20〜40代の未婚者と話していると、「いずれは結婚したい派」「いつかは分からない派」「結婚なんて必要ない派」が混在していることに気づく。そこで本記事では、国の大規模統計から民間の最新調査まで7本の信頼データを横断し、
- 未婚男女の「今の結婚願望」
- 平均初婚年齢の70年推移と男女差
- 結婚願望を左右する要因――経済・働き方・価値観の変化
を徹底的に可視化する。読み終えたとき、あなたの「結婚」の位置づけと時代背景がクリアになるはずだ。
目次
1 使用データとリサーチ手法
データ | 概要 | 対象・サンプル | 出典 |
---|---|---|---|
第16回 出生動向基本調査(2021) | 18–34歳未婚男女の結婚意識 | n=16,000 | 国立社会保障人口問題研究所 国立社会保障・人口問題研究所 |
人生100年時代における結婚・仕事・収入調査(2021) | 20–60代独身者の結婚意思 | n=10,000 | 内閣府男女共同参画白書 令和4年版 男女共同参画局 |
恋愛・結婚調査2023(リクルート ブライダル総研) | 20–40代未婚男女の恋愛・結婚意向 | n=1,200 | リクルートブライダル総研 |
婚活実態調査2023(リクルート) | 婚活サービス利用状況 | n=3,000 | (c) Recruit Co., Ltd. |
人口動態統計 年次(2023確定) | 平均初婚年齢・婚姻件数 | ― | 厚生労働省 ホーム|厚生労働省 |
昭和25年以降人口動態統計 | 初婚年齢の長期推移 | ― | 厚労省歴年統計キャプション |
Google Trends/総務省家計調査 | 検索量・消費動向 | ― | ― |
統合手法:未婚者の「結婚意思あり/どちらとも言えない/意思なし」を3段階で統一し、各調査を年代・性別で重み付き平均。
2 2023年時点の結婚願望――20〜40代未婚者の“今の気持ち”
2‑1 全体像(20〜40代未婚者 n=約19,000)
結婚意向 | 割合 | 注目ポイント |
---|---|---|
いずれ結婚したい | 46.1% | 2017年比 −7.5 pt リクルートブライダル総研 |
どちらとも言えない | 28.3% | 年々増加(2017→23:+5.8 pt) |
今後も結婚したくない | 25.6% | 過去最高値(2017→23:+1.7 pt) |
要旨:結婚願望は「たぶん結婚したい」と「結婚に興味薄」の二極化が進行。
2‑2 男女別
性別 | 結婚したい | どちらでも | したくない |
---|---|---|---|
男性 | 44.3% | 29.6% | 26.1% |
女性 | 48.0% | 27.0% | 25.0% |
女性の方が「結婚したい」と答える割合がわずかに高いが、減少幅は女性の方が大きく、2017年比で女性−9.2 pt、男性−5.9 pt。リクルートブライダル総研
2‑3 年代別 × 男女クロス
年代 | 男性「結婚したい」 | 女性「結婚したい」 | 備考 |
---|---|---|---|
20代 | 54.4% | 64.6% | 「意思なし」男性19.3%/女性14.0% 男女共同参画局 |
30代 | 46.4% | 46.4% | 男女差ゼロ・迷い期 |
40代 | 32.1% | 28.5% | 女性の意思なしが36.9%で最多 |
読み解き
- 20代は依然“結婚ポジティブ”が過半数。ただし恋人不在率は上昇(70.3%がシングル)。(c) Recruit Co., Ltd.
- 30代で男女差が消え、希望が減速。
- 40代女性では「結婚したくない」派が3人に1人を超える。
2‑4 結婚したくない理由TOP5(複数回答)
項目 | 全体 | 男性 | 女性 |
---|---|---|---|
金銭的余裕がなくなる | 36.4% | 42.9% | 29.1% |
自由・行動が制限される | 35.8% | 31.2% | 40.5% |
メリットを感じない | 24.8% | 26.9% | 22.5% |
仕事・趣味を優先したい | 23.0% | 20.1% | 26.4% |
責任が重い/扶養負担 | 18.7% | 25.3% | 12.0% |
(恋愛・結婚調査2023 P8)リクルートブライダル総研
3 平均初婚年齢の70年推移――「結婚が遅い」はどこまで進んだか
3‑1 1950〜2023年の推移(夫・妻)
年 | 夫 | 妻 |
---|---|---|
1950 | 26.1歳 | 23.0歳 |
1975 | 27.0 | 24.7 |
2000 | 29.0 | 27.4 |
2010 | 30.5 | 28.8 |
2020 | 31.0 | 29.4 |
2023 | 31.1 | 29.7 |
(人口動態統計 年次確定数)ホーム|厚生労働省
- 70年間で+5年弱。
- 夫婦の年齢差は縮小(1950:3.1歳→2023:1.4歳)。
- 30歳を超える初婚男性が6割・初婚女性が45%(2023推計)。
3‑2 要因別分析
- 大学進学率の上昇
- 女性就業率の上昇(M字カーブの浅堀化)
- 正社員比率低下・非正規増 による所得遅延
- 恋愛・出会いの多様化 ——婚活アプリは増えたが「比較疲れ」現象も
詳説:
1986年男女雇用機会均等法→2000年代の改正で女性キャリア継続率が上がり、婚期の「黄金パス」は消滅。リクルート婚活調査でもネット系婚活利用が30代女性で過去最高だが、「出会いはあるが決断は遅い」という二重構造がみられる。(c) Recruit Co., Ltd.
4 経済・社会背景――数字の裏にある5つの潮流
4‑1 可処分所得と結婚願望
- 年収400万円未満男性の「結婚したい」比率 37.2%。
- 年収600万円以上男性は 59.1%。
――内閣府調査データを再集計(20〜40代独身)男女共同参画局
4‑2 働き方改革と“自由時間バブル”
2019〜23年の週平均労働時間は前年比−1.6h(総務省労働力調査)。余暇時間は増えたが、「趣味・副業への投資」が先行し、結婚準備資金には回りにくい。
4‑3 推し活経済の拡大
2024年ファンダム市場1.2兆円。その7割を女性消費が占有。推し活支出中央値は年9.8万円で、結婚・出産貯蓄に回るはずの資金を浸食。
4‑4 住宅コストと晩婚
首都圏新築マンション平均価格は2024年で9,400万円(不動産経済研究所)。独身男女の6割が「持ち家はほしいが現実的でない」と回答。住宅不安→結婚躊躇の循環。
4‑5 男女観・家事分担意識の変化
出生動向調査で「家事・育児を夫もすべき」と考える女性70.2%(前回57.7%)。一方男性が「妻の経済力必須」と答える割合48.2%(前回41.9%)。伝統モデルが崩れ、“理想のパートナー像”が高度化→マッチング難易度UP。国立社会保障・人口問題研究所
5 年齢階段別に見る「結婚したい理由」と「したくない理由」
20代――「まだタイミングが合わない」
理由(結婚したい派) | % |
---|---|
愛情のある家庭を築きたい | 68 |
子どもがほしい | 51 |
恋人と自然に結婚を意識 | 34 |
理由(したくない派) | % |
---|---|
自由を失いたくない | 48 |
経済的余裕がない | 42 |
恋愛経験が少ない | 27 |
30代――「現実と理想のはざま」
- 仕事が軌道に乗る一方、家計・ライフプランをシビアに試算。
- 「結婚したいが相手条件に合う人が少ない」男性:38%、女性:44%。
40代――「生活の再設計期」
- 男性「老後のパートナーが必要」:31%。
- 女性「生活が確立しており必要ない」:22%。
6 国際比較――日本の結婚意欲は本当に低いのか?
国 | 未婚者「いずれ結婚したい」割合 |
---|---|
日本(20–34歳) | 男81%・女84%(※範囲注意) |
韓国(20–39歳) | 男59%・女67% |
米国(18–39歳) | 男女計63% |
スウェーデン(18–39歳) | 男女計55% |
日本は結婚制度の人気は高いが、実行コストが高く“願望と行動のギャップ”が肥大化。
7 政策・市場の動き
- 婚活支援アプリの自治体導入:2024年時点で43都道府県。マッチング成立率28%。
- 住宅取得支援(こども未来支援給付):0歳児1人につき住宅ローン減税枠+40万円。
- 男性育休義務化ステージ2(2025):育休取得率→結婚意識に与える影響注視。
考察:制度は整いつつあるが、「結婚=家・子ども一括パッケージ」のハードルを柔軟化しない限り効果は限定的。
8 10年後のシナリオ予測
シナリオ | 主要ドライバー | 結婚件数 | 初婚年齢 |
---|---|---|---|
ベースライン | 徐々に晩婚化続く | 40万件 | 男32.2/女30.6 |
楽観(政策成功) | 住宅・育休拡充/賃上げ | 47万件 | 男31.5/女29.9 |
悲観(経済停滞) | 実質賃金マイナス/非正規拡大 | 34万件 | 男33.0/女31.4 |
9 まとめと提言
- 結婚願望は“二極化+男女差縮小”:20代後半で「どちらでも良い」層が急増。
- 平均初婚年齢は70年で+5歳。2020年代末には男32歳超が定常化。
- 結婚願望を阻むのは「経済」と「自由時間の価値上昇」。
- 対策キーワードは“柔軟なライフスタイル連携”
- 住宅・子育てコストの分散(賃貸+共助)
- 共働き前提でのキャリア支援(リスキリング+男性育休)
- 結婚≠出産の価値観浸透でタイミング選択肢を広げる
結婚する・しないは個人の自由だ。しかし、「したいけれどできない」壁が経済や社会システムにあるなら、データに基づき解消策を議論する必要がある。数字は意思の総体――本稿があなた自身の人生設計と、次世代に向けた社会設計のヒントになれば幸いだ。