自己理解

“イベント後の空虚感”はなぜ起こる? 楽しい後に落ち込む心を整える5つの仕組み

1 「最高だったのに、なぜこんなに虚しいの?」

ライブが終わった帰り道、旅行から戻った翌日の職場、友人と別れた直後の静かな部屋―
さっきまで胸がはじけるほど楽しかったのに、突如として心にぽっかり穴が開く。

「私だけおかしいのかな」
「楽しい時間を過ごせたはずなのに、どうして落ち込むんだろう」

そんな戸惑いを抱える人は少なくありません。海外では post-holiday blues、日本でも「燃え尽き症候群」「楽しい後うつ」などと呼ばれる、ごく一般的な現象です。メンタルケア企業を扱う企業は「多くの人が経験する一過性の落ち込み」と説明しています。
つまり あなた一人の問題ではない のです。むしろ、感受性が豊かな人ほど振れ幅が大きくなりやすい。これが本質だと言えます。


2 仕組み① ドーパミンの“揺り戻し”が起きている

楽しい刺激を受けると脳内ではドーパミンが大量に放出され、モチベーションや快感がピークに達します。しかし分泌量は長くは続かず、イベント終了後には一気にベースライン以下に落ち込むことが研究で示されています。すると「さっきまでの幸福感」とのギャップで虚無感・疲労感を覚えやすい。

ポイント

  • 楽しい時間=ドーパミン急上昇
  • 終わった直後=反動で急降下
  • ギャップが「心の空白感」を生む

3 仕組み② “HSP”など繊細な気質ほど揺れ幅が大きい

HSP(Highly Sensitive Person)は外部刺激に敏感で、ポジティブ感情もネガティブ感情も人一倍強く体験すると言われます。幸せホルモンの波が大きいぶん、引き潮も急。楽しかったイベント後に 周囲より深い虚しさ を感じるのは、気質ゆえの自然な反応なのです。

  • 刺激受容が強い → 興奮度が高い
  • 情報処理が深い → 余韻を長く味わう
  • 共感性が高い → 他人の幸福・別れの寂しさも同時に抱え込む

だからこそ、「私は感受性が豊かなんだ」と肯定し、揺れ幅と共存する仕組みを持つことが大切です。


4 仕組み③ 期待値のオーバーシュート

心理学には「ヘドニック・トレッドミル(快楽順応)」という概念があります。刺激が大きいほど後のベースライン回帰も急になる。旅行前に「めちゃくちゃ楽しいに違いない!」と期待値を極端に上げるほど、終わった後の落差が増幅されます。楽しいイベント自体は悪くないものの、“ピークばかりを追い求める” 心理が落ち込みを招くわけです。


5 対策の3ステップ

ステップA イベント後の“余韻クッション”を作る

  1. 「余白タイム」を予定表に組み込む
    • ライブ翌日はカフェで静かに音楽を振り返る
    • 旅行最終日は半日早く帰宅し、写真整理だけの日に充てる
  2. あえて“静かな楽しみ”を用意
    • ハーブティーを淹れて旅日記を書く
    • 好きなアロマでセルフマッサージ

余韻を味わう中間ステップを挟むことで、ドーパミン急降下を緩やかにできます。


ステップB “小さな楽しみ”を日常に点在させる

  • 週1でお気に入りパン屋に寄る
  • 15分だけ公園を散歩し、空を見上げる
  • 毎晩寝る前に感謝日記を3行書く

Lyra Health は「次の楽しみをカレンダーに入れておくと落ち込みが和らぐ」と提言しています。(Lyra Health)“次の小さなご褒美” を複数セットすると、ピークとベースの差が縮まり、心の波をならせます。


ステップC 身体ケアと規則正しい生活リズム

厚労省ヘルプノートは「睡眠不足と気分障害の関連」を示しています。(厚生労働省 )楽しいイベントほど睡眠・食事が乱れがち。帰宅したらまず

  1. ぬるめの入浴で副交感神経をON
  2. タンパク質+ビタミンB群を意識した夕食
  3. 寝る前スマホは20分だけ

身体が整うと、ドーパミンの回復も早まり、翌日の「反動」が軽減されます。


6 「自分だけじゃない」と実感する方法

  • 同じ体験をした友人と感想シェア
    「ライブロスつらいよね」と言い合うだけで孤立感が薄れる。
  • SNSでハッシュタグ検索 #postholidayblues
    世界中の人が同じ落ち込みを共有している。
  • オンラインコミュニティに参加
    HSP向けフォーラムで感情を言語化→客観視効果が倍増。

「誰もが経験する自然な揺れ幅」と理解することで、自己否定は小さくなります。


7 それでも辛いときは専門家へ

post-event let-down が2週間以上続き、仕事や勉強に支障が出る場合は 気分障害のサイン かもしれません。
Calm や Health.com も「長引く場合は専門家に相談を」と呼びかけています。CalmHealth

  • メンタルクリニックで気軽に相談
  • カウンセリングで具体的なセルフケアプランを作る

まとめ:揺れ幅は「豊かな感受性」の証拠

楽しい時間の後で落ち込む――それは感情の振れ幅が大きい、繊細で豊かな心がある証。
ドーパミンの生理的揺り戻しも、ヘドニック順応も、あなたの意思では止められません。

そこで大切なのは 自分を責める代わりに仕組みを整えること

  1. 余韻クッションでソフトランディング
  2. 小さな楽しみを日常に配置し波をならす
  3. 睡眠・食事・運動で身体から心を支える

そして何より、「同じ感情を抱える仲間が世界中にいる」と知ること。
揺れ幅も繊細さも、あなたの魅力の一部です。安心して深呼吸し、次の楽しみへ向かう準備を始めましょう。

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