日常統計学

【日常統計学】「人は無能になるまで出世する」ピーターの法則とは?組織のバグを解説

こんにちは、シラスです。

会社で働いていると、ふとこんな疑問を抱くことはありませんか?

「なんで、あんなに仕事ができない人が課長なんだ?」
「現場のことを何も分かっていない…」

ただの悪口ではありません。
多くの組織で、なぜか「上のポストに行けば行くほど、無能な人が増える」という怪奇現象が起きています。

実はこれ、個人の性格の問題ではありません。
組織の構造上、どうしても避けられない「統計的な必然(バグ)」なのです。

今日は、この悲しい現象に名前をつけた「ピーターの法則(Peter Principle)」について解説します。

1. ピーターの法則とは?

1969年、ローレンス・J・ピーター博士が提唱した社会学の法則です。
その内容は、あまりにも残酷でシンプルです。

「能力主義の階層社会では、
人間は『無能になるレベル』まで出世し、
そこで停滞する」

つまり、「あらゆるポストは、職務を果たせない無能な人間によって埋められる」というのです。
なぜ、そんな絶望的なことが起きるのでしょうか?

2. メカニズム:「名選手、名監督にあらず」

原因は、日本の会社でもよくある「出世のルール」にあります。

事例:優秀な営業マン「Aさん」の悲劇

  • ① 現場時代(有能)
    Aさんは、トーク力と行動力があり、営業成績トップでした。
    会社は彼を評価し、「課長」に昇進させました。
  • ② 課長時代(無能化)
    しかし、課長の仕事は「部下の管理」や「数値の分析」です。
    Aさんは直感で動くタイプだったので、管理業務が苦手でした。
    部下の相談に乗れず、チームの成績はガタ落ち。
  • ③ 結末(固定化)
    Aさんは課長としての成果が出せないので、これ以上「部長」にはなれません。
    かといって、降格させるのも難しい。
    結果、Aさんは「無能な課長」として、定年までその席に座り続けることになります。

これがピーターの法則の正体です。

「今の仕事ができる」=「次の仕事もできる」とは限らない。
しかし、組織は「今の仕事ができる人」を昇進させてしまう。

このサイクルを繰り返すと、組織のあらゆるポジションが「昇進の限界(無能レベル)に達した人たち」で埋め尽くされてしまうのです。

💡 統計学的な視点:相関がないのに予測している

一見、組織論の話に見えますが、これは統計学的にも説明がつきます。
最大の原因は、「プレイヤー能力」と「マネジメント能力」の相関が低いことです。

もし「足が速い人は、料理も上手い」という相関がなければ、足の速さでシェフを選んでも意味がありませんよね?

しかし、多くの企業は「足が速いから(営業成績が良いから)、シェフ(課長)をやらせよう」という、統計的に無理のある人事(予測)を繰り返しているのです。
これは回帰分析で言うところの「外挿(データの範囲外での予測)」の失敗に他なりません。

3. 私たちはどうすればいいのか?

この法則を知ると、無能な上司への怒りが少し収まりませんか?
「ああ、この人は現場では優秀だったんだろうな(でも今は適正がないんだな)」と。

では、私たち自身が「無能化」しないためにはどうすればいいのでしょうか。

対策①:出世を断る勇気

「自分はプレイヤーとして輝くタイプだ」と分かっているなら、管理職への昇進を断るのも戦略です。
専門職(スペシャリスト)の道がある会社を選ぶか、フリーランスになるのも手です。

対策②:創造的無能(Creative Incompetence)

ピーター博士が提案した裏技です。
今のポジションで満足しているなら、あえて「少しだけダメなふり」をします。
「あいつは仕事はできるけど、服装がだらしないから管理職には向かないな」と思わせることで、望まない昇進(無能化)を回避する高等テクニックです。

まとめ

ピーターの法則:人は無能になるレベルまで出世し、そこで止まる。
原因:相関のない「現在の能力」で「未来の地位」を決めてしまうエラー。
対策:自分の適正を見極め、「昇進=成功」という思い込みを捨てる。

上司が無能に見えるのは、かつて彼が有能だった証拠かもしれません。

組織のバグに巻き込まれず、自分の能力が発揮できる場所(適正水準)に留まり続けること。
それが、長く幸せに働くための秘訣なのかもしれません。

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