- 「幾何分布」という言葉が出てきたが、数式だらけで頭に入ってこない
- 「初回成功までの回数」と言われても、何の役に立つのかピンとこない
- 「無記憶性」という難しそうな性質が、何を言っているのかわからない
- 幾何分布とは何か、ガチャや宝くじのたとえで直感的にわかる
- 「平均で何回かかるか(期待値1/p)」の意味が腹落ちする
- 「外れ続けても次が当たりやすくならない」無記憶性のイメージ
幾何分布(きかぶんぷ)とは、「初めて成功するまでに、何回くりかえすか」の確率を表すものです。たとえば1回で当たる確率が決まっているクジを引き続けたとき、「1回目で当たる」「3回目で初めて当たる」といった回数のバラつきを表します。平均すると、成功する確率がp(たとえば10%=0.1)のとき、初成功までにかかる回数は 1÷p 回(0.1なら10回)になります。
目次
そもそも幾何分布とは?
幾何分布とは、ひとことで言えば「初めて当たりが出るまで、何回かかったか」を表すものです。むずかしい計算の話に見えますが、やっていることはとても身近です。
たとえばスマホゲームのガチャ。当たり(レアキャラ)を引きたくて、1回目はハズレ、2回目もハズレ、3回目でようやく当たり——この「3回目で初めて当たった」という回数こそ、幾何分布があつかうものです。
的に向かってボールを投げて、初めて命中するまで何回投げたか。1投目で当たる人もいれば、5投目でやっと当たる人もいます。この「初めて当たるまでの回数」が人によってバラつく様子を、ぜんぶまとめて表したのが幾何分布です。
名前は難しそうですが、中身は「初めて成功するまでの回数」というだけ。つまり幾何分布とは、何かを繰り返したときに「何回目で初めてうまくいくか」を表す道具、ということです。

どんなときに使えるのか|3つの条件
幾何分布は、どんな場面でも使えるわけではありません。次の3つの条件がそろったときに、ぴったり当てはまります。むずかしくないので、1つずつ見ていきましょう。
結果が「成功か失敗か」の2つだけ。当たり/ハズレ、合格/不合格のように、はっきり2択に分かれること。
毎回の成功する確率が同じ。1回目も10回目も、当たる確率はずっと一定(たとえば毎回10%)であること。
前回の結果が次に影響しない。ハズレたからといって、次が当たりやすくなったりしないこと(=独立)。
ガチャ、宝くじ、コインの表が出るまで投げ続ける——これらはすべて3条件を満たすので、幾何分布の出番です。逆に「練習すると上達する試験」は条件2が崩れる(だんだん合格率が上がる)ので、ぴったりとは当てはまりません。
つまり「毎回同じ確率の、当たりかハズレかの挑戦をくり返す」とき、幾何分布が活躍する、ということです。

何回目で当たる確率?|だんだん小さくなる
幾何分布のいちばん面白いところは、「何回目で初めて当たるか」の確率が、回を追うごとにだんだん小さくなることです。グラフにすると右肩下がりの階段になります。
なぜ小さくなるのでしょうか。たとえば当たる確率が30%のクジで考えます。「3回目で初めて当たる」には、まず1回目と2回目を続けてハズさないといけません。回が進むほど「そこまで連続でハズし続ける」のが起きにくくなるので、確率はしぼんでいきます。
| 何回目で初めて当たる | その確率(成功30%の例) |
|---|---|
| 1回目 | 約30%(いちばん高い) |
| 2回目 | 約21% |
| 3回目 | 約14.7% |
| 4回目 | 約10.3% |
「1回目でいきなり当てる人」がいちばん多く、「ずっとハズし続けてから当てる人」はだんだん少なくなる、というイメージです。長く外し続ける人ほどレアな存在、ということですね。
つまり幾何分布のグラフは「最初がいちばん高くて、あとはなだらかに下がっていく階段」になる、ということです。

平均で何回かかる?|「1÷p」のやさしい意味
幾何分布でいちばん使える知識が、「平均すると何回で当たるか」です。これは難しい式を覚えなくても、直感でわかります。答えは「1 ÷ 成功確率」です。
平均回数 = 1 ÷ 成功確率(p)
なぜこうなるのか、直感で説明します。成功確率が10%(0.1)ということは、「10回に1回は当たる」という意味ですよね。だったら、初めて当たるまで平均すると、だいたい10回かかる——とても自然な話です。
サイコロで1が出る確率は6分の1。では1が初めて出るまで平均何回ふるか?——答えは6回です。「6回に1回出る」なら「平均6回で出る」。これがそのまま 1÷確率 の意味です。
ガチャで計算してみる
レアキャラの当たる確率が3%(0.03)のガチャがあるとします。平均で何回引けば当たるかを求めます。
式に入れます。1 ÷ 0.03 = 約33.3。つまり平均すると約33回引けば、1回は当たる計算です。「100回引いても出ない…」という人がいるのは、あくまで平均だからですね。
つまり「1÷確率」を計算するだけで、初めて当たるまでの平均回数がパッとわかる、ということです。

「外れ続けたら次は当たる」は本当?|無記憶性
幾何分布には「無記憶性(むきおくせい)」という、ちょっと不思議で大切な性質があります。名前は難しいですが、意味はシンプル。「過去のハズレは、次の当たりやすさに影響しない」ということです。
よく「10回連続で外したから、そろそろ当たるはず」と感じますよね。でも幾何分布の世界では、これは間違いです。毎回の確率は一定なので、10回外そうが100回外そうが、次の1回で当たる確率は最初とまったく同じなのです。
コインを投げて、表が10回連続で出たとします。では11回目に裏が出やすくなるでしょうか?——なりません。コインは過去を覚えていないので、毎回ちょうど50%です。これが「無記憶(過去を覚えていない)」ということです。
「たくさん外したぶん、次は当たりやすい」という感覚は、ギャンブラーの誤謬(ごびゅう)と呼ばれる有名な勘違いです。幾何分布が当てはまる純粋なクジでは、過去はいっさい関係ありません。ただし現実の機械の故障などは「使うほど壊れやすくなる」ので、無記憶性が当てはまらない点には注意です。
つまり無記憶性とは、「毎回まっさらな気持ちで、いつも同じ確率に挑んでいる」状態のこと。クジは前回のことを覚えていないのです。
身の回りのどこで使われている?
幾何分布は、勉強のためだけのものではありません。実生活や仕事のいろいろな場面で「何回でうまくいくか」を見積もるのに役立ちます。
資格試験。合格率30%の試験なら、平均で 1÷0.3=約3.3回。「だいたい3回くらい受ければ受かる人が多い」という目安が立ちます。
営業の訪問。成約率10%なら、平均10件まわれば1件決まる計算。「契約1件にかかるコスト」を見積もる材料になります。
品質検査。不良品が見つかる確率が5%なら、平均20個調べれば1個見つかる見当がつき、検査の計画が立てやすくなります。
つまり「何回チャレンジすれば成功にたどり着けそうか」を、感覚ではなく数字で見積もれるのが、幾何分布の実用的な強みです。ちなみに幾何分布の「時間バージョン」が指数分布で、機械が壊れるまでの時間などをあつかいます。

似た分布との違い|二項分布・指数分布と何が違う?
幾何分布を学ぶと、よく似た名前の「二項分布」「指数分布」と混乱しがちです。違いは「何を数えているか」を見れば、すっきり整理できます。
| 分布 | 何を数える? | たとえ |
|---|---|---|
| 幾何分布 | 初めて成功するまでの回数 | 当たりが出るまで何回引いた? |
| 二項分布 | 決めた回数で成功が何回出るか | 10回引いて当たりは何回? |
| 指数分布 | 初めて起こるまでの「時間」 | 機械が壊れるまで何時間? |
ざっくり言うと、幾何分布は「初成功までの回数」、二項分布は「決まった回数中の成功数」、指数分布は「初成功までの時間」。幾何分布と指数分布は「初めて起こるまで」を数える兄弟で、回数か時間かが違うだけです。
つまり「回数を初めまで数える」のが幾何分布、と覚えておけば、似た分布と取り違えずに済みます。二項分布の解説とあわせて読むと、違いがよりはっきりします。

よくある質問(FAQ)

まとめ|幾何分布は「初めて当たるまで何回?」
- 幾何分布とは「初めて成功するまでの回数」を表すもの
- 使える条件は「成功か失敗」「毎回同じ確率」「前回が影響しない」の3つ
- 何回目で当たる確率は、回が進むほどだんだん小さくなる
- 平均でかかる回数は「1 ÷ 成功確率」でパッと計算できる
- 無記憶性=過去に外しても次の当たりやすさは変わらない
- 「回数を初めまで数える」のが幾何分布、と覚えればOK
数式が苦手でも、「初めて当たるまで何回?」「平均は1÷確率」という2つさえつかめば、幾何分布はもう怖くありません。次は、回数ではなく「時間」をあつかう兄弟分の指数分布や、確率分布の全体像を整理したロードマップに進むと、知識がきれいにつながります。下の関連記事からどうぞ。

自動車部品メーカーで電気設計・品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて統計や電気を学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
📚 次に読むべき記事
幾何分布が統計学全体のどこに位置するか、学ぶ順番がわかります。
幾何分布の「時間バージョン」。無記憶性つながりで読むと理解が深まります。
「決めた回数中の成功数」を数える兄弟分。幾何分布との違いがクリアになります。