「設計は完璧だと思ったのに、量産が始まったら問題が続出…」
「製造現場から"こんなの作れない"と言われて手戻りが発生した…」
こんな経験はありませんか?
設計段階で見落とした問題は、後工程になるほど修正コストが膨れ上がります。量産後に発覚した問題は、設計段階で発見した場合の100倍以上のコストがかかると言われています。
そこで重要になるのが「DR(デザインレビュー)」です。
- DR(デザインレビュー)とは何か?
- DRの5つのステージと実施タイミング
- 効果的なDRの進め方
- DRBFM(トラブル予測手法)の使い方
- QC検定1級での出題ポイント
結論から言うと、DR(デザインレビュー)とは「設計の各段階で、複数の専門家が集まって設計内容を審査し、問題を事前に発見・解決する活動」です。
イメージで言うと、「設計の健康診断」のようなものです。病気になってから治療するより、健康診断で早期発見する方がずっと楽ですよね。DRも同じで、問題が小さいうちに見つけて対処するのが目的です。
目次
DR(デザインレビュー)とは?|設計の「健康診断」
DRの定義と目的
DR(Design Review:デザインレビュー)とは、設計の各段階において、関係する複数の部門の専門家が集まり、設計内容を多角的に審査する活動です。日本語では「設計審査」とも呼ばれます。
① 問題の早期発見:設計段階で潜在的な問題を見つける
② 多角的な視点の確保:設計者だけでは気づかない問題を発見
③ 手戻りの防止:後工程での修正コストを削減
なぜDRが必要なのか?|「1:10:100の法則」
DRの重要性を理解するために、「1:10:100の法則」を知っておきましょう。
💰 問題修正コストの法則
1 設計段階で発見 | 10 製造段階で発見 | 100 市場で発見 |
※ 問題発見が遅れるほど、修正コストは指数関数的に増加する
つまり、設計段階で1万円で直せる問題が、市場に出てからでは100万円かかるということです。だからこそ、DRで早期に問題を発見することが重要なのです。
DRの参加者|誰が審査するのか?
DRは、設計者だけで行うものではありません。様々な部門の専門家が参加します。
- 設計部門:設計内容の説明、質問への回答
- 製造部門:製造可能性、組立性の確認
- 品質保証部門:品質リスク、検査方法の確認
- 購買部門:部品調達、コストの確認
- サービス部門:保守性、修理のしやすさの確認
- 営業部門:顧客要求との整合性の確認
このように、「自分の専門外の視点」を取り入れることで、設計者だけでは気づかない問題を発見できます。

DRの5つのステージ|いつ実施するのか?
DRは、製品開発の各段階で実施します。一般的には5つのステージに分かれています。
5つのDRステージ
| ステージ | 名称 | タイミング | 主な審査内容 |
|---|---|---|---|
| DR0 | 企画審査 | 企画段階 | 市場ニーズ、開発目標、技術的実現性 |
| DR1 | 構想設計審査 | 基本設計完了時 | 基本構造、主要仕様、技術的課題 |
| DR2 | 詳細設計審査 | 詳細設計完了時 | 図面、部品仕様、製造方法、コスト |
| DR3 | 試作評価審査 | 試作評価完了時 | 試作結果、性能試験、信頼性試験 |
| DR4 | 量産移行審査 | 量産開始前 | 量産準備、工程能力、品質保証体制 |
各DRステージのイメージ
DRを「家を建てる」ことに例えてみましょう。
🏠 家づくりで例えるDR
DR0 💭 「どんな家が 欲しい?」 | DR1 📐 「間取りは これでOK?」 | DR2 📋 「詳細図面は 問題ない?」 | DR3 🔨 「モデルハウスで 確認OK?」 | DR4 🏠 「本番着工 してOK?」 |
このように、各段階で「本当にこれで大丈夫か?」を確認してから次に進むのがDRの基本です。
DRのゲート機能|「関所」としての役割
DRには「ゲート(関所)」としての機能があります。
DRで「合格」しないと、次のステージに進めない仕組みのこと。
・Go(合格):次のステージへ進む
・Conditional Go(条件付き合格):軽微な問題を解決して進む
・No Go(不合格):問題を解決するまで次に進めない
この「関所」があることで、問題を抱えたまま先に進んでしまうことを防げます。

効果的なDRの進め方|成功させる5つのポイント
DRを形式的なものにせず、本当に問題を発見できる場にするためのポイントを解説します。
ポイント①:事前準備を徹底する
DRは「会議室に集まってから考える」ものではありません。事前に資料を配布し、参加者が予習してくることが重要です。
- 設計図面・仕様書
- FMEA(故障モード影響解析)の結果
- 試験結果・評価データ
- 過去の類似製品のトラブル事例
- チェックリスト
ポイント②:「批判」ではなく「改善」を目的にする
DRは設計者を責める場ではありません。「問題を見つけて、一緒に解決する」という姿勢が大切です。
「なんでこんな設計にしたんだ!」(責める)
「前にも同じミスがあっただろう!」(過去を蒸し返す)
「この部分、製造では難しそうですが、代替案はありますか?」
「過去にこういう問題があったので、この点は大丈夫でしょうか?」
ポイント③:チェックリストを活用する
漏れなく審査するために、チェックリストを活用します。
| カテゴリ | チェック項目の例 |
|---|---|
| 機能・性能 | 顧客要求を満たしているか?目標スペックを達成しているか? |
| 信頼性 | 耐久性は十分か?故障モードは検討したか? |
| 製造性 | 製造可能か?組立しやすいか? |
| コスト | 目標コストを達成できるか? |
| 安全性 | 安全規格を満たしているか?リスクは許容範囲か? |
| 保守性 | 点検・修理がしやすいか? |
ポイント④:指摘事項を記録し、フォローする
DRで指摘された内容は、必ず記録し、対策完了まで追跡します。
・指摘内容、担当者、期限を明記
・対策完了したら、効果を確認
・次回DRで対策状況を報告
ポイント⑤:時間を区切って効率的に進める
DRが長時間化すると、集中力が低下して効果が薄れます。時間を区切り、重要な項目に集中しましょう。

DRBFM|変更点に着目したトラブル予測手法
DRをさらに効果的にする手法として、DRBFM(Design Review Based on Failure Mode)があります。
DRBFMとは?
DRBFMとは、トヨタ自動車が開発した手法で、「変更点」に着目して問題を予測するアプローチです。
💡 DRBFMの基本的な考え方
「変えたところに、問題が起きる」
製品の問題の多くは「変更した部分」で発生する。
だから、変更点を徹底的に洗い出し、そこに集中して問題を予測する。
DRBFMの「3つの変化」
DRBFMでは、3種類の変化に着目します。
🔧 ①設計変更 意図的に変えた部分 (材料、形状、寸法など) | 🏭 ②工程変更 製造方法の変更 (設備、工程順序など) | 🌍 ③使用条件変更 使われ方の変化 (環境、用途など) |
DRBFMシートの構成
DRBFMでは、専用のシートを使って変更点を管理します。
| 変更点 | 変更理由 | 心配点 | 影響 | 対策 | 確認方法 |
|---|---|---|---|---|---|
| 材料を A→Bに変更 | コスト削減 のため | 強度が 低下する? | 破損による 故障 | 肉厚を 10%増加 | 強度試験で 確認 |
変更点 → 心配点(何が起きそう?) → 影響(どうなる?) → 対策(どう防ぐ?) → 確認(どう確かめる?)
DRBFMとFMEAの違い
DRBFMとFMEAは似ていますが、着目点が異なります。
| 項目 | DRBFM | FMEA |
|---|---|---|
| 着目点 | 変更点に集中 | 全ての故障モードを網羅 |
| 効率 | 変更点のみなので効率的 | 網羅的だが時間がかかる |
| 適用場面 | 派生開発、マイナーチェンジ | 新規開発、重要部品 |
| 議論の深さ | 「なぜ?」を深掘り | リスクを数値化(RPN) |
実務では、新規開発はFMEA、派生開発はDRBFMと使い分けることが多いです。

QC検定1級での出題ポイント
DR(デザインレビュー)とDRBFMは、QC検定1級で頻出のテーマです。以下のポイントを押さえておきましょう。
出題パターン①:DRの目的・特徴を問う問題
・DRの定義:設計の各段階で、複数の専門家が設計内容を審査する活動
・目的:問題の早期発見、手戻り防止、多角的視点の確保
・参加者:設計、製造、品質保証、購買など複数部門
・ゲート機能:合格しないと次のステージに進めない
出題パターン②:DRのステージを問う問題
- DR0:企画審査(開発目標、技術的実現性)
- DR1:構想設計審査(基本構造、主要仕様)
- DR2:詳細設計審査(図面、部品仕様、コスト)
- DR3:試作評価審査(試作結果、性能試験)
- DR4:量産移行審査(量産準備、品質保証体制)
出題パターン③:DRBFMの特徴を問う問題
| 項目 | 試験で問われるポイント |
|---|---|
| 正式名称 | Design Review Based on Failure Mode |
| 基本的な考え方 | 「変えたところに問題が起きる」 |
| 3つの変化 | 設計変更、工程変更、使用条件変更 |
| FMEAとの違い | 変更点に集中(効率的)vs 全故障モード網羅 |
まとめ|DR(デザインレビュー)のポイント
この記事では、DR(デザインレビュー)とDRBFMについて解説しました。最後に、重要なポイントをまとめます。
- DRとは、設計の各段階で複数の専門家が審査する活動(設計の健康診断)
- 問題発見が遅れるほど修正コストは増大(1:10:100の法則)
- 5つのDRステージ:DR0(企画)→DR1(構想)→DR2(詳細)→DR3(試作)→DR4(量産)
- DRにはゲート機能があり、合格しないと次に進めない
- DRBFMは「変更点」に着目したトラブル予測手法
- DRBFMの3つの変化:設計変更、工程変更、使用条件変更
DRを形式的なものにせず、本当に問題を発見できる場にすることが大切です。そのためには、事前準備、適切な参加者、建設的な議論が欠かせません。
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