はじめに
せっかく実験計画を立てても、「その因子、本当に制御できるの?」と後から気づいてやり直した経験はありませんか? ロバスト設計では 制御因子(自社で設定できるダイヤル) と ノイズ因子(現場や使用環境で勝手に変動する揺らぎ) を正しく分けることがすべての出発点。この記事では、初学者でも迷わず分類できる “3 ステップチェックリスト” を紹介します。
1. なぜ因子の分類でつまずくのか
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最適条件がブレる
ノイズ因子を制御側に入れてしまうと、外部環境の再現が甘くなり最適化に失敗します。 -
QC 検定 1 級では失点直結
選択問題でも記述式でも「その因子はどちらか?」を問われる頻度が高く、分類ミスは得点ロスにつながります。
2. 3 ステップ判断フロー 【図解イメージ:ダイヤルと外敵を分けるフローチャート】
ステップ | チェック項目 | YES の場合 | NO の場合 |
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1 | 工場内で自由に設定できるか? | 制御因子候補 | ステップ 2 へ |
2 | 工程の管理で一定に保てるか? | 管理因子 → 今回の記事では制御扱い | ステップ 3 へ |
3 | 使用環境やユーザー操作で自然に変わるか? | ノイズ因子 | 因子ではなく「特性」や「結果」かも |
メモ:管理因子(工程管理で維持できる条件)は試験では制御側に含めることが多いです。
3. よくある勘違いトップ 3
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温度設定 vs 周囲温度
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オーブン設定温度 → 制御因子(レシピが決める)
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外気温 → ノイズ因子(季節で変わる)
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原料ロット差
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自社でブレンド比率を調整できるなら制御因子。
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仕入れ元の品質ばらつきが避けられないならノイズ因子。
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作業者スキル
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交代制で経験年数別に操作条件を変えられるなら制御因子。
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通常の人員配置で自然にばらつく場合はノイズ因子として扱う。
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4. ミニ演習:制御因子かノイズ因子か分類してみよう
問題
次の 4 つの因子を制御因子とノイズ因子に分類せよ。
① 成形圧力 ② 原料水分 ③ 使用温度 ④ 加熱時間
3 ステップでの回答例
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成形圧力:工場のプレス設定 → 制御
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原料水分:入荷ロットで変動、現場では調整困難 → ノイズ
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使用温度:ユーザー環境で変動 → ノイズ
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加熱時間:装置タイマーで自由設定 → 制御
5. まとめと次に読む記事
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ステップ 1~3 を順に当てはめれば分類ミスはゼロ
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勘違いしやすい因子は「調整可能か」「環境で変わるか」を口に出して確認。
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演習問題では コメントを書いて理由を示す と失点を防げます。
次の記事では 「静特性 S/N 比の 3 式を選び分けるコツ」 を解説します。制御/ノイズが分かったら、いよいよ「ばらつきを数字で評価する」段階です。
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