- 信頼性工学って何?製造業で働いているけど、よくわからない…
- MTBF、故障率、アベイラビリティ…用語が多すぎて混乱する
- 「信頼性」と「耐久性」って同じじゃないの?違いがわからない
- QC検定で信頼性の問題が出るけど、どこから勉強すればいいの?
- 信頼性工学が「何を」「なぜ」数値化するのかをイメージで理解
- ディペンダビリティの3本柱(信頼性・保全性・可用性)の関係
- 「信頼性」「耐久性」「安全性」の違いをスッキリ整理
- 設計信頼性の考え方と、なぜ「設計段階」が重要なのか
「信頼性工学」と聞くと、なんだか難しそうな印象を受けますよね。
でも実は、私たちは毎日「信頼性」の恩恵を受けて生活しています。
たとえば、あなたのスマートフォン。毎朝、アラームがちゃんと鳴りますよね?電車に乗っている間も、急に電源が落ちたりしませんよね?
これは「当たり前」ではありません。メーカーが信頼性工学を使って、「壊れにくさ」を設計段階から作り込んでいるからこそ、私たちは安心して製品を使えるんです。
この記事では、信頼性工学の全体像を「スマホ」や「自動車」など身近な例を使って、初心者でもイメージできるように解説します。
最後まで読めば、「MTBF」「故障率」「アベイラビリティ」といった専門用語の意味も、なんとなくわかるようになりますよ。
目次
信頼性工学とは?─「壊れない」を数値化する技術
一言でいうと「壊れにくさの科学」
信頼性工学を一言で表すと、こうなります。
信頼性工学 = 製品が「壊れない」「長持ちする」を
数値で予測・管理・改善する技術
「壊れにくい製品を作りたい」という想いは、メーカーなら誰でも持っています。
でも、「壊れにくい」という感覚的な言葉だけでは、具体的な改善ができません。
- 「壊れにくい」って、具体的にどのくらい?
- 競合製品と比べて、どっちが壊れにくい?
- 設計を変えたら、どのくらい壊れにくくなった?
これらの問いに答えるために、「壊れにくさ」を数値化するのが信頼性工学の役割です。
信頼性の正式な定義
JIS(日本産業規格)では、信頼性を次のように定義しています。
「アイテムが与えられた条件の下で、与えられた期間、要求された機能を果たす能力」
─ JIS Z 8115:2019
少し硬い表現ですね。もっと噛み砕くと、こうなります。
「決められた条件で、決められた期間、ちゃんと動く確率」
ポイントは「確率」で表すことです。
「この製品は絶対に壊れません」とは言えません。でも「3年間で故障する確率は5%です」なら、具体的に判断できますよね。

なぜ信頼性工学が必要なのか?
「製品が壊れると困る」というのは当たり前ですが、具体的にどんな影響があるのでしょうか?
製品が故障すると何が起きる?
| 影響を受ける人 | 故障による損失 |
|---|---|
| お客様 | ・製品が使えない不便 ・修理費用・買い替え費用 ・最悪の場合、事故・怪我 |
| メーカー | ・保証修理のコスト ・リコール費用 ・ブランドイメージの低下 ・訴訟リスク |
| 社会全体 | ・インフラ停止(電力、通信など) ・経済的損失 ・環境への悪影響 |
身近な例で考える:スマホが壊れたら?
あなたのスマホが突然壊れたとしましょう。どんな影響がありますか?
📱 スマホが壊れると…
- 目覚ましが鳴らず、寝坊して遅刻
- 電車の乗り換えがわからない
- 仕事の連絡が取れない
- キャッシュレス決済ができず、買い物ができない
- 大切な写真データが消える
- 修理に数万円、または新品を買い直し
たった1台のスマホが壊れるだけで、これだけの影響があります。
これが飛行機のエンジンや、病院の医療機器だったらどうでしょう?人命に関わるレベルの問題になりますよね。
だからこそ、「壊れにくさ」を科学的に追求する信頼性工学が必要なんです。
信頼性工学が使われている分野
信頼性工学は、特に「故障が許されない」分野で発展してきました。
| 分野 | なぜ信頼性が重要か |
|---|---|
| 🚀 航空宇宙 | 飛行中に故障したら墜落。修理もできない |
| ⚡ 電力・インフラ | 停電すると社会全体が麻痺 |
| 🏥 医療機器 | 手術中の故障は患者の命に直結 |
| 🚗 自動車 | ブレーキ故障は大事故につながる |
| �icing 半導体・電子機器 | サーバー停止でサービス全体がダウン |
信頼性工学が本格的に発展したのは、第二次世界大戦後のアメリカです。
戦争中、軍用電子機器の故障率が非常に高く、多くの作戦が失敗しました。
この反省から、「故障を科学的に分析・予測する」研究が始まり、現在の信頼性工学につながっています。

ディペンダビリティの3本柱を理解しよう
信頼性工学を学ぶ上で、最初に理解すべき重要な概念があります。
それが「ディペンダビリティ(Dependability)」です。
ディペンダビリティとは?
ディペンダビリティは、日本語では「総合信頼性」や「信頼して任せられる性質」と訳されます。
単なる「壊れにくさ」だけでなく、「壊れたときの直しやすさ」「全体として使える時間の割合」まで含めた、より広い概念です。
ディペンダビリティ = 信頼性 + 保全性 + 可用性
(壊れにくさ)+(直しやすさ)+(使える時間の割合)
3本柱を「家」でイメージする
ディペンダビリティは、3本の柱で支えられた「家」をイメージするとわかりやすいです。
┌─────────────────────────────┐
│ ディペンダビリティ │
│ (総合信頼性) │
└─────────────────────────────┘
┃ ┃ ┃
┌────┸────┐┌───┸───┐┌───┸────┐
│ 信頼性 ││ 保全性 ││ 可用性 │
│壊れにくさ││直しやすさ││使える割合│
└─────────┘└────────┘└─────────┘
══════════════════════════════
安全性・耐久性(土台)
1本の柱だけが強くても、家全体は支えられません。3本のバランスが大切です。
3本柱の詳細
柱①:信頼性(Reliability)─ 壊れにくさ
定義:決められた条件で、決められた期間、故障せずに動き続ける確率
イメージ:「そもそも壊れない」
指標:MTBF(平均故障間隔)、MTTF(平均故障時間)、故障率λ
身近な例:3年間使ってもバッテリーが劣化しないスマホ
柱②:保全性(Maintainability)─ 直しやすさ
定義:故障したときに、どれだけ早く・簡単に修理できるか
イメージ:「壊れても、すぐ直せる」
指標:MTTR(平均修理時間)
身近な例:バッテリー交換が自分でできるスマホ vs できないスマホ
柱③:可用性(Availability)─ 使える時間の割合
定義:「使いたいときに使える」状態にある確率
イメージ:「結局、どれだけ使えているか」
指標:アベイラビリティ A = MTBF ÷ (MTBF + MTTR)
身近な例:稼働率99.9%のクラウドサーバー
3本柱の関係を数式で理解する
可用性(アベイラビリティ)は、信頼性と保全性を「統合」した指標です。
稼働時間 ÷ (稼働時間 + 修理時間)
この式が意味することは:
- MTBFが大きい(壊れにくい)→ 可用性が上がる
- MTTRが小さい(すぐ直せる)→ 可用性が上がる
つまり、「壊れにくくする」か「早く直せるようにする」か、どちらの方法でも可用性を上げられるということです。
信頼性を上げるには、高品質な部品を使ったり、設計を工夫したりする必要があり、コストがかかります。
一方、保全性を上げる(修理しやすくする)ことでも可用性は上げられます。
実務では、「コストと効果のバランス」を考えて、どちらにどれだけ投資するかを判断します。

「信頼性」「耐久性」「安全性」の違い
信頼性工学を学ぶと、似たような言葉がたくさん出てきて混乱しますよね。
ここでは、特に混同しやすい3つの概念を整理します。
3つの概念の違い
| 概念 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 信頼性 | 決められた期間、故障せずに動く確率 | 「3年間で故障する確率が5%」 |
| 耐久性 | 使い終わるまで、どれだけ長持ちするか(寿命の長さ) | 「10年使っても動く」 |
| 安全性 | 故障しても、人や環境に危害を与えない | 「バッテリーが壊れても発火しない」 |
スマホの例で違いを理解する
🟢 信頼性が高いスマホ
「買ってから3年間、一度も故障しなかった」
→ 決められた期間(3年)、故障せずに動いた
🟠 耐久性が高いスマホ
「10年前のスマホだけど、まだ動く」
→ 長い期間、使い続けられた(寿命が長い)
🔴 安全性が高いスマホ
「バッテリーが膨張しても、発火や爆発はしなかった」
→ 故障しても、人に危害を与えなかった
信頼性が高い ≠ 安全
「故障しにくい製品」が「故障したときに安全」とは限りません。
例えば、「10年間故障しなかった機械」が、11年目に故障して大事故を起こす可能性もあります。
だからこそ、信頼性と安全性は別々に評価・設計する必要があるんです。
設計信頼性とは?─「後から直す」より「最初から作り込む」
信頼性工学で非常に重要な考え方が「設計信頼性」です。
製品の信頼性は「設計段階」で80%決まる
製品のライフサイクルを考えてみましょう。
① 企画 → ② 設計 → ③ 製造 → ④ 使用 → ⑤ 廃棄
↑ この段階で信頼性の大部分が決まる
よく言われる言葉があります。
「品質は設計で作り込め」
製造段階で検査しても、設計の悪さは直せない
製造段階でどれだけ厳しく検査しても、設計が悪ければ信頼性は上がりません。
逆に、設計段階でしっかり信頼性を作り込んでおけば、製造段階での手戻りやコストを大幅に削減できます。
設計信頼性を高めるための手法
設計段階で信頼性を作り込むために、さまざまな手法が使われます。
| 手法 | 内容 |
|---|---|
| FMEA | 故障モードと影響を事前に分析し、対策を打つ |
| FTA | 故障の原因を樹形図でたどり、根本原因を特定 |
| 信頼性ブロック図 | システム全体の信頼性を計算し、弱点を見つける |
| 冗長設計 | 重要な部品を二重化し、1つ壊れても動くようにする |
| ディレーティング | 部品を定格より余裕を持った条件で使い、寿命を延ばす |

信頼性工学で使う主な指標(プレビュー)
最後に、信頼性工学で使う主な指標を一覧で紹介します。
それぞれの詳細は別記事で解説しますが、まずは「こんな指標があるんだな」と全体像を把握しておきましょう。
信頼性の主な指標一覧
| 指標 | 意味 | 使う場面 |
|---|---|---|
| MTBF | 平均故障間隔(故障から次の故障までの平均時間) | 修理して繰り返し使う製品 |
| MTTF | 平均故障時間(最初の故障までの平均時間) | 使い捨て・交換する製品 |
| MTTR | 平均修理時間 | 保全性の評価 |
| 故障率 λ | 単位時間あたりの故障発生率 | 故障の起きやすさの評価 |
| アベイラビリティ | 使いたいときに使える確率 | システム全体の稼働率評価 |
| B10ライフ | 10%が故障するまでの時間 | ベアリングなど機械部品の寿命 |
まとめ:信頼性工学の全体像
この記事で学んだことを整理しましょう。
✅ 信頼性工学とは
| 定義 | 製品が「壊れない」「長持ちする」を数値で予測・管理・改善する技術 |
| なぜ必要か | 故障による損失(コスト・事故・信頼低下)を防ぐため |
✅ ディペンダビリティの3本柱
| 信頼性 | 保全性 | 可用性 |
| 壊れにくさ | 直しやすさ | 使える時間の割合 |
| MTBF, MTTF | MTTR | A = MTBF/(MTBF+MTTR) |
✅ 似た概念の違い
| 信頼性 | 決められた期間、故障せずに動く確率 |
| 耐久性 | 寿命の長さ(どれだけ長持ちするか) |
| 安全性 | 故障しても危害を与えない |
✅ 設計信頼性のポイント
信頼性の80%は「設計段階」で決まる
→ 後から直すより、最初から作り込む
QC検定での出題ポイント
- 信頼性の定義:「決められた条件・期間で、要求機能を果たす確率」
- ディペンダビリティ:信頼性+保全性+可用性の3本柱
- アベイラビリティの公式:A = MTBF / (MTBF + MTTR)
- 信頼性と耐久性の違い:信頼性は「確率」、耐久性は「時間の長さ」
- 設計信頼性:品質は設計で作り込む(後工程での検査では限界)
- FMEA、FTA:設計段階で故障を予測・予防する手法
📚 次に読むべき記事
信頼性の最も基本的な指標を学ぶ。修理可能/不可能で使い分けを理解
製品の「一生」を故障率で理解。初期故障・偶発故障・摩耗故障を学ぶ
信頼性と保全性を統合した指標。計算方法を例題でマスター

