抜取検査

第6回:OC曲線の見方をマスター|抜取検査の性能が一目でわかるグラフの読み方

📌 この記事でわかること
  • OC曲線(検査特性曲線)が何を表しているのか
  • 横軸・縦軸の意味と読み方
  • P₀・P₁・α・βの関係を視覚的に理解
  • 曲線の形が変わると何が変わるのか
  • 実務でOC曲線をどう使うのか

こんにちは、シラスです。

前回の記事で、抜取検査の設計には「P₀・P₁・α・β」という4つの要素が重要だとお伝えしました。

でも、「数字だけ見てもピンとこない…」と感じませんでしたか?

そこで登場するのが、OC曲線(検査特性曲線)です。

これは、抜取検査の性能を「見える化」したグラフで、これを読めるようになると、

✅ 「この検査方式は、良いロットをちゃんと通せるのか?」
✅ 「悪いロットを確実に止められるのか?」
✅ 「誤判定のリスクはどれくらいあるのか?」

一目でわかるようになります。

今回は、初心者でも5分で理解できるように、図解をたっぷり使ってOC曲線を徹底解説します!


1. OC曲線とは?一言で言うと何のグラフ?

💡 OC曲線を一言で表すと…

ロットの品質(不良率)合格する確率の関係を表したグラフ」

OC曲線は、Operating Characteristic Curve(検査特性曲線)の略です。

抜取検査では、n個のサンプルを抜き取って、不良がc個以下なら合格としますが、このとき、

  • 不良率が低いロット(良品質)なら、高い確率で合格する
  • 不良率が高いロット(低品質)なら、高い確率で不合格になる

という関係があります。

この関係をグラフで視覚化したものが、OC曲線です。


2. OC曲線の見方:横軸・縦軸は何を表している?

まずは、OC曲線の基本的な構造を見てみましょう。

📊 横軸:ロットの不良率 p (%)

横軸は、ロット全体の不良率を表しています。

  • 左側(0%に近い):品質が良いロット(不良がほとんどない)
  • 右側(10%以上):品質が悪いロット(不良が多い)

📊 縦軸:合格率 L(p) (%)

縦軸は、そのロットが合格する確率を表しています。

  • 上側(100%に近い):ほぼ確実に合格する
  • 下側(0%に近い):ほぼ確実に不合格になる

📈 曲線の意味

OC曲線は、不良率が増えるほど合格率が下がるという関係を表しています。

✅ 直感的な理解

  • 良いロット(不良率1%) → 約95%の確率で合格 😊
  • 悪いロット(不良率7%) → 約10%の確率で合格(=90%の確率で不合格)😢

この例は、n=80, c=2(80個抜き取って、不良2個以下なら合格)という検査方式のOC曲線です。


3. OC曲線で重要な4つのポイント(P₀・P₁・α・β)

前回の記事で登場したP₀・P₁・α・βが、OC曲線上でどこに対応するのか見てみましょう。

記号 名前 OC曲線上の位置 意味
P₀ 合格させたい品質 曲線の左側の点 不良率1%くらいの「良いロット」
P₁ 不合格にしたい品質 曲線の右側の点 不良率7%くらいの「悪いロット」
α 生産者危険 P₀の点での不合格率 良いロットを誤って落とす確率(約5%)
β 消費者危険 P₁の点での合格率 悪いロットを誤って通す確率(約10%)

🔍 グラフで確認してみよう

上の図をもう一度見てください。

P₀の点(不良率1%)では、合格率が約95%
→ 残り5% = αが、良いロットを誤って不合格にする確率

P₁の点(不良率7%)では、合格率が約10% = β
→ 悪いロットが誤って合格する確率

⚠️ ここが重要!

OC曲線を見れば、「この検査方式は、α・βのリスクをどれくらい抑えられているか」が一目でわかるのです!

関連記事:次回の記事で、α・βについてさらに詳しく解説します!
(準備中:第7回「生産者危険(α)と消費者危険(β)の違い」)


4. 曲線の「形」で何がわかる?(急峻 vs 緩やか)

OC曲線には、急峻な曲線緩やかな曲線があります。

この違いは、検査の識別性(良いロットと悪いロットを区別する能力)を表しています。

📊 3つの曲線を比較

曲線のタイプ サンプル数 特徴 メリット・デメリット
急峻な曲線 n=100, c=2 カクッと折れ曲がる ✅ 識別性が高い
✅ 誤判定が少ない
❌ 検査コスト大
標準的な曲線 n=50, c=2 バランス型 ✅ コストと精度のバランス◎
✅ 実務で最も多い
緩やかな曲線 n=20, c=2 ダラダラ下がる ✅ 検査コスト小
❌ 識別性が低い
❌ 誤判定が多い

🔑 重要なポイント

📌 サンプル数 n を増やすと…

  • OC曲線が急峻(きゅうしゅん)になる
  • 良いロットと悪いロットをはっきり区別できる
  • α・βのリスクが小さくなる
  • ただし、検査コストは増える

逆に、nを減らすと、曲線は緩やかになり、識別性が下がります。

関連記事第2回:抜取検査の進め方で、サンプル数nの決め方を解説しています。


5. 実務でOC曲線をどう使う?

OC曲線は、単なる「理論のグラフ」ではありません。実務で超重要です。

✅ 実務での使い方3選

① 検査方式の性能を評価する

「n=80, c=2」と「n=50, c=1」、どちらが良い検査方式か?

OC曲線を描いて比較すれば、一目瞭然!

  • α・βのリスクはどちらが小さいか?
  • 曲線はどちらが急峻か?
  • コストとのバランスは?

これらを視覚的に判断できます。

② 顧客への説明資料として使う

「この検査方式で大丈夫ですか?」と聞かれたとき、

OC曲線を見せて説明すれば、説得力が段違い!

「不良率1%のロットなら95%合格します。不良率7%のロットなら90%不合格にできます。」

と、数字とグラフで示せます。

③ JIS規格の検査表を選ぶときの判断基準

JIS Z 9015(計数抜取検査)では、複数の検査方式が用意されています。

OC曲線を見て、自社の要求に合うものを選ぶ

  • α・βのリスクが許容範囲内か?
  • 識別性は十分か?

を確認できます。

関連記事:JIS Z 9015の使い方は、今後の記事で詳しく解説します!
(準備中:第10回「JIS Z 9015の使い方」)


6. まとめ:OC曲線が読めると検査設計が理解できる

📌 この記事のまとめ

OC曲線とは? ロットの不良率と合格率の関係を表したグラフ
横軸 ロットの不良率 p (%)
縦軸 合格率 L(p) (%)
P₀・P₁ 良いロット・悪いロットの品質基準点
α・β 誤判定のリスク(OC曲線上で読み取れる)
曲線の形 急峻 = 識別性高い、緩やか = 識別性低い
実務での使い方 検査方式の評価、顧客説明、JIS規格の選定

OC曲線は、抜取検査を理解するための最重要ツールです。

これが読めるようになると、

抜取検査方式の設計の意味がわかる
✅ α・βのリスクを視覚的に把握できる
✅ 検査方式の良し悪しを判断できる

ようになります。

次回は、生産者危険(α)と消費者危険(β)の違いを徹底解説します!

「なぜαは生産者のリスクで、βは消費者のリスクなのか?」
「どう設定すれば良いのか?」

を、初心者向けにわかりやすく説明しますので、お楽しみに!


📚 関連記事

🎯 設計を深掘り

タグ

-抜取検査