- 品質マネジメント7つの原則って、具体的に何をすればいいの?
- 「顧客重視」と「関係性管理」の違いがよくわからない
- 「プロセスアプローチ」って結局どういう意味?
- 7つの原則を組織で実践するには、どんな行動をとればいい?
- 7つの原則それぞれの「意味」と「目的」
- 各原則の「主な便益」(得られるメリット)
- 各原則の「取り得る行動」(具体的に何をするか)
- 原則同士の関係性と、全体像の理解
ISO9000:2015(JIS Q 9000:2015)では、品質マネジメントシステム(QMS)を構築・運用するための基盤として、「7つの原則」が定められています。
これらは単なる「スローガン」ではありません。組織が日々の活動の中で実践すべき具体的な行動指針です。
この記事では、7つの原則それぞれについて、「なぜ必要か」「何をすればいいか」「どんなメリットがあるか」を初心者向けにわかりやすく解説します。
各原則について、ISO9000で示されている「説明」「根拠」「主な便益」「取り得る行動」の4つの観点で整理しています。特に「取り得る行動」は、組織で実践する際の具体的なヒントになります。
品質マネジメント7つの原則の全体像
まずは7つの原則の全体像を把握しましょう。
📋 7つの原則一覧
| No. | 原則 | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| 1 | 顧客重視 | お客様の期待に応え、超えることを目指す |
| 2 | リーダーシップ | トップが方向性を示し、全員を巻き込む |
| 3 | 人々の積極的参加 | 全員が力を発揮できる環境を作る |
| 4 | プロセスアプローチ | 活動を「プロセス」として管理する |
| 5 | 改善 | 継続的に改善し続ける |
| 6 | 客観的事実に基づく意思決定 | データや情報を分析して判断する |
| 7 | 関係性管理 | 利害関係者との関係を管理する |
🔗 7つの原則の関係性
7つの原則は、それぞれ独立しているわけではなく、互いに関連し合っています。
大きく分けると、以下のような構造になっています。
- 目的:①顧客重視(すべての活動のゴール)
- 推進力:②リーダーシップ、③人々の積極的参加
- 手段:④プロセスアプローチ、⑤改善、⑥客観的事実に基づく意思決定
- 範囲の拡大:⑦関係性管理(顧客以外の利害関係者へ)
「顧客重視」は7つの原則の中で最も重要な原則です。他の6つの原則は、すべて「顧客に価値を提供する」という目的を達成するための手段と考えることができます。

原則①:顧客重視
7つの原則の中で、最も根本的で重要な原則です。
📖 説明
品質マネジメントの主眼は、顧客の要求事項を満たすこと及び顧客の期待を超える努力をすることにある。
すべての事業活動の目的は、顧客に価値を提供することです。顧客がいなければ、組織は存在できません。
🎯 根拠(なぜ必要か)
- 顧客からの信頼を得ることで、リピート購入が増える
- 顧客との長期的な関係により、事業基盤が安定する
- 顧客の期待を超えることで、口コミや紹介が生まれる
✨ 主な便益
- 顧客価値の向上
- 顧客満足の向上
- 顧客ロイヤルティの向上
- リピートビジネスの増加
- 組織の評判の向上
- 顧客基盤の拡大と収益の増加
🛠️ 取り得る行動(具体的に何をするか)
| 取り得る行動 | 具体例 |
|---|---|
| 直接・間接の顧客を認識する | 購入者だけでなく、エンドユーザーも「顧客」として捉える |
| 顧客の現在・将来のニーズと期待を理解する | 顧客アンケート、インタビュー、市場調査を実施する |
| 顧客のニーズと期待を組織全体に伝える | 部署を限らず、社内の人々が広く知ることのできる仕組みを作る |
| 顧客満足を測定・監視し、適切な処置をとる | 定期的なCS調査、クレーム分析、改善活動の実施 |
| 顧客との関係を積極的にマネジメントする | 定期的な訪問、情報提供、パートナーシップの構築 |
顧客の声(VOC: Voice of Customer)を収集するだけでは不十分です。その情報を製品設計や改善活動に反映する仕組みを作ることが重要です。

原則②:リーダーシップ
品質マネジメントを成功させるには、トップの強いコミットメントが不可欠です。
📖 説明
すべての階層のリーダーは、目的及び目指す方向を一致させ、人々が組織の品質目標の達成に積極的に参加している状況を作り出す。
リーダーが方向を示さなければ、組織はバラバラの方向に進んでしまいます。
🎯 根拠(なぜ必要か)
- 目的と方向性が一致することで、組織の戦略・方針・プロセス・資源の整合性がとれる
- コミュニケーションの改善により、全員が同じ目標に向かって動ける
✨ 主な便益
- 組織の品質目標達成の有効性・効率性の向上
- 組織のプロセスの調整の改善
- 組織の階層間・機能間のコミュニケーションの改善
- 望む結果を出せる組織の能力の開発・向上
🛠️ 取り得る行動(具体的に何をするか)
| 取り得る行動 | 具体例 |
|---|---|
| 組織全体に使命・ビジョン・戦略・方針・プロセスを伝達する | 朝礼、社内報、ポスター掲示などで繰り返し伝える |
| 組織全体で共有する価値観と倫理的な行動モデルを作り、維持する | 行動規範の策定、リーダー自身が手本を示す |
| 信頼と誠実さの文化を定着させる | オープンなコミュニケーション、失敗を責めない文化 |
| 品質へのコミットメントを組織全体で奨励する | 品質表彰制度、改善提案制度の運用 |
| 人々が必要な資源、教育訓練、権限を持つことを確実にする | 教育計画の策定、予算の確保、権限委譲 |
| 人々の貢献を認める | 成果の評価・フィードバック、表彰 |
リーダーシップは「社長だけ」の話ではありません。すべての階層のリーダー(部長、課長、チームリーダーなど)がそれぞれの立場で発揮することが求められます。

原則③:人々の積極的参加
品質は「品質管理部門だけの仕事」ではありません。全員参加が基本です。
📖 説明
組織内のすべての階層にいる、力量があり、権限を与えられ、積極的に参加する人々が、価値を創造し提供する組織の実現能力を強化するために必須である。
組織の力は、そこで働く「人」に依存します。全員が力を発揮できる環境を作ることが重要です。
🎯 根拠(なぜ必要か)
- 組織の目標に対する人々の理解が深まり、動機付けが向上する
- 改善活動への人々の参画が高まる
- 個人の成長、自発的な行動、創造性が高まる
✨ 主な便益
- 組織の人々の品質目標の理解の向上と達成への動機付けの増加
- 改善活動への人々の参画の増進
- 個人の成長・自発性・創造性の向上
- 人々の満足の向上
- 組織全体における信頼と協力の強化
- 組織全体における共有する価値観と文化への注目
🛠️ 取り得る行動(具体的に何をするか)
| 取り得る行動 | 具体例 |
|---|---|
| 人々とのコミュニケーションで貢献の重要性を理解させる | 個人の仕事と組織の目標のつながりを説明する |
| 組織全体で協力を促進する | 部門横断プロジェクト、QCサークル活動の推進 |
| 知識と経験のオープンな議論・共有を促進する | ナレッジ共有会、事例発表会の開催 |
| 制約なしに自発的に問題を特定できる風土を作る | 「報告しても怒られない」安全な環境づくり |
| 人々の貢献、学習、改善を認め、支援する | 表彰制度、教育機会の提供、キャリア支援 |
| 人々の満足度調査を行い、結果を伝え、適切な処置をとる | 従業員満足度調査(ES調査)の実施と改善 |
「全員参加」を実現するには、安全な環境(心理的安全性)が不可欠です。失敗や問題を報告しても責められない文化がなければ、人々は本当の意味で参加しません。

原則④:プロセスアプローチ
「仕事」を個々のタスクとしてではなく、「プロセス」として捉える考え方です。
📖 説明
活動を、首尾一貫したシステムとして機能する相互に関連するプロセスであると理解しマネジメントすることによって、矛盾のない予測可能な結果が、より効果的かつ効率的に達成される。
すべての活動は「インプット→変換→アウトプット」というプロセスの連鎖として捉えることができます。
🎯 根拠(なぜ必要か)
- プロセスを理解することで、結果を最適化できる
- プロセス間の相互関係を把握することで、システム全体のパフォーマンスが向上する
- プロセスを監視することで、問題の早期発見が可能になる
✨ 主な便益
- 重要なプロセス及び改善の機会に対する注力能力の向上
- 整合のとれたプロセスのシステムによる矛盾のない予測可能な結果
- 効果的なプロセスマネジメント、効率的な資源の利用及び機能横断的障壁の低減による、最適化されたパフォーマンス
- 組織の利害関係者に対する一貫性、有効性及び効率性に関する信頼の提供
🛠️ 取り得る行動(具体的に何をするか)
| 取り得る行動 | 具体例 |
|---|---|
| システムの目標及びそれを達成するために必要なプロセスを定義する | プロセスマップ、業務フロー図の作成 |
| プロセスをマネジメントするための責任・権限を明確にする | プロセスオーナーの任命、責任分担表の作成 |
| 組織の実現能力を理解し、事前に資源の制約を明確にする | 人員、設備、予算などのリソース計画 |
| プロセス間の相互依存性を明確にし、システム全体への影響を分析する | 工程間のインターフェース分析、ボトルネックの特定 |
| パフォーマンスを示す指標を監視し、例えばプロジェクトの継続要否などの判断をする際に、必要な人がそのデータを利用できるようにする | KPIの設定、ダッシュボードの整備、レビュー会議の実施 |
| プロセスのパフォーマンスに影響を与えうるリスクをマネジメントする | リスクアセスメント、FMEA、予防処置の実施 |
プロセスアプローチでは、「個々のプロセスの最適化」ではなく「システム全体の最適化」を目指します。部分最適が全体最適になるとは限らないことに注意が必要です。

原則⑤:改善
「現状維持は後退」という考え方。常に改善し続ける姿勢が求められます。
📖 説明
成功する組織は、改善に対して、継続して焦点を当てている。
環境は常に変化します。昨日の最善が、今日の最善とは限りません。継続的な改善によって、組織は変化に適応し、競争力を維持できます。
🎯 根拠(なぜ必要か)
- 改善によって、現在のパフォーマンスレベルを維持できる
- 改善によって、内外の状況変化に対応できる
- 改善によって、新たな機会を創出できる
✨ 主な便益
- プロセスパフォーマンス、組織の実現能力及び顧客満足の改善
- 根本原因の調査及び決定、並びにその後の予防処置及び是正処置への注力の増進
- 内外のリスク及び機会を予測し、それに対応する能力の向上
- 漸進的改善及び躍進的改善の両方への配慮の増加
- 学習を通じた改善の推進
- 革新への意欲の増進
🛠️ 取り得る行動(具体的に何をするか)
| 取り得る行動 | 具体例 |
|---|---|
| すべての階層で改善目標を確立する | 部門目標、個人目標への改善テーマの設定 |
| 改善を達成するための知識・ツールを適用できるよう教育訓練する | QC7つ道具、新QC7つ道具、問題解決手法の研修 |
| 改善の推進を組織全体のプロセス・製品・サービスに統合する | 改善活動を日常業務に組み込む(「特別な活動」にしない) |
| 改善活動を認め、報いる | 改善提案制度、表彰制度の運用 |
| 改善の進捗を追跡・レビュー・監査する | 定期的な進捗会議、マネジメントレビューでのフォロー |
改善には「漸進的改善(少しずつの改善)」と「躍進的改善(大きな飛躍)」の両方があります。日々の小さな改善の積み重ねと、時には大胆な変革の両方が必要です。

原則⑥:客観的事実に基づく意思決定
「勘と経験」だけでなく、データと事実に基づいて判断することの重要性です。
📖 説明
データ及び情報の分析及び評価に基づく意思決定によって、望む結果が得られる可能性が高まる。
意思決定には常に不確かさが伴います。しかし、データに基づくことで、その不確かさを減らすことができます。
🎯 根拠(なぜ必要か)
- 意思決定は複雑なプロセスであり、常に不確かさが伴う
- 複数の種類のインプット、主観的解釈が入る可能性がある
- データに基づくことで、客観性と信頼性が高まる
✨ 主な便益
- 意思決定プロセスの改善
- プロセスパフォーマンス及び目標達成能力の評価の改善
- 運営の有効性及び効率性の改善
- 意見及び決定のレビュー・挑戦・変更に関する能力の増加
- 過去の決定の有効性を実証する能力の増加
🛠️ 取り得る行動(具体的に何をするか)
| 取り得る行動 | 具体例 |
|---|---|
| 組織のパフォーマンスを評価するための主要指標を決定・測定・監視する | KPIの設定、ダッシュボードの整備、定期レポートの作成 |
| 意思決定に必要なすべてのデータを、必要な人々が利用できるようにする | 情報共有システムの整備、アクセス権限の適切な設定 |
| データ・情報の正確さ・信頼性・セキュリティを確実にする | データ検証プロセス、バックアップ、アクセス管理 |
| 適切な方法でデータ・情報を分析・評価する | 統計的手法(QC7つ道具など)の活用、データ分析ツールの導入 |
| 事実に基づき、経験と直感のバランスをとって意思決定する | データ分析+ベテランの知見を組み合わせた判断 |
「データに基づく」とは「データだけで決める」という意味ではありません。経験と直感も重要なインプットです。データと経験のバランスをとることが大切です。

原則⑦:関係性管理
組織は「顧客」だけでなく、供給者やパートナーとの関係も重要です。
📖 説明
持続的成功のために、組織は、例えば提供者のような、密接に関連する利害関係者との関係をマネジメントする。
組織は単独で存在するのではなく、多くの利害関係者(ステークホルダー)との関係の中で成り立っています。
🎯 根拠(なぜ必要か)
- 利害関係者は組織のパフォーマンスに影響を与える
- 利害関係者との関係を管理することで、持続的成功の可能性が高まる
- 良好な関係は、サプライチェーン全体の最適化につながる
✨ 主な便益
- 利害関係者に関連する機会と制約への対応を通じた、組織及びその利害関係者のパフォーマンスの向上
- 目的及び価値観に関する利害関係者間の共通理解
- 資源及び力量の共有、並びに品質に関連するリスクのマネジメントによる、利害関係者への価値創造能力の増加
- 製品及びサービスの安定した流れをもたらす、うまくマネジメントされたサプライチェーン
🛠️ 取り得る行動(具体的に何をするか)
| 取り得る行動 | 具体例 |
|---|---|
| 関連する利害関係者及び組織との関係を特定する | ステークホルダーマップの作成、重要度の評価 |
| マネジメントする必要がある利害関係者との関係に優先順位をつける | 影響度×関係性の強さでマトリクス分析 |
| 短期的な利益と長期的な考慮とのバランスがとれた関係を確立する | 長期契約、パートナーシップ協定、共同開発 |
| 関連する情報・専門技術・資源をプールし共有する | サプライヤーとの技術交流会、情報共有プラットフォーム |
| パフォーマンスを測定し、フィードバックを提供する | サプライヤー評価、定期レビュー会議 |
| 利益に貢献した従業員や供給者を表彰する制度を作る | ベストサプライヤー表彰、協力会社感謝イベント |
「顧客重視」との違いに注意してください。「顧客重視」は顧客に焦点を当てますが、「関係性管理」は供給者・パートナー・地域社会など、顧客以外の利害関係者にも範囲を広げています。