- 2標本t検定がどんな場面で使えるかわかる
- 「プールした分散」の意味と計算方法が理解できる
- 具体的な計算手順を例題で実践できる
- 一標本t検定との違いがスッキリわかる
前回までは、「1つのグループ」を基準値と比較するt検定を学びましたね。
でも実務では、こんな場面の方が多くないですか?
🤔 「A組とB組、どっちのテストの平均が高い?」
🤔 「新薬と従来薬、効果に差はあるの?」
🤔 「A工場とB工場、品質に違いはある?」
これらは全て、「2つのグループの平均を比較する」問題です。
今回学ぶ「2標本t検定」を使えば、この疑問に統計的な根拠を持って答えられるようになります。
目次
2標本t検定とは?|「2つのグループ」を比べる検定
一標本と二標本の違い
まず、一標本と二標本の違いを整理しましょう。

📊
一標本t検定
1つのグループ vs 基準値
例:「この部品の平均は
規格50mmから外れていないか?」
📊 ⚔️ 📊
二標本t検定
グループA vs グループB
例:「A組とB組の平均に
差はあるか?」
「スチューデントのt検定」という名前の由来
2標本t検定は、別名「スチューデントのt検定(Student's t-test)」とも呼ばれます。
この検定を発明したのは、イギリスの統計学者ウィリアム・ゴセットさん。
彼はギネスビール社で働いていましたが、会社の方針で本名での論文発表が禁止されていました。
そこで「Student(学生)」というペンネームで論文を発表。
それが今でも「スチューデントのt検定」と呼ばれる理由です🍺
2標本t検定を使う前提条件
この検定を使うには、いくつかの前提条件があります。
⚠️ 2標本t検定の前提条件
- 2つのグループが独立している(別々の人・モノから取ったデータ)
- 各グループのデータが正規分布に従う(または十分なデータ数がある)
- 2つのグループの分散が等しい(等分散)
※ 3つ目の「等分散」の条件が満たされない場合は、ウェルチのt検定を使います。
「等分散かどうか」は、F検定で事前に確認できます。
「プールした分散」のイメージ|2つを合体させる
2標本t検定で最も重要な概念が「プールした分散(pooled variance)」です。
たとえ話で理解しよう|「2つのプールを合体」
🏊 「プール」でたとえると…
🏊
プールA
水温:26℃
水量:小
🏊
プールB
水温:28℃
水量:大
🏊♂️
合体プール
水温:約27.5℃
(加重平均)
2つのプールを合体させると、水温は「水量で重み付けした平均」になりますよね。
水量が多いプールBの水温(28℃)に近くなります。
「プールした分散」も同じ考え方。
2つのグループの分散を「データ数で重み付けして合体」させるのです。
プーリングについてもっと基礎からちゃんと学びたい方はこちらの記事がおすすめです。

プールした分散の公式
s²p = [(n₁−1)s₁² + (n₂−1)s₂²] / (n₁ + n₂ − 2)
s₁²:グループ1の不偏分散
s₂²:グループ2の不偏分散
n₁, n₂:それぞれのデータ数
n₁ + n₂ − 2:合計の自由度
難しそうに見えますが、やっていることは単純です。
💡 公式の意味
分子:各グループの「偏差平方和」を足し合わせる
分母:全体の自由度で割る
→ つまり、「2つのグループのバラつき情報を、データ数で重み付けして平均する」ということ!
2標本t検定の公式
プールした分散を使って、t値を計算します。
🔄 一標本t検定との比較
| 一標本t検定 | 二標本t検定 | |
|---|---|---|
| 比較対象 | x̄ と μ₀ | x̄₁ と x̄₂ |
| 分散 | s²(1つだけ) | s²p(プール) |
| 自由度 | n − 1 | n₁ + n₂ − 2 |
具体例で計算してみよう
実際に手を動かして計算してみましょう。
例題:A組とB組のテスト成績に差はある?
📋 問題設定
ある学校で、A組とB組に異なる勉強法を試した後、同じテストを実施しました。
| A組 | B組 | |
|---|---|---|
| データ数 | n₁ = 8人 | n₂ = 10人 |
| 平均点 | x̄₁ = 75点 | x̄₂ = 68点 |
| 不偏分散 | s₁² = 36 | s₂² = 49 |
問い:A組とB組の平均に有意な差はあるか?
(有意水準α = 5%、両側検定、等分散を仮定)

Step 1:仮説を立てる
Step 2:プールした分散を計算する
s²p = [(n₁−1)s₁² + (n₂−1)s₂²] / (n₁ + n₂ − 2)
s²p = [(8−1)×36 + (10−1)×49] / (8 + 10 − 2)
s²p = [7×36 + 9×49] / 16
s²p = [252 + 441] / 16
s²p = 693 / 16
s²p = 43.31
💡 計算のイメージ
A組の分散(36)とB組の分散(49)を、データ数で重み付けして平均。
B組の方がデータ数が多い(10人 vs 8人)ので、結果はB組の分散(49)に近い43.31になりました。
Step 3:t値を計算する
t = (x̄₁ − x̄₂) / √[s²p(1/n₁ + 1/n₂)]
t = (75 − 68) / √[43.31 × (1/8 + 1/10)]
t = 7 / √[43.31 × (0.125 + 0.1)]
t = 7 / √[43.31 × 0.225]
t = 7 / √9.74
t = 7 / 3.12
t = 2.24
Step 4:自由度と臨界値を確認する
自由度はn₁ + n₂ − 2 = 8 + 10 − 2 = 16です。
t分布表から、自由度16、α=5%(両側)の臨界値を調べると…
自由度16、α=5%(両側)の臨界値
t = ±2.120
Step 5:判定する
棄却域(左)
t < -2.120
採択域
-2.120 ≤ t ≤ 2.120
棄却域(右)
t > 2.120
計算結果はt = 2.24です。これは2.120を超えているので…
🎯 判定結果
帰無仮説を棄却する
→ A組とB組の平均に有意な差があると言える
A組の平均75点とB組の平均68点の差(7点)は、「たまたま」ではなく、統計的に意味のある差だと判断されました。

2標本t検定の手順まとめ
📋 2標本t検定(等分散)の5ステップ
仮説を立てる
H₀: μ₁ = μ₂、H₁: μ₁ ≠ μ₂
プールした分散 s²p を計算
2つの分散をデータ数で重み付けして合体
t値を計算
t = (x̄₁ − x̄₂) / √[s²p(1/n₁ + 1/n₂)]
t分布表から臨界値を調べる
自由度 = n₁ + n₂ − 2
判定する
|t| > 臨界値 → 棄却(差あり)
等分散でない場合は?|ウェルチのt検定
今回の検定は、「2つのグループの分散が等しい(等分散)」という前提で計算しました。
でも、等分散でない場合はどうするのでしょうか?
2標本t検定を使う前に、F検定で等分散性を確認するのがベストです。
F検定の結果
・「等分散である」→ 今回のスチューデントのt検定を使う
・「等分散でない」→ ウェルチのt検定を使う
次の記事で、等分散でない場合に使う「ウェルチのt検定」を学びましょう。
まとめ|2標本t検定は「2グループ対決」の検定
📝 この記事のまとめ
- 2標本t検定は、2つの独立したグループの平均を比較する検定
- 別名「スチューデントのt検定」(発明者のペンネームが由来)
- プールした分散=2つの分散をデータ数で重み付けして合体
- 前提条件は「独立」「正規性」「等分散」の3つ
- 等分散でない場合はウェルチのt検定を使う
🎓 覚え方のコツ
2標本t検定 = 「A vs B」の対決審判
「プール」した分散で公平にジャッジ!
次に読むべき記事
2標本t検定を理解したら、次は「等分散でない場合」に対応する検定を学びましょう。
F検定で「分散が違う」と出たとき、救世主となるのがウェルチのt検定です。
【計算例あり】ウェルチのt検定|バラつきが違う2群を比較する方法 →
💪 ここまで読んでくださった方へ
おめでとうございます!
「2つのグループを比較する」という、
実務で最も使う場面の検定ができるようになりました!
「A組とB組に差はあるか?」
「新薬と従来薬、どっちが効く?」
こんな疑問に、統計的な根拠を持って答えられます!
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