- なぜ抵抗値は「1kΩ、2kΩ、3kΩ…」ではなく「1kΩ、1.2kΩ、1.5kΩ…」なの?
- DigiKeyで抵抗を探したら「4.7kΩ」「9.1kΩ」など中途半端な値しかなくて困った
- 回路計算で「3.57kΩが必要」になったけど、そんな抵抗は売っていない。どうすれば?
- 抵抗値が中途半端な理由を「ピアノの鍵盤」のたとえで直感的に理解
- E12・E24・E96の完全一覧表(保存版)
- 実務で「E24とE96のどちらを使うべきか」の明確な判断基準
- E24系列に欲しい値がないとき、2個の抵抗の直列 or 並列で作る計算方法
回路設計を始めたばかりの人が最初に感じる違和感。それが「抵抗値が中途半端すぎる問題」です。
1kΩ、2kΩ、3kΩ…と並んでいれば選びやすいのに、実際には1.0、1.2、1.5、1.8、2.2、2.7…と不思議な数列になっています。この数列を「E系列」と呼びます。
E系列は一見すると意味不明な数列に見えますが、実は「最も無駄なく、最も効率よく抵抗値をカバーできる」数学的に完璧な並び方です。この記事を読み終えるころには、「なるほど、だから4.7kΩなのか!」と腑に落ちるはずです。
目次
E系列とは?── 「ピアノの鍵盤」で理解する
「等間隔」ではなく「等比間隔」で並べる
まず、抵抗値を「等間隔」で並べてみましょう。
等間隔(足し算)で並べた場合:
1Ω → 2Ω → 3Ω → 4Ω → 5Ω → … → 10Ω
1Ωの範囲では10個も選べるのに、100Ω〜1kΩの範囲では900個も必要。
低い値では細かすぎ、高い値ではスカスカ。非常に不経済です。
ここで登場するのが「等比数列」の考え方です。隣り合う値の「差」ではなく「比」を一定にします。
等比間隔(掛け算)で並べた場合:
1.0 → 1.5 → 2.2 → 3.3 → 4.7 → 6.8 → 10
1〜10の間に6個、10〜100の間にも6個、100〜1kの間にも6個。
どの桁でも同じ密度で値がカバーされています。
ピアノの鍵盤と同じ原理
この仕組みは、実はピアノの鍵盤とまったく同じです。
ピアノでは「ド → レ → ミ → ファ → ソ → ラ → シ → ド(1オクターブ上)」で周波数が2倍になります。1オクターブの間に12個の鍵盤(半音)があり、隣り合う鍵盤の周波数比は 21/12 ≈ 1.059倍 で一定です。
E系列もまったく同じ。1〜10の間を等比で分割しています。
E6系列なら:101/6 ≈ 1.47倍(隣り合う値が約1.5倍ずつ増える)
E12系列なら:101/12 ≈ 1.21倍(隣り合う値が約1.2倍ずつ増える)
E24系列なら:101/24 ≈ 1.10倍(隣り合う値が約10%ずつ増える)
E96系列なら:101/96 ≈ 1.024倍(隣り合う値が約2.4%ずつ増える)
E6系列で1〜10を等比に6分割すると、1.0 → 1.5 → 2.2 → 3.3 → 4.7 → 6.8 → 10 という値が出てきます。4.7は「4」と「5」の中途半端な数字ではなく、等比数列の中で数学的に正しい位置にある値です。同様に9.1kΩも「9」と「10」の間の中途半端ではなく、E24系列の数学的に正確な位置です。

【保存版】E系列の完全一覧表 ── E6・E12・E24・E96
以下に実務で使う4つのE系列の一覧表を掲載します。E24系列は太字で強調しています。
E6・E12・E24系列の一覧表(1〜10の間の値)
| E6(6個) 許容差 ±20% |
E12(12個) 許容差 ±10% |
E24(24個)⭐ 許容差 ±5%、±1%(実務のデフォルト) |
|---|---|---|
| 1.0 | 1.0 | 1.0 1.1 |
| 1.2 | 1.2 1.3 | |
| 1.5 | 1.5 | 1.5 1.6 |
| 1.8 | 1.8 2.0 | |
| 2.2 | 2.2 | 2.2 2.4 |
| 2.7 | 2.7 3.0 | |
| 3.3 | 3.3 | 3.3 3.6 |
| 3.9 | 3.9 4.3 | |
| 4.7 | 4.7 | 4.7 5.1 |
| 5.6 | 5.6 6.2 | |
| 6.8 | 6.8 | 6.8 7.5 |
| 8.2 | 8.2 9.1 |
※ 上表は1〜10の間の値。実際の製品は10倍、100倍…と桁を上げて使います(例:4.7 → 47Ω → 470Ω → 4.7kΩ → 47kΩ…)
E6系列「1.0 / 1.5 / 2.2 / 3.3 / 4.7 / 6.8」の6個だけ暗記してください。E12はこの間を埋めた12個、E24はさらに間を埋めた24個です。E6の6個を覚えていれば、おおよその抵抗値がすぐ頭に浮かびます。
E96系列の一覧表(1〜10の間の全96値)
E96系列は有効数字が3桁になり、1〜10の間に96個の値が存在します。±1%の厚膜チップでもE96が入手可能です。
| E96系列(1.00〜9.76 の全96値) | |||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1.00 | 1.02 | 1.05 | 1.07 | 1.10 | 1.13 | 1.15 | 1.18 | 1.21 | 1.24 | 1.27 | 1.30 |
| 1.33 | 1.37 | 1.40 | 1.43 | 1.47 | 1.50 | 1.54 | 1.58 | 1.62 | 1.65 | 1.69 | 1.74 |
| 1.78 | 1.82 | 1.87 | 1.91 | 1.96 | 2.00 | 2.05 | 2.10 | 2.15 | 2.21 | 2.26 | 2.32 |
| 2.37 | 2.43 | 2.49 | 2.55 | 2.61 | 2.67 | 2.74 | 2.80 | 2.87 | 2.94 | 3.01 | 3.09 |
| 3.16 | 3.24 | 3.32 | 3.40 | 3.48 | 3.57 | 3.65 | 3.74 | 3.83 | 3.92 | 4.02 | 4.12 |
| 4.22 | 4.32 | 4.42 | 4.53 | 4.64 | 4.75 | 4.87 | 4.99 | 5.11 | 5.23 | 5.36 | 5.49 |
| 5.62 | 5.76 | 5.90 | 6.04 | 6.19 | 6.34 | 6.49 | 6.65 | 6.81 | 6.98 | 7.15 | 7.32 |
| 7.50 | 7.68 | 7.87 | 8.06 | 8.25 | 8.45 | 8.66 | 8.87 | 9.09 | 9.31 | 9.53 | 9.76 |

E24 vs E96 ── 実務でどちらから選ぶべきか?
結論から言います。まずE24から選んでください。E96に手を出すのは「E24では理想の分圧比に近い値がないとき」だけです。
| 比較項目 | E24 ⭐ | E96 |
|---|---|---|
| 選べる値の数 | 24個/桁(間隔 約10%) | 96個/桁(間隔 約2.4%) |
| 入手性 | ◎ 全メーカーで在庫潤沢 | ○ 主要メーカーで対応あり |
| コスト | ◎ 最安(0.1円/個〜) | ○ E24とほぼ同等(±1%品の場合) |
| BOM管理のしやすさ | ◎ 部品種類を絞りやすい | △ 値が細かすぎてBOMが膨張 |
| 向いている用途 | プルアップ、LED電流制限、ゲート抵抗、一般的な分圧 | DC-DCの帰還抵抗(特定の出力電圧を狙う)、精密分圧 |
量産設計では「BOMの部品種類を最小化する」ことがコスト削減に直結します。E96を使うと抵抗の種類が爆発的に増えるため、E24で済む場所にE96を使うのはNGです。E96が許されるのは「帰還抵抗の分圧比で出力電圧を微調整したい」「精密ADCのゲイン設定」など、本当に必要な場面だけと割り切ってください。

E24にない値が欲しいとき ── 2個の抵抗で「合成」する方法
回路計算で「3.57kΩが必要」と出たけれど、E24系列に3.57kΩは存在しません(最も近い値は3.6kΩ)。こんなとき、2個の抵抗を直列または並列に接続して「合成抵抗」を作るというテクニックがあります。
直列接続:値を「足す」
例)3.57kΩが欲しい場合:
3.3kΩ + 270Ω = 3,570Ω = 3.57kΩ(誤差 0%!)
直列接続はシンプルに足し算なので、E24の2つの値で目的の値をピッタリ作りやすいです。
並列接続:値を「小さくする」
例)7.35kΩが欲しい場合:
10kΩ ∥ 27kΩ = (10,000 × 27,000) / (10,000 + 27,000) = 270,000,000 / 37,000 ≈ 7,297Ω ≈ 7.30kΩ(誤差 0.7%)
並列接続はどちらの抵抗よりも小さい値になります。微調整が難しいので、直列のほうが狙った値に近づけやすいです。
合成抵抗の使い方 ── 3つのルール
2個までにする。3個以上はBOM管理が煩雑になり、実装コストも増える
直列を優先する。足し算のほうが狙い値に合わせやすい
合成に使う2個の抵抗は同じ種類・同じメーカーにする(TCRトラッキングのため)
「E24の2個で目的の抵抗値を作りたい」ときは、okawa-denshi.jpの抵抗計算ツールやCASIOの近似並列抵抗計算が便利です。目標値を入力すると、E24やE96の組み合わせの中から最適なペアを自動で探してくれます。
分圧回路の計算と抵抗値の決め方|帰還抵抗・ADC入力の設計例付き →

よくある疑問 ── E系列はコンデンサにも適用される?
抵抗だけでなくコンデンサ・インダクタもE系列
はい、E系列は抵抗器だけでなく、コンデンサやインダクタの標準値にも使われます。ただし、コンデンサの場合は許容差が大きい(±10%〜±20%が一般的)ため、実質的にE6〜E12の範囲で値が決まっています。
「100pF、150pF、220pF、330pF…」と並んでいるコンデンサの値を見て、「どこかで見たことある数字の並びだな…」と感じたら、それは正解。E6系列(1.0, 1.5, 2.2, 3.3, 4.7, 6.8)そのものです。
E系列の国際規格
E系列は国際規格IEC 60063で定められています。世界中のどのメーカーの抵抗を買っても、E24系列の値は1.0, 1.1, 1.2, 1.3, 1.5, 1.6, 1.8, 2.0, 2.2, 2.4, 2.7, 3.0, 3.3, 3.6, 3.9, 4.3, 4.7, 5.1, 5.6, 6.2, 6.8, 7.5, 8.2, 9.1で統一されています。メーカーが独自に決めた値ではなく、国際的な合意に基づく標準です。
E系列の「数字」は、隣の値との間隔を示しています。E24なら隣の値との間隔は約10%。許容差±5%の抵抗なら、上に5%・下に5%ズレても隣の値の範囲に入ってしまうことはなく、「すべての値がきれいにカバーされる」設計です。だからこそ、E24系列には±5%の抵抗が対応するのです。

まとめ ── E系列の要点を3行で
② 実務はE24がデフォルト:E96に手を出すのは「帰還抵抗で出力電圧を微調整したい」ときだけ。BOM管理のシンプルさが最優先。
③ 欲しい値がないなら2個で合成:直列(足し算)を優先。同じ種類・メーカーの抵抗を使い、3個以上は避ける。
📚 次に読むべき記事
E系列から抵抗値を選んだら、次はデータシートから具体的な製品を絞り込む。TCRの計算例付き。
E系列の知識を実践。DC-DCのFB抵抗をE24/E96から最適に選ぶ計算例。
抵抗値が決まったら、次は「どの種類の抵抗にするか」を決める。抵抗器シリーズのハブ記事。
💬 「なぜ4.7kΩなのか?」── こういう「当たり前のことの"なぜ"」に立ち止まれる感性は、エンジニアの大きな武器です。もし今「自分の強みが何かわからない」と感じているなら、こちらの記事もおすすめです。