📌 この記事でわかること
- 調整型抜取検査の「3つのモード」とは何か
- 通常検査 → 厳重検査 → 緩和検査の切替条件
- 連続合格・連続不合格のカウント方法
- 実務で使える運用フローと記録シートの作り方
- 切替忘れを防ぐチェックポイント
「調整型抜取検査って、切替のタイミングがよくわからない…」
「通常検査と厳重検査、どっちを使えばいいの?」
「JISの規格を読んでも、実務でどう運用すればいいか見えてこない…」
こんな悩みを抱えていませんか?
調整型抜取検査は、品質の実績に応じて検査の厳しさを自動的に調整するという、非常に合理的なしくみです。しかし、切替ルールが複雑で、「いつ、どの条件で切り替えるのか」が曖昧なまま運用している現場も少なくありません。
結論から言うと、調整型抜取検査は「3つのモード」と「5つの切替条件」さえ覚えれば、誰でも正しく運用できます。
この記事では、QC検定や実務で必須となる調整型抜取検査の運用方法を、図解と具体例でわかりやすく解説します。記録シートのテンプレートや、切替忘れを防ぐチェックリストも紹介しますので、ぜひ最後まで読んでください。
【完全初心者向け】抜取検査とは?|全数検査との違いと基本をゼロから図解 →
調整型抜取検査とは?|3つのモードを理解する
「信号機」のように検査の厳しさが変わる
調整型抜取検査を理解するには、「信号機」をイメージするとわかりやすいです。
信号機は、交通状況に応じて「青→黄→赤」と変わりますよね?調整型抜取検査も同じで、品質の実績に応じて「緩和→通常→厳重」と検査モードが切り替わります。
- 🟢 緩和検査(Green):品質が安定している → 検査を緩くしてOK
- 🟡 通常検査(Yellow):普通の状態 → 標準的な検査を実施
- 🔴 厳重検査(Red):品質が悪化している → 検査を厳しくする
このように、過去の検査結果(品質実績)に応じて検査の厳しさを「自動調整」するのが、調整型抜取検査の最大の特徴です。
なぜ「調整」が必要なのか?
「最初から厳しい検査をずっと続ければいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、それではコストと手間がかかりすぎます。
逆に、「ずっと緩い検査でいい」となると、品質が悪化したときに見逃してしまうリスクがあります。
調整型抜取検査は、この「コスト」と「品質保証」のバランスを、品質実績に応じて自動的に最適化してくれるのです。
- 品質が良い供給者 → 検査コストを削減できる(緩和検査)
- 品質が悪い供給者 → 厳しくチェックして不良流出を防ぐ(厳重検査)
- 供給者に「品質改善のインセンティブ」を与えられる
3つのモードの違いを比較
3つのモードは、具体的に何が違うのでしょうか?主な違いを表で整理しました。
| 項目 | 🟢 緩和検査 | 🟡 通常検査 | 🔴 厳重検査 |
|---|---|---|---|
| 検査の厳しさ | 緩い | 標準 | 厳しい |
| サンプルサイズ | 少ない場合あり | 標準 | 標準(同じ) |
| 合格判定個数(Ac) | 大きい(甘い) | 標準 | 小さい(厳しい) |
| 適用される状況 | 品質実績が優秀 | 初期状態・通常時 | 品質実績が悪い |
ポイントは、厳重検査でもサンプルサイズ(n)は通常と同じという点です。厳重検査では、サンプル数を増やすのではなく、合格判定個数(Ac)を小さくして厳しくするのが基本です。

切替ルールの全体像|5つの条件を覚えよう
切替の基本ルール
調整型抜取検査の切替ルールは、「5つの条件」を覚えれば完璧です。まずは全体像を把握しましょう。
① スタートは必ず「通常検査」から
② 品質が悪化 → 厳重検査へ移行
③ 品質が回復 → 通常検査へ戻る
④ 品質が安定 → 緩和検査へ移行
⑤ 品質が悪化 → 通常検査へ戻る
この流れを図にすると、以下のようになります。
運用フロー図で理解する
次の画像で、3つのモード間の移行条件を確認してください。

切替条件①:通常検査 → 厳重検査
通常検査から厳重検査への切替は、「品質が悪化している」サインを検出したときに行います。
連続する5ロット中、2ロット以上が不合格になったとき
具体例で見てみましょう。
【具体例】厳重検査への切替判定
| ロット番号 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| パターンA | ○ | ✕ | ○ | ✕ | ○ | → 厳重検査へ |
| パターンB | ○ | ○ | ○ | ✕ | ○ | → 通常検査を継続 |
| パターンC | ✕ | ✕ | ○ | ○ | ○ | → 厳重検査へ |
パターンAとCは、直近5ロット中に2回以上の不合格があるため、厳重検査へ移行します。パターンBは不合格が1回だけなので、通常検査を継続します。
「連続する5ロット」は、直近の5ロットを見ます。ロット1〜5、ロット2〜6…というように、スライドしながら判定していきます。
切替条件②:厳重検査 → 通常検査
厳重検査から通常検査への復帰は、「品質が回復した」サインを確認してから行います。
連続する5ロットが合格したとき
厳重検査中は、5ロット連続で合格するまで厳しい検査が続きます。これにより、「たまたま1回合格しただけ」で通常検査に戻ってしまうことを防いでいます。
【具体例】通常検査への復帰判定
| 厳重検査中 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| パターンD | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | → 通常検査へ復帰 |
| パターンE | ○ | ○ | ○ | ✕ | ○ | → 厳重検査を継続 (カウントリセット) |
パターンEのように、途中で1回でも不合格があると、連続合格のカウントがリセットされます。また1から数え直しです。
切替条件③:厳重検査の「打ち切り」
厳重検査には、もう一つ重要なルールがあります。それは「打ち切り」です。
厳重検査で10ロット以内に通常検査に復帰できなかったとき
→ 検査を打ち切り、供給者への是正措置を求める
これは、「いつまでも品質が改善しない供給者からの受け入れは、そもそも続けるべきではない」という考え方に基づいています。
打ち切りになった場合は、抜取検査を中断し、以下のような対応を検討します。
- 供給者への品質改善要求
- 全数検査への切り替え
- 供給者の変更

切替条件④:通常検査 → 緩和検査
通常検査から緩和検査への移行は、「この供給者は優秀だ」と判断できたときに行います。ただし、条件は厳しめに設定されています。
① 連続10ロットが合格していること
② 直近10ロットの総不適合品数が限界数以下であること
③ 生産が安定していること(工程に異常がない)
④ 責任者(購買担当など)が緩和検査への移行を承認していること
緩和検査への移行は、単に「10ロット連続で合格すればOK」ではありません。4つの条件をすべて満たす必要があります。
条件②「限界数」とは?
限界数は、JIS Z 9015-1の規格表で定められています。AQL(合格品質限界)とサンプルサイズによって異なりますが、おおよその目安は以下の通りです。
| AQL | 限界数の目安 |
|---|---|
| 0.65% | 2〜5個程度 |
| 1.0% | 3〜7個程度 |
| 2.5% | 7〜12個程度 |
実務では、JISの規格表を参照して正確な限界数を確認してください。
切替条件⑤:緩和検査 → 通常検査
緩和検査から通常検査への復帰は、「ちょっとでも問題があれば即座に戻る」という厳しいルールです。
① 1ロットでも不合格になったとき
② 生産が不規則になったとき(工程に異常が発生)
③ 責任者が通常検査への復帰を指示したとき
注目すべきは、1回不合格になっただけで即座に通常検査に戻るという点です。緩和検査は「信頼の証」なので、少しでも疑念があれば元に戻すのです。
切替ルールの一覧表
ここまでの内容を、1つの表にまとめました。
| 切替パターン | 条件 |
|---|---|
| 🟡→🔴 通常→厳重 | 連続5ロット中、2ロット以上が不合格 |
| 🔴→🟡 厳重→通常 | 連続5ロットが合格 |
| 🔴→🛑 厳重→打切り | 厳重検査で10ロット以内に復帰できない |
| 🟡→🟢 通常→緩和 | ①連続10ロット合格 ②総不適合品数が限界数以下 ③生産安定 ④責任者承認 |
| 🟢→🟡 緩和→通常 | ①1ロットでも不合格 ②生産不規則 ③責任者指示 のいずれか |

実務での運用フロー|記録シートの作り方
運用フロー図
調整型抜取検査の実務運用は、以下のフローで行います。
📋 調整型抜取検査の運用フロー
① ロット受入
↓
② 現在の検査モードを確認(通常/厳重/緩和)
↓
③ 対応する検査表でn, Ac, Reを確認
↓
④ サンプル抜取・検査
↓
⑤ 合否判定
↓
⑥ 記録シートに結果を記入
↓
⑦ 切替条件をチェック
↓
⑧ 必要に応じて検査モードを切替
記録シートのテンプレート
調整型抜取検査を正しく運用するには、記録シートによる履歴管理が必須です。以下に、実務で使えるテンプレートを示します。
| 日付 | ロットNo. | 検査 モード | サンプル サイズn | 不適合 品数d | 合格判定 Ac | 判定 | 連続 合格数 | 切替 判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1/5 | A-001 | 通常 | 50 | 1 | 2 | ○ | 1 | - |
| 1/6 | A-002 | 通常 | 50 | 0 | 2 | ○ | 2 | - |
| 1/7 | A-003 | 通常 | 50 | 3 | 2 | ✕ | 0 | - |
記録シートに必ず入れる項目
- 日付・ロット番号:トレーサビリティのため
- 現在の検査モード:どのモードで検査したか
- サンプルサイズn / 不適合品数d / 合格判定Ac:検査結果の記録
- 判定(○ or ✕):ロットの合否
- 連続合格数:切替判定に必要
- 切替判定:モード切替が発生したかどうか
切替忘れを防ぐ3つのチェックポイント
調整型抜取検査の最大の落とし穴は、「切替忘れ」です。以下のポイントを押さえて、ミスを防ぎましょう。
✅ 切替忘れを防ぐ3つのチェックポイント
① 毎回の検査後に「切替チェック欄」を確認する
記録シートに「切替条件を確認したか?」のチェック欄を設け、毎回確認する習慣をつける。
② 連続合格/不合格のカウントを可視化する
現在の連続合格数・不合格数をホワイトボードなどに掲示し、誰でも見える状態にする。
③ 切替が発生したら「色を変える」など目立たせる
記録シートの検査モード欄を、モード別に色分けする(通常=黄色、厳重=赤、緩和=緑)。
よくある質問(FAQ)
Q1. 最初は必ず「通常検査」からスタートするのですか?
はい、その通りです。調整型抜取検査では、必ず「通常検査」からスタートします。過去の実績がない新規供給者や、新規製品の場合は、信頼が構築されるまで通常検査を続けます。
Q2. 厳重検査から直接「緩和検査」に移行することはできますか?
いいえ、できません。厳重検査からは、まず「通常検査」に戻る必要があります。そこから条件を満たせば、緩和検査への移行が可能です。
🔴 厳重検査 → 🟡 通常検査 → 🟢 緩和検査
(必ずこの順序で移行する)
Q3. 「連続5ロット」のカウントは、途中で中断したらどうなりますか?
カウントは「連続」が途切れた時点でリセットされます。例えば、厳重検査中に4ロット連続で合格しても、5ロット目で不合格になれば、カウントは0に戻ります。
Q4. 製品ごとに検査モードは別々に管理するのですか?
はい、原則として製品ごと(または製品群ごと)に検査モードを管理します。同じ供給者でも、製品Aは緩和検査、製品Bは通常検査、というケースがあり得ます。
まとめ|調整型抜取検査をマスターしよう
この記事では、調整型抜取検査の運用方法について解説しました。最後に、重要ポイントをまとめます。
📝 この記事のまとめ
- 調整型抜取検査には3つのモードがある(通常・厳重・緩和)
- スタートは必ず「通常検査」から
- 通常→厳重:連続5ロット中2ロット以上が不合格
- 厳重→通常:連続5ロットが合格
- 厳重検査が10ロット以内に復帰できなければ打ち切り
- 通常→緩和:4つの条件をすべて満たす必要あり
- 緩和→通常:1ロットでも不合格なら即復帰
- 実務では記録シートで履歴管理が必須
- 切替忘れ防止のチェック体制を構築する
調整型抜取検査は、一見複雑に見えますが、ルールを理解すれば誰でも正しく運用できます。この記事を参考に、ぜひ実務に活かしてください。
