- 「固有値」「固有ベクトル」という言葉を見た瞬間にフリーズしてしまう
- 主成分分析の本に出てくるけど、結局それが何を表しているのかピンとこない
- 「寄与率」「累積寄与率」の計算方法と、それが何の役に立つのか知りたい
- 固有値・固有ベクトルが「結局なにを表す数字なのか」が、たとえ話でわかる
- 寄与率・累積寄与率の計算が、途中式つきで自分でもできるようになる
- 主成分分析で「いくつの軸を使えばいいか」の決め方がわかる
「固有値(こゆうち)」「固有ベクトル」——主成分分析を学びはじめると、ほとんどの人がここで足を止めます。数式が並んだ瞬間、「もう無理だ」と本を閉じたくなりますよね。はじめて見て戸惑うのは、当たり前です。
でも、この2つは「むずかしい計算」を覚える必要はありません。大事なのは「それが何を意味しているのか」というイメージだけです。この記事では、数式を「宝探し」にたとえながら、一つずつやさしくほどいていきます。
固有値(こゆうち)は「その軸がどれだけ情報=データのバラつきを持っているか」を表す数字です。固有ベクトルは「その軸が向いている方向」を表す矢印です。主成分分析では、固有値が大きい方向ほど大事な情報が詰まっています。そして寄与率(きよりつ)は「その軸が全体の情報の何割を説明しているか」を示す割合で、「固有値 ÷ 固有値の合計」で計算します。
目次
そもそも主成分分析は「宝探し」をしている
固有値の話に入る前に、主成分分析(しゅせいぶんぶんせき)が何をしているのかを、ざっくりつかんでおきましょう。これがわかると、固有値がスッと理解できます。
主成分分析がやりたいことは、ひとことで言えば「たくさんあるデータの中から、いちばん大事な情報が詰まっている方向を見つけ出すこと」です。これはまさに、宝の地図を持って「お宝が眠っている場所」を探す宝探しと同じです。
広い土地のどこかに宝が埋まっているとします。やみくもに掘っても見つかりません。でも「宝はこの方向に多く埋まっている」とわかれば、効率よく掘れますよね。主成分分析は、データという土地から「情報という宝がいちばん多い方向」を教えてくれる地図づくりなのです。
ここで言う「情報」とは、専門的には「分散(ぶんさん)=データのバラつき具合」のことです。なぜバラつきが情報なのか、簡単な例で考えてみます。クラス全員が同じテストで全員100点なら、点数を見ても誰が誰だか区別できません。バラつきがゼロだと、情報もゼロなのです。逆に点数がバラバラなら、一人ひとりの違いがよくわかります。
つまり、主成分分析では「バラつき(分散)が大きい方向=情報がたくさん詰まった、お宝の方向」と考えます。この「お宝の方向」を見つけるための道具こそが、固有値と固有ベクトルなのです。

固有ベクトルとは「お宝が眠る方向を指す矢印」
まずは固有ベクトルから説明します。固有ベクトル(こゆうベクトル)とは、かんたんに言えば「お宝(情報)が多く眠っている方向を指し示す矢印」のことです。
固有ベクトル=「新しい軸(主成分)が向いている方向」。たくさんの矢印の候補の中から、データのバラつきがいちばん大きく見える向きを選んだもの、それが第1主成分の固有ベクトルです。
具体的に考えてみましょう。たとえば、たくさんの人の「身長」と「体重」のデータを点で表すと、右上がりの楕円(だえん)のような雲ができます。背が高い人は体重も重い傾向があるからです。
この点の雲を見ると、「右上から左下へ」と伸びる方向に、いちばん長くバラついています。この「いちばん長く伸びている方向を指す矢印」が、第1主成分の固有ベクトルです。データが最も広がっている=お宝が最も多い方向、というわけです。
固有ベクトルは「方位磁石(コンパス)の針」のようなものです。コンパスが北を指すように、固有ベクトルは「情報がいちばん多い方向」を指してくれます。針の向きそのものが大事で、針の長さは関係ありません(だから固有ベクトルは長さ1に揃えて表すのが普通です)。
固有ベクトルは「向き」だけを教えてくれます。「その方向にどれだけお宝があるか(量)」は教えてくれません。量を教えてくれるのは、次に出てくる固有値です。向き=固有ベクトル、量=固有値。この役割分担を覚えておくと、もう混乱しません。

固有値とは「その方向に眠るお宝の量」
次が、いちばん大事な固有値です。固有値(こゆうち)とは、「固有ベクトルが指す方向に、どれだけお宝(情報=バラつき)が眠っているか」を表す数字です。
固有値=その主成分(軸)が持っている情報量(=分散の大きさ)。固有値が大きいほど、その方向にたくさんのお宝が眠っている、つまり大事な軸だ、ということです。
固有値は、難しい言葉で言うと「その方向に沿って測ったときのデータの分散(バラつき)」そのものです。先ほどの身長・体重の例で言えば、点の雲が右上から左下へ「どれだけ長く伸びているか」、その長さの大きさが固有値にあたります。
固有値と固有ベクトルは、いつもペアで出てきます。「この方向(固有ベクトル)に、これだけのお宝(固有値)があります」と、セットで情報を教えてくれるのです。
主成分分析では、固有値の大きい順に「第1主成分」「第2主成分」…と番号をつけます。いちばんお宝が多い方向が第1主成分、その次が第2主成分、という具合です。
固有ベクトルが「お宝のある方向を指すコンパスの針」なら、固有値は「その方向を掘ったときに出てくる金貨の枚数」です。針が3本あっても、金貨が100枚出る方向と、3枚しか出ない方向があります。だから私たちは、金貨(固有値)が多い方向を優先して使うのです。

寄与率とは「その軸が全体の情報の何割か」
固有値がわかると、いよいよ寄与率が理解できます。寄与率(きよりつ)とは、「その主成分が、全体の情報のうち何割を説明しているか」を表す割合です。
固有値はそのまま見ても「2.5って、大きいの?小さいの?」とピンときません。そこで、全体を100%として「割合」に直すと、一気にわかりやすくなります。それが寄与率です。
ある主成分の寄与率 = その主成分の固有値 ÷ すべての固有値の合計
分数で書くと、こうなります。
固有値の合計が「ホールケーキ1個(=全体の情報)」だと思ってください。寄与率は「そのケーキを切り分けたとき、この主成分が何切れ分(何%分)か」を表します。大きく切り分けられた主成分ほど、たくさんの情報を持っている、というわけです。
すべての主成分の寄与率を足すと、必ず100%(1.0)になります。情報という1つのケーキを、すべての主成分で分け合っているからです。

具体例で寄与率を計算してみる(途中式つき)
言葉だけだとフワッとするので、実際に数字を入れて計算してみましょう。むずかしくありません。割り算ができれば大丈夫です。
いま、3つの変数(たとえば「身長・体重・座高」)を主成分分析したところ、3つの固有値が次のように出たとします。
| 主成分 | 固有値 |
|---|---|
| 第1主成分 | 2.5 |
| 第2主成分 | 1.2 |
| 第3主成分 | 0.3 |
まず、固有値を全部足して「合計(=ケーキ全体)」を出します。
2.5 + 1.2 + 0.3 = 4.0
これが情報の全体量です。
第1主成分の寄与率を計算します。公式は「固有値 ÷ 合計」でした。
2.5 ÷ 4.0 = 0.625 → 62.5%
つまり、第1主成分だけで全体の情報の6割以上を説明できています。
同じやり方で、第2・第3主成分も計算します。
第2主成分:1.2 ÷ 4.0 = 0.30 → 30%
第3主成分:0.3 ÷ 4.0 = 0.075 → 7.5%
3つの寄与率を足してみます。
62.5% + 30% + 7.5% = 100%
ちゃんと100%になりました。計算が合っている証拠です。
この例では、第1主成分が62.5%、第2主成分が30%の情報を持っています。第3主成分はたった7.5%。お宝のほとんどが、最初の2つの軸に詰まっている、ということが数字でハッキリわかりました。

累積寄与率で「軸をいくつ使うか」を決める
寄与率がわかると、最後の累積寄与率(るいせききよりつ)はとても簡単です。累積寄与率とは、「寄与率を大きい順に、上から足していった合計」のことです。「累積」とは「だんだん積み重ねる」という意味です。
累積寄与率=「ここまでの主成分を使えば、全体の情報の何割をカバーできるか」を示す数字。これを見て、「軸をいくつまで使えば十分か」を決めます。
さきほどの例(62.5%・30%・7.5%)で、累積寄与率を計算してみましょう。上から順に足していくだけです。
| 主成分 | 寄与率 | 累積寄与率 |
|---|---|---|
| 第1主成分 | 62.5% | 62.5% |
| 第2主成分 | 30% | 62.5+30=92.5% |
| 第3主成分 | 7.5% | 92.5+7.5=100% |
この表から、第2主成分までで累積寄与率が92.5%になることがわかります。これは「最初の2つの軸だけで、元のデータの情報の9割以上を表現できている」という意味です。
3つあった変数を2つの軸にまとめても、ほとんど情報が失われていない。だから「第3主成分は捨てて、2つの軸だけで分析しよう」と判断できるのです。これが主成分分析の最大の目的——「たくさんの変数を、少ない軸にギュッとまとめる」ことの正体です。
「累積寄与率が何%あれば十分か」に絶対のルールはありませんが、実務では70%〜80%以上を1つの目安にすることが多いです。グラフ化したいなら、第2主成分までで80%を超えていれば、平面(2軸)で十分にデータを語れます。

初心者がつまずく3つのポイント
最後に、多くの人が混乱しやすいところを先回りして整理しておきます。ここを押さえれば、もう迷いません。
①「固有値」と「固有ベクトル」の役割を混同する
固有ベクトル=向き
- お宝のある「方向」を指す矢印
- 主成分の「軸の向き」
- 長さは1に揃える
固有値=量
- その方向にある「お宝の量」
- その軸が持つ「情報量=分散」
- 大きいほど重要な軸
「向き=ベクトル、量=値」とセットで覚えてしまえば、もう取り違えません。
②「寄与率」と「累積寄与率」を取り違える
寄与率は「その軸 1本だけ」の割合です。累積寄与率は「上からそこまでを足した合計」です。第2主成分の寄与率が30%でも、累積寄与率は92.5%(第1の62.5%を含む)になります。「単体」か「積み重ね」か、で区別してください。
③ 固有値が大きいほど良い、と決めつける
固有値が大きい主成分は「情報をたくさん持つ軸」ではありますが、「分析の目的にとって意味がある軸」とは限りません。たとえば第1主成分がただの「全体の大きさ(規模)」を表しているだけ、というケースもあります。固有値・寄与率は「どの軸を残すか」の目安にしつつ、その軸が実際に何を意味しているかは、固有ベクトルの中身(どの変数が効いているか)を見て解釈する必要があります。

よくある質問(FAQ)
まとめ:4つの言葉を宝探しで覚える
- 固有ベクトル=お宝(情報)が眠る「方向」を指す矢印。主成分の軸の向き。
- 固有値=その方向に眠る「お宝の量」。その軸が持つ情報量(分散)。大きいほど重要。
- 寄与率=その軸が全体の情報の何割かの割合。「固有値 ÷ 固有値の合計」で計算。
- 累積寄与率=寄与率を上から足した合計。「軸をいくつ使えば十分か」を決める目安。
むずかしそうに見えた4つの言葉も、「宝探し」のたとえに置き換えれば、それほど怖くありません。方向(固有ベクトル)と量(固有値)をセットで見つけ、量を割合に直したものが寄与率、それを積み上げたものが累積寄与率。この流れさえつかめば、主成分分析の数字は読めるようになります。
数字の意味がわかったら、次は「その軸が結局なにを表しているのか」を読み解く段階です。固有ベクトルの中身(因子負荷量)や、各データの位置(主成分得点)を学ぶと、主成分分析が一気に使える道具になります。

自動車部品メーカーで電気設計・品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて統計を学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
📚 次に読むべき記事
主成分分析に出てくる用語を一気に俯瞰したい人のための入門マップです。
固有ベクトルの中身を読み解き、「その軸が何を表すか」を解釈する次のステップです。
求めた軸を使って、一つひとつのデータがどこに位置するかを読む方法を解説します。