抜取検査

【第11回】調整型抜取検査の運用方法|通常・厳重・緩和検査の切替ルール

📌 この記事でわかること

  • 調整型抜取検査の「3つのモード」とは何か
  • 通常検査 → 厳重検査 → 緩和検査の切替条件
  • 連続合格・連続不合格のカウント方法
  • 実務で使える運用フローと記録シートの作り方
  • 切替忘れを防ぐチェックポイント

「調整型抜取検査って、切替のタイミングがよくわからない…」
「通常検査と厳重検査、どっちを使えばいいの?」
「JISの規格を読んでも、実務でどう運用すればいいか見えてこない…」

こんな悩みを抱えていませんか?

調整型抜取検査は、品質の実績に応じて検査の厳しさを自動的に調整するという、非常に合理的なしくみです。しかし、切替ルールが複雑で、「いつ、どの条件で切り替えるのか」が曖昧なまま運用している現場も少なくありません。

結論から言うと、調整型抜取検査は「3つのモード」と「5つの切替条件」さえ覚えれば、誰でも正しく運用できます。

この記事では、QC検定や実務で必須となる調整型抜取検査の運用方法を、図解と具体例でわかりやすく解説します。記録シートのテンプレートや、切替忘れを防ぐチェックリストも紹介しますので、ぜひ最後まで読んでください。

調整型抜取検査とは?|3つのモードを理解する

「信号機」のように検査の厳しさが変わる

調整型抜取検査を理解するには、「信号機」をイメージするとわかりやすいです。

信号機は、交通状況に応じて「青→黄→赤」と変わりますよね?調整型抜取検査も同じで、品質の実績に応じて「緩和→通常→厳重」と検査モードが切り替わります。

  • 🟢 緩和検査(Green):品質が安定している → 検査を緩くしてOK
  • 🟡 通常検査(Yellow):普通の状態 → 標準的な検査を実施
  • 🔴 厳重検査(Red):品質が悪化している → 検査を厳しくする

このように、過去の検査結果(品質実績)に応じて検査の厳しさを「自動調整」するのが、調整型抜取検査の最大の特徴です。

なぜ「調整」が必要なのか?

「最初から厳しい検査をずっと続ければいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、それではコストと手間がかかりすぎます。

逆に、「ずっと緩い検査でいい」となると、品質が悪化したときに見逃してしまうリスクがあります。

調整型抜取検査は、この「コスト」と「品質保証」のバランスを、品質実績に応じて自動的に最適化してくれるのです。

💡 調整型のメリット
  • 品質が良い供給者 → 検査コストを削減できる(緩和検査)
  • 品質が悪い供給者 → 厳しくチェックして不良流出を防ぐ(厳重検査)
  • 供給者に「品質改善のインセンティブ」を与えられる

3つのモードの違いを比較

3つのモードは、具体的に何が違うのでしょうか?主な違いを表で整理しました。

項目🟢 緩和検査🟡 通常検査🔴 厳重検査
検査の厳しさ緩い標準厳しい
サンプルサイズ少ない場合あり標準標準(同じ)
合格判定個数(Ac)大きい(甘い)標準小さい(厳しい)
適用される状況品質実績が優秀初期状態・通常時品質実績が悪い

ポイントは、厳重検査でもサンプルサイズ(n)は通常と同じという点です。厳重検査では、サンプル数を増やすのではなく、合格判定個数(Ac)を小さくして厳しくするのが基本です。

切替ルールの全体像|5つの条件を覚えよう

切替の基本ルール

調整型抜取検査の切替ルールは、「5つの条件」を覚えれば完璧です。まずは全体像を把握しましょう。

📐 切替の基本原則

スタートは必ず「通常検査」から
② 品質が悪化 → 厳重検査へ移行
③ 品質が回復 → 通常検査へ戻る
④ 品質が安定 → 緩和検査へ移行
⑤ 品質が悪化 → 通常検査へ戻る

この流れを図にすると、以下のようになります。

運用フロー図で理解する

次の画像で、3つのモード間の移行条件を確認してください。

切替条件①:通常検査 → 厳重検査

通常検査から厳重検査への切替は、「品質が悪化している」サインを検出したときに行います。

🔴 厳重検査への切替条件

連続する5ロット中、2ロット以上が不合格になったとき

具体例で見てみましょう。

【具体例】厳重検査への切替判定

ロット番号12345判定
パターンA→ 厳重検査へ
パターンB→ 通常検査を継続
パターンC→ 厳重検査へ

パターンAとCは、直近5ロット中に2回以上の不合格があるため、厳重検査へ移行します。パターンBは不合格が1回だけなので、通常検査を継続します。

⚠️ 注意ポイント

「連続する5ロット」は、直近の5ロットを見ます。ロット1〜5、ロット2〜6…というように、スライドしながら判定していきます。

切替条件②:厳重検査 → 通常検査

厳重検査から通常検査への復帰は、「品質が回復した」サインを確認してから行います。

🟢 通常検査への復帰条件

連続する5ロットが合格したとき

厳重検査中は、5ロット連続で合格するまで厳しい検査が続きます。これにより、「たまたま1回合格しただけ」で通常検査に戻ってしまうことを防いでいます。

【具体例】通常検査への復帰判定

厳重検査中12345判定
パターンD→ 通常検査へ復帰
パターンE→ 厳重検査を継続
(カウントリセット)

パターンEのように、途中で1回でも不合格があると、連続合格のカウントがリセットされます。また1から数え直しです。

切替条件③:厳重検査の「打ち切り」

厳重検査には、もう一つ重要なルールがあります。それは「打ち切り」です。

🛑 検査の打ち切り条件

厳重検査で10ロット以内に通常検査に復帰できなかったとき
→ 検査を打ち切り、供給者への是正措置を求める

これは、「いつまでも品質が改善しない供給者からの受け入れは、そもそも続けるべきではない」という考え方に基づいています。

打ち切りになった場合は、抜取検査を中断し、以下のような対応を検討します。

  • 供給者への品質改善要求
  • 全数検査への切り替え
  • 供給者の変更

切替条件④:通常検査 → 緩和検査

通常検査から緩和検査への移行は、「この供給者は優秀だ」と判断できたときに行います。ただし、条件は厳しめに設定されています。

🟢 緩和検査への移行条件(すべて満たす必要あり)

連続10ロットが合格していること
② 直近10ロットの総不適合品数が限界数以下であること
生産が安定していること(工程に異常がない)
④ 責任者(購買担当など)が緩和検査への移行を承認していること

緩和検査への移行は、単に「10ロット連続で合格すればOK」ではありません。4つの条件をすべて満たす必要があります。

条件②「限界数」とは?

限界数は、JIS Z 9015-1の規格表で定められています。AQL(合格品質限界)とサンプルサイズによって異なりますが、おおよその目安は以下の通りです。

AQL限界数の目安
0.65%2〜5個程度
1.0%3〜7個程度
2.5%7〜12個程度

実務では、JISの規格表を参照して正確な限界数を確認してください。

切替条件⑤:緩和検査 → 通常検査

緩和検査から通常検査への復帰は、「ちょっとでも問題があれば即座に戻る」という厳しいルールです。

🟡 通常検査への復帰条件(いずれか1つでも該当)

1ロットでも不合格になったとき
生産が不規則になったとき(工程に異常が発生)
③ 責任者が通常検査への復帰を指示したとき

注目すべきは、1回不合格になっただけで即座に通常検査に戻るという点です。緩和検査は「信頼の証」なので、少しでも疑念があれば元に戻すのです。

切替ルールの一覧表

ここまでの内容を、1つの表にまとめました。

切替パターン条件
🟡→🔴
通常→厳重
連続5ロット中、2ロット以上が不合格
🔴→🟡
厳重→通常
連続5ロットが合格
🔴→🛑
厳重→打切り
厳重検査で10ロット以内に復帰できない
🟡→🟢
通常→緩和
①連続10ロット合格 ②総不適合品数が限界数以下 ③生産安定 ④責任者承認
🟢→🟡
緩和→通常
①1ロットでも不合格 ②生産不規則 ③責任者指示 のいずれか

実務での運用フロー|記録シートの作り方

運用フロー図

調整型抜取検査の実務運用は、以下のフローで行います。

📋 調整型抜取検査の運用フロー

① ロット受入

② 現在の検査モードを確認(通常/厳重/緩和)

③ 対応する検査表でn, Ac, Reを確認

④ サンプル抜取・検査

⑤ 合否判定

⑥ 記録シートに結果を記入

⑦ 切替条件をチェック

⑧ 必要に応じて検査モードを切替

記録シートのテンプレート

調整型抜取検査を正しく運用するには、記録シートによる履歴管理が必須です。以下に、実務で使えるテンプレートを示します。

日付ロットNo.検査
モード
サンプル
サイズn
不適合
品数d
合格判定
Ac
判定連続
合格数
切替
判定
1/5A-001通常50121-
1/6A-002通常50022-
1/7A-003通常50320-

記録シートに必ず入れる項目

  • 日付・ロット番号:トレーサビリティのため
  • 現在の検査モード:どのモードで検査したか
  • サンプルサイズn / 不適合品数d / 合格判定Ac:検査結果の記録
  • 判定(○ or ✕):ロットの合否
  • 連続合格数:切替判定に必要
  • 切替判定:モード切替が発生したかどうか

切替忘れを防ぐ3つのチェックポイント

調整型抜取検査の最大の落とし穴は、「切替忘れ」です。以下のポイントを押さえて、ミスを防ぎましょう。

✅ 切替忘れを防ぐ3つのチェックポイント

① 毎回の検査後に「切替チェック欄」を確認する
記録シートに「切替条件を確認したか?」のチェック欄を設け、毎回確認する習慣をつける。

② 連続合格/不合格のカウントを可視化する
現在の連続合格数・不合格数をホワイトボードなどに掲示し、誰でも見える状態にする。

③ 切替が発生したら「色を変える」など目立たせる
記録シートの検査モード欄を、モード別に色分けする(通常=黄色、厳重=赤、緩和=緑)。

よくある質問(FAQ)

Q1. 最初は必ず「通常検査」からスタートするのですか?

はい、その通りです。調整型抜取検査では、必ず「通常検査」からスタートします。過去の実績がない新規供給者や、新規製品の場合は、信頼が構築されるまで通常検査を続けます。

Q2. 厳重検査から直接「緩和検査」に移行することはできますか?

いいえ、できません。厳重検査からは、まず「通常検査」に戻る必要があります。そこから条件を満たせば、緩和検査への移行が可能です。

🔴 厳重検査 → 🟡 通常検査 → 🟢 緩和検査
(必ずこの順序で移行する)

Q3. 「連続5ロット」のカウントは、途中で中断したらどうなりますか?

カウントは「連続」が途切れた時点でリセットされます。例えば、厳重検査中に4ロット連続で合格しても、5ロット目で不合格になれば、カウントは0に戻ります。

Q4. 製品ごとに検査モードは別々に管理するのですか?

はい、原則として製品ごと(または製品群ごと)に検査モードを管理します。同じ供給者でも、製品Aは緩和検査、製品Bは通常検査、というケースがあり得ます。

まとめ|調整型抜取検査をマスターしよう

この記事では、調整型抜取検査の運用方法について解説しました。最後に、重要ポイントをまとめます。

📝 この記事のまとめ

  • 調整型抜取検査には3つのモードがある(通常・厳重・緩和)
  • スタートは必ず「通常検査」から
  • 通常→厳重:連続5ロット中2ロット以上が不合格
  • 厳重→通常:連続5ロットが合格
  • 厳重検査が10ロット以内に復帰できなければ打ち切り
  • 通常→緩和:4つの条件をすべて満たす必要あり
  • 緩和→通常:1ロットでも不合格なら即復帰
  • 実務では記録シートで履歴管理が必須
  • 切替忘れ防止のチェック体制を構築する

調整型抜取検査は、一見複雑に見えますが、ルールを理解すれば誰でも正しく運用できます。この記事を参考に、ぜひ実務に活かしてください。

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