「磁力線って何?」「磁束と磁束密度の違いがよく分からない…」「結局、磁気って何なの?」
そんな疑問を抱えているあなたへ。電験三種の理論分野で頻出の磁気の基礎を、今日こそ完璧にマスターしましょう。
結論から言うと、磁気とは磁石が持つ力のことで、磁力線は磁界を可視化したもの、磁束Φは磁力線の総本数、磁束密度Bは単位面積あたりの磁束です。これらは全て密接に関係していて、理解すれば電磁気学の土台がしっかり固まります。
- 磁石の基本性質(N極・S極、引力・斥力)を身近な例で理解
- 磁力線の4つのルールと、砂鉄で見える磁界の正体
- 磁束Φ(ウェーバ)の意味と、磁力線の「束」という考え方
- 磁束密度B(テスラ)の本質と、実生活での具体例
この記事では、難しい数式は最小限に、「イメージ重視」で解説していきます。中学生でも理解できるよう、身近な例えや図解を豊富に使いますので、安心してついてきてくださいね。
目次
磁気とは?- 目に見えない力の世界
まず、磁気とは何でしょうか? 簡単に言うと、磁石が持っている「物を引きつけたり、反発したりする力」のことです。
冷蔵庫に紙を貼り付けるマグネット、方位磁針、スピーカーの中のモーター。これらはすべて磁気の力を利用しています。目には見えませんが、私たちの生活のあちこちで活躍しているんですね。
電験三種では、この目に見えない磁気を数値化し、計算できるようにすることが求められます。そのために必要な概念が、磁力線・磁束・磁束密度なんです。
それでは、磁石の基本性質から順番に見ていきましょう!

磁石の基本性質:N極とS極
磁石には必ずN極とS極がペアで存在する
磁石には必ずN極(北極)とS極(南極)の2つの極があります。これは絶対のルールです。
面白いのは、磁石を真っ二つに割っても、N極だけ、S極だけを取り出すことはできません。割った瞬間に、それぞれの破片が新しいN極とS極を持った小さな磁石になるんです。
これは「磁極は単独で存在できない」という磁気の大原則です。物理学では、このN極だけ、S極だけの状態を「磁気単極子(モノポール)」と呼びますが、自然界では発見されていません。
異なる極は引き合い、同じ極は反発する
2つの磁石を近づけると、面白いことが起こります。
- N極とS極を近づける → ピタッとくっつく(引力)
- N極とN極を近づける → バチッと離れる(斥力)
- S極とS極を近づける → バチッと離れる(斥力)
これは「異極は引き合い、同極は反発する」という磁気の基本法則です。まるで人間関係のようですね。正反対の性格の人が惹かれ合うように、異なる極も引き合うんです。
身近な例:冷蔵庫のマグネット
冷蔵庫にマグネットがくっつくのも、この原理です。マグネットのS極が、冷蔵庫の扉(鉄)に磁化を起こさせ、そこにN極が生まれます。するとマグネットのS極と扉のN極が引き合って、ピタッとくっつくんですね。
逆に、2つのマグネットの同じ極同士を無理やりくっつけようとしても、反発力で離れてしまいます。押してもスルッと滑って逃げていく、あの感覚です。
「異なる極は引き合う」「同じ極は反発する」
「異引(いいん)、同反(どうはん)」と語呂合わせで覚えましょう!

磁力線:磁界を「見える化」したもの
磁力線とは何か?
磁石の周りには磁界(磁場)という目に見えない空間が広がっています。この磁界の様子を分かりやすく表現するために考え出されたのが磁力線です。
小学校の理科の実験で、磁石の上に紙を置いて砂鉄をパラパラとまいた記憶はありませんか? あの砂鉄が描き出す美しい曲線こそが、磁力線を可視化したものなんです。
磁力線は実際には存在しない「仮想の線」ですが、磁界の強さや方向を理解するための非常に便利な道具です。
磁力線の4つのルール
磁力線には、覚えておくべき重要なルールが4つあります。
- N極から出て、S極に入る - 磁力線には向きがある
- 磁力線同士は交わらない - 途中で交差することはない
- 磁力線は閉曲線 - 磁石の内部でS極からN極に戻り、ループを形成
- 磁力線の密度が高い=磁界が強い - 線が密集しているほど強力
身近な例で理解:川の流れに例えると
磁力線を理解するには、川の流れをイメージすると分かりやすいです。
N極は「水源(源流)」、S極は「河口」です。水は必ず高いところ(水源)から低いところ(河口)へ流れますよね。同じように、磁力線もN極という「スタート地点」から、S極という「ゴール地点」へ向かって流れます。
そして、川の流れが速い場所(急流)は水の量が多く、遅い場所(緩流)は少ないように、磁力線が密集している場所は磁界が強く、疎らな場所は磁界が弱いんです。
磁力線を実際に見てみよう
理科の実験で使う砂鉄は、実は小さな鉄の粒です。これらの粒が磁界の中に置かれると、一つ一つが小さな磁石になり、磁力線に沿って整列します。
こうして砂鉄が描き出すパターンを見ると、磁極の近くでは線が密集し、遠くでは疎らになっていることが分かります。これが「磁力線の密度=磁界の強さ」を視覚的に示してくれるんですね。

磁束Φ(ファイ):磁力線の総本数
磁束とは「磁力線の束」
磁力線の概念を理解したら、次は磁束(じそく)です。
磁束とは、ある面積を貫く磁力線の総本数のことです。記号はギリシャ文字のΦ(ファイ)、単位はWb(ウェーバ)を使います。
「束(たば)」という漢字が入っているのがポイントです。磁力線が「束」になっている様子をイメージしてください。矢の束、花束、光の束…そんな感じで、磁力線も束ねて数えるんですね。
磁束Φ = ある面積を貫く磁力線の総本数
単位: Wb(ウェーバ)
1 Wb = 10⁸本の磁力線
身近な例で理解:魚を捕る網
磁束を理解するには、魚を捕る網をイメージすると分かりやすいです。
川に網を広げて魚を捕るとき、網が大きいほどたくさんの魚が捕れますよね。磁束も同じで、面積が大きいほど、多くの磁力線を「捕まえる」ことができます。
また、網を川の流れに対して垂直に立てると最も多く捕れますが、斜めにすると捕れる量は減ります。磁束も同じで、磁力線に垂直な面で測ると最大値になり、斜めになると減少します。
磁束の大きさは何で決まる?
磁束Φの大きさは、次の2つの要素で決まります。
- 面積S:測定する面積が大きいほど、Φは大きくなる
- 磁界の強さ:磁界が強い場所ほど、単位面積あたりの磁力線が多い
例えば、同じ磁石の近くでも、小さな面で測るより大きな面で測る方が、より多くの磁力線を捕まえられます。これは網を大きくすれば魚がたくさん捕れるのと同じ理屈です。
【電験三種・理論】ガウスの法則|電気力線と電束の関係 →

磁束密度B(テスラ):磁界の「強さ」を表す
磁束密度とは「単位面積あたりの磁束」
最後に、最も重要な概念磁束密度Bを理解しましょう。
磁束密度とは、単位面積(1m²)あたりに通過する磁束のことです。つまり、「磁力線がどれだけ密集しているか」を表す指標なんですね。記号はB、単位はT(テスラ)を使います。
B = Φ / S
B:磁束密度 [T](テスラ)
Φ:磁束 [Wb](ウェーバ)
S:面積 [m²]
1 T = 1 Wb/m²
身近な例で理解:人口密度で考える
磁束密度は、人口密度で考えると分かりやすいです。
東京都心は1km²あたりの人口が多いので「人口密度が高い」と言いますよね。逆に、地方の田舎は1km²あたりの人口が少ないので「人口密度が低い」です。
磁束密度も同じで、1m²あたりの磁力線が多ければ「磁束密度が高い=磁界が強い」、少なければ「磁束密度が低い=磁界が弱い」となります。磁束密度は磁界の強さそのものを表す指標なんです。
磁束密度の具体例:身の回りの磁界
実際の磁束密度の値を見てみると、磁気の強さがイメージしやすくなります。
| 対象 | 磁束密度B |
|---|---|
| 地球の磁界(地磁気) | 約0.00005 T |
| 冷蔵庫の磁石 | 約0.01 T |
| 永久磁石(ネオジム) | 約0.5〜1 T |
| MRI装置(医療用) | 1.5〜3 T |
| 超強力磁石(実験室) | 10 T以上 |
地球全体を包む地磁気はわずか0.00005Tですが、方位磁針を動かすには十分です。一方、MRI装置は1.5〜3Tという非常に強力な磁界を使って、体内の水素原子を揺さぶり、画像を作り出しています。
磁束Φと磁束密度Bの関係を整理
ここまでの内容を整理しましょう。混同しやすいΦとBの違いをしっかり押さえてください。
| 項目 | 磁束Φ | 磁束密度B |
|---|---|---|
| 定義 | 磁力線の総本数 | 単位面積あたりの磁束 |
| 記号 | Φ(ファイ) | B |
| 単位 | Wb(ウェーバ) | T(テスラ) |
| 意味 | 「量」を表す (総数) |
「強さ」を表す (密度) |
| 公式 | - | B = Φ / S |
| 例え | 魚の総数 | 魚の混雑度 |
磁束Φ:「束」=まとめた「量」→ 総本数
磁束密度B:「密度」=「強さ」→ 1m²あたりの本数
「量」と「強さ」の違いを意識すれば混同しません!
まとめ:磁気の基礎を完全マスター
磁気の基礎、いかがでしたか? 磁力線、磁束、磁束密度という3つの概念は、最初は混乱しやすいですが、イメージと身近な例えで理解すれば、スッと頭に入ります。
- 磁石の基本:N極とS極は必ずペア。異極は引き合い、同極は反発。
- 磁力線:磁界を可視化した仮想の線。N極から出てS極に入る。密度=強さ。
- 磁束Φ:磁力線の総本数。単位はWb(ウェーバ)。「量」を表す。
- 磁束密度B:単位面積あたりの磁束。単位はT(テスラ)。「強さ」を表す。
- 公式:B = Φ / S (密度=総数÷面積)
電験三種の試験では、この磁気の基礎知識をもとに、電磁誘導、変圧器、モーターといった応用分野に進んでいきます。今回学んだ内容は、すべての土台になる超重要事項です。
今日学んだ内容を何度も復習して、「磁力線・磁束・磁束密度の違い」を自分の言葉で説明できるレベルまで理解を深めてくださいね。
あなたの合格を心から応援しています。頑張ってください!