- 「ISO 9001」ってよく聞くけど、結局なんのこと?
- 品質マネジメントシステム(QMS)って何をするの?
- なぜ多くの企業がISO 9001の認証を取得しているの?
- ISOとJISの関係がよくわからない…
- ISO 9001の基本的な意味と目的
- 品質マネジメントシステム(QMS)の仕組み
- ISO 9001の10の箇条(要求事項)の全体像
- 認証取得のメリットと流れ
「ISO 9001」という言葉、ビジネスの現場でよく耳にしますよね。
でも、「実際に何をするための規格なの?」「うちの会社も取得した方がいいの?」と聞かれると、うまく説明できない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ISO 9001の基本から、なぜ世界中の企業が認証を取得しているのかまで、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
難しい専門用語は使わず、「品質管理の世界共通ルール」として理解できるように説明しますので、ぜひ最後までお付き合いください。
目次
ISO 9001とは?|品質管理の「世界共通ルール」
ISOとは「国際標準化機構」のこと
まず「ISO」という言葉から説明しましょう。
ISO(International Organization for Standardization)は、スイスのジュネーブに本部を置く「国際標準化機構」という組織です。世界160カ国以上が参加しており、「世界中で共通して使えるルール(規格)」を作っています。
たとえば、海外で買ったスマホの充電器が日本でも使えるのは、ISOが「コンセントの形状」や「電圧」などの規格を決めているからなんです。
ISOは「モノの規格」だけでなく、「組織の運営方法の規格」も作っています。ISO 9001は後者の代表例です。
ISO 9001は「品質マネジメントシステム」の規格
ISO 9001は、「品質マネジメントシステム(QMS:Quality Management System)」に関する国際規格です。
簡単に言うと、「お客様に満足してもらえる製品・サービスを、継続的に提供するための仕組み」を定めた世界共通のルールブックです。
顧客満足の向上を目指し、品質マネジメントシステムを確立・維持・改善するための要求事項を定めた国際規格
ここで大切なのは、ISO 9001は「製品そのものの品質」を直接規定しているわけではないということ。
「良い製品を作るための仕組み・プロセス」を規定しているのです。
JIS Q 9001との関係
「ISO 9001」と「JIS Q 9001」、どちらも見かけることがありますよね。この違いは何でしょうか?
| 規格名 | 発行元 | 言語 | 内容 |
|---|---|---|---|
| ISO 9001 | ISO(国際) | 英語・仏語 | オリジナル |
| JIS Q 9001 | 日本産業規格 | 日本語 | ISO 9001の日本語訳 |
JIS Q 9001は、ISO 9001を日本語に翻訳したものです。内容は基本的に同じなので、「ISO 9001 = JIS Q 9001」と考えて問題ありません。
日本の企業が認証を取得する場合、通常は「JIS Q 9001」の認証となりますが、これは国際的にも「ISO 9001認証」として通用します。

品質マネジメントシステム(QMS)とは?
QMSを「会社のレシピ本」に例えると
品質マネジメントシステム(QMS)を、「会社全体のレシピ本」に例えてみましょう。
美味しい料理を作るレストランには、「レシピ本」がありますよね。どんな食材を使い、どの順番で調理し、どんな味付けをするか。これが決まっているから、誰が作っても同じ美味しさを提供できるわけです。
QMSも同じです。「誰がやっても、いつやっても、同じ品質の製品・サービスを提供できる仕組み」を文書化したものがQMSなのです。
QMSの4つの文書レベル
QMSは通常、以下の4つのレベルの文書で構成されます。
| レベル | 文書名 | 内容 | レシピに例えると |
|---|---|---|---|
| 1 | 品質方針 | 経営者が示す品質への想い | 「地元食材で健康的な料理を」という店の理念 |
| 2 | 品質マニュアル | QMSの全体像を説明 | メニュー全体の構成と調理の基本ルール |
| 3 | 手順書 | 各業務の具体的なやり方 | 各料理のレシピ(材料・手順・時間) |
| 4 | 記録 | 実際にやったことの証拠 | 「今日の仕入れ」「調理時間」「お客様の感想」のメモ |
ISO 9001の2015年版からは、「品質マニュアル」の作成は必須ではなくなりました。ただし、多くの企業では引き続き作成しています。大切なのは「文書があること」ではなく「仕組みが機能していること」です。
PDCAサイクルで継続的に改善する
ISO 9001の根底にあるのは、「PDCAサイクル」という考え方です。
| ステップ | 意味 | 具体例 |
|---|---|---|
| Plan(計画) | 目標を立て、計画を作る | 「不良率を1%以下にする」という目標設定 |
| Do(実行) | 計画に沿って実行する | 手順書に従って製造を行う |
| Check(評価) | 結果を測定・分析する | 実際の不良率をデータで確認する |
| Act(改善) | 問題点を改善する | 不良の原因を特定し、手順を見直す |
このサイクルを「回し続ける」ことで、品質は少しずつ向上していきます。ISO 9001は、このPDCAサイクルを組織全体で回すための「枠組み」を提供しているのです。


ISO 9001の「10の箇条」を全体像で理解する
ISO 9001:2015(最新版)は、10の箇条(章)で構成されています。すべてを暗記する必要はありませんが、全体像を把握しておくと理解が深まります。
箇条1〜3:基礎情報(要求事項ではない)
| 箇条 | タイトル | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 適用範囲 | この規格が何に適用されるかの説明 |
| 2 | 引用規格 | 参照すべき他の規格(ISO 9000など) |
| 3 | 用語及び定義 | ISO 9000の用語を使用 |
箇条1〜3は「前置き」のようなもので、組織が具体的に対応すべき要求事項は含まれていません。
箇条4〜10:本体の要求事項
実際に組織が対応すべき要求事項は、箇条4〜10に記載されています。
| 箇条 | タイトル | ざっくり言うと | PDCA |
|---|---|---|---|
| 4 | 組織の状況 | 自社を取り巻く環境を理解する | — |
| 5 | リーダーシップ | 経営者が先頭に立ってQMSを推進する | — |
| 6 | 計画 | リスクと機会を考慮して目標を立てる | Plan |
| 7 | 支援 | 人・モノ・情報などの資源を整える | Plan |
| 8 | 運用 | 製品・サービスを計画通りに作る | Do |
| 9 | パフォーマンス評価 | 監視・測定・分析・内部監査を行う | Check |
| 10 | 改善 | 不適合への対応と継続的改善 | Act |
箇条4(組織の状況)と箇条5(リーダーシップ)は、PDCAの「外側」にあります。これは「PDCAを回す前提条件」として、組織全体で理解しておくべき事項だからです。
各箇条のキーワード
箇条4:組織の状況
自社の「内部・外部の課題」と「利害関係者のニーズ」を把握することが求められます。
「うちの会社を取り巻く環境はどうなっている?」「顧客・株主・従業員など、誰が何を期待している?」を明確にします。
箇条5:リーダーシップ
トップマネジメント(経営者)が、QMSに対して責任を持ち、先頭に立って推進することが求められます。
「品質方針」を定め、全社員に周知し、顧客重視の姿勢を示すのは経営者の仕事です。
箇条6:計画
「リスク及び機会」への取り組みと、「品質目標」の設定が求められます。
「何がうまくいかない可能性があるか(リスク)」「どんなチャンスがあるか(機会)」を考え、それを踏まえた目標を立てます。
箇条7:支援
QMSを運用するための「資源」(人、設備、環境、知識など)を整えることが求められます。
「必要な人材は足りているか」「設備は適切か」「従業員は十分な教育を受けているか」などを確認します。
箇条8:運用
製品・サービスを実際に提供するプロセスに関する要求事項です。
設計・開発、外部からの調達、製造、引き渡しなど、「実務」の部分が該当します。
箇条9:パフォーマンス評価
「監視、測定、分析、評価」と「内部監査」、「マネジメントレビュー」が求められます。
「計画通りにできているか」「顧客は満足しているか」を定期的にチェックし、経営者が結果を確認します。
箇条10:改善
「不適合への対応」と「継続的改善」が求められます。
問題が起きたら原因を調べて再発を防ぎ、問題がなくても「もっと良くできないか」を常に考えます。

ISO 9001の重要な考え方
ISO 9001を理解するうえで、押さえておきたい3つの重要な考え方があります。
① プロセスアプローチ
プロセスアプローチとは、組織の活動を「個別の作業」ではなく、「つながったプロセス(流れ)」として捉える考え方です。
たとえば製造業では、「受注→設計→調達→製造→検査→出荷」というプロセスがあります。これらは独立しているのではなく、前のプロセスの「アウトプット」が次のプロセスの「インプット」になっています。
インプット → プロセス(変換活動) → アウトプット
※ 各プロセスの「つながり」と「相互作用」を意識する
プロセスアプローチでは、「各プロセスの責任者は誰か」「どんな資源が必要か」「どう測定・改善するか」を明確にします。
② リスクに基づく考え方(リスクベースドシンキング)
ISO 9001:2015で強調されるようになったのが、「リスクに基づく考え方」です。
これは、「何か問題が起きてから対処する」のではなく、「問題が起きる前に予防する」という考え方です。
| 概念 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| リスク | 望ましくない結果の可能性 | 設備の故障、原材料の品質低下、人手不足 |
| 機会 | 望ましい結果の可能性 | 新技術の活用、新市場への参入、業務効率化 |
「リスクに基づく考え方」は、必ずしも「リスクアセスメント」や「リスク管理台帳」のような文書化を要求しているわけではありません。組織の規模や業種に応じた適切な方法で取り組めばOKです。
③ 継続的改善
ISO 9001の究極の目的は、「継続的改善」です。
「一度仕組みを作ったら終わり」ではなく、常に「もっと良くできないか」を考え続けることが求められます。
これは日本企業が得意とする「カイゼン」の考え方と共通しています。実は、ISO 9001は日本の品質管理の考え方から多くの影響を受けて作られた規格なのです。
継続的改善は、「大きな革新」だけでなく「小さな改善の積み重ね」も含みます。日々の業務の中で「ここ、もう少し効率化できないかな」と考えることが大切です。

ISO 9001認証を取得するメリット
多くの企業がISO 9001の認証を取得していますが、なぜでしょうか?主なメリットを見ていきましょう。
メリット① 顧客からの信頼向上
ISO 9001は世界で最も普及している品質規格です。認証を取得していることは、「この会社は品質管理の仕組みがしっかりしている」という証明になります。
特に、新規顧客の獲得や入札の際に有利に働くことがあります。
メリット② 業務の効率化・標準化
ISO 9001を構築する過程で、業務プロセスの「見える化」が進みます。
「誰が何をするか」が明確になり、属人化(特定の人しかできない状態)を防ぐことができます。結果として、業務の効率化やミスの削減につながります。
メリット③ 継続的な改善文化の醸成
ISO 9001は「作って終わり」ではなく、定期的な監査と見直しが求められます。
これにより、組織全体に「常に改善を考える」という文化が根付いていきます。
メリット④ グローバルビジネスへの対応
海外企業との取引では、ISO 9001認証が「取引条件」になっていることも少なくありません。
グローバル展開を考える企業にとって、ISO 9001認証は事実上の「パスポート」のような役割を果たします。
| メリット | 具体的な効果 |
|---|---|
| 信頼向上 | 新規顧客獲得、入札での有利性 |
| 業務効率化 | プロセスの見える化、属人化防止 |
| 改善文化 | 継続的改善の定着、品質意識向上 |
| グローバル対応 | 海外取引の条件クリア、国際競争力 |

ISO 9001認証取得の流れ
ISO 9001の認証を取得するまでの一般的な流れを紹介します。
認証取得までの7ステップ
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 経営者のコミットメント | トップが「取得する」と決意し、資源を確保する |
| 2 | 推進体制の構築 | 事務局・推進チームを編成する |
| 3 | 現状分析(ギャップ分析) | 現在の仕組みとISO 9001の要求事項の差を確認 |
| 4 | QMSの構築 | 文書作成、プロセスの整備、教育訓練の実施 |
| 5 | QMSの運用 | 構築したQMSを実際に運用し、記録を残す |
| 6 | 内部監査・マネジメントレビュー | 自社でチェックし、経営者が評価する |
| 7 | 認証審査 | 第三者(認証機関)による審査を受ける |
認証取得までの期間は、組織の規模や現状によって異なりますが、一般的に6ヶ月〜1年程度が目安です。コンサルタントを活用する企業も多いです。
認証取得後も続くサイクル
認証を取得したら終わりではありません。ISO 9001の認証は3年間有効で、その間に以下の監査が行われます。
- 定期審査(サーベイランス):年1回、認証機関による監査
- 更新審査:3年ごとに、認証を更新するための審査
このサイクルがあるからこそ、QMSが形骸化せず、継続的に改善され続けるのです。

まとめ|ISO 9001は「品質を作り込む仕組み」
この記事では、ISO 9001の基本について解説してきました。最後に、ポイントをまとめます。
- ISO 9001は、品質マネジメントシステム(QMS)に関する国際規格
- 製品そのものではなく、「良い製品を作るための仕組み」を規定
- 10の箇条で構成され、箇条4〜10が要求事項
- プロセスアプローチ、リスクに基づく考え方、継続的改善が重要な概念
- 認証取得により、信頼向上・業務効率化・グローバル対応などのメリットがある
- JIS Q 9001は、ISO 9001の日本語版(内容は同じ)
ISO 9001は、「検査で品質を保証する」のではなく、「仕組みで品質を作り込む」という考え方に基づいています。
最初は難しく感じるかもしれませんが、基本を押さえれば理解は難しくありません。この記事が、ISO 9001を学ぶ第一歩になれば幸いです。
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