「お客様の声を、どうやって製品設計に反映すればいいんだろう…」
「"使いやすくしてほしい"って言われても、具体的に何をすればいいの?」
こんな悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
お客様の言葉は「軽くしてほしい」「壊れにくくしてほしい」といった曖昧な表現が多いですよね。これをそのまま設計者に渡しても、何をどう改善すればいいかわかりません。
そこで登場するのが「品質機能展開(QFD)」です。
- 品質機能展開(QFD)とは何か?
- 「要求品質」と「品質特性」の違い
- 品質表(二元表)の作り方と読み方
- QC検定1級での出題ポイント
結論から言うと、品質機能展開(QFD)とは「お客様の声(要求品質)」を「設計者が理解できる言葉(品質特性)」に翻訳する手法です。
イメージで言うと、「通訳」のようなものです。お客様と設計者は「違う言語」を話しています。QFDはその間に立って、両者をつなぐ役割を果たします。
目次
品質機能展開(QFD)とは?|お客様と設計者の「通訳」
QFDの基本的な考え方
品質機能展開(QFD:Quality Function Deployment)とは、顧客の要求を製品の設計・製造工程に体系的に展開していく手法です。
1960年代に日本で生まれ、今では世界中で使われています。英語では「House of Quality(品質の家)」とも呼ばれます。
🏠 QFDのイメージ
お客様の声 → QFD(通訳) → 設計仕様
「軽くしてほしい」→「重量を500g以下にする」
なぜQFDが必要なのか?
QFDがないと、次のような問題が起こりやすくなります。
| ❌ QFDがない場合 | ✅ QFDがある場合 |
|---|---|
| お客様の要求が設計に伝わらない | 要求が具体的な数値に変換される |
| 「こんなはずじゃなかった」という手戻り | 設計段階で問題を発見できる |
| 何を優先すべきかわからない | 重要度が見える化される |
| 部門間でバラバラの認識 | 全員が同じ表を見て議論できる |

要求品質と品質特性|「お客様の言葉」と「技術者の言葉」
QFDを理解するうえで、最も重要な概念が「要求品質」と「品質特性」です。この2つの違いをしっかり押さえましょう。
要求品質とは?|お客様の言葉
要求品質とは、お客様が製品に求める「期待」や「願望」を表現したものです。
お客様は技術者ではありませんから、「厚さ2mm以下にしてほしい」とは言いません。代わりに「薄くしてほしい」「ポケットに入るサイズがいい」と言います。
- 「軽くしてほしい」
- 「長持ちしてほしい」
- 「使いやすくしてほしい」
- 「静かにしてほしい」
- 「すぐに温まってほしい」
このように、要求品質は「曖昧で感覚的な表現」であることが特徴です。
品質特性とは?|技術者の言葉
品質特性とは、製品の品質を測定可能な数値で表現したものです。
設計者や技術者は、「軽くしてほしい」と言われても困ります。「何グラム以下にすればいいの?」となりますよね。品質特性は、その「何グラム」を明確にするものです。
- 「重量(g)」
- 「耐久時間(時間)」
- 「操作ボタン数(個)」
- 「騒音レベル(dB)」
- 「加熱時間(秒)」
要求品質と品質特性の関係|翻訳のイメージ
要求品質と品質特性の関係を、「外国語の翻訳」に例えてみましょう。
🌍 翻訳のイメージ
お客様(日本語) 「軽くしてほしい」 | → QFDで翻訳 | 設計者(技術語) 「重量≦500g」 |
このように、QFDは「お客様語」を「技術者語」に翻訳する辞書のような役割を果たします。
| 項目 | 要求品質 | 品質特性 |
|---|---|---|
| 誰の言葉? | お客様 | 技術者・設計者 |
| 表現の特徴 | 曖昧・感覚的 | 具体的・測定可能 |
| 例 | 「軽くしてほしい」 | 「重量(g)」 |
| 別名 | 真の品質特性 | 代用特性 |
要求品質は「真の品質特性」、品質特性は「代用特性」とも呼ばれます。試験ではこの言い換えが出題されることがあります。

品質表(二元表)とは?|QFDの心臓部
QFDの中心となるツールが「品質表」です。これは「要求品質」と「品質特性」を結びつけるマトリックス(二元表)のことです。
品質表の構造
品質表は、次のような構造になっています。
- 縦軸(行):要求品質(お客様の声)
- 横軸(列):品質特性(技術者の言葉)
- 交点:両者の関連度(◎○△で表現)
イメージとしては、「お客様の願いと技術仕様のマッチングアプリ」のようなものです。どの願いがどの技術と相性がいいかを一覧で見られます。
品質表の具体例|電気ポットの場合
電気ポットを例に、品質表を見てみましょう。
| 要求品質 (お客様の声) | 品質特性(技術者の言葉) | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| 重量 (g) | 沸騰時間 (秒) | 保温温度 (℃) | 騒音 (dB) | 消費電力 (W) | |
| 軽くしてほしい | ◎ | - | - | - | △ |
| すぐに沸いてほしい | - | ◎ | - | ○ | ◎ |
| いつでも温かいお湯がほしい | - | - | ◎ | - | ○ |
| 静かに沸かしてほしい | - | △ | - | ◎ | ○ |
| 電気代を節約したい | △ | ○ | ○ | - | ◎ |
◎(強い関連):5点 ─ その品質特性を改善すると、要求品質が大きく向上
○(中程度の関連):3点 ─ ある程度の関連がある
△(弱い関連):1点 ─ わずかに関連がある
-(関連なし):0点 ─ 関連がない
品質表の読み方|何がわかる?
品質表を見ると、次のようなことがわかります。
- どの品質特性が重要か?
→ ◎が多い列は、多くの要求品質に影響する重要な特性 - どの要求品質が満たしにくいか?
→ ◎がない行は、対応する技術がない(技術開発が必要) - トレードオフはどこか?
→ 同じ品質特性で複数の要求に◎があると、調整が必要
上の例では、「消費電力」は3つの要求品質に関連しています。つまり、消費電力を改善すれば、多くのお客様を満足させられるということがわかります。

品質の家(House of Quality)|QFDの全体像
品質表をさらに発展させたものが「品質の家(House of Quality)」です。屋根のような三角形が特徴的で、この見た目から「品質の家」と呼ばれます。
品質の家の構成要素
🏠 品質の家の6つの部屋
① 屋根 品質特性間の 相関関係 | ② 天井 品質特性 (技術者の言葉) | ③ 右壁 競合比較 (顧客視点) |
④ 左壁 要求品質 (お客様の声) | ⑤ 中央(部屋) 関連度マトリックス (◎○△) | ⑥ 床 技術的評価 目標値・重要度 |
屋根の意味|品質特性間の相関
「屋根」の部分には、品質特性同士の相関関係を記入します。
例えば電気ポットの場合:
・「沸騰時間を短くする」と「消費電力が増える」(負の相関)
・「重量を軽くする」と「保温性能が下がる」(負の相関)
このように、ある特性を良くすると別の特性が悪くなる関係(トレードオフ)を見つけることができます。
QFDの展開|設計から製造まで
QFDは1回で終わりではありません。品質表を段階的に展開していきます。
🔄 QFDの4段階展開
①要求品質
↓
品質特性 → ②品質特性
↓
部品特性 → ③部品特性
↓
工程特性 → ④工程特性
↓
作業標準
このように、お客様の声が最終的に作業標準まで落とし込まれるのがQFDの特徴です。

品質表の作り方|5つのステップ
ここからは、品質表を実際に作成する手順を5つのステップで解説します。
ステップ①:お客様の声を集める
まず、お客様が製品に何を求めているかを徹底的に集めます。
- アンケート調査
- インタビュー
- クレーム・問い合わせの分析
- SNS・レビューサイトの分析
- 営業担当者からのフィードバック
ステップ②:要求品質を整理・階層化する
集めた声を整理して階層化します。バラバラの声を、似たものでグループ化します。
- 1次要求:使いやすさ
- 2次要求:軽い
- 2次要求:持ちやすい
- 2次要求:操作が簡単
- 1次要求:性能
- 2次要求:すぐ沸く
- 2次要求:長く保温できる
ステップ③:品質特性を洗い出す
要求品質に対応する測定可能な品質特性を洗い出します。
「お客様の言葉」を「技術者が測定できる言葉」に変換するステップです。
ステップ④:関連度を評価する
要求品質と品質特性の関連度を◎○△で評価します。
・その品質特性を改善すると、要求品質は満たされるか?
・影響度は強い?中程度?弱い?
・複数の関係者で議論して決める(1人で決めない)
ステップ⑤:重要度を計算する
最後に、各品質特性の重要度を計算します。
品質特性の重要度 = Σ(要求品質の重要度 × 関連度)
・◎=5点、○=3点、△=1点として計算
・数値が大きい品質特性から優先的に取り組む
QC検定1級での出題ポイント
品質機能展開(QFD)は、QC検定1級で頻出のテーマです。以下のポイントを押さえておきましょう。
出題パターン①:用語の定義を問う問題
| 用語 | 定義・ポイント |
|---|---|
| 品質機能展開 | 顧客の要求を設計・製造に体系的に展開する手法 |
| 要求品質 | 顧客の言葉で表現された要求(真の品質特性) |
| 品質特性 | 測定可能な技術的特性(代用特性) |
| 品質表 | 要求品質と品質特性を対応させた二元表 |
| 品質の家 | 品質表に相関・競合比較などを加えた拡張形式 |
出題パターン②:QFDのメリットを問う問題
- 顧客の声を設計に確実に反映できる
- 設計段階での問題発見(フロントローディング)
- 部門間のコミュニケーション促進
- 重要な品質特性の優先順位づけ
- 設計根拠の見える化・記録化
まとめ|品質機能展開(QFD)のポイント
この記事では、品質機能展開(QFD)について解説しました。最後に、重要なポイントをまとめます。
- QFDとは、顧客の声を設計に展開する手法(お客様と設計者の「通訳」)
- 要求品質=お客様の言葉(曖昧・感覚的)
- 品質特性=技術者の言葉(具体的・測定可能)
- 品質表=要求品質×品質特性のマトリックス(関連度を◎○△で表現)
- 品質の家=品質表+相関関係+競合比較(屋根付き)
- QFDは設計→部品→工程→作業と段階的に展開される
QFDを使えば、「お客様が本当に求めているもの」を見失わずに製品開発ができます。ぜひ実務でも活用してみてください。
次に読むべき記事
QFDで顧客の声を設計に展開したら、次は「設計段階で問題を防ぐ」手法を学びましょう。
【QC検定1級】DR(デザインレビュー)とトラブル予測|設計段階で問題を防ぐ →
QFDで設計仕様を決めたら、次はDR(デザインレビュー)で「本当にこれで大丈夫か?」を確認します。DRBFMなどのトラブル予測手法も詳しく解説しています。

