実験計画法 統計学・QC検定

一元配置実験の分散分析実践

一元配置実験とは?具体例で分散分析を完全マスター


はじめに

ここからはいよいよ実践編です。
一元配置実験(いちげんはいちじっけん)とは、
「たった1つの因子(例えば肉の種類)」が結果にどう影響するかを調べる実験です。

この記事では、
カレーの味評価をテーマに、
分散分析を具体的に手順を追って計算していきます!

1. 一元配置実験とは?

定義

一元配置実験とは、1つの因子だけに注目して、その効果を調べるための実験。

たとえば、

  • 因子:肉の種類(牛肉/鶏肉)

  • 水準:牛肉 or 鶏肉

  • 結果:カレーの味スコア

他の条件(スパイス量、煮込み時間など)は一定にして、
「肉の種類だけが違うと味にどんな影響が出るか」を調べるわけです。

2. 実験データ(カレーの味評価例)

今回は次のようなデータを使います。

 

肉の種類 評価スコア1 評価スコア2 評価スコア3
牛肉 85 87 86
鶏肉 80 82 81

(各水準3回ずつ繰り返しています)

3. 分散分析の流れ

一元配置実験では、次の手順で分析を進めます。

  1. 総平均を求める

  2. 総平方和(

    ST)を求める

  3. 主効果平方和(

    SA)を求める

  4. 誤差平方和(

    SE)を求める

  5. 各分散(

    VA

    VE)を求める

  6. F検定値を求める

では、ひとつずつ順番にやっていきましょう!

4. 総平均を求める

まず、全データの平均(総平均)を計算します。

 

総平均=85+87+86+80+82+816

 

計算すると、

 

総平均=5016=83.5

 


5. 総平方和 ST

 

 を求める

総平方和は、各データと総平均との差を2乗して合計します。

 

ST=(8583.5)2+(8783.5)2+(8683.5)2+(8083.5)2+(8283.5)2+(8183.5)2

それぞれ計算すると、

  • (8583.5)2=2.25

  • (8783.5)2=12.25

  • (8683.5)2=6.25

  • (8083.5)2=12.25

  • (8283.5)2=2.25

  • (8183.5)2=6.25

よって、

 

ST=2.25+12.25+6.25+12.25+2.25+6.25=41.5

 

6. 水準平均を求める

 

肉の種類 水準平均
牛肉  

(85+87+86)÷3=86.0

鶏肉  

(80+82+81)÷3=81.0

7. 主効果平方和 SA

 

を求める

主効果平方和は、水準平均と総平均との差の2乗に試行数をかけて求めます。

 

SA=3×((86.083.5)2+(81.083.5)2)

 

計算すると、

  • (86.083.5)2=6.25

  • (81.083.5)2=6.25

だから、

 

SA=3×(6.25+6.25)=3×12.5=37.5

 

8. 誤差平方和 SE

 

 を求める

誤差平方和は、総平方和から主効果平方和を引いて求めます。

 

SE=STSA

よって、

 

SE=41.537.5=4.0

 

9. 分散(平均平方)を求める

分散は平方和を自由度で割って求めます。

  • 因子A(肉の種類)の自由度は

    21=1

  • 誤差の自由度は

    62=4

だから、

因子の分散(主効果の分散):

 

VA=SA1=37.5

 

誤差の分散:

 

VE=SE4=1.0

 

10. F検定値を求める

F値は、因子分散と誤差分散の比です。

 

F=VAVE

 

計算すると、

 

F=37.51.0=37.5

 

まとめ

今回の一元配置実験では、

  • 総平方和

    ST=41.5 

  • 主効果平方和

    SA=37.5 

  • 誤差平方和

    SE=4.0 

  • 因子分散

    VA=37.5 

  • 誤差分散

    VE=1.0 

  • F値

    F=37.5

となりました!

F値が非常に大きいので、
肉の種類による味の違いは統計的に有意だと考えられます!

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次の記事では、
二元配置実験(因子が2つある場合)の分散分析と具体計算に進みます!

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