実験計画法

【初心者向け】交互作用とは?2つの要因が影響しあう仕組みをやさしく解説

こんにちは、シラスです。

これまで、実験計画法において「どの因子が効くか(主効果)」を調べる方法を学んできました。
しかし、実験を進めていくと、時として「不可解な現象」に遭遇することがあります。

  • 「Aを良くして、Bも良くしたのに、なぜか結果が悪くなった…」
  • 「個別の実験では成功したのに、組み合わせたら失敗した…」

これは、あなたの実験が間違っていたわけではありません。
そこに、実験計画法の最重要概念である「交互作用(Interaction)」が潜んでいたからです。

今回は、単独の効果だけでは説明がつかないこのミステリアスな現象について、カレー作りを例に分かりやすく解説します。

1. 交互作用とは?:足し算が通用しない世界

まずは定義から押さえましょう。

🔄 交互作用の定義
ある因子(A)の効果が、別の因子(B)の水準によって変化してしまう現象のこと。

簡単に言えば、
「単純な足し算(1+1=2)にならず、相乗効果(3になる)や、相殺効果(0になる)が起きること」
です。

通常、私たちは「良いもの」と「良いもの」を組み合わせれば、「もっと良くなる」と考えがちです。
しかし、交互作用がある場合、その常識は通用しません。

2. カレー作りで考える「相性の良し悪し」

直感的に理解するために、カレーの味を評価する実験で考えてみましょう。

🍛 実験条件
  • 因子A(肉の種類): 牛肉 🐮 vs 鶏肉 🐔
  • 因子B(スパイス): 少なめ vs 多め

この2つの条件を組み合わせて、4パターンのカレーを作り、「おいしさスコア(点数)」をつけました。

実験データの確認

肉の種類 スパイス少なめ スパイス多め
牛肉 🐮 80点 90点(UP!)
鶏肉 🐔 85点 84点(DOWN...)

結果をよく見てください。

  • 牛肉の場合: スパイスを増やすと、点数が上がりました(80 → 90)。
  • 鶏肉の場合: スパイスを増やすと、点数が下がりました(85 → 84)。

「スパイスを増やせば美味しくなる」とは一概に言えません。
「肉が牛肉なら増やすべきだが、鶏肉なら増やさない方がいい」という、条件付きの結果になっています。

このように、「相手(肉)によって態度(効果)を変える」現象こそが、交互作用の正体です。

3. 主効果だけ見ていると失敗する理由

もし、この交互作用に気づかず、単純に平均値(主効果)だけで判断したらどうなるでしょうか?

📉 間違った分析(主効果のみ)

「スパイス多め(平均87点)」は「少なめ(平均82.5点)」より点が高い。
結論:どんな肉でもスパイスは多めに入れるべきだ!

この結論に従って「鶏肉 × スパイス多め」のカレーを作ると、84点という微妙な結果に終わります。
(本当は「鶏肉 × スパイス少なめ」の85点の方が美味しかったのに!)

「全体的に見れば良いこと」が、「個別のケース」でも良いとは限らない。
これを見落とすと、エンジニアは「最適条件」を取り逃がしてしまいます。

4. グラフで見抜く:「平行」か「交差」か

実験計画法では、交互作用の有無を「二元配置図(交互作用プロット)」というグラフで判断します。

見方は非常にシンプルです。

📈 グラフの読み方
  • 線が平行(=):
    交互作用なし。「足し算」が通用する平和な世界。
  • 線が交差(✕):
    交互作用あり。「組み合わせ」が支配する複雑な世界。

今回のカレーの例をグラフにすると、牛肉の線(右上がり)と鶏肉の線(右下がり)が、見事に「✕(クロス)」します。
グラフが交差していたら、「おっ、ここには何か特別な相性(レシピ)が隠されているぞ」と疑ってください。

まとめ

交互作用とは、単なる「誤差」や「ノイズ」ではありません。
むしろ、「他社が真似できない独自のノウハウ」の源泉です。

交互作用とは、因子の組み合わせによる特別な効果のこと。
✅ 主効果(平均)だけで判断すると、最適な条件を見逃すリスクがある。
✅ グラフを描いて「線が交差」していたら、交互作用がある証拠。

「AもBも最高級品を使ったのに、なぜか上手くいかない」
そんな時は、個々の性能を疑うのではなく、それらの「相性(交互作用)」に目を向けてみてください。
そこに、突破口が隠されているはずです。

次回は、実験につきものの厄介者、「誤差(Error)」について。
なぜ実験には必ず誤差がつきまとうのか? その正体を解明します。

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