- 「逆起電力を求めよ」は解けるが、「効率を求めよ」になった途端に手が止まる
- 式は知っているのに、どの式を使えばいいか問題を見て判断できない
- 途中式を省略した解説を読んでも「どうしてその数字になるの?」と毎回詰まる
- 頻出5パターン(逆起電力・始動電流・トルク・速度変化・効率)の立式から数値代入まで全手順
- 「どの式を使うか」の判断フローが身につく
- よくある計算ミスのパターンと防止策
直流機の計算問題は、使う式の数は多くありません。逆起電力の式・トルクの式・効率の式、この3本柱を組み合わせているだけです。この記事では「問題を見た瞬間にどのパターンか判断する」練習を、全手順の計算例とともに積み上げます。
目次
計算の前提:等価回路と基本式を一枚で整理
5つのパターンはすべてこの等価回路から出発します。計算問題を見たらまず「発電機か電動機か」「分巻か他励か」を確認して、回路図を頭に浮かべるのが最速の解法です。
電動機と発電機の式の違い(最重要)
🔄→⚡ 直流発電機
EがIaRaを消費した残りがV。
E は V より大きい。
⚡→🔄 直流電動機
VがIaRaを消費した残りがE(逆起電力)。
V は E より大きい。
分巻機の電流の分配(ここを間違えると全部ずれる)
分巻発電機の電流
電機子が負荷とIfの両方に供給。
Ia > IL
分巻電動機の電流
電源からのILがIaとIfに分かれる。
IL > Ia
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| V | 端子電圧 | V(ボルト) |
| E | 起電力(発電機)/逆起電力(電動機) | V(ボルト) |
| Ia | 電機子電流 | A(アンペア) |
| Ra | 電機子巻線抵抗 | Ω(オーム) |
| If | 界磁電流 | A(アンペア) |
| Rf | 界磁抵抗 | Ω(オーム) |
| n | 回転速度 | min⁻¹(rpm) |
| T | トルク | N·m(ニュートンメートル) |
| η | 効率 | %(または小数) |
【電験三種・機械】直流発電機の種類と外部特性|他励・分巻・直巻・複巻を一覧整理 →

パターン① 逆起電力の計算
E = V − IaRa (電動機)
※ 発電機は E = V + IaRa
端子電圧 V = 200 V、電機子抵抗 Ra = 0.4 Ω、電機子電流 Ia = 30 A の直流電動機の逆起電力 E を求めよ。
電動機なので V = E + IaRa
変形すると E = V − IaRa
E = 200 − 30 × 0.4
E = 200 − 12
E = 188 V
端子電圧 V = 200 V、界磁抵抗 Rf = 100 Ω、電機子抵抗 Ra = 0.5 Ω、線電流 IL = 42 A の分巻電動機の逆起電力 E を求めよ。
If = V / Rf = 200 / 100 = 2 A
分巻電動機は IL = Ia + If
Ia = IL − If = 42 − 2 = 40 A
E = V − IaRa = 200 − 40 × 0.5 = 200 − 20
E = 180 V
分巻電動機で「Ia = IL」と置いてしまうパターン。線電流ILには界磁電流Ifが含まれているので、必ずIa = IL − Ifで電機子電流を求めてから代入する。

パターン② 始動電流の計算
V = 200 V、Ra = 0.5 Ω の直流電動機の始動直後の電機子電流を求めよ。
n = 0 → E = kΦn = 0
Ia(st) = V / Ra = 200 / 0.5
Ia(st) = 400 A ←定格の何倍もの過電流!
上記と同じ電動機(V = 200 V、Ra = 0.5 Ω)で、始動電流を 40 A 以下に制限したい。必要な始動抵抗 Rs の最小値を求めよ。
Ia(st) = V / (Ra + Rs) ≤ 40
変形:Ra + Rs ≥ V / 40 = 200 / 40 = 5 Ω
Rs ≥ 5 − Ra = 5 − 0.5
Rs ≥ 4.5 Ω
「始動直後 → E = 0」これを最初に書く習慣をつける。E = 0を書くだけで式が一本化され、あとはオームの法則だけです。

パターン③ トルクと出力の計算
トルクと出力の関係:P = T × ω = T × 2πn/60
∴ トルク:T = P / ω = 60EIa / (2πn) [N·m]
V = 200 V、Ra = 0.5 Ω、Ia = 40 A、回転速度 n = 1200 min⁻¹ の直流電動機の発生トルク T を求めよ。
E = V − IaRa = 200 − 40 × 0.5 = 200 − 20 = 180 V
P = E × Ia = 180 × 40 = 7200 W
ω = 2π × n/60 = 2π × 1200/60 = 2π × 20 = 40π rad/s
T = P / ω = 7200 / (40π) = 180/π
T = 180/π ≈ 57.3 N·m
①必ずSTEP1でEを先に求める。②角速度ω = 2πn/60の「n」はrpmのまま代入。③答えは180/πのように分数のままにしておいて、最後に計算機で割る。π ≈ 3.14 として T ≈ 57.3 N·m。

パターン④ 速度変化の計算(制御前→制御後)
よって n₂/n₁ = E₂/E₁ × Φ₁/Φ₂
※磁束Φが変わらない場合(抵抗制御・電圧制御)はn₂/n₁ = E₂/E₁だけ
例題④-A 抵抗制御による速度変化
V = 200 V、Ra = 0.5 Ω、Ia = 40 A、元の回転速度 n₁ = 1200 min⁻¹ の直流電動機(他励)に、電機子回路へ直列抵抗 R = 4 Ω を追加した。新しい回転速度 n₂ を求めよ(Iaは変わらないとする)。
E₁ = V − IaRa = 200 − 40 × 0.5 = 180 V
E₂ = V − Ia(Ra + R) = 200 − 40 × (0.5 + 4) = 200 − 40 × 4.5 = 200 − 180 = 20 V
n₂/n₁ = E₂/E₁(Φ一定)= 20/180 = 1/9
n₂ = 1200 × 1/9 = 133 min⁻¹
例題④-B 弱め界磁による速度変化
同じ電動機(n₁ = 1200 min⁻¹)で、界磁電流を調整して磁束Φを元の 80 % に減らした。電機子電流・端子電圧は変わらないとして、新しい回転速度 n₂ を求めよ。
Φ₂ = 0.8 × Φ₁ → Φ₁/Φ₂ = 1/0.8 = 1.25
E₁ = E₂ = 180 V(IaRaが変わらないため)
→ E₂/E₁ = 1
n₂/n₁ = E₂/E₁ × Φ₁/Φ₂ = 1 × 1.25 = 1.25
n₂ = 1200 × 1.25 = 1500 min⁻¹
「変化前・変化後でどの量が変わり、どの量が変わらないか」を表にしてから立式する。Φが変わらない(抵抗制御・電圧制御)なら n₂/n₁ = E₂/E₁ だけ。Φが変わる(界磁制御)なら Φ₁/Φ₂ の項も必要。

パターン⑤ 効率の計算(最も問われやすい)
発電機の効率:η = 出力 / 入力 = 出力 / (出力 + 損失合計)
入力(電動機)= V × IL
銅損(電機子)= Ia² × Ra
銅損(界磁) = If² × Rf = V × If(分巻)
機械出力 = E × Ia
端子電圧 V = 200 V、線電流 IL = 52 A、界磁抵抗 Rf = 100 Ω、電機子抵抗 Ra = 0.2 Ω、機械損(鉄損+機械摩擦損) Pm = 300 W の分巻電動機の効率 η を求めよ。
Pin = V × IL = 200 × 52 = 10400 W
If = V / Rf = 200 / 100 = 2 A
Ia = IL − If = 52 − 2 = 50 A
電機子銅損 = Ia² × Ra = 50² × 0.2 = 2500 × 0.2 = 500 W
界磁銅損 = V × If = 200 × 2 = 400 W
機械損 = 300 W(問題文から)
損失合計 = 500 + 400 + 300 = 1200 W
出力 = 入力 − 損失合計 = 10400 − 1200 = 9200 W
η = 出力 / 入力 = 9200 / 10400 = 0.885…
η ≈ 88.5 %
①入力を求める(V×IL) → ②損失を全部洗い出す(電機子銅損・界磁銅損・機械損) → ③η = 出力/入力 で計算。「損失の洗い出し忘れ」が最も多い失点パターンです。問題文に書かれている損失を一覧にしてから計算するとミスが減ります。

よくある計算ミス5選 ─ これを知っていれば失点を防げる
| # | やりがちなミス | 正しい考え方 | 防止策 |
|---|---|---|---|
| 1 | 分巻電動機で Ia = IL と置く | Ia = IL − If。先にIf = V/Rfを求める | 「分巻電動機」と見たら真っ先にIfを計算 |
| 2 | 電動機と発電機でEの式の符号を逆にする | 電動機:E = V − IaRa(VよりEが小) 発電機:E = V + IaRa(EよりVが小) |
「電動機はEがVより小さい」で確認 |
| 3 | トルク計算でP = VIaとする(機械出力にVを使う) | 機械出力 P = E × Ia(逆起電力Eを使う) | 「機械出力はE×Ia、電気入力はV×Ia」 |
| 4 | 角速度ω = 2πn のままにする(÷60を忘れる) | ω = 2πn/60 (nの単位はmin⁻¹=rpm) | 「rpmをrad/sにするには÷60が必要」 |
| 5 | 効率計算で界磁銅損を忘れる | 損失 = 電機子銅損(Ia²Ra)+ 界磁銅損(V×If)+ 機械損 | 問題を解く前に損失の種類を箇条書きする |

計算パターン早見表:試験前の最終確認に使う
問題を見た瞬間に「このパターンだ」と判断するための早見表です。試験直前にこの表を眺めてからスタートすると、手が動きやすくなります。
| パターン | 問題文のキーワード | 使う式(立式の出発点) | 最初にやること |
|---|---|---|---|
| ① 逆起電力 | 「逆起電力を求めよ」「Eを求めよ」 | E = V − IaRa(電動機) | 分巻ならIf→Iaの順で求める |
| ② 始動電流 | 「始動時」「起動直後」「始動抵抗」 | Ia = V / (Ra + Rs) (E = 0) | 「E = 0」と書いてから立式 |
| ③ トルク・出力 | 「トルクを求めよ」「回転速度nが与えられる」 | P = EIa T = P/ω ω = 2πn/60 | まずEを求め、次にP、最後にT |
| ④ 速度変化 | 「〜に変えたときの回転速度」「n₂を求めよ」 | n₂/n₁ = E₂/E₁ × Φ₁/Φ₂ | 変化前後で「何が変わり何が変わらないか」を整理 |
| ⑤ 効率 | 「効率を求めよ」「損失が与えられる」 | η = 出力/入力 = (入力−損失)/入力 | 損失の種類を先に全部書き出す |
どのパターンでも、① 発電機か電動機かを確認 → ② 分巻なら If = V/Rf を先に計算 → ③ Iaを求める → ④ E を求める → ⑤ 問われている量を計算、という順番で進めると迷子になりません。

まとめ:5パターンを制すれば直流機の計算問題は制覇できる
| ① 逆起電力 | E = V − IaRa。分巻ならIf → Ia → E の順で。符号は電動機と発電機で逆 |
| ② 始動電流 | 始動直後はE = 0。Ia = V/(Ra + Rs)。Rs を逆算する問題も頻出 |
| ③ トルク・出力 | P = EIa → T = P/ω = P×60/(2πn)。ωの単位変換(÷60)を忘れずに |
| ④ 速度変化 | n₂/n₁ = E₂/E₁ × Φ₁/Φ₂。Φ一定なら n∝E。変化前後で変わる量を整理 |
| ⑤ 効率 | η = 出力/入力。損失を全部洗い出す(電機子銅損+界磁銅損+機械損)。洗い出し忘れが最大の失点源 |
直流機の計算問題は、使う式は5本だけです。問題を見た瞬間にパターンを見抜いて、分かっている量を埋めていく。この練習を今日の例題で手を動かしながら繰り返してみてください。
📚 次に読むべき記事
発電機の等価回路とE = V + IaRaの使い方をおさらい。計算問題の「発電機パターン」に対応できる。
パターン②④の背景理論。速度変化の方向(上がる・下がる)を直感的に理解できる。
直流機を攻略したら次は何を勉強すべきか。機械科目全体の優先順位と学習ロードマップを確認。
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