抜取検査

第8回【実務で使える】抜取数nと合格判定数cの決め方|計算手順を完全図解

💭 こんな悩み、ありませんか?

「抜取検査のnとcって、どうやって決めるの?」
「P₀とかP₁とか、パラメータが多すぎて混乱する…」
「実務ですぐに使える方法が知りたい!」

✅ この記事を読めば、4ステップで誰でもnとcを決められるようになります!

📌 抜取数nと合格判定数cとは?

抜取検査では、「何個調べるか(n)」「何個まで不良品を許すか(c)」を事前に決めておく必要があります。

📖 用語の定義

用語 意味 具体例
n (抜取数) ロットから抜き取って検査するサンプル数 n=80なら「80個調べる」
c (合格判定数) サンプル中に見つかった不良品がこの個数以下なら合格とする基準 c=2なら「不良品2個までOK」

💡 具体例

「n=80, c=2」の検査方式の場合
→ ロットから80個取り出して検査し、不良品が0個、1個、2個なら合格3個以上なら不合格と判定します。

この「n」と「c」をどう決めるかで、検査の厳しさや効率が大きく変わります。

🎯 nとcを決めるための4つのパラメータ

nとcを決めるには、まず4つの重要なパラメータを理解する必要があります。

🔢 4つのパラメータ

パラメータ 意味 一般的な値
P₀ (合格品質水準) 「この品質ならほぼ合格にしたい」基準の不良率 0.5%〜3%
P₁ (不合格品質水準) 「この品質ならほぼ不合格にしたい」基準の不良率 5%〜10%
α (生産者危険) 良いロット(p=P₀)を不合格にしてしまう確率 5% (0.05)
β (消費者危険) 悪いロット(p=P₁)を合格にしてしまう確率 10% (0.10)

💡 初心者向けのポイント

  • P₀とP₁は、あなたが「この品質は許せる/許せない」と決める基準です。
  • αとβは、間違いを起こす確率です。通常はα=5%, β=10%を使います(業界標準)。

📊 nとcの決め方(4ステップ)

それでは、具体的な手順を見ていきましょう。たった4ステップで、nとcを決めることができます。

ステップ① 品質基準を決める(P₀, P₁)

まず、「どの品質なら合格/不合格にしたいか」を決めます。

🎯 決め方の目安

  • P₀(合格品質水準): 通常、0.5%〜3%に設定します。
  • P₁(不合格品質水準): 通常、5%〜10%に設定します。
  • P₁/P₀の比率が重要で、一般的には3〜10倍程度にします。

💡 具体例

「不良率1%なら合格にしたい、でも5%を超えたら絶対に不合格にしたい」
P₀=1%, P₁=5%と設定

ステップ② 危険率を設定(α, β)

次に、「間違いをどれくらい許容するか」を決めます。

⚙️ 推奨設定

  • α(生産者危険): 5% (0.05)が業界標準
  • β(消費者危険): 10% (0.10)が業界標準

📌 初心者へのアドバイス

特別な理由がなければ、α=5%, β=10%を使えばOKです。これは多くの業界で使われている標準値です。

ステップ③ 検査の型を決定

JIS規格では、検査の厳しさに応じて「なみ検査」「きつい検査」「ゆるい検査」の3種類があります。

📋 検査の型の選び方

  • なみ検査: 通常の品質管理に使用(最も一般的)
  • きつい検査: 品質問題が発生したときに使用
  • ゆるい検査: 品質が安定しているときに使用

📌 初心者へのアドバイス

最初は「なみ検査」を選べばOKです。

ステップ④ nとcを求める

ここまでの情報を使って、nとcを実際に求めます。方法は2つあります。

🛠️ 2つの方法

方法1: JIS規格の表を使う(初心者におすすめ)

  • JIS Z 9002(計数抜取検査)の表を参照
  • P₀, P₁, α, βの値から、nとcを読み取る

方法2: 計算式で求める(上級者向け)

  • 二項分布やポアソン分布の式を使って計算
  • Excelやプログラミングで自動化可能

この記事では、初心者でも簡単に使える「方法1: JIS規格の表を使う方法」を詳しく解説します。

🔧 実例で学ぶ: JIS規格表を使ったnとcの求め方

では、具体的な数値例を使って、実際にnとcを求めてみましょう。

📝 設定条件

  • P₀ (合格品質水準): 1%
  • P₁ (不合格品質水準): 5%
  • α (生産者危険): 5%
  • β (消費者危険): 10%
  • 検査の型: なみ検査

📐 計算手順

手順① P₁/P₀の比率を計算

P₁/P₀ = 5% ÷ 1% = 5

→ P₁はP₀の5倍です。

手順② JIS Z 9002の表を参照

JIS Z 9002の計数抜取検査表から、以下の条件に該当する行を探します:

  • P₁/P₀ = 5
  • α = 5%, β = 10%
  • なみ検査

表を参照すると、以下の値が見つかります:

P₁/P₀ α, β n c
5 α=5%, β=10% 80 2

手順③ 結果を確認

n = 80 (抜取数)

c = 2 (合格判定数)

✅ この検査方式では、80個を検査して、不良品が2個以下なら合格と判定します。

✔️ 検証: この方式で正しいか?

求めたn=80, c=2が、設定した条件(α=5%, β=10%)を満たしているか確認してみましょう。

📊 OC曲線で確認

  • p=1%(P₀)のとき: L(p)≈95% → α=1-0.95=5%
  • p=5%(P₁)のとき: L(p)≈10% → β=10%

→ 条件を満たしているので、この検査方式は適切です!

📚 OC曲線について詳しく学ぶ

⚙️ パラメータが変わると、nとcはどう変わる?

P₀、P₁、α、βの値を変えると、nとcがどう変化するかを見てみましょう。

📊 条件別のn, c比較表

条件 n c 備考
P₀=1%, P₁=5%
α=5%, β=10%
80 2 標準的な設定
P₀=0.5%, P₁=5%
α=5%, β=10%
160 3 P₀が小さい
→ nが大きくなる
P₀=2%, P₁=10%
α=5%, β=10%
40 1 P₀が大きい
→ nが小さくなる
P₀=1%, P₁=10%
α=5%, β=10%
45 1 P₁/P₀の比が大きい
→ nが小さくなる

📌 重要なポイント

💡 覚えておきたい傾向

  • P₀が小さいほど、nは大きくなる(厳しい検査になる)
  • P₁/P₀の比が大きいほど、nは小さくなる(効率的な検査になる)
  • α, βを小さくすると、nは大きくなる(精度が上がるが、コストも上がる)

⚠️ 実務で注意すべきポイント

🔍 ロットサイズも考慮する

nとcを決めるとき、ロットサイズ(1ロットあたりの製品数)も考慮する必要があります。

⚠️ 注意点

  • ロットサイズが100個なのに、n=200とするのは不可能
  • 一般的には、n ≦ ロットサイズの10%程度が目安
  • ロットサイズが小さい場合は、全数検査も検討する

📉 P₁/P₀の比が整数でない場合

実際の計算では、P₁/P₀が整数にならないこともあります。

📌 対処法

JIS規格表で、最も近い値を使用します。
例: P₁/P₀=4.5の場合 → 表の「4」または「5」を使う

🔄 検査方式の見直し

運用開始後も、定期的に検査方式を見直すことが重要です。

🔄 見直しのタイミング

  • 品質が継続的に改善した場合 → ゆるい検査へ
  • 不良品が多く発生した場合 → きつい検査へ
  • ロットサイズが大きく変化した場合 → nとcを再計算

📚 まとめ

✅ この記事のポイント

  • nとcは4ステップで決められる
    ① 品質基準(P₀, P₁)を決める → ② 危険率(α, β)を設定 → ③ 検査の型を決定 → ④ JIS規格表からnとcを読み取る
  • 初心者はα=5%, β=10%でOK
    業界標準値を使えば、特別な理由がない限り問題ありません。
  • JIS規格表を使えば簡単
    計算式を使わなくても、表を参照するだけでnとcを求められます。
  • P₁/P₀の比率が重要
    この比率が大きいほど、効率的な検査(小さいn)ができます。
  • ロットサイズも考慮する
    nはロットサイズの10%以下が目安です。

💬 質問・コメント大歓迎です!

「この条件ではnとcはどうなる?」「実務でこんな場合はどうすればいい?」など、お気軽にコメント欄で質問してください。できる限りお答えします!

タグ

-抜取検査