーと、隣の人のカレー、同じ味になりますか?
ならないですよね。人によって「ちょっと多め」「適量」の感覚が違うし、煮込み時間も違う。同じ「カレー」でも、作る人によって味がバラバラになります。
でも、ココイチやCoCo壱番屋のカレーは、どの店舗で食べても同じ味ですよね?
その秘密は「レシピ(作業標準書)」にあります。
「誰がやっても、同じ品質の製品が作れるようになる
『料理のレシピ』のようなもの」
この記事では、作業標準書の必要性・作り方・運用方法を、身近な例でわかりやすく解説します。
目次
なぜ作業標準書が必要なのか?|3つの理由
「別にマニュアルなんかなくても、仕事はできるよ」
そう思う人もいるかもしれません。確かに、ベテランは標準書を見なくても作業できます。
でも、作業標準書がない職場では、こんな問題が起きます。
理由①|人によって品質がバラバラになる
標準書がないと、作業者ごとに「自己流」が生まれます。
Aさん:「塩は少なめが好き」
Bさん:「塩は多めが美味しい」
Cさん:「塩?入れたっけ?」
→ 同じ料理なのに、毎回味が違う
工場でも同じです。「ネジの締め付けトルク」「検査のタイミング」など、人によってやり方が違うと、製品の品質もバラバラになります。
理由②|ベテランがいないと仕事が回らない
「この作業はAさんしかできない」という状態は危険です。
Aさんが病気になったら? 退職したら? 仕事が止まります。
おばあちゃんの「秘伝の煮物」。
レシピを書き残していなかったら、おばあちゃんがいなくなったら二度と同じ味は作れません。
でもレシピがあれば、孫の世代でも同じ味を再現できます。
作業標準書は、「ベテランの技術を次世代に伝える」ための記録でもあるのです。
理由③|問題が起きても原因がわからない
不良品が出たとき、「何が悪かったのか」を調べる必要があります。
でも、そもそも「正しいやり方」が決まっていないと、「どこが間違っていたのか」がわかりません。
「このカレー、なんか変な味がする」
レシピがあれば「あ、塩を入れすぎた」とわかる。
レシピがないと「何が原因かわからない」。
作業標準書は、「基準」の役割も果たします。基準があるから、「基準と違う=異常」だとわかるのです。

良い作業標準書の5つの条件
「作業標準書はあるけど、誰も見てないんだよね...」
こんな声、よく聞きます。それは、作業標準書の「質」に問題があるからかもしれません。
良い作業標準書には、5つの条件があります。
条件①|誰が読んでもわかる(明確性)
新人が読んでも理解できる内容でなければ意味がありません。
| ❌ ダメな例 | ✅ 良い例 |
|---|---|
| 「適量の油を入れる」 | 「サラダ油を大さじ2杯入れる」 |
| 「しっかり締める」 | 「トルクレンチで10N・mで締める」 |
| 「よく混ぜる」 | 「時計回りに30秒間混ぜる」 |
| 「きれいに拭く」 | 「アルコールを染み込ませたウエスで3回拭く」 |
「数字」で書くことが大切です。「しっかり」「適量」「きれいに」は人によって解釈が違います。
条件②|写真・図が入っている(視覚性)
文字だけの標準書は読む気がしません。写真や図を入れると、一目で理解できます。
・正しい状態(良品の写真)
・間違った状態(NG例の写真)
・作業の手順(手の動きがわかる写真)
・使用する工具・材料の写真
・危険な箇所の写真
特に「OK例」と「NG例」を並べると効果的です。「こうなったらダメ」がわかると、ミスを防げます。
条件③|「なぜ」が書いてある(理由の明示)
「何をするか」だけでなく、「なぜそうするのか」を書くと、守られやすくなります。
| ❌ 理由なし | ✅ 理由あり |
|---|---|
| 「必ず手袋をする」 | 「必ず手袋をする(指紋が付くと不良になるため)」 |
| 「30分以内に使う」 | 「30分以内に使う(時間が経つと硬化するため)」 |
理由がわかると、「面倒だけど、やらないとマズいんだな」と納得できます。納得すれば、手抜きをしなくなります。
条件④|現場で使いやすい(実用性)
分厚いマニュアルを事務所に置いても、誰も見ません。
・作業場所に掲示する(ラミネート加工して壁に貼る)
・A4〜A3で1枚にまとめる(長すぎない)
・汚れても読めるようにする(防水加工)
・QRコードで動画を見られるようにする
条件⑤|定期的に更新される(最新性)
5年前に作った標準書を、そのまま使っていませんか?
設備が変わった、材料が変わった、もっと良いやり方が見つかった——状況が変われば、標準書も更新する必要があります。
・現場の実態と合っていない
・「どうせ古いから」と誰も見なくなる
・改善したはずの問題が再発する
標準書には必ず「作成日」「改訂日」「版数」を記載し、いつの情報かわかるようにしましょう。

作業標準書の作り方|7ステップ
では、実際に作業標準書を作る手順を見ていきましょう。
料理のレシピを作るイメージで考えると、わかりやすいですよ。
ステップ①|「何の作業」の標準書を作るか決める
まずは、対象となる作業を明確にします。
「料理全般のレシピ」ではなく、
「カレーライスのレシピ」のように、具体的な料理を決める。
工場でも同じです。「組立作業全般」ではなく、「製品Aのネジ締め作業」のように具体的に決めます。
ステップ②|ベテランの作業を観察する
次に、その作業を一番うまくできる人(ベテラン)の作業を観察します。
ポイントは「見る」だけでなく、「なぜそうするのか」を聞くことです。
・「なぜこの順番でやるんですか?」
・「なぜこの工具を使うんですか?」
・「どこに注意していますか?」
・「失敗しやすいポイントはどこですか?」
・「これをしないとどうなりますか?」
ベテランは無意識にやっていることが多いので、細かく質問することが大切です。
ステップ③|作業を「ステップ」に分解する
観察した作業を、小さなステップに分解します。
① 野菜を切る
② 肉を炒める
③ 野菜を炒める
④ 水を入れて煮る
⑤ ルーを入れる
⑥ 煮込む
ステップは「1つの動作」を1ステップとするのがコツ。「野菜を切って炒める」は2ステップに分けます。
ステップ④|各ステップの「急所」を明確にする
「急所」とは、そのステップで特に注意すべきポイントのことです。
これを間違えると、品質問題や安全問題につながる「絶対に守るべきこと」を書きます。
| ステップ | 急所(ポイント) | 理由 |
|---|---|---|
| 野菜を切る | 大きさを揃える(2cm角) | 火の通りを均一にするため |
| 水を入れて煮る | 水は800ml | 濃さを一定にするため |
| ルーを入れる | 火を止めてから入れる | ダマになるのを防ぐため |
ステップ⑤|写真・図を撮影する
各ステップの写真を撮影します。
・作業の全体像(作業者の姿勢も含めて)
・手元のアップ(細かい作業がわかるように)
・良品の状態(これがOK)
・不良品の状態(これがNG)
・使用する工具・材料
写真は「後からでは撮れない」ことが多いので、このタイミングでしっかり撮っておきましょう。
ステップ⑥|標準書のフォーマットに落とし込む
集めた情報を、標準書のフォーマットに整理します。
ヘッダー部分
・文書番号、版数、作成日、改訂日
・作業名、対象製品、担当部署
・作成者、承認者
本体部分
・ステップ番号
・作業内容(何をするか)
・急所(注意点)
・理由(なぜそうするか)
・写真・図
・使用する工具・材料
・品質基準(OK/NGの判断基準)
フッター部分
・安全上の注意事項
・異常時の対応方法
・関連文書へのリンク
ステップ⑦|現場で検証・修正する
作った標準書を、実際に新人に使ってもらって検証します。
「この説明でわかる?」「迷うところはない?」と聞きながら、わかりにくい部分を修正していきます。
ベテランが書いた標準書は、「当たり前のことが省略されている」ことが多い。
新人に読んでもらうと、「ここがわからない」というフィードバックがもらえます。

作業標準書のフォーマット例
実際の作業標準書がどんな形になるか、フォーマット例を見てみましょう。
| 作業名 | 製品Aのネジ締め作業 | 対象製品 | 製品A(型番: ABC-123) |
| 担当部署 | 組立課 | 作成者/承認者 | 田中/鈴木 |
| No. | 作業内容 | 急所(ポイント) | 理由 | 写真 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 部品Aと部品Bを準備する | 部品の向きを確認する | 逆向きだと組み立たない | [写真1] |
| 2 | ネジ(M4×10)を取り出す | 必ず4本取り出す | 不足すると製品不良 | [写真2] |
| 3 | トルクドライバーで締める | トルク:1.5N・m | 弱いと緩み、強いと破損 | [写真3] |
| 4 | 締め付け確認をする | 4箇所すべてにマーキング | 締め忘れ防止 | [写真4] |
このように、1枚で完結するのが理想です。現場に貼って、すぐに確認できるようにしましょう。
作業標準書を「生きた文書」にするコツ
せっかく作った標準書も、使われなければ意味がありません。
「作って終わり」ではなく「使い続ける」ための運用のコツを紹介します。
コツ①|作業者と一緒に作る
品質管理部門が一方的に作った標準書は、現場に受け入れられません。
実際に作業する人と一緒に作ることで、「自分たちの標準書」という意識が生まれ、守られやすくなります。
コツ②|改善のたびに更新する
「もっと良いやり方」が見つかったら、すぐに標準書を更新します。
これがSDCA(標準化→実行→チェック→処置)サイクルの考え方です。
S(Standardize):標準を決める
D(Do):標準通りに実行する
C(Check):標準通りにできているか確認する
A(Act):問題があれば標準を改訂する
コツ③|教育とセットで使う
標準書を渡して「これ読んどいて」では、読んでくれません。
OJT(実地教育)の教材として使うと効果的です。
- 先輩が標準書を見せながら、実演する
- 新人が標準書を見ながら、実際にやってみる
- 先輩がチェックして、フィードバックする
コツ④|定期的に「標準書通りか」を確認する
時間が経つと、「自己流」が入り込んできます。
定期的に「標準書通りに作業しているか」を確認し、ズレていたら是正します。
・毎日の朝礼で、急所を読み上げる
・週1回、監督者が作業を観察する
・月1回、品質パトロールで確認する
・4M変更時(人が変わった時など)に重点確認する

標準化と改善の関係|「守る」と「変える」の両立
「標準を守れ」と言われると、「新しいことをやっちゃダメなの?」と思うかもしれません。
答えは「NO」です。標準化と改善は、対立するものではなく、セットで回すものです。
① まず標準を決める(現時点のベストなやり方)
② 標準を守る(バラつきをなくす)
③ もっと良いやり方を見つける(改善)
④ 標準を更新する(新しいベストにする)
⑤ 新しい標準を守る(①に戻る)
つまり、「今の標準を守りながら、より良い標準を目指す」のが正しい姿勢です。
勝手に自己流でやるのはNG。でも、「こうしたほうがいいのでは?」という提案は大歓迎。提案が認められたら、標準書を更新して、全員で新しいやり方に切り替えます。
まとめ|作業標準書は「品質の土台」
この記事では、作業標準書の必要性・作り方・運用方法を解説しました。
✅ 作業標準書は「料理のレシピ」のようなもの。誰がやっても同じ品質を実現する
✅ 標準書がないと、品質がバラバラになり、ベテラン頼みになり、原因究明もできない
✅ 良い標準書の条件は「明確性」「視覚性」「理由の明示」「実用性」「最新性」の5つ
✅ 作り方は7ステップ:対象決定→観察→分解→急所明確→撮影→整理→検証
✅ 運用のコツは「一緒に作る」「更新する」「教育とセット」「定期確認」
✅ 標準化と改善は対立しない。守りながら、より良い標準を目指す
作業標準書は、品質管理の「土台」です。この土台がしっかりしていれば、その上に工程管理、検査、改善活動を積み上げていけます。
まずは身近な作業から、「誰がやっても同じ品質になるレシピ」を作ってみませんか?
キーワード解説一覧|試験対策用
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 作業標準書 | 作業の手順、方法、注意点などを文書化したもの。誰がやっても同じ品質を実現するためのルール |
| 標準作業 | 作業標準書に基づいて行う、決められた通りの作業 |
| 標準化 | 最も良いやり方を決めて、全員で同じようにやること |
| 急所 | 作業の中で特に注意すべきポイント。これを間違えると品質や安全に問題が出る |
| 手順書 | 作業の手順を記載した文書。作業標準書とほぼ同義で使われることが多い |
| マニュアル | 手引書、説明書。作業標準書より広い概念で使われることが多い |
| SDCAサイクル | Standardize(標準化)→Do(実行)→Check(確認)→Act(処置)のサイクル。日常管理の基本 |
| PDCAサイクル | Plan(計画)→Do(実行)→Check(確認)→Act(処置)のサイクル。改善活動の基本 |
| OJT | On the Job Training。実際の仕事を通じて行う教育訓練 |
| ポカヨケ | 人間のミス(ポカ)を物理的に防ぐ仕組み。標準書と併用して効果を発揮する |
| 技能伝承 | ベテランの技術・ノウハウを次世代に引き継ぐこと。標準書はその記録手段 |
| 暗黙知 | 言葉にしにくい、経験に基づく知識。標準書を作ることで「形式知」に変換できる |
| 形式知 | 言葉や文書で表現できる知識。標準書は形式知の代表例 |
| 改訂履歴 | 標準書がいつ、何を、なぜ変更されたかの記録 |
| 版数管理 | 文書のバージョンを管理すること。古い版と最新版を区別する |
| 承認 | 権限を持つ人が文書の内容を認め、使用を許可すること |
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