QC検定 実践編

【QC検定1級】ISO 9001の要求事項|品質マネジメントシステムの国際規格を完全図解

😣 こんな悩みはありませんか?
  • ISO 9001って名前は聞くけど、具体的に何が書いてあるの?
  • 「箇条4」「箇条8」とか言われても、何のことかわからない…
  • ISO 9000とISO 9001の違いがよくわからない
✅ この記事でわかること
  • ISO 9001とは何か?ISO 9000ファミリーの中での位置づけ
  • 10の箇条(章)の構造と、各箇条の内容
  • PDCAサイクルとの対応関係
  • HLS(共通構造)の意味と他規格との関係

「うちの会社はISO 9001を取得しています」——こんな言葉を聞いたことはありませんか?

ISO 9001は、品質マネジメントシステム(QMS)の国際規格です。世界中で170万以上の組織が認証を取得しており、品質管理の「世界共通ルール」とも言えます。

この記事では、ISO 9001の要求事項の全体像を解説します。「何が書いてあるのか」「どういう構造になっているのか」を理解すれば、QMSの本質が見えてきます。

📘 前提知識
【QC検定1級】品質マネジメントの原則|ISO 9000の7つの原則を完全図解 →

ISO 9001の土台となる「7つの原則」を先に理解しておくと、この記事の内容がより深く理解できます

ISO 9001とは?

ISO 9000ファミリーの中での位置づけ

まず、ISO 9001の「立ち位置」を理解しましょう。品質マネジメントに関するISO規格は、「ISO 9000ファミリー」と呼ばれるグループを形成しています。

規格名称内容
ISO 9000基本及び用語品質マネジメントの基本概念と用語の定義を規定。7つの原則もここに記載
ISO 9001要求事項QMSが満たすべき要求事項を規定。認証取得の対象となる規格
ISO 9004持続的成功の指針組織の持続的成功を達成するためのガイダンス(認証対象外)

ポイントは、ISO 9001だけが「認証取得」の対象だということです。ISO 9000は用語集、ISO 9004はガイドラインであり、「〜しなければならない」という要求事項はISO 9001に書かれています。

💡 たとえ話で理解
ISO 9000ファミリーを「料理」に例えると…

ISO 9000:料理用語辞典(「炒める」「煮る」の定義)
ISO 9001:レシピ本(「こうしなさい」という手順)←これが試験対象
ISO 9004:料理上達のコツ(より良くするためのヒント)

ISO 9001の目的

ISO 9001の目的は、組織が「顧客要求事項」と「適用される法令・規制要求事項」を満たした製品・サービスを一貫して提供できる能力を持っていることを実証することです。

つまり、「たまたま良い製品ができた」ではなく、「いつでも良い製品を作れる仕組みがある」ことを証明するための規格です。

📐 ISO 9001の目的(2つ)

① 顧客要求事項・法令規制要求事項を満たす製品・サービスを一貫して提供する
② QMSの継続的改善を通じて顧客満足を向上させる

ISO 9001の構造:10の箇条

10の箇条の全体像

ISO 9001:2015は、10の箇条(章)で構成されています。このうち、箇条1〜3は序文的な内容で、実質的な要求事項は箇条4〜10に書かれています。

箇条タイトル概要
1適用範囲この規格が何を対象としているか
2引用規格参照するISO 9000を記載
3用語及び定義ISO 9000の用語を適用
4組織の状況組織を取り巻く環境、利害関係者、QMSの適用範囲を理解する
5リーダーシップトップの責任、品質方針、役割・責任・権限
6計画リスク・機会への取組み、品質目標、変更の計画
7支援資源、力量、認識、コミュニケーション、文書化した情報
8運用製品・サービスの計画から提供までの実務プロセス
9パフォーマンス評価監視・測定、内部監査、マネジメントレビュー
10改善不適合・是正処置、継続的改善

PDCAサイクルとの対応

ISO 9001の箇条4〜10は、PDCAサイクルに対応しています。これを理解すると、各箇条の役割がクリアになります。

📐 PDCAと箇条の対応

【Plan(計画)】
箇条4:組織の状況(現状を把握する)
箇条5:リーダーシップ(方向性を示す)
箇条6:計画(目標と計画を立てる)

【Do(実行)】
箇条7:支援(必要な資源を準備する)
箇条8:運用(実際に製品・サービスを作る)

【Check(確認)】
箇条9:パフォーマンス評価(結果を測定・評価する)

【Act(改善)】
箇条10:改善(問題を修正し、より良くする)

つまり、ISO 9001は「PDCAを回し続ける仕組み」を作るための要求事項と言えます。一度システムを作って終わりではなく、継続的に改善し続けることが求められています。

各箇条の内容を詳しく解説

箇条4:組織の状況

QMSを構築する前に、「自分たちは何者で、どんな環境にいるのか」を理解することが必要です。

💡 箇条4の主な内容
4.1 組織及びその状況の理解:外部・内部の課題を把握
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解:顧客、従業員、株主などの要求を把握
4.3 QMSの適用範囲の決定:どこまでをQMSの対象とするか
4.4 QMS及びそのプロセス:プロセスを特定し、管理する

箇条5:リーダーシップ

トップマネジメントの責任を明確にしています。品質は現場任せではなく、経営者がコミットしなければなりません。

💡 箇条5の主な内容
5.1 リーダーシップ及びコミットメント:トップの説明責任
5.2 方針:品質方針の策定と伝達
5.3 組織の役割、責任及び権限:誰が何をするかを明確に

2015年版では「管理責任者」という役職の要求がなくなりました。ただし、責任と権限を明確にすること自体は引き続き求められています。

箇条6:計画

2015年版で新たに強調されたのが「リスク及び機会への取組み」です。問題が起きてから対処するのではなく、事前に予測して備えることが求められます。

💡 箇条6の主な内容
6.1 リスク及び機会への取組み:リスクを特定し、対策を計画
6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定:具体的な目標を設定
6.3 変更の計画:QMSを変更する際の管理
⚠️ 注意
「リスクに基づく考え方」は2015年版の重要な変更点です。ただし、正式なリスクアセスメントや文書化されたリスク管理プロセスを要求しているわけではありません。

箇条7:支援

QMSを運用するために必要な「資源」について規定しています。人、設備、環境、知識など、あらゆるリソースが含まれます。

💡 箇条7の主な内容
7.1 資源:人、インフラ、環境、監視・測定資源、組織の知識
7.2 力量:必要な力量の決定、教育訓練
7.3 認識:従業員のQMSへの意識
7.4 コミュニケーション:内部・外部への情報伝達
7.5 文書化した情報:文書管理、記録管理

2015年版では「品質マニュアル」の作成義務がなくなりました。ただし、「文書化した情報」として必要な文書は維持する必要があります。

箇条8:運用

ISO 9001の中で最もボリュームが大きい箇条です。製品・サービスを実際に作り、提供するプロセス全体を規定しています。

💡 箇条8の主な内容
8.1 運用の計画及び管理:プロセスの計画
8.2 製品及びサービスに関する要求事項:顧客とのコミュニケーション、要求事項の明確化
8.3 製品及びサービスの設計・開発:設計プロセスの管理
8.4 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理:購買管理、外注管理
8.5 製造及びサービス提供:製造プロセスの管理、識別・トレーサビリティ
8.6 製品及びサービスのリリース:出荷判定
8.7 不適合なアウトプットの管理:不良品の処理

箇条9:パフォーマンス評価

PDCAの「Check」にあたる部分です。計画通りに進んでいるか、目標を達成できているかを確認します。

💡 箇条9の主な内容
9.1 監視、測定、分析及び評価:顧客満足、データ分析
9.2 内部監査:QMSが適切に運用されているかを確認
9.3 マネジメントレビュー:トップによるQMSの見直し

箇条10:改善

PDCAの「Act」にあたる部分です。問題を修正し、QMSをより良くしていくための要求事項です。

💡 箇条10の主な内容
10.1 一般:改善の機会を決定
10.2 不適合及び是正処置:問題発生時の対応、再発防止
10.3 継続的改善:QMSの有効性を継続的に改善

2015年版では「予防処置」という項目がなくなりました。これは、箇条6の「リスク及び機会への取組み」に統合されたと考えられています。

HLS(共通構造)とは?

複数のマネジメントシステムを統合しやすくする仕組み

ISO 9001:2015は、HLS(High Level Structure:共通構造)という枠組みに基づいて作られています。

HLSとは、ISOのマネジメントシステム規格に共通の構造・用語・定義を適用するものです。これにより、異なる規格を統合して運用しやすくなります。

HLS採用規格対象
ISO 9001品質マネジメント
ISO 14001環境マネジメント
ISO 45001労働安全衛生マネジメント
ISO 27001情報セキュリティマネジメント

例えば、ISO 9001(品質)とISO 14001(環境)の両方を取得している企業は、共通の箇条構造のおかげで、一つの統合マネジメントシステムとして運用できます。

💡 HLSのメリット
・複数規格の統合運用がしやすい
文書や手順を共通化でき、管理の負担が減る
内部監査も効率化できる

ISO 9001:2015の主な変更点

2008年版からの主な変更

現行のISO 9001:2015は、2008年版から大きく改訂されました。主な変更点を理解しておきましょう。

変更点内容
HLS(共通構造)の採用他のマネジメントシステム規格と構造を統一
リスクに基づく考え方「リスク及び機会」への取組みを新たに要求
組織の知識ナレッジマネジメントの概念を新たに導入
文書化の柔軟性「品質マニュアル」「文書化された手順」の要求削除
管理責任者の削除特定役職の要求がなくなった(責任は明確にする必要あり)
予防処置の統合「リスク及び機会への取組み」に吸収

まとめ

この記事では、ISO 9001の要求事項の全体像を解説しました。

📝 この記事のポイント
・ISO 9001は品質マネジメントシステムの要求事項を定めた国際規格
10の箇条で構成され、箇条4〜10が実質的な要求事項
・箇条4〜10はPDCAサイクルに対応している
HLS(共通構造)により、他のマネジメントシステム規格と統合しやすい
・2015年版では「リスクに基づく考え方」など重要な変更あり

ISO 9001の要求事項を理解することは、QMSを運用する上での基本です。各箇条の詳細については、実際の規格本文や関連する解説書で確認することをおすすめします。

次の記事では、ISO 9001の第三者認証制度について解説します。認証取得のプロセスや、審査の流れを理解しましょう。

📚 次に読むべき記事

📘 【QC検定1級】第三者認証制度とQMSの運用|認証取得と維持のポイント →

ISO 9001認証の取得プロセス、審査の種類、認定機関の役割を解説します

📘 【QC検定1級】品質マネジメントの原則|ISO 9000の7つの原則を完全図解 →

ISO 9001の土台となる7つの原則を復習したい方はこちら

📘 【QC検定1級】品質監査|QMSの適合性と有効性を確認する →

箇条9「パフォーマンス評価」の重要要素である内部監査について詳しく解説

統計学のおすすめ書籍

統計学の「数式アレルギー」を治してくれた一冊

「Σ(シグマ)や ∫(インテグラル)を見ただけで眠くなる…」 そんな私を救ってくれたのが、小島寛之先生の『完全独習 統計学入門』です。

この本は、難しい記号を一切使いません。 「中学レベルの数学」と「日本語」だけで、検定や推定の本質を驚くほど分かりやすく解説してくれます。

「計算はソフトに任せるけど、統計の『こころ(意味)』だけはちゃんと理解したい」 そう願う学生やエンジニアにとって、これ以上の入門書はありません。

¥2,420 (2025/11/23 09:57時点 | Amazon調べ)

【QC2級】「どこが出るか」がひと目で分かる!最短合格へのバイブル

私がQC検定2級に合格した際、使い倒したのがこの一冊です。

この本の最大の特徴は、「各単元の平均配点(何点分出るか)」が明記されていること。 「ここは出るから集中」「ここは出ないから流す」という戦略が立てやすく、最短ルートで合格ラインを突破できます。

解説が分かりやすいため、私はさらに上の「QC1級」を受験する際にも、基礎の確認用として辞書代わりに使っていました。 迷ったらまずはこれを選んでおけば間違いありません。

タグ

-QC検定 実践編
-