- ISO 9001って名前は聞くけど、具体的に何が書いてあるの?
- 「箇条4」「箇条8」とか言われても、何のことかわからない…
- ISO 9000とISO 9001の違いがよくわからない
- ISO 9001とは何か?ISO 9000ファミリーの中での位置づけ
- 10の箇条(章)の構造と、各箇条の内容
- PDCAサイクルとの対応関係
- HLS(共通構造)の意味と他規格との関係
「うちの会社はISO 9001を取得しています」——こんな言葉を聞いたことはありませんか?
ISO 9001は、品質マネジメントシステム(QMS)の国際規格です。世界中で170万以上の組織が認証を取得しており、品質管理の「世界共通ルール」とも言えます。
この記事では、ISO 9001の要求事項の全体像を解説します。「何が書いてあるのか」「どういう構造になっているのか」を理解すれば、QMSの本質が見えてきます。
目次
ISO 9001とは?
ISO 9000ファミリーの中での位置づけ
まず、ISO 9001の「立ち位置」を理解しましょう。品質マネジメントに関するISO規格は、「ISO 9000ファミリー」と呼ばれるグループを形成しています。
| 規格 | 名称 | 内容 |
|---|---|---|
| ISO 9000 | 基本及び用語 | 品質マネジメントの基本概念と用語の定義を規定。7つの原則もここに記載 |
| ISO 9001 | 要求事項 | QMSが満たすべき要求事項を規定。認証取得の対象となる規格 |
| ISO 9004 | 持続的成功の指針 | 組織の持続的成功を達成するためのガイダンス(認証対象外) |
ポイントは、ISO 9001だけが「認証取得」の対象だということです。ISO 9000は用語集、ISO 9004はガイドラインであり、「〜しなければならない」という要求事項はISO 9001に書かれています。
ISO 9000ファミリーを「料理」に例えると…
・ISO 9000:料理用語辞典(「炒める」「煮る」の定義)
・ISO 9001:レシピ本(「こうしなさい」という手順)←これが試験対象
・ISO 9004:料理上達のコツ(より良くするためのヒント)
ISO 9001の目的
ISO 9001の目的は、組織が「顧客要求事項」と「適用される法令・規制要求事項」を満たした製品・サービスを一貫して提供できる能力を持っていることを実証することです。
つまり、「たまたま良い製品ができた」ではなく、「いつでも良い製品を作れる仕組みがある」ことを証明するための規格です。
① 顧客要求事項・法令規制要求事項を満たす製品・サービスを一貫して提供する
② QMSの継続的改善を通じて顧客満足を向上させる

ISO 9001の構造:10の箇条
10の箇条の全体像
ISO 9001:2015は、10の箇条(章)で構成されています。このうち、箇条1〜3は序文的な内容で、実質的な要求事項は箇条4〜10に書かれています。
| 箇条 | タイトル | 概要 |
|---|---|---|
| 1 | 適用範囲 | この規格が何を対象としているか |
| 2 | 引用規格 | 参照するISO 9000を記載 |
| 3 | 用語及び定義 | ISO 9000の用語を適用 |
| 4 | 組織の状況 | 組織を取り巻く環境、利害関係者、QMSの適用範囲を理解する |
| 5 | リーダーシップ | トップの責任、品質方針、役割・責任・権限 |
| 6 | 計画 | リスク・機会への取組み、品質目標、変更の計画 |
| 7 | 支援 | 資源、力量、認識、コミュニケーション、文書化した情報 |
| 8 | 運用 | 製品・サービスの計画から提供までの実務プロセス |
| 9 | パフォーマンス評価 | 監視・測定、内部監査、マネジメントレビュー |
| 10 | 改善 | 不適合・是正処置、継続的改善 |
PDCAサイクルとの対応
ISO 9001の箇条4〜10は、PDCAサイクルに対応しています。これを理解すると、各箇条の役割がクリアになります。
【Plan(計画)】
箇条4:組織の状況(現状を把握する)
箇条5:リーダーシップ(方向性を示す)
箇条6:計画(目標と計画を立てる)
【Do(実行)】
箇条7:支援(必要な資源を準備する)
箇条8:運用(実際に製品・サービスを作る)
【Check(確認)】
箇条9:パフォーマンス評価(結果を測定・評価する)
【Act(改善)】
箇条10:改善(問題を修正し、より良くする)
つまり、ISO 9001は「PDCAを回し続ける仕組み」を作るための要求事項と言えます。一度システムを作って終わりではなく、継続的に改善し続けることが求められています。

各箇条の内容を詳しく解説
箇条4:組織の状況
QMSを構築する前に、「自分たちは何者で、どんな環境にいるのか」を理解することが必要です。
・4.1 組織及びその状況の理解:外部・内部の課題を把握
・4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解:顧客、従業員、株主などの要求を把握
・4.3 QMSの適用範囲の決定:どこまでをQMSの対象とするか
・4.4 QMS及びそのプロセス:プロセスを特定し、管理する
箇条5:リーダーシップ
トップマネジメントの責任を明確にしています。品質は現場任せではなく、経営者がコミットしなければなりません。
・5.1 リーダーシップ及びコミットメント:トップの説明責任
・5.2 方針:品質方針の策定と伝達
・5.3 組織の役割、責任及び権限:誰が何をするかを明確に
2015年版では「管理責任者」という役職の要求がなくなりました。ただし、責任と権限を明確にすること自体は引き続き求められています。
箇条6:計画
2015年版で新たに強調されたのが「リスク及び機会への取組み」です。問題が起きてから対処するのではなく、事前に予測して備えることが求められます。
・6.1 リスク及び機会への取組み:リスクを特定し、対策を計画
・6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定:具体的な目標を設定
・6.3 変更の計画:QMSを変更する際の管理
「リスクに基づく考え方」は2015年版の重要な変更点です。ただし、正式なリスクアセスメントや文書化されたリスク管理プロセスを要求しているわけではありません。
箇条7:支援
QMSを運用するために必要な「資源」について規定しています。人、設備、環境、知識など、あらゆるリソースが含まれます。
・7.1 資源:人、インフラ、環境、監視・測定資源、組織の知識
・7.2 力量:必要な力量の決定、教育訓練
・7.3 認識:従業員のQMSへの意識
・7.4 コミュニケーション:内部・外部への情報伝達
・7.5 文書化した情報:文書管理、記録管理
2015年版では「品質マニュアル」の作成義務がなくなりました。ただし、「文書化した情報」として必要な文書は維持する必要があります。

箇条8:運用
ISO 9001の中で最もボリュームが大きい箇条です。製品・サービスを実際に作り、提供するプロセス全体を規定しています。
・8.1 運用の計画及び管理:プロセスの計画
・8.2 製品及びサービスに関する要求事項:顧客とのコミュニケーション、要求事項の明確化
・8.3 製品及びサービスの設計・開発:設計プロセスの管理
・8.4 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理:購買管理、外注管理
・8.5 製造及びサービス提供:製造プロセスの管理、識別・トレーサビリティ
・8.6 製品及びサービスのリリース:出荷判定
・8.7 不適合なアウトプットの管理:不良品の処理
箇条9:パフォーマンス評価
PDCAの「Check」にあたる部分です。計画通りに進んでいるか、目標を達成できているかを確認します。
・9.1 監視、測定、分析及び評価:顧客満足、データ分析
・9.2 内部監査:QMSが適切に運用されているかを確認
・9.3 マネジメントレビュー:トップによるQMSの見直し
箇条10:改善
PDCAの「Act」にあたる部分です。問題を修正し、QMSをより良くしていくための要求事項です。
・10.1 一般:改善の機会を決定
・10.2 不適合及び是正処置:問題発生時の対応、再発防止
・10.3 継続的改善:QMSの有効性を継続的に改善
2015年版では「予防処置」という項目がなくなりました。これは、箇条6の「リスク及び機会への取組み」に統合されたと考えられています。
HLS(共通構造)とは?
複数のマネジメントシステムを統合しやすくする仕組み
ISO 9001:2015は、HLS(High Level Structure:共通構造)という枠組みに基づいて作られています。
HLSとは、ISOのマネジメントシステム規格に共通の構造・用語・定義を適用するものです。これにより、異なる規格を統合して運用しやすくなります。
| HLS採用規格 | 対象 |
|---|---|
| ISO 9001 | 品質マネジメント |
| ISO 14001 | 環境マネジメント |
| ISO 45001 | 労働安全衛生マネジメント |
| ISO 27001 | 情報セキュリティマネジメント |
例えば、ISO 9001(品質)とISO 14001(環境)の両方を取得している企業は、共通の箇条構造のおかげで、一つの統合マネジメントシステムとして運用できます。
・複数規格の統合運用がしやすい
・文書や手順を共通化でき、管理の負担が減る
・内部監査も効率化できる

ISO 9001:2015の主な変更点
2008年版からの主な変更
現行のISO 9001:2015は、2008年版から大きく改訂されました。主な変更点を理解しておきましょう。
| 変更点 | 内容 |
|---|---|
| HLS(共通構造)の採用 | 他のマネジメントシステム規格と構造を統一 |
| リスクに基づく考え方 | 「リスク及び機会」への取組みを新たに要求 |
| 組織の知識 | ナレッジマネジメントの概念を新たに導入 |
| 文書化の柔軟性 | 「品質マニュアル」「文書化された手順」の要求削除 |
| 管理責任者の削除 | 特定役職の要求がなくなった(責任は明確にする必要あり) |
| 予防処置の統合 | 「リスク及び機会への取組み」に吸収 |
まとめ
この記事では、ISO 9001の要求事項の全体像を解説しました。
・ISO 9001は品質マネジメントシステムの要求事項を定めた国際規格
・10の箇条で構成され、箇条4〜10が実質的な要求事項
・箇条4〜10はPDCAサイクルに対応している
・HLS(共通構造)により、他のマネジメントシステム規格と統合しやすい
・2015年版では「リスクに基づく考え方」など重要な変更あり
ISO 9001の要求事項を理解することは、QMSを運用する上での基本です。各箇条の詳細については、実際の規格本文や関連する解説書で確認することをおすすめします。
次の記事では、ISO 9001の第三者認証制度について解説します。認証取得のプロセスや、審査の流れを理解しましょう。
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