実験計画法

擬水準法の分散分析|平方和・自由度の計算を例題で完全マスター

😣 こんな悩みはありませんか?
  • 擬水準法の分散分析で「二元表を作る」と言われても、なぜ必要なのかわからない
  • 形式的因子Pと実際の因子Aの平方和が違う理由がピンとこない
  • 自由度の計算で混乱してしまう
✅ この記事でわかること
  • なぜ擬水準法では「二元表」が必要なのか、その本質的な理由
  • 擬水準あり/なしで平方和の計算方法がどう変わるか
  • 例題を通じた具体的な計算手順

【前編】では、擬水準法の考え方と割り付け方法を解説しました。

この後編では、「なぜ擬水準法では二元表が必要なのか?」という本質的な疑問に答えながら、分散分析の計算方法を解説します。

核心|なぜ「二元表」が必要なのか?

擬水準法の分散分析を理解するカギは、「形式的因子P」と「実際の因子A」は別物という点です。

形式的因子Pと実際の因子Aの関係

前編で学んだように、擬水準法では3水準因子Aを「形式的な4水準因子P」として割り付けます。

形式的4水準P 実際の3水準A 実験回数
P₁ A₁ 2回
P₂ A₂ 2回
P₃ A₃ 2回
P₄(擬水準) A₁(再利用) 2回

ここで重要なのは、P₁とP₄は「別の水準」として扱われるが、実際はどちらもA₁ということです。

列の平方和はPの平方和であり、Aの平方和ではない

直交表の[1][2][3]列から計算した平方和は、「P₁、P₂、P₃、P₄の4水準の違い」による変動を測っています。

しかし、私たちが知りたいのは「A₁、A₂、A₃の3水準の違い」による変動ですよね。

📐 これが核心

SP(列の平方和の合計)≠ SA(実際の因子Aの平方和)

だから、因子Aの平方和は二元表を作って計算し直す必要があるのです。

イメージで言うと、「P₁とP₄の違い」は列の平方和に含まれていますが、実際は両方ともA₁なので、因子Aの効果としては「同じもの」として合算しなければなりません。

例題|クッキーのサクサク感を改善する実験

では、具体的な例題で計算していきましょう。

🍪 例題の設定

因子A(小麦粉):3水準(A₁:薄力粉を擬水準に選択、A₂:中力粉、A₃:強力粉)
因子B(温度):2水準(B₁:160℃、B₂:180℃)
使用直交表:L8(擬水準法で因子Aを[1][2][3]列に割り付け)

実験データと各列の平方和

実験を行い、各列の平方和を計算したところ、以下の結果が得られました。

割り付け 列平方和 S[k]
[1] P(因子A) 18.0
[2] P(因子A) 0.5
[3] P(因子A) 4.5
[4] 因子B 4.5
[5] P×B 4.5
[6] P×B 0.0
[7] P×B 2.0
合計(= 総平方和 ST 34.0

また、修正項 CT = 338.0 とします。

計算①|擬水準を含まない因子の平方和

まず、擬水準を含まない因子から計算します。こちらは簡単です。

因子Bの平方和:列の平方和をそのまま使う

因子Bは[4]列に割り付けられており、擬水準を含みません。

SB = S[4] = 4.5

形式的因子Pの平方和:3列の合計

形式的因子Pの平方和は、[1][2][3]列の平方和を合計したものです。

SP = S[1] + S[2] + S[3] = 18.0 + 0.5 + 4.5 = 23.0

P×Bの平方和:3列の合計

SP×B = S[5] + S[6] + S[7] = 4.5 + 0.0 + 2.0 = 6.5

💡 ここまでのまとめ
  • SB = 4.5(これは最終的な分散分析表にそのまま使える)
  • SP = 23.0(形式的因子P。実際の因子Aの平方和ではない)
  • SP×B = 6.5(形式的なP×B。実際のA×Bの平方和ではない)

計算②|AB二元表を作成する

次に、擬水準を含む因子Aの平方和を求めるために、AB二元表を作成します。

実験データを、因子Aと因子Bの組み合わせごとに整理した表です。

AB二元表(セル合計)

B₁ B₂ A水準の合計 データ数 n
A₁ 15(n=2) 14(n=2) 29 4
A₂ 6(n=1) 2(n=1) 8 2
A₃ 8(n=1) 7(n=1) 15 2
B水準の合計 29 23 52 8
⚠️ 注目ポイント:繰返し数の違い
  • A₁(擬水準):データ数 n = 4(各セル2個ずつ)
  • A₂、A₃:データ数 n = 2(各セル1個ずつ)

この繰返し数の違いが、平方和の計算に影響します。

計算③|因子Aの平方和SAを求める

AB二元表から、実際の因子Aの平方和を計算します。

繰返し数が不均等なときの公式

各水準の繰返し数(データ数)が異なるので、それぞれの繰返し数で割ります

📐 因子Aの平方和の公式
SA =
(A₁合計)²
nA₁
+
(A₂合計)²
nA₂
+
(A₃合計)²
nA₃
− CT

計算の実行

SA =
29²
4
+
2
+
15²
2
− 338.0

= 210.25 + 32 + 112.5 − 338.0
= 354.75 − 338.0
= 16.75

💡 確認:SPとSAの違い
  • 形式的因子Pの平方和:SP = 23.0
  • 実際の因子Aの平方和:SA = 16.75

SP − SA = 23.0 − 16.75 = 6.25
この差は「P₁とP₄の違い」によるもので、実際はどちらもA₁なので、因子Aの効果には含まれません。

計算④|交互作用A×Bの平方和を求める

交互作用の平方和は、「セルの平方和」から「主効果の平方和」を引くことで求めます。

Step1:セルの平方和SABを計算

各セルの合計を、そのセルの繰返し数で割って足し合わせます。

SAB =
15²
2
+
14²
2
+
1
+
1
+
1
+
1
− 338.0

= 112.5 + 98 + 36 + 4 + 64 + 49 − 338.0
= 363.5 − 338.0
= 25.5

Step2:交互作用A×Bの平方和を計算

📐 交互作用の公式

SA×B = SAB − SA − SB

SA×B = 25.5 − 16.75 − 4.5 = 4.25

💡 確認:SP×BとSA×Bの違い
  • 形式的なP×Bの平方和:SP×B = 6.5
  • 実際のA×Bの平方和:SA×B = 4.25

計算⑤|誤差の平方和SEを求める

誤差の平方和は、2つの方法で求められます。どちらでも同じ結果になります。

方法①:総平方和から各要因を引く

SE = ST − SA − SB − SA×B

= 34.0 − 16.75 − 4.5 − 4.25 = 8.5

方法②:形式的因子との差から求める

SE = (SP − SA)+(SP×B − SA×B

= (23.0 − 16.75)+(6.5 − 4.25)
= 6.25 + 2.25 = 8.5

💡 2つの方法が一致する理由

方法②の「SP − SA」は、P₁とP₄(実際は同じA₁)の「見かけ上の違い」による変動です。
これは因子Aの効果ではなく「誤差」として扱われるべきものなので、誤差の平方和に含まれます。

計算⑥|自由度を計算する

最後に、自由度を計算します。形式的因子Pではなく、実際の因子Aの自由度を使うことに注意してください。

要因 公式 計算 自由度 φ
(参考)形式的因子P 4 − 1 3
因子A(実際) 水準数 − 1 3 − 1 2
因子B 水準数 − 1 2 − 1 1
A×B(実際) φA × φB 2 × 1 2
誤差E φT − φA − φB − φA×B 7 − 2 − 1 − 2 2
合計T データ数 − 1 8 − 1 7
⚠️ よくある間違い

形式的因子Pの自由度(φ = 3)を使ってしまうミスが多いです。
分散分析表に載せるのは実際の因子Aの自由度(φ = 2)です。

完成|分散分析表

すべての計算結果をまとめて、分散分析表を完成させます。

要因 平方和 S 自由度 φ 平均平方 V F₀
A 16.75 2 8.375 1.97
B 4.50 1 4.50 1.06
A×B 4.25 2 2.125 0.50
誤差E 8.50 2 4.25
合計T 34.00 7

※ V = S ÷ φ、F₀ = V ÷ VE で計算

💡 検算:平方和の合計

SA + SB + SA×B + SE = 16.75 + 4.50 + 4.25 + 8.50 = 34.00 = ST

まとめ|擬水準法の分散分析で押さえるべき3つのポイント

📐 ポイント①:SP ≠ SA

列の平方和の合計(SP)は、形式的4水準因子Pの平方和。
実際の3水準因子Aの平方和(SA)は、AB二元表から計算し直す必要がある。

📐 ポイント②:繰返し数の違いに注意

擬水準に選んだ水準(例:A₁)は繰返し数が2倍になる。
平方和を計算するとき、各水準の繰返し数で割ることを忘れずに。

📐 ポイント③:自由度は実際の因子で

分散分析表に載せるのは実際の因子Aの自由度(φ = 水準数 − 1)
形式的因子Pの自由度を使わないように注意。

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