実験計画法

一元配置実験の計算方法を完全図解|分散分析表を1から作る全手順

💡 こんな悩みはありませんか?

✅「一元配置実験って聞いたことあるけど、実際の計算方法がわからない…」

✅「分散分析表って、どうやって埋めていくの?手順を知りたい」

✅「教科書を見てもピンとこない…具体例で学びたい!」

🎯 この記事を読むとわかること

✔ 一元配置実験の計算を「0から完成まで」手を動かして学べる

✔ 分散分析表の各項目(平方和・自由度・平均平方・F値)を自分で計算できる

✔ F検定で「効果あり/なし」を判定する方法

✔ Excelでの計算方法もわかる

🌟 はじめに:一元配置実験とは?

一元配置実験(One-way ANOVA)とは、1つの因子に複数の水準を設定し、その効果を調べる実験です。

【具体例】

🌡️ 因子:加熱温度

📊 水準:50℃、70℃、90℃(3水準)

📈 目的:「温度を変えると製品の強度が変わるか?」を統計的に検証

👉 一元配置実験の基礎知識は「一元配置実験とは?」で詳しく解説しています。

この記事では、実際のデータを使って、分散分析表を1から完成させる全手順を解説します!

📋 今回使う実験データ

実験の設定

🧪 実験内容

目的:加熱温度が製品の引張強度に与える影響を調べる

因子:温度(1因子)

水準:50℃、70℃、90℃(3水準)

繰り返し:各温度で3回測定(繰り返し数 r = 3)

実験データ(引張強度)

温度 1回目 2回目 3回目 合計 平均
50℃ 45 47 46 138 46.0
70℃ 52 54 53 159 53.0
90℃ 48 50 49 147 49.0
総合計 444 49.3

このデータから、「温度によって強度に有意な差があるか?」を統計的に検証していきます。

📊 【STEP 0】分散分析の全体像を理解する

分散分析表の完成形(ゴール)

これから作る分散分析表の完成形を先に見ておきましょう。

要因 平方和(S) 自由度(φ) 平均平方(V) F値
温度(因子A)
誤差(e)
総計(T)

この「?」を全て埋めていくのが、これからのミッションです!

💡 計算の流れ

STEP 1 → 修正項(CT)を計算

STEP 2 → 総平方和(ST)を計算

STEP 3 → 群間平方和(SA)を計算

STEP 4 → 群内平方和(Se)を計算(引き算で求める)

STEP 5 → 自由度(φ)を計算

STEP 6 → 平均平方(V)を計算

STEP 7 → F値を計算

STEP 8 → F検定で判定

それでは、順番に計算していきましょう!

🔢 【STEP 1】修正項(CT)の計算

修正項とは?

修正項(CT: Correction Term)とは、データ全体の「底上げ分」を取り除くための補正値です。

📐 修正項の計算式

CT = T² / N

T:全データの総和

N:全データ数

実際に計算してみる

📊 データの確認

総和(T)= 45 + 47 + 46 + 52 + 54 + 53 + 48 + 50 + 49 = 444

データ数(N)= 3水準 × 3回 = 9

🔢 修正項の計算

CT = 444² / 9

CT = 197,136 / 9

CT = 21,904

💡 Excelでの計算

=SUM(全データ範囲)^2 / COUNT(全データ範囲)

例:=SUM(A2:C4)^2 / COUNT(A2:C4)

🔢 【STEP 2】総平方和(ST)の計算

総平方和とは?

総平方和(ST: Total Sum of Squares)とは、全データのばらつきの総量を表す値です。

📐 総平方和の計算式

ST = Σ(各データ²) - CT

全てのデータを2乗して合計し、修正項を引く

実際に計算してみる

📊 各データの2乗和

45² + 47² + 46² + 52² + 54² + 53² + 48² + 50² + 49²

= 2,025 + 2,209 + 2,116 + 2,704 + 2,916 + 2,809 + 2,304 + 2,500 + 2,401

= 21,984

🔢 総平方和の計算

ST = 21,984 - 21,904

ST = 80

💡 Excelでの計算

=SUMSQ(全データ範囲) - CT

例:=SUMSQ(A2:C4) - 21904

🔢 【STEP 3】群間平方和(SA)の計算

群間平方和とは?

群間平方和(SA: Sum of Squares between groups)とは、「温度を変えた効果」によるばらつきを表します。

📐 群間平方和の計算式

SA = Σ(各水準の合計² / 繰り返し数) - CT

実際に計算してみる

📊 各水準の合計(再掲)

50℃の合計:138

70℃の合計:159

90℃の合計:147

繰り返し数(r):3

🔢 群間平方和の計算

SA = (138² / 3) + (159² / 3) + (147² / 3) - CT

SA = (19,044 / 3) + (25,281 / 3) + (21,609 / 3) - 21,904

SA = 6,348 + 8,427 + 7,203 - 21,904

SA = 21,978 - 21,904

SA = 74

この「74」が温度の変更によって生じたばらつきを表します。

🔢 【STEP 4】群内平方和(Se)の計算

群内平方和とは?

群内平方和(Se: Sum of Squares within groups)とは、温度の効果以外のばらつき(誤差)を表します。

📐 群内平方和の計算式

Se = ST - SA

(引き算で簡単に求まります!)

実際に計算してみる

🔢 群内平方和の計算

Se = ST - SA

Se = 80 - 74

Se = 6

この「6」が偶然のばらつき(測定誤差など)を表します。

🔢 【STEP 5】自由度(φ)の計算

自由度とは?

自由度(φ: degrees of freedom)とは、「自由に決められる数の個数」を表します。

📐 自由度の計算式

総自由度:φT = N - 1

群間自由度:φA = a - 1(aは水準数)

群内自由度:φe = N - a

実際に計算してみる

🔢 自由度の計算

総自由度:φT = 9 - 1 = 8

群間自由度:φA = 3 - 1 = 2

群内自由度:φe = 9 - 3 = 6

確認:φT = φA + φe → 8 = 2 + 6 ✅

🔢 【STEP 6】平均平方(V)の計算

平均平方とは?

平均平方(V: Variance)とは、平方和を自由度で割った値で、「1自由度あたりのばらつき」を表します。

📐 平均平方の計算式

VA = SA / φA

Ve = Se / φe

実際に計算してみる

🔢 平均平方の計算

VA(群間平均平方):74 / 2 = 37.0

Ve(群内平均平方):6 / 6 = 1.0

🔢 【STEP 7】F値の計算

F値とは?

F値とは、「効果」と「誤差」の比率を表す統計量です。F値が大きいほど「効果がある」と言えます。

📐 F値の計算式

F = VA / Ve

(群間平均平方 ÷ 群内平均平方)

実際に計算してみる

🔢 F値の計算

F = VA / Ve

F = 37.0 / 1.0

F = 37.0

F値が37.0と非常に大きいので、温度の効果は大きそうですね!

📊 分散分析表の完成!

これまでの計算結果を整理して、分散分析表を完成させましょう!

要因 平方和(S) 自由度(φ) 平均平方(V) F値
温度(因子A) 74 2 37.0 37.0
誤差(e) 6 6 1.0
総計(T) 80 8

🎉 分散分析表が完成しました!

次は、このF値を使って「統計的に有意かどうか」を判定します。

🔍 【STEP 8】F検定による判定

F検定とは?

F検定とは、計算したF値が「偶然では起こりにくい大きさ」かどうかを判定する方法です。

F分布表で臨界値を確認

F分布表から、有意水準5%、自由度(2, 6)の臨界値を確認します。

📊 F分布表の値

自由度(φA=2, φe=6)、有意水準α=0.05の場合

F0.05(2, 6) = 5.14

判定結果

✅ 判定

計算したF値:37.0

臨界値:5.14

37.0 > 5.14 → 有意差あり!

結論:「温度を変えると、製品の強度に統計的に有意な差がある」と言えます。

👉 F検定の詳しい解説は「F検定の判定方法」をご覧ください。

📈 【STEP 9】最適条件の推定

どの温度が最適?

各水準の平均値を比較して、最適条件を決定します。

温度 平均強度
50℃ 46.0
70℃ 53.0 ⭐
90℃ 49.0

✅ 結論

最適温度:70℃(平均強度が最も高い)

70℃に設定することで、製品の引張強度を最大化できます。

👉 より詳細な推定方法は「母平均の推定」で学べます。

💡 Excelでの計算テンプレート

Excel関数を使った効率的な計算

Excelを使えば、上記の計算を自動化できます。

計算項目 Excel関数
修正項(CT) =SUM(全データ範囲)^2/COUNT(全データ範囲)
総平方和(ST) =SUMSQ(全データ範囲)-CT
群間平方和(SA) =各水準合計^2/繰り返し数の合計-CT
群内平方和(Se) =ST-SA
F分布の臨界値 =F.INV.RT(0.05, φA, φe)

💡 Excelの分散分析機能

Excel の「データ分析」アドインを使えば、一元配置分散分析を自動実行できます。

メニュー:データ → データ分析 → 「分散分析:一元配置」を選択

📝 まとめ

✅ この記事のポイント

🔹 一元配置実験の計算を、修正項から順番に手を動かして学んだ

🔹 分散分析表を0から完成させる全手順を理解した

🔹 F検定で統計的に有意かどうかを判定する方法を学んだ

🔹 最適条件を推定し、実務に活かせる結論を導いた

🎓 さらに学びを深めるには

📌 一元配置実験とは?で概念を復習

📌 二元配置実験で2因子の実験を学ぶ

📌 分散分析表の作り方完全ガイドで理論を深める

📌 残差分析で結果の妥当性を確認

📌 実験計画法の学習マップで体系的に学習

🚀 次の記事へ

📖 次はこちらの記事がおすすめ!

一元配置実験の計算をマスターした次は、「2つの因子を同時に調べる方法」を学びましょう。

👉 次の記事:二元配置実験とは?2因子の効果と交互作用を調べる

🔹 二元配置実験を理解すると、因子同士の「相性(交互作用)」も分析できるようになります!

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