実験計画法

【完全図解】二元配置実験の計算方法|交互作用の「なぜ」まで手を動かして理解する

💡 こんな悩みはありませんか?

✅「二元配置実験の計算、どこから手をつければいいの?」

✅「交互作用の平方和って、なぜあんな計算式になるの?」

✅「分散分析表の数字が何を意味しているのか、イメージできない…」

🎯 この記事を読むとわかること

✔ 二元配置実験の計算を「0から完成まで」手を動かして学べる

✔ 交互作用の計算式の「なぜ」が直感的に理解できる

✔ 分散分析表の各項目(因子A・因子B・交互作用・誤差)を自分で計算できる

✔ F検定で「どの効果が有意か」を判定する方法

🌟 はじめに:二元配置実験とは?

二元配置実験(Two-way ANOVA)とは、2つの因子を同時に調べ、それぞれの主効果交互作用を分析する実験です。

【具体例】製品の強度を高めたい

🌡️ 因子A:加熱温度(低温/高温)

⏱️ 因子B:加熱時間(短時間/長時間)

疑問:「温度と時間の組み合わせで、ベストな条件は?」「温度と時間に相性(交互作用)はある?」

一元配置実験では1つの因子しか調べられませんが、二元配置実験なら2因子の相乗効果(交互作用)も分析できます。

この記事では、実際のデータを使って、二元配置実験の分散分析表を1から完成させる全手順を解説します!

📋 今回使う実験データ

実験の設定

🧪 実験内容

目的:製品の引張強度を最大化する条件を見つける

因子A:温度(A1=低温、A2=高温)

因子B:時間(B1=短時間、B2=長時間)

繰り返し:各条件で2回測定(繰り返し数 r = 2)

実験データ(引張強度)

温度\時間 B1(短時間) B2(長時間) 行合計
1回目 2回目 小計 1回目 2回目 小計
A1(低温) 45 47 92 52 54 106 198
A2(高温) 50 48 98 46 44 90 188
列合計 190 196 386

📊 データの読み方

🔹 セル(A1, B1):低温×短時間の組み合わせ → 45, 47(平均46.0)

🔹 セル(A1, B2):低温×長時間の組み合わせ → 52, 54(平均53.0)

🔹 総データ数:N = 2水準 × 2水準 × 2回 = 8

📊 【STEP 0】分散分析の全体像を理解する

データのばらつきを4つに分解する

二元配置実験では、総平方和(ST)を4種類のばらつきに分解します。

📐 平方和の分解式

ST = SA + SB + SA×B + Se

🔹 SA:因子A(温度)の効果

🔹 SB:因子B(時間)の効果

🔹 SA×B:交互作用(温度と時間の相性)

🔹 Se:誤差(偶然のばらつき)

分散分析表の完成形(ゴール)

要因 平方和(S) 自由度(φ) 平均平方(V) F値
因子A(温度)
因子B(時間)
交互作用(A×B)
誤差(e)
総計(T)

👉 交互作用とは?で交互作用の基礎を理解しておくと、この先の計算がスムーズです。

🔢 【STEP 1】修正項(CT)の計算

修正項(CT)は、一元配置と同じように計算します。

📐 修正項の計算式

CT = T² / N

🔢 計算

総和(T)= 386、データ数(N)= 8

CT = 386² / 8 = 148,996 / 8

CT = 18,624.5

🔢 【STEP 2】総平方和(ST)の計算

📐 総平方和の計算式

ST = Σ(各データ²) - CT

🔢 計算

45² + 47² + 52² + 54² + 50² + 48² + 46² + 44² = 18,710

ST = 18,710 - 18,624.5

ST = 85.5

🔢 【STEP 3】因子Aの平方和(SA)の計算

因子Aの平方和とは?

因子A(温度)の平方和は、「温度を変えた効果」によるばらつきを表します。

📐 因子Aの平方和の計算式

SA = Σ(各A水準の合計² / その水準のデータ数) - CT

💡 ポイント:A1とA2の「行合計」を使います

🔢 計算

A1(低温)の行合計:198(データ数4個)

A2(高温)の行合計:188(データ数4個)

SA = (198² / 4) + (188² / 4) - CT

SA = (39,204 / 4) + (35,344 / 4) - 18,624.5

SA = 9,801 + 8,836 - 18,624.5

SA = 18,637 - 18,624.5

SA = 12.5

🔢 【STEP 4】因子Bの平方和(SB)の計算

因子Bの平方和とは?

因子B(時間)の平方和は、「時間を変えた効果」によるばらつきを表します。

📐 因子Bの平方和の計算式

SB = Σ(各B水準の合計² / その水準のデータ数) - CT

💡 ポイント:B1とB2の「列合計」を使います

🔢 計算

B1(短時間)の列合計:190(データ数4個)

B2(長時間)の列合計:196(データ数4個)

SB = (190² / 4) + (196² / 4) - CT

SB = (36,100 / 4) + (38,416 / 4) - 18,624.5

SB = 9,025 + 9,604 - 18,624.5

SB = 18,629 - 18,624.5

SB = 4.5

🔥 【STEP 5】交互作用の平方和(SA×B)の計算 ← 最重要!

交互作用とは何か?

交互作用とは、「AとBの組み合わせによって生じる追加効果」です。

🔥 交互作用の具体例

もし交互作用がなければ:

・低温で+5の効果、長時間で+7の効果

・低温×長時間なら +5+7=+12 のはず

しかし実際には:

・低温×長時間で +15 の効果(+3の追加効果!)

→ この「+3」が交互作用です

なぜこの計算式になるのか?

交互作用の平方和は、「セル(組み合わせ)のばらつき」から「AとBの単独効果」を引いたものです。

📐 交互作用の平方和の計算式

SA×B = SAB - SA - SB

まずSAB(セルの平方和)を計算します:

SAB = Σ(各セルの合計² / 繰り返し数) - CT

💡 なぜこの式で交互作用が求まるのか?

【考え方】

1. SAB:全ての組み合わせ効果(A+B+交互作用)

2. SA:Aの単独効果

3. SB:Bの単独効果

SABから「SA」と「SB」を引けば、「組み合わせによる追加効果」だけが残るのです!

STEP 5-1: セルの平方和(SAB)を計算

📊 各セル(組み合わせ)の合計

セル(A1, B1):92(繰り返し2回)

セル(A1, B2):106(繰り返し2回)

セル(A2, B1):98(繰り返し2回)

セル(A2, B2):90(繰り返し2回)

🔢 SABの計算

SAB = (92² / 2) + (106² / 2) + (98² / 2) + (90² / 2) - CT

SAB = (8,464 / 2) + (11,236 / 2) + (9,604 / 2) + (8,100 / 2) - 18,624.5

SAB = 4,232 + 5,618 + 4,802 + 4,050 - 18,624.5

SAB = 18,702 - 18,624.5

SAB = 77.5

STEP 5-2: 交互作用の平方和を計算

🔢 交互作用の計算

SA×B = SAB - SA - SB

SA×B = 77.5 - 12.5 - 4.5

SA×B = 60.5

🔥 この結果の意味

交互作用の平方和(60.5)が非常に大きい!

温度と時間の「組み合わせ効果」が強いことを示しています。

→ 「温度だけ」「時間だけ」で考えるのではなく、「どの組み合わせが最適か」を見極める必要があります。

👉 交互作用の詳しい解説で、グラフを使った理解を深めましょう。

🔢 【STEP 6】誤差の平方和(Se)の計算

誤差の平方和とは?

誤差(Se)は、偶然のばらつき(測定誤差など)を表します。

📐 誤差の平方和の計算式

Se = ST - SA - SB - SA×B

(引き算で簡単に求まります!)

🔢 誤差の計算

Se = ST - SA - SB - SA×B

Se = 85.5 - 12.5 - 4.5 - 60.5

Se = 8.0

🔢 【STEP 7】自由度の計算

自由度は、各要因の「自由に決められる数の個数」です。

📐 自由度の計算式

総自由度:φT = N - 1 = 8 - 1 = 7

因子Aの自由度:φA = a - 1 = 2 - 1 = 1

因子Bの自由度:φB = b - 1 = 2 - 1 = 1

交互作用の自由度:φA×B = (a-1) × (b-1) = 1 × 1 = 1

誤差の自由度:φe = ab(r-1) = 2×2×(2-1) = 4

✅ 確認

φT = φA + φB + φA×B + φe

7 = 1 + 1 + 1 + 4 ✅ 正しい!

🔢 【STEP 8】平均平方(V)とF値の計算

平均平方の計算

📐 平均平方の計算式

V = S / φ(平方和 ÷ 自由度)

🔢 各平均平方の計算

VA:12.5 / 1 = 12.5

VB:4.5 / 1 = 4.5

VA×B:60.5 / 1 = 60.5

Ve:8.0 / 4 = 2.0

F値の計算

📐 F値の計算式

F = V(要因) / Ve(誤差)

🔢 各F値の計算

FA:12.5 / 2.0 = 6.25

FB:4.5 / 2.0 = 2.25

FA×B:60.5 / 2.0 = 30.25

📊 分散分析表の完成!

要因 平方和(S) 自由度(φ) 平均平方(V) F値
因子A(温度) 12.5 1 12.5 6.25
因子B(時間) 4.5 1 4.5 2.25
交互作用(A×B) 60.5 1 60.5 30.25
誤差(e) 8.0 4 2.0
総計(T) 85.5 7

🎉 分散分析表が完成しました!

次は、このF値を使って「統計的に有意かどうか」を判定します。

🔍 【STEP 9】F検定による判定

F分布表で臨界値を確認

有意水準5%のF分布表から臨界値を確認します。

要因 自由度 F値 F0.05の臨界値 判定
因子A (1, 4) 6.25 7.71 有意でない
因子B (1, 4) 2.25 7.71 有意でない
交互作用 (1, 4) 30.25 7.71 有意!

✅ 判定結果

❌ 因子A(温度):単独では有意でない(6.25 < 7.71)

❌ 因子B(時間):単独では有意でない(2.25 < 7.71)

✅ 交互作用(A×B):有意差あり!(30.25 > 7.71)

結果の解釈

🔥 この結果が意味すること

温度だけで強度を高めることはできない

時間だけで強度を高めることもできない

✅ しかし「温度と時間の組み合わせ」が重要!

最適な組み合わせを見つけることが鍵です

最適条件の決定

組み合わせ 平均強度
低温×短時間 46.0
低温×長時間 53.0 ⭐
高温×短時間 49.0
高温×長時間 45.0

✅ 結論

最適条件:低温×長時間(平均強度53.0)

この組み合わせで製品の引張強度を最大化できます。

👉 F検定の判定方法で、F分布表の使い方を詳しく学べます。

📝 まとめ

✅ この記事のポイント

🔹 二元配置実験では、2つの因子とその交互作用を同時に分析できる

🔹 交互作用の計算は「SAB - SA - SB」で、組み合わせの追加効果を表す

🔹 交互作用が有意なら、因子の組み合わせを重視すべき

🔹 F検定で各効果の統計的有意性を判定できる

🎓 さらに学びを深めるには

📌 二元配置実験とは?で概念を復習

📌 交互作用とは?グラフが交差する本当の意味で視覚的に理解

📌 一元配置実験の計算方法で基礎を固める

📌 分散分析表の作り方完全ガイドで理論を深める

📌 実験計画法の学習マップで体系的に学習

🚀 次の記事へ

📖 次はこちらの記事がおすすめ!

二元配置実験の計算をマスターした次は、「さらに多くの因子を効率的に調べる方法」を学びましょう。

👉 次の記事:直交配列表とは?実験回数を劇的に削減する方法

🔹 直交配列表を理解すると、3つ以上の因子でも少ない試行回数で実験できるようになります!

📚 実験計画法の「挫折」を救う2冊

「数式を見た瞬間に本を閉じた」
そんな経験がある私だからこそ推せる、厳選のバイブルです。

まずはここから

『図解入門 よくわかる最新実験計画法の基本と仕組み』

「実験計画法の本を買ったけど、最初の数ページで挫折した…」
もしあなたがそうなら、この本が最後の砦(救世主)になります。

他の専門書とは違い、この本は「文字よりも図の方が多い」と言っても過言ではありません。
「直交表の割り付け」や「交互作用」といった、文字だけでは脳が拒絶してしまう概念を、豊富なイラストと図解で直感的に脳にインストールしてくれます。

★Kindle版もおすすめです

実験計画法は「辞書」のように何度も読み返すものです。Kindle版ならスマホやタブレットでいつでも確認でき、分からない単語を検索機能で一発で探せるので、実務での相性が抜群です。

一生モノの名著

『入門 実験計画法』(永田靖 著)

タイトルは「入門」ですが、中身は「日本中の品質管理エンジニアがデスクに置いているバイブル」です。
私がQC検定1級に合格できたのも、このブログで詳しい記事が書けるのも、全てはこの本のおかげです。

基礎的な検定から、L18直交表、乱塊法、分割法といった実務的な応用技術まで、現場で遭遇するほぼすべてのケースが網羅されています。
図解入門でイメージを掴んだ後、この本で「正確な理論」と「計算手順」を学べば、あなたは社内で「実験のプロ」として頼られる存在になれるでしょう。

¥4,620 (2025/11/29 10:22時点 | Amazon調べ)

タグ

-実験計画法