- CRM(顧客関係性管理)って何?品質管理と何の関係があるの?
- 顧客ロイヤルティやLTVの意味がよくわからない
- リテンション(顧客維持)がなぜ重要なのか知りたい
- QC検定1級でCRMがどう出題されるか把握したい
- CRM(顧客関係性管理)の基本概念
- 顧客ロイヤルティとLTV(顧客生涯価値)の考え方
- リテンション(顧客維持)の重要性
- CRMと品質管理の関係
「新規顧客を獲得するのに、既存顧客を維持するコストの5倍かかる」
これは、マーケティングの世界でよく言われる法則です。
つまり、一度獲得した顧客との関係を維持・強化することが、ビジネスの成功には不可欠ということ。これが「CRM(Customer Relationship Management:顧客関係性管理)」の考え方です。
「でも、それって営業やマーケティングの話でしょ?」
いいえ、品質管理にも大いに関係があります。なぜなら、顧客が「また買いたい」と思うかどうかは、製品・サービスの品質で決まるからです。
この記事では、CRMの基本概念を、品質管理との関連を意識しながら解説します。
目次
CRM(顧客関係性管理)とは何か?
まず、CRMの定義を確認しましょう。
CRMの定義
顧客との長期的な関係を構築・維持・強化するための経営戦略・手法・システムの総称。顧客データを活用して、一人ひとりに最適な対応を行い、顧客満足度とロイヤルティを高める。
CRMの本質は、「一度きりの取引」から「継続的な関係」への転換です。
売り切り型:「今日、この商品を買ってもらえればOK」
→ 一回の取引で終わり。次に来るかは運任せ。
関係構築型(CRM):「この人と長くお付き合いしたい」
→ 購入後もフォローし、次の購入につなげ、ファンになってもらう。
どちらが長期的に儲かるか?当然、後者です。
なぜ今、CRMが重要なのか?
CRMが重視されるようになった背景には、ビジネス環境の変化があります。
| 環境変化 | CRMの必要性 |
|---|---|
| 市場の成熟化 | 新規顧客の獲得が難しくなり、既存顧客の維持が重要に |
| 競争の激化 | 差別化が難しく、「関係性」で選ばれる時代に |
| 顧客ニーズの多様化 | 「一人ひとりに合った対応」が求められる |
| ITの進化 | 顧客データの収集・分析が容易になった |
| SNSの普及 | 口コミの影響力が増大し、ファン作りが重要に |

LTV(顧客生涯価値)|一人の顧客の「生涯の価値」
CRMを理解する上で最も重要な概念が「LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)」です。
LTVとは
一人の顧客が生涯を通じて企業にもたらす価値の総額。「1回の購入額」ではなく、「その顧客との取引が続く限りの累計額」で顧客価値を評価する考え方。
LTVの計算式
LTVの基本的な計算式は以下の通りです。
LTV = 購買単価 × 購買頻度 × 継続期間
・購買単価:500円/回
・購買頻度:週2回(年間100回)
・継続期間:5年
LTV = 500円 × 100回 × 5年 = 25万円
1回500円の顧客でも、生涯では25万円の価値がある!
LTV思考が変える「顧客への見方」
LTVで顧客を見ると、発想が大きく変わります。
| 視点 | 従来の考え方 | LTV思考 |
|---|---|---|
| 顧客の価値 | 1回の購入額 | 生涯の累計額 |
| 投資判断 | 今回の利益で判断 | 長期的な利益で判断 |
| クレーム対応 | コストをかけたくない | 関係維持のために丁寧に対応 |
| 品質投資 | コストアップ要因 | LTV向上のための投資 |
品質が悪い → 顧客が離脱 → 継続期間が短縮 → LTV低下
逆に言えば、品質を高めることでLTVを向上させられる。品質投資はコストではなく、LTV向上のための「投資」と考えましょう。

顧客ロイヤルティ|顧客の「愛着度」を高める
LTVを高めるカギが「顧客ロイヤルティ(Customer Loyalty)」です。
顧客ロイヤルティとは
顧客が特定のブランドや企業に対して抱く愛着、信頼、忠誠心の度合い。ロイヤルティが高い顧客は、繰り返し購入し、他者に推奨し、多少の値上げでも離れない。
「満足」と「ロイヤルティ」は似ているようで違います。
| 比較項目 | 顧客満足 | 顧客ロイヤルティ |
|---|---|---|
| 定義 | 期待に対する評価 | 愛着・忠誠心 |
| 時間軸 | その時点での評価 | 長期的な関係性 |
| 行動 | 満足でも他社に乗り換える可能性あり | 他社が良くても乗り換えない |
| 推奨行動 | 必ずしも推奨しない | 積極的に他者に推奨する |
顧客ロイヤルティのピラミッド
顧客のロイヤルティは、以下のような段階で成長します。
- 一般顧客:たまたま購入した顧客(特に愛着なし)
- リピーター:繰り返し購入する顧客(習慣的)
- ファン:ブランドに愛着を持つ顧客(感情的なつながり)
- アドボケイト:他者に積極的に推奨する顧客(口コミを広げる)
CRMの目標は、顧客をピラミッドの上位に押し上げることです。特に「アドボケイト」は、新規顧客を連れてきてくれる「最強の営業マン」です。
NPS(Net Promoter Score)|ロイヤルティの測定指標
顧客ロイヤルティを測る代表的な指標がNPSです。
「この製品/サービスを友人や同僚にどの程度おすすめしますか?」という質問に対し、0〜10点で回答してもらい、以下のように分類する。
・推奨者(9〜10点):積極的に推奨する
・中立者(7〜8点):満足しているが推奨はしない
・批判者(0〜6点):不満を持っている
NPS = 推奨者の割合 - 批判者の割合
NPSは「顧客満足度」よりも業績との相関が高いと言われ、多くの企業が採用しています。

リテンション|顧客を「離さない」技術
LTVを高めるもう一つのカギが「リテンション(Retention:顧客維持)」です。
リテンションとは
既存顧客との関係を維持し、離脱(チャーン)を防ぐ活動。顧客が他社に流出することを防ぎ、継続的な取引を実現する。
「1:5の法則」と「5:25の法則」
リテンションの重要性を示す有名な法則があります。
1:5の法則
新規顧客を獲得するコストは、既存顧客を維持するコストの5倍かかる。
5:25の法則
顧客離脱率を5%改善すると、利益が25%以上向上する。
つまり、新規獲得より既存顧客の維持のほうが、はるかにコスパが良いということです。
顧客が離脱する理由
顧客が離脱する理由を理解することが、リテンション施策の第一歩です。
| 離脱理由 | 割合 | 対策 |
|---|---|---|
| 無関心・忘れられた | 約68% | 継続的なコミュニケーション |
| 品質への不満 | 約14% | 品質改善 |
| 価格への不満 | 約9% | 価値の訴求、ロイヤルティプログラム |
| 競合に流出 | 約5% | 差別化、スイッチングコストの設計 |
| その他 | 約4% | — |
驚くべきことに、離脱の最大の理由は「品質不満」ではなく「無関心」です。つまり、「放置した」だけで顧客は離れていくのです。
リテンション施策の例
- ロイヤルティプログラム:ポイント制度、会員ランク
- 定期的なコミュニケーション:メルマガ、アプリ通知
- パーソナライズ:個人に合わせたおすすめ、誕生日特典
- カスタマーサクセス:顧客の成功を支援する活動
- アフターサポート:丁寧なサポート対応

CRMシステム|顧客データの統合管理
CRMを実践するためのツールがCRMシステム(CRMソフトウェア)です。
CRMシステムとは
顧客に関する様々な情報を一元管理するデータベースと、それを活用するための機能を持つシステム。顧客の「見える化」を実現し、最適なアクションを支援する。
CRMシステムで管理する情報
| 情報の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 基本情報 | 氏名、連絡先、会社名、役職 |
| 購買履歴 | 購入日、購入商品、購入金額、頻度 |
| コミュニケーション履歴 | 問い合わせ内容、対応履歴、クレーム |
| 行動データ | Webサイト閲覧、メール開封、アプリ利用 |
| 嗜好・属性 | 興味関心、セグメント、ランク |
CRMと品質管理の連携
CRMシステムに蓄積されたデータは、品質管理にも活用できます。
| CRMデータ | 品質管理への活用 |
|---|---|
| クレーム・問い合わせ | 品質問題の早期発見、改善優先順位の決定 |
| 顧客の声(VOC) | 製品開発へのインプット、QFDへの活用 |
| 購買パターン | 品質と購買行動の相関分析 |
| 離脱データ | 品質要因による離脱の特定 |
CRMシステムには、品質改善のヒントが山ほど眠っています。
「クレームが増えている製品は?」「どんな品質問題で顧客が離脱している?」——これらの答えは、CRMデータの中にあります。
QC検定1級での出題ポイント
最後に、QC検定1級でCRMがどのように出題されるか、ポイントを整理します。
頻出テーマと出題ポイント
| 頻出テーマ | 出題ポイント |
|---|---|
| CRMの定義 | 顧客関係性管理の目的と意義 |
| LTV | 計算式、LTV思考の意義 |
| 顧客ロイヤルティ | 定義、顧客満足との違い、NPS |
| リテンション | 1:5の法則、5:25の法則、離脱防止策 |
| 品質管理との関連 | CRMデータの品質改善への活用 |
CRMの問題は、用語の定義と数値(1:5の法則など)を正確に覚えることが重要です。
また、「CRMと品質管理がどうつながるか」という視点での出題もあります。「品質が良い → 顧客満足 → ロイヤルティ向上 → LTV増加」という流れを理解しておきましょう。

まとめ:品質が顧客との関係を築く
最後に、この記事のポイントをまとめます。
- CRMは顧客との長期的な関係を構築・維持・強化する活動
- LTVは「購買単価 × 購買頻度 × 継続期間」で計算する顧客の生涯価値
- 顧客ロイヤルティは愛着・忠誠心であり、「満足」とは異なる
- リテンションは顧客維持活動。新規獲得の1/5のコストで利益を生む
- 1:5の法則:新規獲得コストは維持コストの5倍
- 5:25の法則:離脱率5%改善で利益25%向上
- 品質が良い → ロイヤルティ向上 → LTV増加という因果関係がある
CRMの本質は、「一度きりの取引」から「継続的な関係」への転換です。
そして、その関係を築く土台となるのが「品質」です。
どんなに優れたマーケティングを行っても、製品・サービスの品質が悪ければ、顧客は離れていきます。逆に、品質が高ければ、顧客は自然とファンになり、他者に推奨してくれます。
「品質が関係を築く」——品質管理者として、この視点を持ちましょう。
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