機械科目の解説

【電験三種】変圧器の基本式を完全マスター|巻数比aから電圧・電流・インピーダンスを一発計算

😰 こんな悩みはありませんか?

  • 変圧器の公式が多すぎて覚えられない…
  • 巻数比「a」って何?どう使うの?
  • 電圧比と電流比、どっちがどっちか混乱する
  • インピーダンス比の「a²」が意味不明…

変圧器の計算問題を解こうとすると、公式がたくさん出てきて混乱しますよね。

でも、安心してください。実は変圧器の公式はたった1つの「a」を理解するだけで、すべてが芋づる式に出てくるのです。

✅ この記事の結論

変圧器の計算は「巻数比 a」がすべての基準。
電圧は「a倍」、電流は「1/a倍」、インピーダンスは「a²倍」。
この3つの関係を覚えれば、どんな問題も解ける!

この記事では、変圧器の4つの基本式を「なぜそうなるのか?」から丁寧に解説します。

読み終わる頃には、「aさえわかれば全部計算できる!」という自信がつきますよ。

🔢 巻数比「a」とは? ― すべての計算の出発点

変圧器の計算で最初に覚えるべきは、「巻数比 a(エー)」です。

これは、一次コイルと二次コイルの巻数の「比率」を表す数字です。

📐 巻数比の公式

a = N₁ / N₂

N₁:一次コイルの巻数 | N₂:二次コイルの巻数 | a:巻数比

この「a」という文字が、変圧器の計算における絶対的な基準になります。

💡 巻数比aの意味を具体例で理解しよう

例えば、一次コイルが1000回、二次コイルが100回の変圧器があったとします。

📝 計算例

a = N₁ / N₂ = 1000 / 100 = 10

この場合、巻数比 a = 10 です。

「一次コイルは二次コイルの10倍の巻数がある」という意味ですね。

💡 aの値で変圧器のタイプがわかる!

・a > 1(1より大きい)→ 降圧トランス(電圧を下げる)
・a < 1(1より小さい)→ 昇圧トランス(電圧を上げる)
・a = 1 → 電圧は変わらない(絶縁用など)

⚡ 電圧比 = 巻数比a

巻数比aがわかったら、次は電圧比です。

これは前回の記事でも説明しましたが、もう一度確認しましょう。

📐 電圧比の公式

V₁ / V₂ = N₁ / N₂ = a

V₁:一次電圧 | V₂:二次電圧

つまり、電圧比は巻数比と同じです。

これを式変形すると、二次電圧を求める公式が出てきます。

📐 二次電圧を求める公式

V₂ = V₁ / a

一次電圧を巻数比で割れば、二次電圧が求まる

🧮 電圧比の計算例

📝 例題

【条件】
・一次電圧 V₁ = 6,600V
・巻数比 a = 33

【計算】
V₂ = V₁ / a = 6,600 / 33 = 200V

【答え】 二次電圧は200V

6,600Vが200Vに降圧されました。これは電柱の変圧器でよく見る変換ですね。

電圧比のポイント

・電圧比 = 巻数比 = a
・巻数が多い側が、電圧も高い
・V₂ = V₁ / a で二次電圧を計算

🔄 電流比 = 巻数比の「逆」(1/a)

電圧の次は電流です。ここで超重要なポイントがあります。

電流比は、電圧比の「逆」になる!

📐 電流比の公式

I₁ / I₂ = N₂ / N₁ = 1/a

I₁:一次電流 | I₂:二次電流

なぜ逆になるのでしょうか?

それは、エネルギー(電力)が保存されるからです。

⚖️ なぜ電流比は逆になる? ― 電力保存の法則

理想変圧器では、入力電力と出力電力が等しくなります。

📐 電力保存の式

V₁ × I₁ = V₂ × I₂

一次側の電力 = 二次側の電力(理想変圧器の場合)

この式を見ると、電圧と電流はシーソーの関係にあることがわかります。

🎢 シーソーで考える

シーソーの左右のバランスは常に保たれます。

・電圧が上がると → 電流は下がる
・電圧が下がると → 電流は上がる

トータルの「重さ」(電力)は変わらないのです。

🧮 電流比の計算例

📝 例題

【条件】
・一次電流 I₁ = 1A
・巻数比 a = 10

【計算】
I₂ = I₁ × a = 1 × 10 = 10A

【答え】 二次電流は10A

電圧が1/10になったので、電流は10倍になりました。
電力は「10 × 1 = 10」のままで変わりません。

📐 二次電流を求める公式

I₂ = I₁ × a

一次電流に巻数比をかければ、二次電流が求まる

電流比のポイント

・電流比 = 巻数比の = 1/a
・巻数が少ない側が、電流は多い
・I₂ = I₁ × a で二次電流を計算

🔷 インピーダンス比 = 巻数比の「2乗」(a²)

最後に登場するのがインピーダンス比です。

これは少し難しく見えますが、「電圧」と「電流」の関係から自然に導けます。

📐 インピーダンス比の公式

Z₁ / Z₂ = (N₁/N₂)² = a²

Z₁:一次側に換算したインピーダンス | Z₂:二次側のインピーダンス

なぜ「2乗」になるのでしょうか?

🔍 なぜ「a²」になる? ― オームの法則から導く

インピーダンスZは、オームの法則から「Z = V / I」で表されます。

これを使って、インピーダンス比を計算してみましょう。

📝 インピーダンス比の導出

【ステップ1】 インピーダンスの定義
 Z₁ = V₁ / I₁ 、 Z₂ = V₂ / I₂

【ステップ2】 比を取る
 Z₁ / Z₂ = (V₁/I₁) / (V₂/I₂)

【ステップ3】 式を変形
 Z₁ / Z₂ = (V₁/V₂) × (I₂/I₁)

【ステップ4】 電圧比と電流比を代入
 Z₁ / Z₂ = a × a =

電圧比が「a」で、電流比が「1/a」なので、インピーダンス比は「a × a = a²」になるのです。

🔎 イメージで覚える

「a²」は、aの効果が2回かかるということ。

・1回目:電圧がa倍になる効果
・2回目:電流が1/a倍(÷aになる)効果

この2つが掛け合わさって「a × a = a²」になります。

🧮 インピーダンス比の計算例

📝 例題:二次側のインピーダンスを一次側に換算

【条件】
・二次側に接続された負荷 Z₂ = 4Ω
・巻数比 a = 5

【計算】
Z₁ = Z₂ × a² = 4 × 5² = 4 × 25 = 100Ω

【答え】 一次側から見たインピーダンスは100Ω

二次側の4Ωの負荷が、一次側から見ると100Ωに見えるということです。

これを「インピーダンス変換」または「一次側換算」と呼びます。

インピーダンス比のポイント

・インピーダンス比 = 巻数比の2乗 = a²
・Z₁ = Z₂ × a² で一次側換算
・Z₂ = Z₁ / a² で二次側換算
・「a²」は電圧と電流の両方の効果

📊 変圧器の基本式まとめ

ここまで学んだ4つの公式を、一覧表にまとめます。

項目 公式 覚え方
巻数比 a = N₁/N₂ すべての基準
電圧比 V₁/V₂ = a そのまま「a」
電流比 I₁/I₂ = 1/a 電圧の
インピーダンス比 Z₁/Z₂ = a² 電圧の2乗
電力 P₁ = P₂ 変わらない(理想時)

🧠 暗記のコツ

V は a、I は 1/a、Z は a²

・電圧(Voltage)は巻数比そのまま
・電流(Current)は巻数比の逆数
・インピーダンス(Z)は巻数比の2乗

🎯 実践問題で確認しよう

最後に、実際の試験で出題されそうな問題を解いてみましょう。

📝 練習問題

【問題】

理想変圧器があり、一次側に6,600V、50Aの交流電源が接続されている。
二次側には8Ωの抵抗負荷が接続されている。

次の値を求めよ。
(1) 二次電圧 V₂
(2) 二次電流 I₂
(3) 巻数比 a

✅ 解答と解説

📝 解答

【考え方】
まず、一次側の情報から「一次側から見たインピーダンス Z₁」を求めます。

【ステップ1】一次側インピーダンスを求める
Z₁ = V₁ / I₁ = 6,600 / 50 = 132Ω

【ステップ2】巻数比aを求める
Z₁ / Z₂ = a² より
a² = Z₁ / Z₂ = 132 / 8 = 16.5
a = √16.5 ≒ 4.06

【ステップ3】二次電圧V₂を求める
V₂ = V₁ / a = 6,600 / 4.06 ≒ 1,626V

【ステップ4】二次電流I₂を求める
I₂ = I₁ × a = 50 × 4.06 ≒ 203A

または V₂ / Z₂ = 1,626 / 8 ≒ 203A でも同じ結果。

✅ 検算:電力は一致するか?

P₁ = V₁ × I₁ = 6,600 × 50 = 330,000W
P₂ = V₂ × I₂ = 1,626 × 203 ≒ 330,000W

ほぼ一致!理想変圧器なので、電力が保存されています。

📝 まとめ:変圧器の基本式

☕ 今日のおさらい

  • 巻数比 a = N₁/N₂:すべての計算の出発点
  • 電圧比 = a:巻数が多い方が電圧も高い
  • 電流比 = 1/a:巻数が多い方が電流は小さい
  • インピーダンス比 = a²:電圧と電流の両方の効果で2乗になる
  • 電力は一定:V₁I₁ = V₂I₂(理想変圧器)

変圧器の計算問題は、「巻数比aを求める→他の値を芋づる式に計算」という流れが基本です。

今回の公式をしっかり覚えて、次の「等価回路」の学習に進みましょう!

💪

変圧器の基本式、マスターできましたか?
「aさえわかれば全部解ける!」を合言葉に、次へ進みましょう!

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