多変量解析

固有値・固有ベクトルとは?主成分分析の正体を宝探しで理解する

😣 こんなふうに思っていませんか?
  • 「固有値」「固有ベクトル」という言葉を見た瞬間にフリーズしてしまう
  • 主成分分析の本に出てくるけど、結局それが何を表しているのかピンとこない
  • 「寄与率」「累積寄与率」の計算方法と、それが何の役に立つのか知りたい
✅ この記事でわかること
  • 固有値・固有ベクトルが「結局なにを表す数字なのか」が、たとえ話でわかる
  • 寄与率・累積寄与率の計算が、途中式つきで自分でもできるようになる
  • 主成分分析で「いくつの軸を使えばいいか」の決め方がわかる

「固有値(こゆうち)」「固有ベクトル」——主成分分析を学びはじめると、ほとんどの人がここで足を止めます。数式が並んだ瞬間、「もう無理だ」と本を閉じたくなりますよね。はじめて見て戸惑うのは、当たり前です。

でも、この2つは「むずかしい計算」を覚える必要はありません。大事なのは「それが何を意味しているのか」というイメージだけです。この記事では、数式を「宝探し」にたとえながら、一つずつやさしくほどいていきます。

✅ 結論(まず30秒でわかる答え)

固有値(こゆうち)は「その軸がどれだけ情報=データのバラつきを持っているか」を表す数字です。固有ベクトルは「その軸が向いている方向」を表す矢印です。主成分分析では、固有値が大きい方向ほど大事な情報が詰まっています。そして寄与率(きよりつ)は「その軸が全体の情報の何割を説明しているか」を示す割合で、「固有値 ÷ 固有値の合計」で計算します。

そもそも主成分分析は「宝探し」をしている

固有値の話に入る前に、主成分分析(しゅせいぶんぶんせき)が何をしているのかを、ざっくりつかんでおきましょう。これがわかると、固有値がスッと理解できます。

主成分分析がやりたいことは、ひとことで言えば「たくさんあるデータの中から、いちばん大事な情報が詰まっている方向を見つけ出すこと」です。これはまさに、宝の地図を持って「お宝が眠っている場所」を探す宝探しと同じです。

🗺️ たとえると
広い土地のどこかに宝が埋まっているとします。やみくもに掘っても見つかりません。でも「宝はこの方向に多く埋まっている」とわかれば、効率よく掘れますよね。主成分分析は、データという土地から「情報という宝がいちばん多い方向」を教えてくれる地図づくりなのです。

ここで言う「情報」とは、専門的には「分散(ぶんさん)=データのバラつき具合」のことです。なぜバラつきが情報なのか、簡単な例で考えてみます。クラス全員が同じテストで全員100点なら、点数を見ても誰が誰だか区別できません。バラつきがゼロだと、情報もゼロなのです。逆に点数がバラバラなら、一人ひとりの違いがよくわかります。

💡 ポイント
つまり、主成分分析では「バラつき(分散)が大きい方向=情報がたくさん詰まった、お宝の方向」と考えます。この「お宝の方向」を見つけるための道具こそが、固有値と固有ベクトルなのです。

固有ベクトルとは「お宝が眠る方向を指す矢印」

まずは固有ベクトルから説明します。固有ベクトル(こゆうベクトル)とは、かんたんに言えば「お宝(情報)が多く眠っている方向を指し示す矢印」のことです。

✅ ひとことで言うと

固有ベクトル=「新しい軸(主成分)が向いている方向」。たくさんの矢印の候補の中から、データのバラつきがいちばん大きく見える向きを選んだもの、それが第1主成分の固有ベクトルです。

具体的に考えてみましょう。たとえば、たくさんの人の「身長」と「体重」のデータを点で表すと、右上がりの楕円(だえん)のような雲ができます。背が高い人は体重も重い傾向があるからです。

この点の雲を見ると、「右上から左下へ」と伸びる方向に、いちばん長くバラついています。この「いちばん長く伸びている方向を指す矢印」が、第1主成分の固有ベクトルです。データが最も広がっている=お宝が最も多い方向、というわけです。

🧭 たとえると
固有ベクトルは「方位磁石(コンパス)の針」のようなものです。コンパスが北を指すように、固有ベクトルは「情報がいちばん多い方向」を指してくれます。針の向きそのものが大事で、針の長さは関係ありません(だから固有ベクトルは長さ1に揃えて表すのが普通です)。
⚠️ ここで間違えやすい
固有ベクトルは「向き」だけを教えてくれます。「その方向にどれだけお宝があるか(量)」は教えてくれません。量を教えてくれるのは、次に出てくる固有値です。向き=固有ベクトル、量=固有値。この役割分担を覚えておくと、もう混乱しません。

固有値とは「その方向に眠るお宝の量」

次が、いちばん大事な固有値です。固有値(こゆうち)とは、「固有ベクトルが指す方向に、どれだけお宝(情報=バラつき)が眠っているか」を表す数字です。

✅ ひとことで言うと

固有値=その主成分(軸)が持っている情報量(=分散の大きさ)。固有値が大きいほど、その方向にたくさんのお宝が眠っている、つまり大事な軸だ、ということです。

固有値は、難しい言葉で言うと「その方向に沿って測ったときのデータの分散(バラつき)」そのものです。先ほどの身長・体重の例で言えば、点の雲が右上から左下へ「どれだけ長く伸びているか」、その長さの大きさが固有値にあたります。

💡 ポイント
固有値と固有ベクトルは、いつもペアで出てきます。「この方向(固有ベクトル)に、これだけのお宝(固有値)があります」と、セットで情報を教えてくれるのです。

主成分分析では、固有値の大きい順に「第1主成分」「第2主成分」…と番号をつけます。いちばんお宝が多い方向が第1主成分、その次が第2主成分、という具合です。

💰 たとえると
固有ベクトルが「お宝のある方向を指すコンパスの針」なら、固有値は「その方向を掘ったときに出てくる金貨の枚数」です。針が3本あっても、金貨が100枚出る方向と、3枚しか出ない方向があります。だから私たちは、金貨(固有値)が多い方向を優先して使うのです。

寄与率とは「その軸が全体の情報の何割か」

固有値がわかると、いよいよ寄与率が理解できます。寄与率(きよりつ)とは、「その主成分が、全体の情報のうち何割を説明しているか」を表す割合です。

固有値はそのまま見ても「2.5って、大きいの?小さいの?」とピンときません。そこで、全体を100%として「割合」に直すと、一気にわかりやすくなります。それが寄与率です。

📐 公式
ある主成分の寄与率 = その主成分の固有値 ÷ すべての固有値の合計

分数で書くと、こうなります。

寄与率 =
その主成分の固有値
固有値の合計
🍰 たとえると
固有値の合計が「ホールケーキ1個(=全体の情報)」だと思ってください。寄与率は「そのケーキを切り分けたとき、この主成分が何切れ分(何%分)か」を表します。大きく切り分けられた主成分ほど、たくさんの情報を持っている、というわけです。
💡 ポイント
すべての主成分の寄与率を足すと、必ず100%(1.0)になります。情報という1つのケーキを、すべての主成分で分け合っているからです。

具体例で寄与率を計算してみる(途中式つき)

言葉だけだとフワッとするので、実際に数字を入れて計算してみましょう。むずかしくありません。割り算ができれば大丈夫です。

いま、3つの変数(たとえば「身長・体重・座高」)を主成分分析したところ、3つの固有値が次のように出たとします。

主成分 固有値
第1主成分2.5
第2主成分1.2
第3主成分0.3
STEP 1

まず、固有値を全部足して「合計(=ケーキ全体)」を出します。
2.5 + 1.2 + 0.3 = 4.0
これが情報の全体量です。

STEP 2

第1主成分の寄与率を計算します。公式は「固有値 ÷ 合計」でした。
2.5 ÷ 4.0 = 0.625 → 62.5%
つまり、第1主成分だけで全体の情報の6割以上を説明できています。

STEP 3

同じやり方で、第2・第3主成分も計算します。
第2主成分:1.2 ÷ 4.0 = 0.30 → 30%
第3主成分:0.3 ÷ 4.0 = 0.075 → 7.5%

確認

3つの寄与率を足してみます。
62.5% + 30% + 7.5% = 100%
ちゃんと100%になりました。計算が合っている証拠です。

💡 つまり
この例では、第1主成分が62.5%、第2主成分が30%の情報を持っています。第3主成分はたった7.5%。お宝のほとんどが、最初の2つの軸に詰まっている、ということが数字でハッキリわかりました。

累積寄与率で「軸をいくつ使うか」を決める

寄与率がわかると、最後の累積寄与率(るいせききよりつ)はとても簡単です。累積寄与率とは、「寄与率を大きい順に、上から足していった合計」のことです。「累積」とは「だんだん積み重ねる」という意味です。

✅ ひとことで言うと

累積寄与率=「ここまでの主成分を使えば、全体の情報の何割をカバーできるか」を示す数字。これを見て、「軸をいくつまで使えば十分か」を決めます。

さきほどの例(62.5%・30%・7.5%)で、累積寄与率を計算してみましょう。上から順に足していくだけです。

主成分 寄与率 累積寄与率
第1主成分62.5%62.5%
第2主成分30%62.5+30=92.5%
第3主成分7.5%92.5+7.5=100%

この表から、第2主成分までで累積寄与率が92.5%になることがわかります。これは「最初の2つの軸だけで、元のデータの情報の9割以上を表現できている」という意味です。

3つあった変数を2つの軸にまとめても、ほとんど情報が失われていない。だから「第3主成分は捨てて、2つの軸だけで分析しよう」と判断できるのです。これが主成分分析の最大の目的——「たくさんの変数を、少ない軸にギュッとまとめる」ことの正体です。

💡 目安
「累積寄与率が何%あれば十分か」に絶対のルールはありませんが、実務では70%〜80%以上を1つの目安にすることが多いです。グラフ化したいなら、第2主成分までで80%を超えていれば、平面(2軸)で十分にデータを語れます。

初心者がつまずく3つのポイント

最後に、多くの人が混乱しやすいところを先回りして整理しておきます。ここを押さえれば、もう迷いません。

①「固有値」と「固有ベクトル」の役割を混同する

固有ベクトル=向き

  • お宝のある「方向」を指す矢印
  • 主成分の「軸の向き」
  • 長さは1に揃える

固有値=量

  • その方向にある「お宝の量」
  • その軸が持つ「情報量=分散」
  • 大きいほど重要な軸

「向き=ベクトル、量=値」とセットで覚えてしまえば、もう取り違えません。

②「寄与率」と「累積寄与率」を取り違える

寄与率は「その軸 1本だけ」の割合です。累積寄与率は「上からそこまでを足した合計」です。第2主成分の寄与率が30%でも、累積寄与率は92.5%(第1の62.5%を含む)になります。「単体」か「積み重ね」か、で区別してください。

③ 固有値が大きいほど良い、と決めつける

⚠️ ここで間違えやすい
固有値が大きい主成分は「情報をたくさん持つ軸」ではありますが、「分析の目的にとって意味がある軸」とは限りません。たとえば第1主成分がただの「全体の大きさ(規模)」を表しているだけ、というケースもあります。固有値・寄与率は「どの軸を残すか」の目安にしつつ、その軸が実際に何を意味しているかは、固有ベクトルの中身(どの変数が効いているか)を見て解釈する必要があります。

よくある質問(FAQ)

Q. 固有値 固有ベクトルとは何ですか?

A. 固有値はその軸が持つ情報量(バラつき)の大きさ、固有ベクトルはその軸が向いている方向を表します。向きと量のペアです。

Q. 寄与率の計算方法は?

A. 「その主成分の固有値 ÷ すべての固有値の合計」で求めます。全主成分の寄与率を足すと100%になります。

Q. 累積寄与率はどれくらいあればいい?

A. 絶対基準はありませんが、実務では70〜80%以上を目安にすることが多いです。目的に応じて判断します。

Q. 固有値が大きいほど良い主成分ですか?

A. 情報量は多いですが「目的に有用」とは限りません。固有ベクトルの中身を見て、軸の意味を解釈する必要があります。

Q. 固有値は何から計算されますか?

A. データから作る分散共分散行列(または相関行列)を分解することで、固有値と固有ベクトルが求まります。

まとめ:4つの言葉を宝探しで覚える

🗺️ この記事の要点
  • 固有ベクトル=お宝(情報)が眠る「方向」を指す矢印。主成分の軸の向き。
  • 固有値=その方向に眠る「お宝の量」。その軸が持つ情報量(分散)。大きいほど重要。
  • 寄与率=その軸が全体の情報の何割かの割合。「固有値 ÷ 固有値の合計」で計算。
  • 累積寄与率=寄与率を上から足した合計。「軸をいくつ使えば十分か」を決める目安。

むずかしそうに見えた4つの言葉も、「宝探し」のたとえに置き換えれば、それほど怖くありません。方向(固有ベクトル)と量(固有値)をセットで見つけ、量を割合に直したものが寄与率、それを積み上げたものが累積寄与率。この流れさえつかめば、主成分分析の数字は読めるようになります。

🚶 次の一歩
数字の意味がわかったら、次は「その軸が結局なにを表しているのか」を読み解く段階です。固有ベクトルの中身(因子負荷量)や、各データの位置(主成分得点)を学ぶと、主成分分析が一気に使える道具になります。
S
シラス
電験三種 / QC検定1級 / パワエレ設計・品質保証 実務10年

自動車部品メーカーで電気設計・品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて統計を学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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