- CSRとCSVの違いがよくわからない
- ステークホルダーって具体的に誰のこと?
- ISO 26000やSDGsと品質管理の関係が見えない
- 社会的責任がQC検定でなぜ出題されるの?
- CSR(社会的責任)とCSV(共有価値の創造)の違い
- ステークホルダーの種類と企業との関係
- ISO 26000の7つの中核主題
- 品質管理と社会的責任のつながり
「企業は利益を出せばいい」——そんな時代は終わりました。
今、企業には「社会の一員として責任を果たすこと」が求められています。環境問題、人権、地域貢献…。これらを無視した企業は、消費者からも投資家からも見放される時代です。
「でも、それって品質管理と何の関係があるの?」
実は、品質管理こそ社会的責任の最前線なんです。
安全な製品を届ける、環境に配慮した製造を行う、顧客の信頼に応える——これらはすべて品質管理の仕事であり、同時に社会的責任を果たす行為でもあります。
QC検定1級では、この「社会的責任」が重要なテーマとして出題されます。この記事では、CSR・CSV・ステークホルダー・ISO 26000といった概念を、イメージでわかりやすく解説します。
目次
社会的責任(CSR)とは何か?
まず、「社会的責任」の基本を押さえましょう。
CSRの定義
企業が利益追求だけでなく、社会や環境に与える影響に責任を持ち、ステークホルダー(利害関係者)との関係を重視しながら事業活動を行うこと。
簡単に言えば、「企業は社会の一員として、良き市民であるべき」という考え方です。
イメージとしては、こんな感じです。
あなたが一軒家に住んでいるとします。
「自分の家だから何をしてもいい」と、夜中に大音量で音楽を流したり、ゴミを庭に放置したりしたらどうなるでしょう?
近所から苦情が来て、最終的には住みづらくなりますよね。
企業も同じです。「自分たちさえ儲かればいい」という姿勢では、社会から孤立し、長期的には事業を続けられなくなるのです。
なぜ今、CSRが重要なのか?
CSRが重視されるようになった背景には、以下のような社会の変化があります。
| 変化 | 影響 |
|---|---|
| 環境問題の深刻化 | 気候変動、資源枯渇への対応が必須に |
| SNSの普及 | 企業の不祥事が瞬時に拡散される時代 |
| 消費者意識の変化 | 「良い企業」から買いたいという志向 |
| ESG投資の拡大 | 社会的責任を果たす企業に投資が集まる |
| 人材獲得競争 | 若い世代は企業の社会貢献度を重視 |
つまり、CSRは「やったほうがいいこと」ではなく、「やらないと生き残れないこと」になっているのです。

CSRとCSVの違い|「コスト」から「投資」へ
CSRと並んで重要な概念がCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)です。この2つの違いを理解することは、QC検定1級で必須です。
CSRの限界
従来のCSRには、ある問題がありました。
「社会貢献 = コスト」という考え方。
寄付をする、ボランティアをする、環境対策をする…。これらは「良いこと」だけど、企業の利益を減らす活動として捉えられていました。
結果として、「余裕がある時だけやる」「本業とは別の活動」という位置づけになりがちでした。
CSVという新しい考え方
2011年、ハーバード大学のマイケル・ポーター教授が提唱したのがCSVです。
社会的な課題を解決することで、社会的価値と経済的価値を同時に創造する経営戦略。「社会貢献」と「利益」を両立させる考え方。
CSVのポイントは、「社会貢献 = ビジネスチャンス」と捉えることです。
- トヨタのハイブリッド車:環境問題を解決しながら、新市場を開拓
- ユニクロのリサイクル:古着回収で環境貢献しながら、顧客接点を増やす
- ネスレの農家支援:途上国の農家を支援することで、高品質な原料を安定調達
CSRとCSVの違いを一言で
| 比較項目 | CSR | CSV |
|---|---|---|
| 基本的な考え方 | 社会に「還元」する | 社会と「共に成長」する |
| 利益との関係 | コスト(利益を減らす) | 投資(利益を生む) |
| 本業との関係 | 本業とは別の活動 | 本業そのもの |
| 持続可能性 | 余裕がある時だけ | 継続的に取り組める |
| 一言で表すと | 「善行」 | 「Win-Win」 |
CSR = 「Cost(コスト)としてSociety(社会)にReturn(還元)」
CSV = 「Company(企業)とSociety(社会)のValue(価値)を共有」
ただし、CSVがCSRを「置き換える」わけではありません。CSRの土台の上に、CSVの考え方を加えるのが理想的な姿です。

ステークホルダーとは?|企業を取り巻く利害関係者
社会的責任を考えるとき、必ず登場するのが「ステークホルダー(Stakeholder)」という概念です。
ステークホルダーの定義
企業の活動によって影響を受ける、または影響を与えるすべての個人・集団・組織のこと。日本語では「利害関係者」と訳される。
「株主」だけが企業の関係者ではありません。企業は、様々なステークホルダーとの関係の中で存在しています。
主なステークホルダーと企業との関係
| ステークホルダー | 企業が提供するもの | 企業が受け取るもの |
|---|---|---|
| 顧客 | 製品・サービス、安全、満足 | 売上、信頼、フィードバック |
| 従業員 | 給与、働きがい、成長機会 | 労働力、アイデア、忠誠心 |
| 株主・投資家 | 配当、企業価値向上、情報開示 | 資金、経営への信認 |
| 取引先・サプライヤー | 公正な取引、支払い、成長機会 | 原材料、部品、サービス |
| 地域社会 | 雇用、税金、地域貢献活動 | 操業許可、人材、インフラ |
| 環境・地球 | 環境保全、資源の持続的利用 | 資源、エネルギー、生態系サービス |
企業を「孤立した存在」と考えるのではなく、様々なステークホルダーと「つながっている」存在と考えましょう。
どこか一箇所の糸が切れると、全体のバランスが崩れます。すべてのステークホルダーとの関係を大切にすることが、企業の持続可能性につながります。
株主至上主義からステークホルダー資本主義へ
かつては「企業は株主のもの」「株主利益の最大化が経営の目的」という考え方(株主至上主義)が主流でした。
しかし現在は、すべてのステークホルダーの利益をバランスよく考慮する「ステークホルダー資本主義」への転換が進んでいます。
2019年には、アメリカの大企業経営者団体「ビジネス・ラウンドテーブル」が、株主至上主義からの転換を宣言。「企業はすべてのステークホルダーに価値を提供する」という声明を発表しました。

ISO 26000|社会的責任の国際ガイダンス
社会的責任について、国際的なガイダンスを示しているのがISO 26000です。QC検定1級では、この規格の内容が出題されます。
ISO 26000とは
2010年に発行された、社会的責任に関する国際ガイダンス規格。企業だけでなく、あらゆる組織が社会的責任を果たすための手引きを提供する。
ISO 26000は「ガイダンス規格」であり、ISO 9001のような「認証規格」ではありません。
つまり、第三者機関による認証を受けることはできません。あくまで「参考にするもの」という位置づけです。
ISO 26000の7つの中核主題
ISO 26000では、社会的責任を7つの中核主題に整理しています。これはQC検定1級で頻出です。
| 中核主題 | 内容 |
|---|---|
| ①組織統治 | 意思決定の仕組み、説明責任、透明性 |
| ②人権 | 差別禁止、児童労働・強制労働の排除 |
| ③労働慣行 | 安全衛生、公正な労働条件、人材育成 |
| ④環境 | 汚染防止、資源の持続的利用、気候変動対策 |
| ⑤公正な事業慣行 | 汚職防止、公正な競争、サプライチェーン管理 |
| ⑥消費者課題 | 製品安全、情報提供、プライバシー保護 |
| ⑦コミュニティへの参画 | 地域貢献、教育・文化支援、雇用創出 |
7つの中核主題の頭文字を並べると「組・人・労・環・公・消・コ」。
「組織統治で人権を守り、労働環境を整え、環境に配慮し、公正な取引で消費者を守り、コミュニティに貢献する」と覚えましょう。
ISO 26000の7つの原則
ISO 26000では、社会的責任を果たすための7つの原則も定めています。
- 説明責任:自らの行動について説明する責任
- 透明性:意思決定や活動を明確にオープンにする
- 倫理的な行動:正直、公正、誠実に行動する
- ステークホルダーの利害の尊重:利害関係者の期待に応える
- 法の支配の尊重:法令を遵守する
- 国際行動規範の尊重:国際的な基準を尊重する
- 人権の尊重:基本的人権を尊重する

SDGsと企業の社会的責任
近年、社会的責任を語る上で欠かせないのがSDGs(持続可能な開発目標)です。
SDGsとは
2015年に国連で採択された、2030年までに達成すべき17の目標。貧困、飢餓、健康、教育、ジェンダー、水、エネルギー、経済成長、イノベーション、不平等、都市、消費と生産、気候変動、海洋、陸上、平和、パートナーシップの17分野。
SDGsは政府だけでなく、企業の積極的な参画も求めています。なぜなら、地球規模の課題解決には、企業のリソースとイノベーションが不可欠だからです。
品質管理とSDGsの関係
品質管理は、SDGsの複数の目標に貢献できます。
| SDGs目標 | 品質管理の貢献 |
|---|---|
| 目標3:すべての人に健康と福祉を | 安全な製品の提供、製品安全の確保 |
| 目標8:働きがいも経済成長も | 安全な労働環境の整備、生産性向上 |
| 目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう | 継続的改善、イノベーションの推進 |
| 目標12:つくる責任つかう責任 | 不良削減、資源の効率的利用、廃棄物削減 |
| 目標13:気候変動に具体的な対策を | 省エネ、CO2削減、環境マネジメント |
品質管理の基本である「不良を減らす」「ムダをなくす」「安全を確保する」という活動は、そのままSDGsへの貢献につながります。
日々の品質管理活動が、実は地球規模の課題解決に貢献している——そう考えると、仕事のやりがいも増しますよね。
品質管理と社会的責任のつながり
ここまでCSR、CSV、ステークホルダー、ISO 26000、SDGsについて見てきました。最後に、品質管理と社会的責任がどうつながるのかを整理しましょう。
品質管理は社会的責任の「実践」
品質管理の活動は、そのまま社会的責任を果たす行為です。
| 品質管理の活動 | 社会的責任との関係 |
|---|---|
| 製品の安全性確保 | 顧客の安全を守る(消費者課題) |
| 不良率の低減 | 資源のムダを減らす(環境) |
| 正確なデータ管理 | 透明性と説明責任(組織統治) |
| 作業環境の改善 | 従業員の安全と健康(労働慣行) |
| サプライヤー管理 | 公正な取引、人権配慮(公正な事業慣行) |
| 顧客満足の追求 | ステークホルダーへの価値提供 |
「良い品質管理 = 社会的責任を果たすこと」
品質管理者は、単に「良い製品を作る」だけでなく、「社会に貢献する」という大きな役割を担っています。

QC検定1級での出題ポイント
最後に、QC検定1級で社会的責任がどのように出題されるか、ポイントを整理します。
頻出テーマと出題ポイント
| 頻出テーマ | 出題ポイント |
|---|---|
| CSRとCSVの違い | コスト vs 投資、還元 vs 共創の違い |
| ステークホルダー | 6つのステークホルダーと企業との関係 |
| ISO 26000 | 7つの中核主題、7つの原則、ガイダンス規格である点 |
| SDGsとの関係 | 品質管理がSDGsにどう貢献するか |
| 品質管理との関連 | 品質管理活動がなぜ社会的責任につながるか |
社会的責任の問題は、用語の定義と違いを正確に覚えることが重要です。
特に「CSRとCSVの違い」「ISO 26000の7つの中核主題」は頻出。暗記するだけでなく、なぜそうなのかを理解しておくと、応用問題にも対応できます。
まとめ:品質管理は社会貢献
最後に、この記事のポイントをまとめます。
- CSRは社会に「還元」する考え方、CSVは社会と「共に成長」する考え方
- ステークホルダーは顧客、従業員、株主、取引先、地域社会、環境の6つ
- ISO 26000は社会的責任のガイダンス規格(認証規格ではない)
- ISO 26000の7つの中核主題:組織統治、人権、労働慣行、環境、公正な事業慣行、消費者課題、コミュニティ
- SDGsと品質管理は密接に関連している
- 品質管理活動そのものが、社会的責任を果たす行為である
企業の社会的責任は、もはや「余裕があればやること」ではありません。企業が存続するための必須条件です。
そして、品質管理者は社会的責任の最前線にいます。
安全な製品を届ける、環境に配慮した製造を行う、正確なデータで透明性を確保する——これらはすべて、社会への貢献です。
「良い品質管理 = 社会への貢献」。この視点を持って、日々の業務に取り組みましょう。
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