実験計画法

【実験計画法】ダミー水準法とは?3水準の因子をL8(2水準系)に無理やり入れる裏技

こんにちは、シラスです。

実験計画を立てていると、こんな「現場あるある」にぶつかることがよくあります。

「温度は2条件(Low/High)だけど、材料は3種類(A, B, C)試したい!」
「でも、手元のL8直交表は『2水準』専用だ…」

因子がすべて2択ならいいのですが、現実はそう甘くありません。

「材料A, B, C」のような3択の因子が1つ混ざっただけで、L8は使えなくなってしまうのでしょうか?
それとも、わざわざ実験回数の多いL27(3水準系)を使わなきゃいけないのでしょうか?

いいえ、諦める必要はありません。
2水準の表に3水準をねじ込む裏技、「ダミー水準法(擬水準法)」を使えば解決できます。

今日は、この現場で必須のテクニックについて、仕組みと計算方法を解説します。

1. ダミー水準法のアイデア

L8直交表の各列には、「1」か「2」しか入りません。
ここに「3(材料C)」を入れたいのです。

どうすればいいでしょうか?
答えはシンプルです。

「2列を使って4つの枠を作り、
1つをダミー(空席)にする」

2列使えば $2 \times 2 = 4$ 通り

L8直交表の任意の2列(例えば第1列と第2列)を組み合わせると、以下の4パターンが作れます。

  • (1, 1) → これを「材料A」とする
  • (1, 2) → これを「材料B」とする
  • (2, 1) → これを「材料C」とする
  • (2, 2)余った!

この余った「(2, 2)」の枠に、すでに登場した材料(例えばA)をもう一度割り当てる(ダミーとして入れる)のです。

こうすれば、見かけ上は4水準ですが、実質は3種類の材料で実験を行うことができます。
これがダミー水準法です。

2. 割り付けのルール(線点図を使う)

ただし、どの2列でも良いわけではありません。
4通りの組み合わせを作るためには、「交互作用が出る列」もセットで消費する必要があります。

  • 第1列と第2列を使うと、その相互作用は第3列に出ます。
  • つまり、ダミー水準法を行うには、「1, 2, 3」の3列セットを占有します。

【コスト】
3水準の因子を1つ入れるために、L8の貴重な列を3つも消費してしまいます。
(残り4列しか使えなくなります。ここが注意点です)

3. 解析の注意点:補正が必要

実験が終わった後、解析(分散分析)をする際に一つだけ問題が起きます。

「材料Aだけ、データ数が2倍ある(エコヒイキされている)」ことです。

  • 材料A: 4回登場(本物2回+ダミー2回)
  • 材料B: 2回登場
  • 材料C: 2回登場

データ数が不揃い(アンバランス)なので、普通に計算すると平方和($S$)がおかしくなります。
そこで、専用の補正式を使います。

ダミー水準法の平方和($S_{A'}$)

$$ S_{A'} = \frac{(T_A + T_{A'})^2}{2n} + \frac{T_B^2}{n} + \frac{T_C^2}{n} - CT $$

※材料Aの合計($T_A$と$T_{A'}$)を足して、分母(データ数)も2倍にする。

要するに、「多いやつは多いなりに、少ないやつは少ないなりに、重み付けをして公平にする」計算を行うわけです。

まとめ

ダミー水準法を使えば、2水準の直交表に3水準の因子を入れられる。
2列+交互作用列(計3列)を消費して、4パターンを作り、1つをダミーにする。
✅ ダミーに選んだ水準(A)はデータ数が倍になるので、計算時に補正する。

このテクニックを知っていれば、「材料が3つあるからL8は使えない…諦めて総当たりしよう…」という悲劇を回避できます。

L8直交表は、工夫次第でどんな形にも変形できる万能ツールなのです。
次回は、さらに応用して「4水準」を作る方法についても解説します。

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