実験計画法 統計学・QC検定

二元配置実験の分散分析実践

はじめに

一元配置実験では、「1つの因子」だけを調べました。
しかし実際の現場では、複数の因子が同時に結果に影響することが多いです。

そこで登場するのが、
二元配置実験(にげんはいちじっけん)です!

この記事では、
カレーの味評価をテーマに、
主効果+交互作用を含む分散分析の具体的な計算を解説していきます!

1. 二元配置実験とは?

定義

二元配置実験とは、2つの因子(例えば肉の種類とスパイス量)を同時に変えたとき、結果にどう影響するかを調べる実験。

二元配置実験では、

  • 因子A(肉の種類)

  • 因子B(スパイス量)

という2つの因子の
主効果(単独の影響)

交互作用(組み合わせによる特別な影響)
の両方を評価できます。


2. 実験データ(カレーの味評価例)

今回は次のデータを使います。

 

肉の種類 スパイス量 評価スコア1 評価スコア2
牛肉 少なめ 80 82
牛肉 多め 90 91
鶏肉 少なめ 78 79
鶏肉 多め 84 85

(各条件で2回ずつ繰り返し)

3. 分散分析の流れ

二元配置実験では次の手順で進めます。

  1. 総平均を求める

  2. 総平方和

    STを求める

  3. 因子Aの平方和

    SAを求める

  4. 因子Bの平方和

    SBを求める

  5. 交互作用平方和

    SAB を求める

  6. 誤差平方和

    SEを求める

  7. 各分散

    VA,VB,VAB,VEを求める

  8. 各因子・交互作用のF値を求める

4. 総平均を求める

すべてのデータの平均を求めます。

総平均=80+82+90+91+78+79+84+858

 

計算すると、

総平均=6698=83.625

 


5. 総平方和 STを求める

総平方和は、各データと総平均との差を2乗して合計します。

ST=(各データ総平均)2

 

個別に計算します。

(8083.625)2=13.140625

(8283.625)2=2.640625

(9083.625)2=40.140625

(9183.625)2=54.140625

(7883.625)2=31.640625

(7983.625)2=21.140625

(8483.625)2=0.140625

(8583.625)2=1.890625

合計すると、

ST=13.140625+2.640625+40.140625+54.140625+31.640625+21.140625+0.140625+1.890625=164.875

 

6. 水準平均を求める

肉の種類(水準A)

 

肉の種類 平均スコア
牛肉  

(80+82+90+91)÷4=85.75 

鶏肉  

(78+79+84+85)÷4=81.5 

スパイス量(水準B)

 

スパイス量 平均スコア
少なめ  

(80+82+78+79)÷4=79.75 

多め  

(90+91+84+85)÷4=87.5 

7. 因子A(肉の種類)の平方和 SA

水準Aごとの平均と総平均との差から求めます。

SA=4×((85.7583.625)2+(81.583.625)2)

 

計算すると、

(85.7583.625)2=4.515625

(81.583.625)2=4.515625

 

だから、

SA=4×(4.515625+4.515625)=4×9.03125=36.125

 

8. 因子B(スパイス量)の平方和 SB

 

水準Bごとの平均と総平均との差から求めます。

SB=4×((79.7583.625)2+(87.583.625)2)

計算すると、

  • (79.7583.625)2=15.015625 

  • (87.583.625)2=15.015625 

だから、

SB=4×(15.015625+15.015625)=4×30.03125=120.125

 

9. 交互作用平方和 SAB

交互作用平方和は、

SAB=STSASBSE

ですが、ここでは後でまとめて誤差平方和とあわせて求めます。

10. 誤差平方和 SE

各条件の個別データと対応するセル平均との差を2乗して合計します

11. 各セル(組合せ)の平均を求める

それぞれの「肉の種類 × スパイス量」ごとに、セル平均を求めます。

 

肉の種類 スパイス量 評価スコア1 評価スコア2 セル平均
牛肉 少なめ 80 82  

(80+82)÷2=81.0 

牛肉 多め 90 91  

(90+91)÷2=90.5 

鶏肉 少なめ 78 79  

(78+79)÷2=78.5 

鶏肉 多め 84 85  

(84+85)÷2=84.5 

12. 各データとセル平均との差を2乗する

各データについて、「データ - セル平均」を2乗し、全部足し合わせます。これが誤差平方和

SEになります。

  • (80-81.0)² = 1.0

  • (82-81.0)² = 1.0

  • (90-90.5)² = 0.25

  • (91-90.5)² = 0.25

  • (78-78.5)² = 0.25

  • (79-78.5)² = 0.25

  • (84-84.5)² = 0.25

  • (85-84.5)² = 0.25

合計すると、

SE=1.0+1.0+0.25+0.25+0.25+0.25+0.25+0.25=3.5

 

13. 交互作用平方和 SABを求める

交互作用平方和は、
残り成分として求めます。

SAB=STSASBSE

ここまでの値は、

  • ST=164.875 

  • SA=36.125 

  • SB=120.125 

  • SE=3.5 

代入して計算すると、

SAB=164.87536.125120.1253.5=5.125

 

14. 自由度の計算

 

項目 自由度
因子A(肉の種類) 2−1=1
因子B(スパイス量) 2−1=1
交互作用(A×B) (2−1)×(2−1)=1
誤差 全データ数−水準数=8−4=4
全体 8−1=7

15. 各分散(平均平方)を求める

因子A(肉の種類)の分散:

VA=SA1=36.125

 

因子B(スパイス量)の分散:

VB=SB1=120.125

 

交互作用(A×B)の分散:

VAB=SAB1=5.125

 

誤差の分散:

VE=SE4=0.875

 

16. F検定値を求める

因子A(肉の種類)のF値:

FA=VAVE=36.1250.875=41.3

 

因子B(スパイス量)のF値:

FB=VBVE=120.1250.875=137.3

 

交互作用(A×B)のF値:

FAB=VABVE=5.1250.875=5.857

 

まとめ

今回の二元配置実験では、

  • 総平方和

    ST=164.875  

  • 因子Aの平方和

    SA=36.125  

  • 因子Bの平方和

    SB=120.125  

  • 交互作用の平方和

    SAB=5.125  

  • 誤差平方和

    SE=3.5  

分散はそれぞれ、

  • VA=36.125  

  • VB=120.125  

  • VAB=5.125  

  • VE=0.875  

F値は、

  • FA=41.3  

  • FB=137.3  

  • FAB=5.857 

となりました!

F値が大きいので、

  • 肉の種類(因子A)

  • スパイス量(因子B)

  • そして肉とスパイスの組合せ(交互作用)

すべてが結果に有意な影響を与えている
と考えられます!

次の記事

次の記事では、
直行配列表について説明していきます!

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