抜取検査

第4回: 抜取検査の「形式」とは?|一回・二回・多回・逐次の違いを試験の受け方で理解する

前回の記事で、抜取検査の「」(規準型・選別型・調整型)を学びました。「型」は不合格ロットのその後の処理ルールでしたね。

今回は、もう1つの分類軸——「形式」を解説します。

「型」が「不合格のルール」なら、「形式」は「検査のルール」。つまり、「何回サンプルを抜き取って、どうやって合否を決めるか?」という実施方法の分類です。

😣 こんな悩みはありませんか?
  • 一回・二回・多回・逐次の違いが覚えられない
  • 二回抜取検査の「保留ゾーン」って何?
  • 逐次抜取検査のグラフの読み方が分からない
  • 結局どの形式を使えばいいの?
✅ この記事でわかること
  • 4つの形式の違いを「試験の受け方」のたとえ話で直感理解
  • 各形式の判定フローをフローチャートで完全図解
  • 平均検査個数(ASN)で比較した「効率ランキング」
  • 「型」と「形式」の関係をマトリクス表で整理
🎯 先に結論

抜取検査の「形式」とは、「何回抜き取って、どう判定するか」のルールです。

📝 一回:一発勝負。サンプルを1回だけ抜いて、即合否判定
📝📝 二回:追試あり。1回目で微妙なら、もう1回チャンスがある
📝📝📝 多回:追試を何回もできる。判定がつくまで繰り返す
📊 逐次:1個ずつ判定。リアルタイムで合否ラインに到達したら終了

判定回数が増えるほど平均検査個数は少なくなる(効率UP)けれど、運用は複雑になる(管理コストUP)。このトレードオフで形式を選びます。

📘 前回の記事(「型」の解説)
【完全図解】抜取検査の「型」とは?|規準型・選別型・調整型の違いをスーパーの果物で理解する →

「型」は不合格後のルール、「形式」は検査中のルール。先に「型」を理解しておくと、この記事がスムーズに読めます。

「形式」の全体像|「何回チャンスがあるか」で4つに分かれる

抜取検査の形式は、ひと言でいえば「サンプルを何回に分けて抜き取るか」の違いです。

これを「試験の受け方」にたとえると、一瞬で理解できます。

💡 試験のたとえで4形式を一気に理解
📝 一回抜取期末テスト一発勝負。1回の試験で全科目を解き、点数で合否が決まる。やり直しなし。

📝📝 二回抜取追試ありの試験。1回目で合格ラインを超えれば即合格。不合格なら即不合格。「微妙」なら追試(2回目)を受けてもう1回チャンスがもらえる。

📝📝📝 多回抜取追試が何回もある試験。合格ラインに届くか、完全にダメになるまで何回でもチャレンジ。

📊 逐次抜取クイズ番組の早押し形式。1問ずつ答えて、正解が溜まれば合格。誤答が溜まれば不合格。リアルタイムでスコアが動く。

① 一回抜取検査|一発勝負の「期末テスト」

どんな形式?

最もシンプルな形式です。ロットから1回だけサンプルをn個抜き取り、不良品の数が合格判定数c以下なら合格cを超えたら不合格。それで終わりです。

📦
ロット
N個
🔍
n個を抜取り
不良品をカウント
⚖️
判定
不良 ≤ c → 合格
不良 > c → 不合格
📐 具体例
ロット1,000個からn = 80個を抜取り。
合格判定数 c = 3

不良品が2個 → 2 ≤ 3 → 合格✅
不良品が5個 → 5 > 3 → 不合格❌

メリット・デメリット

✅ メリット ❌ デメリット
ルールが最もシンプルで理解しやすい 他の形式よりサンプル数nが多くなりがち
管理・運用が簡単(表が1つだけ) 「微妙」な場合もやり直しなし(柔軟性なし)
実務で最も広く使われている 検査コストが高めになる場合がある

② 二回抜取検査|「追試」で救済のチャンスがある

どんな形式?

二回抜取検査は、1回目の検査結果が「白」でも「黒」でもない「グレーゾーン」に入った場合、2回目の抜取りを行ってから最終判定する形式です。

1回目の結果だけで合否が決まるケースもあります。むしろ品質が良いロットなら1回目で即合格になり、2回目は不要。結果的に平均検査個数が一回式より少なくなることが多いのです。

判定フロー:3つのゾーン

二回抜取検査を理解する鍵は、「合格ゾーン」「不合格ゾーン」「保留ゾーン」の3つです。

1回目:n₁個を抜取り

不良品の数 d₁ を数えます。
d₁ ≤ c₁(合格判定数)即合格✅(2回目は不要)
d₁ ≥ r₁(不合格判定数)即不合格❌(2回目は不要)
c₁ < d₁ < r₁(保留ゾーン)2回目へ進む

2回目:n₂個を追加抜取り

1回目と2回目の不良品の合計 d₁ + d₂ を計算。
d₁ + d₂ ≤ c₂(第2合格判定数)合格✅
d₁ + d₂ > c₂不合格❌

📐 具体例
1回目:n₁ = 50個を抜取り。c₁ = 1、r₁ = 4

・不良品が0個 or 1個 → 即合格✅
・不良品が4個以上 → 即不合格❌
・不良品が2個 or 3個 → 保留(2回目へ)

2回目:n₂ = 50個を追加抜取り。c₂ = 4

・1回目に不良2個、2回目に不良1個 → 合計3個 ≤ 4 → 合格✅
・1回目に不良3個、2回目に不良3個 → 合計6個 > 4 → 不合格❌
💡 試験のたとえで理解
1回目の期末テストで80点以上なら即合格。30点以下なら即不合格。50〜79点の「微妙ゾーン」なら追試を受けて、1回目と追試の合計点で最終判定。

品質の良いロットは1回目で即合格になるから、追試を受ける(=2回目の抜取り)必要がない。結果として、平均的な検査量は一回式より少なくて済むのです。

メリット・デメリット

✅ メリット ❌ デメリット
平均検査個数(ASN)が少ない(効率的) 判定ルールがやや複雑(c₁, r₁, c₂の3つの数値)
「微妙」な場合でも救済チャンスがある 2回目に進んだ場合、合計のサンプル数は一回式より多くなることも
生産者にとって「心理的にフェア」 JIS表の読み方がやや難しい
📘 関連記事
【図解でわかる】二回抜取検査の具体的な進め方 →

JIS Z 9015の表の読み方から実際の判定手順まで、具体的な進め方を詳しく解説しています。

③ 多回抜取検査|追試が何回もある「チャレンジ制」

どんな形式?

多回抜取検査は、二回をさらに拡張したもので、3回以上にわたってサンプルを抜き取る形式です。各回で少量のサンプルを抜き取り、累積不良数で合否を判定します。判定がつくまで抜取りを繰り返します。

JIS Z 9015では7回までの多回抜取方式が規定されています。

💡 試験のたとえ
小テストが何回も続く形式です。1回の小テストの問題数は少ないけれど、累計点で合否が決まります。途中でダメなら早期に不合格、良ければ途中で早期に合格。最後まで受けないと結果が出ないとは限らないのがポイントです。

メリット・デメリット

✅ メリット ❌ デメリット
二回式よりさらに平均検査個数が少ない 管理がかなり複雑(各回のc, rを管理)
品質が良ければ非常に少ない検査数で合格できる 判定が「保留」のまま長引くケースがある
きめ細かな判断ができる 実務ではあまり使われない(運用負荷が高い)

④ 逐次抜取検査|1個ずつ判定する「クイズ番組形式」

どんな形式?

逐次抜取検査は、サンプルを1個ずつ(または少数ずつ)取り出して検査し、その都度「合格 / 不合格 / 判定継続」を判定する形式です。

判定にはグラフ(逐次検査図)を使います。横軸に検査個数、縦軸に累積不良数をプロットし、点が「合格ゾーン」に入れば合格、「不合格ゾーン」に入れば不合格、「判定継続ゾーン」にいる間は検査を続けます。

💡 試験のたとえ
クイズ番組の早押しバトルです。1問ずつ問題が出て、正解すれば「合格」に近づき、不正解すれば「不合格」に近づく。正解数が一定ラインに達した瞬間に「合格!」のランプが点灯。

多回式は「テストを複数回受ける」イメージでしたが、逐次式は「リアルタイムにスコアが動く心電図モニター」に近い感覚です。

逐次検査図の読み方

逐次抜取検査のグラフには2本の直線が引かれています。

🔴
上側の線
(不合格境界線)
プロット点がこの線を
超えたら不合格
🟡
2本の線の間
(判定継続ゾーン)
まだ決まらない
検査を続行
🟢
下側の線
(合格境界線)
プロット点がこの線を
下回ったら合格

メリット・デメリット

✅ メリット ❌ デメリット
平均検査個数が全形式中最少 検査計画(境界線)の設計が難しい
品質が極端に良い/悪いロットは即判定 品質が「微妙」だと判定が延々と続くことがある
検査コストが高い場合に特に有効 運用が煩雑(1個ずつ記録・プロットが必要)

4形式の一覧比較

比較項目 📝 一回 📝📝 二回 📝📝📝 多回 📊 逐次
抜取り回数 1回 最大2回 3回〜7回 1個ずつ
1回あたりの抜取数 多い 中程度 少ない 1個
平均検査個数
(ASN)
多い やや少ない 少ない 最も少ない
運用の簡単さ ◎ 最も簡単 △ 最も複雑
実務での使用頻度 ◎ 最も多い ○ よく使う △ まれ △ 特殊用途
試験のたとえ 期末テスト一発勝負 追試あり 追試が何回もある クイズ番組の早押し
💡 ASN(平均検査個数)の法則
覚えるべき順番は:
一回 > 二回 > 多回 > 逐次(ASNが大きい順)

つまり「判定チャンスが多い形式ほど、平均的な検査個数は少なくなる」のです。ただし、運用の複雑さは真逆に増えます。この効率 vs 管理コストのトレードオフが形式選びの本質です。

「型」×「形式」=検査のフルネーム

前回学んだ「型」と、今回学んだ「形式」は独立した分類軸です。実際の検査は、この2つを組み合わせて「調整型 × 一回抜取検査」のようにフルネームで呼びます。

📦 型(タイプ)

不合格後どうする?
規準型 / 選別型 / 調整型

→ 検査の「運用ルール

×

🔢 形式(フォーマット)

何回抜き取って判定する?
一回 / 二回 / 多回 / 逐次

→ 検査の「実施手順

📐 組み合わせの実例
「調整型 × 一回抜取検査」(JIS Z 9015-1で最も標準的)
→ 品質実績で厳しさを切り替えつつ、判定はシンプルに1回で行う

「規準型 × 二回抜取検査」
→ ロットの合否を白黒ハッキリつけつつ、微妙な場合は追試チャンスあり

「選別型 × 一回抜取検査」
→ 不合格ロットは全数選別。判定はシンプルに1回で

❓ よくある質問(FAQ)

Q. 実務では結局どの形式を使えばいいですか?
A. 迷ったら「一回抜取検査」を選んでください。JIS Z 9015でも一回が基本であり、最もシンプルで間違いが少ないです。検査コストが高い場合(例:破壊検査で1個の検査に数万円かかるなど)は、二回や逐次を検討する価値があります。
Q. 「計数型」と「計量型」の違いは「形式」の一種ですか?
A. はい、広い意味では形式に含まれます。計数型は「良品/不良品の数を数える」方法、計量型は「寸法や重さなどの測定値を使う」方法です。この記事で解説した「一回・二回・多回・逐次」は主に計数型の形式です。計量型には「計量規準型」などの別の体系があります。
Q. QC検定では「形式」はどのように出題されますか?
A. 3級では「4つの形式の名前と特徴」を選ぶ問題が中心です。2級では「二回抜取検査の判定手順」や「ASNの大小比較」が出ます。1級ではOC曲線との関連やASNの計算が問われることがあります。まず「一回 > 二回 > 多回 > 逐次」のASN順序は必ず暗記しましょう。

まとめ

📝 この記事のまとめ
  • 抜取検査の「形式」とは、「何回サンプルを抜き取って、どう判定するか」の分類
  • 📝 一回:一発勝負。最もシンプルで実務使用率No.1
  • 📝📝 二回:追試あり。微妙なら2回目のチャンスで平均検査数を削減
  • 📝📝📝 多回:何回も追試。効率は高いが管理が複雑
  • 📊 逐次:1個ずつリアルタイム判定。平均検査数は最少だが設計が難しい
  • ASNの順番:一回 > 二回 > 多回 > 逐次(大 → 小)
  • 「型」×「形式」の組み合わせで検査が決まる。混同注意!
🗺

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