理論科目の解説

半導体の基礎│p型・n型の違いとpn接合

💡 この記事でわかること

半導体は、導体と絶縁体の中間の性質を持つ材料です。

p型半導体は「正孔(ホール)」が多く、n型半導体は「電子」が多い。この2つを接合するとpn接合ができ、ダイオードやトランジスタの基本構造になります!

この記事では、初心者でも絶対に理解できるように、真性半導体から不純物半導体、pn接合まで、合格に必要な知識をイメージ重視で丁寧に解説します!

⚡ こんな疑問を持っていませんか?

  • p型とn型の違いが曖昧…
  • 「正孔(ホール)」って何?
  • 多数キャリアと少数キャリアって?
  • 空乏層はどうやってできるの?

1️⃣ 真性半導体(純粋な半導体)

🔬 シリコン(Si)の基本構造

真性半導体とは、不純物を含まない純粋な半導体のことです。

🧪 代表例:シリコン(Si)
• 原子番号14番の元素
• 価電子が4個(4価)
• 隣の原子と共有結合で結晶を作る

💡 重要な性質:
• 低温では絶縁体のように振る舞う
• 高温では導体のように電流が流れる
温度で電気特性が変わる!

⚡ 電子と正孔(ホール)

熱エネルギーで何が起こる?

温度が上がると、共有結合が切れて:

1. 自由電子(e⁻)が生まれる
• マイナスの電荷を持つ
• 自由に動ける電子

2. 正孔(h⁺, ホール)が生まれる
• プラスの電荷を持つ「穴」
• 電子が抜けた跡
「席の空き」のようなもの!

真性半導体では: 電子数 = 正孔数 (n = p)

🎯 正孔の動きをイメージしよう!

💺 映画館の席で考えよう!

満席の映画館で、1つだけ空席(正孔)があるとします。

【席の移動】
1. 隣の人が空席に移動 → 元の席が空く
2. また隣の人が移動 → さらに席が移る
3. これを繰り返すと…

「空席(正孔)が移動しているように見える!」

実際には:
• 人(電子)は左に移動
• 空席(正孔)は右に移動
正孔はプラスの電荷のように振る舞う!

2️⃣ n型半導体(電子が多い)

🔵 5価の不純物を混ぜる

n型半導体の作り方:

シリコン(4価)に5価の元素を少量混ぜる!

🧪 5価の不純物(ドナー):
• リン(P)
• ヒ素(As)
• アンチモン(Sb)

💡 何が起こる?
• 5価元素は価電子が5個
• シリコンとの結合には4個しか使わない
余った電子1個が自由電子になる!

🔢 濃度: 約1億個に1個程度の不純物

📊 多数キャリアと少数キャリア

n型半導体の特徴:

✅ 多数キャリア:電子(e⁻)
• 圧倒的に多い
• 電流を運ぶ主役
• ドナーから供給される

❌ 少数キャリア:正孔(h⁺)
• わずかに存在
• 熱励起で生成
• 多数キャリアの1万分の1以下

n型: 電子(e⁻) >>> 正孔(h⁺)

覚え方: n = negative(負) = 電子!

3️⃣ p型半導体(正孔が多い)

🔴 3価の不純物を混ぜる

p型半導体の作り方:

シリコン(4価)に3価の元素を少量混ぜる!

🧪 3価の不純物(アクセプタ):
• ホウ素(B)
• アルミニウム(Al)
• ガリウム(Ga)
• インジウム(In)

💡 何が起こる?
• 3価元素は価電子が3個
• シリコンとの結合には4個必要
電子が1個足りない = 正孔(穴)ができる!

📊 多数キャリアと少数キャリア

p型半導体の特徴:

✅ 多数キャリア:正孔(h⁺)
• 圧倒的に多い
• 電流を運ぶ主役
• アクセプタから供給される

❌ 少数キャリア:電子(e⁻)
• わずかに存在
• 熱励起で生成
• 多数キャリアの1万分の1以下

p型: 正孔(h⁺) >>> 電子(e⁻)

覚え方: p = positive(正) = 正孔!

🎨 色で覚える最強の暗記法!

🔵 n型半導体 = 青色(Blue)
• Blue → Negative(負) → 電子(e⁻)
• 電子が多い
• 5価の不純物(P, As, Sb)

🔴 p型半導体 = 赤色(Pink/Red)
• Pink → Positive(正) → 正孔(h⁺)
• 正孔が多い
• 3価の不純物(B, Al, Ga, In)

この色イメージで絶対に忘れない!

4️⃣ p型とn型の徹底比較

📊 比較表で一目瞭然!

比較項目 p型半導体 n型半導体
不純物 3価元素(B, Al, Ga, In) 5価元素(P, As, Sb)
不純物の名称 アクセプタ(受容体) ドナー(供与体)
多数キャリア 正孔(h⁺, ホール) 電子(e⁻)
少数キャリア 電子(e⁻) 正孔(h⁺)
キャリア濃度 p >> n n >> p
色で覚える 🔴 Pink = Positive 🔵 Blue = Negative
全体の電荷 どちらも電気的に中性

💡 重要ポイント

⚠️ よくある勘違い:

❌ 間違い:「p型は正に帯電している」
→ p型もn型も全体としては電気的に中性です!

✅ 正しい理解:
• p型:正孔(プラスのキャリア)が多いだけ
• n型:電子(マイナスのキャリア)が多いだけ
• 不純物原子自体は中性

「キャリアの種類」の違いであって、「電荷の偏り」ではない!

5️⃣ pn接合と空乏層の形成

🔌 p型とn型を接合すると?

pn接合とは:

p型半導体とn型半導体を接合した構造。
ダイオードの基本構造!

📝 接合直後に起こること:

ステップ1:拡散が始まる
• n型の電子 → p型へ移動
• p型の正孔 → n型へ移動
• 濃度差があるから移動する(拡散現象)

ステップ2:再結合
• 電子と正孔が出会うと消滅
• 接合面付近のキャリアが減る

ステップ3:空乏層ができる!
• キャリアが無い領域が形成される
これが「空乏層」!

🌟 空乏層の特徴

空乏層(Depletion Layer)の性質:

1. キャリアが無い
• 自由電子も正孔もほとんど無い
• 絶縁体のような振る舞い

2. イオンだけが残る
• p側:マイナスイオン(アクセプタ)
• n側:プラスイオン(ドナー)

3. 内部電界ができる
• n側からp側へ向かう電界
• これ以上の拡散を止める

4. 障壁電位が形成される
• シリコンで約0.6~0.7V
• ゲルマニウムで約0.2~0.3V

📏 空乏層の幅: 約0.1~1μm(マイクロメートル)

🎯 イメージで理解:国境の警備

🗺️ 国境で考えよう!

p国とn国が隣接している状況:

【初期状態】
• p国:住民(正孔)がたくさん
• n国:住民(電子)がたくさん

【国境開放直後】
• p国の住民 → n国へ移動
• n国の住民 → p国へ移動
• 国境付近で出会って消滅(再結合)

【平衡状態】
• 国境付近に「無人地帯(空乏層)」ができる
• p国側:マイナスの警備員(イオン)だけ残る
• n国側:プラスの警備員(イオン)だけ残る
• 警備員が電界を作って、これ以上の移動を防ぐ!

この「無人地帯」が空乏層のイメージ!

📝 電験三種での出題ポイント

頻出問題タイプ:

1. p型・n型の判別
「3価の不純物を加えた半導体は?」
→ p型半導体(正孔が多数キャリア)

2. 多数・少数キャリアの判定
「n型半導体の多数キャリアは?」
→ 電子(e⁻)

3. pn接合の性質
「空乏層の説明として正しいものは?」
→ キャリアがほとんど存在しない領域

4. 障壁電位の数値
「シリコンのpn接合の障壁電位は?」
→ 約0.6~0.7V

💡 「機械」科目で毎年1~2問出題される重要テーマ!

📚 まとめ│半導体の基礎で合格する

🎯 この記事の重要ポイント

  • 真性半導体:電子数=正孔数(n=p)
  • n型:5価不純物で電子が多数キャリア(Blue = Negative)
  • p型:3価不純物で正孔が多数キャリア(Pink = Positive)
  • pn接合で空乏層ができる(キャリアが無い領域)
  • 障壁電位:Si約0.6~0.7V、Ge約0.2~0.3V
  • ダイオード、トランジスタの基本構造!

💪 次のステップ

初心者のあなたへ:
まずは「色で覚える」暗記法を使いましょう!青=n型(電子)、ピンク=p型(正孔)で絶対忘れません。

電験三種受験者のあなたへ:
過去問で「半導体の基礎」を3~5問解いてみましょう。多数キャリアと少数キャリアの判定問題は必ず出ます!

さらに深く学びたいあなたへ:
pn接合の順方向バイアス・逆方向バイアス、ダイオードの特性など、応用分野に進みましょう!

タグ

-理論科目の解説
-