実験計画法 統計学・QC検定

なぜ全数試験ではダメなのか?

はじめに

「全部の組み合わせを試せば、確実に正しい結果が得られるんじゃないか?」
そんなふうに思ったことはありませんか?

しかし実際には、全数試験は現実的な選択肢ではありません。
この記事では、なぜ全数試験が非効率なのかを、具体例を交えて解説します。

全数試験とは?🔎

全数試験の考え方

全数試験とは、
考えられるすべての条件の組み合わせを実験して調べる方法です

一見、「これが一番確実そうだ」と思えますが、大きな落とし穴があります。

具体例:カレー作りで考える🍛

前回と同じく、カレー作りを例に考えましょう。

あなたが試したい条件は以下の通りです。

因子(要因)水準(選択肢)
肉の種類牛 or 鶏
スパイスの量多め or 少なめ
煮込み時間長い or 短い
トマトの有無入れる or 入れない

この場合、組み合わせ数は

2 × 2 × 2 × 2 = 16通り

たった4つの条件でも、16回カレーを作る必要があります。
これなら何とか頑張れるかもしれません。

では、条件がもっと増えたら?

もし、さらに

  • 玉ねぎの炒め時間(長い・短い)
  • じゃがいもの種類(男爵・メークイン)
  • ご飯の種類(白米・玄米)

なども加えたらどうでしょうか?

合計7条件になります。
すると、組み合わせ数は

2 × 2 × 2 × 2 × 2 × 2 × 2 = 128通り

つまり、128回もカレーを作ることになります!

全数試験の問題点⚡

問題内容
試行回数が爆発的に増える条件が少し増えただけで試行回数が急増
時間・コストがかかる材料費、人件費、時間の浪費が大きい
条件が変わるリスク長期にわたると気温や材料の品質も変わる
モチベーションが下がる作業が多すぎて集中力が続かない

なぜ試行回数が爆発するのか?💥

原因は、「組み合わせの掛け算」です。

因子数水準数組み合わせ数
3因子2水準ずつ2³ = 8通り
5因子2水準ずつ2⁵ = 32通り
7因子2水準ずつ2⁷ = 128通り
10因子2水準ずつ2¹⁰ = 1024通り

たった10個の因子でも、全数試験では1000回以上の試行が必要になります。

これでは実験が終わるころには、条件も状況もまったく違うものになってしまいます。

実験計画法が必要な理由🌟

実験計画法は、
全数試験を避けながら、必要な情報だけを効率よく引き出すために生まれた方法です。

  • 本当に重要な因子に絞る
  • 少ない組み合わせで効果を比較する
  • 交互作用(因子同士の組み合わせ効果)もチェックできる

これにより、
最低限の実験回数で、最大限の結論を得る」ことができるのです。

まとめ🔍

全数試験は理論的には完全ですが、
現実的には時間・コスト・労力が膨大になり、実用的ではありません。

だからこそ、実験計画法のような「効率の良い設計方法」が必須なのです。

実験計画法を使えば、
限られた資源の中で、確かな結論にたどり着ける
この強力なメリットを、ぜひこの先も学んでいきましょう。

次の記事へ進む

次の記事では、
実際にどのように実験を組み立てていくのか、
「因子」「水準」という基本的な考え方から、さらに具体的に掘り下げていきます。

あなたの実験の設計力が、確実にレベルアップします!

-実験計画法, 統計学・QC検定