実験回数は、少なすぎれば「信頼」を失い、多すぎれば「予算」を失います。
このジレンマを解決し、「コスパ最強の実験回数」を教えてくれる指標。それが「有効繰返し数(\( n_e \))」です。
今回は、概念だけでなく、「実際にどうやって計算するのか?」という現場の疑問に答えるべく、2つの有名な計算式(田口の式・構造式)を徹底解説します。
🔍 有効繰返し数(\( n_e \))とは?
誤差(ノイズ)の影響を薄めて、真の平均値を推定するために「実質的に何回分のデータが効いているか」を示す値。
目次
1. 実践!有効繰返し数の求め方 🧮
有効繰返し数を求めるには、主に2つの流派があります。
状況に応じて使い分けるのがプロのテクニックです。
品質工学(タグチメソッド)でよく使われる、超シンプルな計算式です。
- \( N \):全実験回数
- \( \nu_{total} \):推定に使う要因の自由度の合計
母平均の構造式から分散を計算して導く、どんな複雑な実験でも解ける厳密な方法です。
- 推定式の各項の分散を足し合わせる
- その逆数を取る
2. カレー作りで計算してみよう🍛
以下の条件で実験したとします。
「牛肉 or 鶏肉(2水準)」×「スパイス多 or 少(2水準)」= 全4回(\( N=4 \))
① 田口の式で計算する場合
もし「肉の種類(自由度1)」の効果だけを知りたい場合:
「全データ4つ」を「全体平均(1)+肉の効果(1)」で分け合うイメージです。
結果、肉の評価には実質2回分のデータが使われていることになります。
② 構造式(いなの式)で計算する場合
少し上級者向けですが、QC検定1級・2級ではこちらが本質です。
特定の条件(例:\( A_1 B_1 \))の平均値を推定する場合の構造式を考えます。
Step 1: 推定式の構造を作る
\( \mu = \bar{x}_{A} + \bar{x}_{B} - \bar{\bar{x}} \)
Step 2: 分散の係数を計算する
それぞれの項のデータ数は、Aが2個、Bが2個、全体が4個なので...
分散係数 = \( \frac{1}{2} + \frac{1}{2} - \frac{1}{4} = \frac{3}{4} \)
Step 3: 逆数を取って \( n_e \) を出す
\( n_e = \frac{1}{3/4} = 1.33... \)
お気づきでしょうか?
単純な割り算(田口の式)と、構造式から求めた値が違う場合があります。
「複雑な条件の組み合わせ」を推定したいときは、後者の「構造式アプローチ」がより正確な値を示します。
まとめ:使い分けの極意
「平均→平方和→分散→F検定」の流れを、数値付きで完全ガイドします!
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