こんにちは、シラスです。
前回、データのバラつき全体($S_T$)を、ナイフで2つに切り分けました。
- 🔴 群間平方和($S_A$): 温度を変えた効果(シグナル) → 24
- 🔵 群内平方和($S_e$): 偶然の誤差(ノイズ) → 4
「24対4」なら、明らかに効果の方が大きそうですよね。
しかし、統計学では「平方和($S$)」をそのまま比べてはいけません。
なぜなら、データ数などの条件(自由度)が違うからです。
これらを公平な「単価(分散)」に直し、最終的な決着をつける場所。
それが今回完成させる「分散分析表(ANOVA Table)」です。
目次
1. 目指すゴール:この表を埋める
まずは、完成形の表を見ておきましょう。
実験計画法のゴールは、この表の右端にある「F値」を出すことです。
空欄だらけに見えますが、恐れることはありません。
私たちはすでに「② ⑥ ⑨」の数字を持っています。
2. ステップ1:Sとfを埋める
前回の計算結果と、実験の条件(水準数・データ数)を整理して書き込みます。
【実験条件のおさらい】
- 水準数 $a = 2$ (低温・高温)
- データ総数 $N = 6$ (各3個×2水準)
平方和(S)を埋める
これは計算済みですね。
- $S_A$ (温度) = 24
- $S_e$ (誤差) = 4
- $S_T$ (計) = 28
自由度(f)を埋める
自由度は「情報の広さ(数 - 1)」でした。
- $f_A$ (温度) = 水準数 - 1 = $2 - 1 = \mathbf{1}$
- $f_T$ (計) = データ総数 - 1 = $6 - 1 = \mathbf{5}$
- $f_e$ (誤差) = 引き算 ($f_T - f_A$) = $5 - 1 = \mathbf{4}$
これで表の左半分が埋まりました。
3. ステップ2:分散(V)を計算する
ここからが割り算です。
平方和(総エネルギー)を自由度(個数)で割って、「1単位あたりのエネルギー(単価)」を出します。
- 温度の分散 $V_A$
$24 \div 1 = \mathbf{24}$ - 誤差の分散 $V_e$
$4 \div 4 = \mathbf{1}$
この「$V_e = 1$」という数字が、この実験における「ノイズの大きさ(基準)」になります。
4. ステップ3:分散比(F値)を出す
いよいよクライマックスです。
「温度の効果($V_A$)」は、「ノイズ($V_e$)」の何倍大きいのか?を計算します。
F値は 24.0 になりました。
これは、「温度を変える効果は、偶然のノイズよりも24倍も強力だ!」ということを意味しています。
(音量で言えば、雑音の24倍の声量で叫んでいるようなものです。間違いなく聞こえますよね)
まとめ:完成した分散分析表
計算結果を清書すると、こうなります。
| 要因 | f | S | V | F |
|---|---|---|---|---|
| A:温度 | 1 | 24.0 | 24.0 | 24.00 |
| e:誤差 | 4 | 4.0 | 1.0 | - |
| 計 | 5 | 28.0 | - | - |
表が埋まりました。
しかし、まだ終わりではありません。
F値が「24.0」だからといって、勝手に「合格!」と決めてはいけません。
「統計的に見て、24.0 は本当にレアなのか?」を判定する、最後の審判が待っています。
次回、この表と「F分布表」を使って合否を決める、「F検定の判定」の手順に進みます。
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