信頼性工学

【超入門】信頼性工学とは?|製品が"壊れない"を数値化する技術を完全図解

😣 こんな悩みはありませんか?
  • 信頼性工学って何?製造業で働いているけど、よくわからない…
  • MTBF、故障率、アベイラビリティ…用語が多すぎて混乱する
  • 「信頼性」と「耐久性」って同じじゃないの?違いがわからない
  • QC検定で信頼性の問題が出るけど、どこから勉強すればいいの?
✅ この記事でわかること
  • 信頼性工学が「何を」「なぜ」数値化するのかをイメージで理解
  • ディペンダビリティの3本柱(信頼性・保全性・可用性)の関係
  • 「信頼性」「耐久性」「安全性」の違いをスッキリ整理
  • 設計信頼性の考え方と、なぜ「設計段階」が重要なのか

「信頼性工学」と聞くと、なんだか難しそうな印象を受けますよね。

でも実は、私たちは毎日「信頼性」の恩恵を受けて生活しています。

たとえば、あなたのスマートフォン。毎朝、アラームがちゃんと鳴りますよね?電車に乗っている間も、急に電源が落ちたりしませんよね?

これは「当たり前」ではありません。メーカーが信頼性工学を使って、「壊れにくさ」を設計段階から作り込んでいるからこそ、私たちは安心して製品を使えるんです。

この記事では、信頼性工学の全体像を「スマホ」や「自動車」など身近な例を使って、初心者でもイメージできるように解説します。

最後まで読めば、「MTBF」「故障率」「アベイラビリティ」といった専門用語の意味も、なんとなくわかるようになりますよ。

信頼性工学とは?─「壊れない」を数値化する技術

一言でいうと「壊れにくさの科学」

信頼性工学を一言で表すと、こうなります。

信頼性工学 = 製品が「壊れない」「長持ちする」を
数値で予測・管理・改善する技術

「壊れにくい製品を作りたい」という想いは、メーカーなら誰でも持っています。

でも、「壊れにくい」という感覚的な言葉だけでは、具体的な改善ができません。

  • 「壊れにくい」って、具体的にどのくらい?
  • 競合製品と比べて、どっちが壊れにくい?
  • 設計を変えたら、どのくらい壊れにくくなった?

これらの問いに答えるために、「壊れにくさ」を数値化するのが信頼性工学の役割です。

信頼性の正式な定義

JIS(日本産業規格)では、信頼性を次のように定義しています。

「アイテムが与えられた条件の下で、与えられた期間、要求された機能を果たす能力」

─ JIS Z 8115:2019

少し硬い表現ですね。もっと噛み砕くと、こうなります。

💡 かみ砕いた定義

「決められた条件で、決められた期間、ちゃんと動く確率」

ポイントは「確率」で表すことです。

「この製品は絶対に壊れません」とは言えません。でも「3年間で故障する確率は5%です」なら、具体的に判断できますよね。

なぜ信頼性工学が必要なのか?

「製品が壊れると困る」というのは当たり前ですが、具体的にどんな影響があるのでしょうか?

製品が故障すると何が起きる?

影響を受ける人故障による損失
お客様 ・製品が使えない不便
・修理費用・買い替え費用
・最悪の場合、事故・怪我
メーカー ・保証修理のコスト
・リコール費用
・ブランドイメージの低下
・訴訟リスク
社会全体 ・インフラ停止(電力、通信など)
・経済的損失
・環境への悪影響

身近な例で考える:スマホが壊れたら?

あなたのスマホが突然壊れたとしましょう。どんな影響がありますか?

📱 スマホが壊れると…

  • 目覚ましが鳴らず、寝坊して遅刻
  • 電車の乗り換えがわからない
  • 仕事の連絡が取れない
  • キャッシュレス決済ができず、買い物ができない
  • 大切な写真データが消える
  • 修理に数万円、または新品を買い直し

たった1台のスマホが壊れるだけで、これだけの影響があります。

これが飛行機のエンジンや、病院の医療機器だったらどうでしょう?人命に関わるレベルの問題になりますよね。

だからこそ、「壊れにくさ」を科学的に追求する信頼性工学が必要なんです。

信頼性工学が使われている分野

信頼性工学は、特に「故障が許されない」分野で発展してきました。

分野なぜ信頼性が重要か
🚀 航空宇宙飛行中に故障したら墜落。修理もできない
⚡ 電力・インフラ停電すると社会全体が麻痺
🏥 医療機器手術中の故障は患者の命に直結
🚗 自動車ブレーキ故障は大事故につながる
�icing 半導体・電子機器サーバー停止でサービス全体がダウン
💡 信頼性工学の歴史
信頼性工学が本格的に発展したのは、第二次世界大戦後のアメリカです。

戦争中、軍用電子機器の故障率が非常に高く、多くの作戦が失敗しました。
この反省から、「故障を科学的に分析・予測する」研究が始まり、現在の信頼性工学につながっています。

ディペンダビリティの3本柱を理解しよう

信頼性工学を学ぶ上で、最初に理解すべき重要な概念があります。

それが「ディペンダビリティ(Dependability)」です。

ディペンダビリティとは?

ディペンダビリティは、日本語では「総合信頼性」「信頼して任せられる性質」と訳されます。

単なる「壊れにくさ」だけでなく、「壊れたときの直しやすさ」「全体として使える時間の割合」まで含めた、より広い概念です。

ディペンダビリティ = 信頼性 + 保全性 + 可用性

(壊れにくさ)+(直しやすさ)+(使える時間の割合)

3本柱を「家」でイメージする

ディペンダビリティは、3本の柱で支えられた「家」をイメージするとわかりやすいです。

        ┌─────────────────────────────┐
        │    ディペンダビリティ        │
        │      (総合信頼性)          │
        └─────────────────────────────┘
               ┃      ┃      ┃
          ┌────┸────┐┌───┸───┐┌───┸────┐
          │ 信頼性  ││ 保全性 ││ 可用性  │
          │壊れにくさ││直しやすさ││使える割合│
          └─────────┘└────────┘└─────────┘
          ══════════════════════════════
                 安全性・耐久性(土台)
    

1本の柱だけが強くても、家全体は支えられません。3本のバランスが大切です。

3本柱の詳細

柱①:信頼性(Reliability)─ 壊れにくさ

定義:決められた条件で、決められた期間、故障せずに動き続ける確率

イメージ:「そもそも壊れない」

指標:MTBF(平均故障間隔)、MTTF(平均故障時間)、故障率λ

身近な例:3年間使ってもバッテリーが劣化しないスマホ

柱②:保全性(Maintainability)─ 直しやすさ

定義:故障したときに、どれだけ早く・簡単に修理できるか

イメージ:「壊れても、すぐ直せる」

指標:MTTR(平均修理時間)

身近な例:バッテリー交換が自分でできるスマホ vs できないスマホ

柱③:可用性(Availability)─ 使える時間の割合

定義:「使いたいときに使える」状態にある確率

イメージ:「結局、どれだけ使えているか」

指標:アベイラビリティ A = MTBF ÷ (MTBF + MTTR)

身近な例:稼働率99.9%のクラウドサーバー

3本柱の関係を数式で理解する

可用性(アベイラビリティ)は、信頼性と保全性を「統合」した指標です。

📐 アベイラビリティの公式
A =
MTBF
MTBF + MTTR

稼働時間 ÷ (稼働時間 + 修理時間)

この式が意味することは:

  • MTBFが大きい(壊れにくい)→ 可用性が上がる
  • MTTRが小さい(すぐ直せる)→ 可用性が上がる

つまり、「壊れにくくする」か「早く直せるようにする」か、どちらの方法でも可用性を上げられるということです。

💡 実務での考え方
信頼性を上げるには、高品質な部品を使ったり、設計を工夫したりする必要があり、コストがかかります

一方、保全性を上げる(修理しやすくする)ことでも可用性は上げられます。

実務では、「コストと効果のバランス」を考えて、どちらにどれだけ投資するかを判断します。

「信頼性」「耐久性」「安全性」の違い

信頼性工学を学ぶと、似たような言葉がたくさん出てきて混乱しますよね。

ここでは、特に混同しやすい3つの概念を整理します。

3つの概念の違い

概念意味
信頼性決められた期間、故障せずに動く確率「3年間で故障する確率が5%」
耐久性使い終わるまで、どれだけ長持ちするか(寿命の長さ)「10年使っても動く」
安全性故障しても、人や環境に危害を与えない「バッテリーが壊れても発火しない」

スマホの例で違いを理解する

🟢 信頼性が高いスマホ

「買ってから3年間、一度も故障しなかった」
→ 決められた期間(3年)、故障せずに動いた

🟠 耐久性が高いスマホ

「10年前のスマホだけど、まだ動く」
→ 長い期間、使い続けられた(寿命が長い)

🔴 安全性が高いスマホ

「バッテリーが膨張しても、発火や爆発はしなかった」
→ 故障しても、人に危害を与えなかった

⚠️ 重要な違い

信頼性が高い ≠ 安全

「故障しにくい製品」が「故障したときに安全」とは限りません。

例えば、「10年間故障しなかった機械」が、11年目に故障して大事故を起こす可能性もあります。

だからこそ、信頼性と安全性は別々に評価・設計する必要があるんです。

設計信頼性とは?─「後から直す」より「最初から作り込む」

信頼性工学で非常に重要な考え方が「設計信頼性」です。

製品の信頼性は「設計段階」で80%決まる

製品のライフサイクルを考えてみましょう。

① 企画② 設計③ 製造④ 使用⑤ 廃棄

↑ この段階で信頼性の大部分が決まる

よく言われる言葉があります。

「品質は設計で作り込め」

製造段階で検査しても、設計の悪さは直せない

製造段階でどれだけ厳しく検査しても、設計が悪ければ信頼性は上がりません

逆に、設計段階でしっかり信頼性を作り込んでおけば、製造段階での手戻りやコストを大幅に削減できます。

設計信頼性を高めるための手法

設計段階で信頼性を作り込むために、さまざまな手法が使われます。

手法内容
FMEA故障モードと影響を事前に分析し、対策を打つ
FTA故障の原因を樹形図でたどり、根本原因を特定
信頼性ブロック図システム全体の信頼性を計算し、弱点を見つける
冗長設計重要な部品を二重化し、1つ壊れても動くようにする
ディレーティング部品を定格より余裕を持った条件で使い、寿命を延ばす

信頼性工学で使う主な指標(プレビュー)

最後に、信頼性工学で使う主な指標を一覧で紹介します。

それぞれの詳細は別記事で解説しますが、まずは「こんな指標があるんだな」と全体像を把握しておきましょう。

信頼性の主な指標一覧

指標意味使う場面
MTBF平均故障間隔(故障から次の故障までの平均時間)修理して繰り返し使う製品
MTTF平均故障時間(最初の故障までの平均時間)使い捨て・交換する製品
MTTR平均修理時間保全性の評価
故障率 λ単位時間あたりの故障発生率故障の起きやすさの評価
アベイラビリティ使いたいときに使える確率システム全体の稼働率評価
B10ライフ10%が故障するまでの時間ベアリングなど機械部品の寿命

まとめ:信頼性工学の全体像

この記事で学んだことを整理しましょう。

✅ 信頼性工学とは

定義製品が「壊れない」「長持ちする」を数値で予測・管理・改善する技術
なぜ必要か故障による損失(コスト・事故・信頼低下)を防ぐため

✅ ディペンダビリティの3本柱

信頼性保全性可用性
壊れにくさ直しやすさ使える時間の割合
MTBF, MTTFMTTRA = MTBF/(MTBF+MTTR)

✅ 似た概念の違い

信頼性決められた期間、故障せずに動く確率
耐久性寿命の長さ(どれだけ長持ちするか)
安全性故障しても危害を与えない

✅ 設計信頼性のポイント

信頼性の80%は「設計段階」で決まる
→ 後から直すより、最初から作り込む

QC検定での出題ポイント

📝 試験対策チェックリスト
  • 信頼性の定義:「決められた条件・期間で、要求機能を果たす確率」
  • ディペンダビリティ:信頼性+保全性+可用性の3本柱
  • アベイラビリティの公式:A = MTBF / (MTBF + MTTR)
  • 信頼性と耐久性の違い:信頼性は「確率」、耐久性は「時間の長さ」
  • 設計信頼性:品質は設計で作り込む(後工程での検査では限界)
  • FMEA、FTA:設計段階で故障を予測・予防する手法

📚 次に読むべき記事

📘 【図解】MTBFとMTTFの違い|"修理できるか"で使い分ける2つの指標 →

信頼性の最も基本的な指標を学ぶ。修理可能/不可能で使い分けを理解

📘 【完全図解】故障率曲線(バスタブカーブ)|製品の"寿命"を3つの期間で理解する →

製品の「一生」を故障率で理解。初期故障・偶発故障・摩耗故障を学ぶ

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