実験計画法

一元配置分散分析の計算|分散分析表の作り方を例題で全手順マスター

一元配置分散分析の計算。分散分析表の作り方を例題で全手順

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。

こんなことで困っていませんか?
  • 分散分析の解説を読んでも、いきなり「修正項CT」「平方和」と専門用語が並んでフリーズする
  • 「分散分析表を作れ」と言われたが、どこから手をつければいいか全くわからない
  • 教科書では計算結果だけ書かれていて、途中式がわからない
  • F値が出ても、F分布表のどこを見て判定すればいいか自信がない
  • QC検定・統計検定の過去問で分散分析が出るたびに頭が真っ白になる
○ この記事でわかること
  • 分散分析表が「5ステップ」で必ず埋まる、その完全な手順
  • 修正項CTを「なぜ最初に計算するのか」の理由
  • 平方和を「群間」と「群内」に分解する意味と計算式
  • 自由度φの直感的な意味と計算ルール
  • F値の出し方とF分布表の正しい引き方
  • カレーの試食データで、1から分散分析表を完成させるまでの全途中式
結論(答えファースト)

分散分析表は「CT(修正項)→ 平方和S → 自由度φ → 分散V → F値」の順に5ステップで埋めれば必ず完成します。
難しそうに見える数式も、やることは「足す・引く・割る」だけ。
記号アレルギーを克服する最短ルートは、1度だけでいいから途中式を全部書いて手を動かすこと。この記事ではカレーの試食データで、その「1度」を一緒にやります。

この記事の前提
本記事は「分散分析の計算編」です。「なぜ平均の差を分散で見るのか?」という概念編を先に読みたい方は、下記の関連記事を先にチェックしてください。

分散分析表とは?まず完成形を見る

計算手順に入る前に、「ゴールはこれだ!」というイメージを持つことがとても大切です。ここで道に迷わないために、まず完成形を見ておきましょう。

これが分散分析表(ANOVA表)の完成形

要因 平方和 S 自由度 φ 分散 V F₀ 判定
群間(A) SA φA VA F₀ **または ns
誤差(e) Se φe Ve — —
全体(T) ST φT — — —

これからやることは、たった1つ。
「この表のマスを、左から右へ、上から下へ、5ステップで埋めていく」──ただそれだけです。

記号の意味を整理しておく

記号 読み方 意味
CT シーティー(修正項) 平方和計算の準備に使う"基準値"
ST エス・ティー(総平方和) データ全体のバラつきの合計
SA エス・エー(群間平方和) グループ間のバラつき(因子の効果)
Se エス・イー(群内平方和・誤差平方和) グループ内のバラつき(偶然の誤差)
φ ファイ(自由度) 平方和を「ならす」ための割る数
V ブイ(分散・平均平方) S を φ で割った、ならしたバラつき
F₀ エフ・ゼロ(観測されたF値) VA ÷ Ve。差の判定指標

計算の5ステップ|全体の地図

STEP 1

修正項 CT を計算する
CT = T² ÷ N。すべての平方和計算で使う"出発点"。

STEP 2

平方和 S を3種類計算する
総平方和 ST、群間平方和 SA、群内平方和 Se。Se = ST − SA の引き算でOK。

STEP 3

自由度 φ を計算する
φT = N−1、φA = a−1、φe = N−a。

STEP 4

分散 V を計算する
V = S ÷ φ。割り算するだけ。

STEP 5

F₀ を計算してF分布表で判定する
F₀ = VA ÷ Ve。F表の値と比較して有意差判定。

ここを覚えておくと一生迷わない
分散分析の計算は「上から下へ流れる」イメージで覚えてください。
CT → 平方和 → 自由度 → 分散 → F値 → 判定。
どこか1つでも怪しくなったら、「自分は今、どのステップにいる?」と問い直すと迷子になりません。
分散分析表の構造と埋める順番の図。要因は群間(A)・誤差(e)・全体(T)、列は平方和S・自由度φ・分散V・F値で、①平方和、②自由度、③全体、④分散、⑤F値の順に埋める。Sとφは足せるが、VとFは足せない
分散分析表を埋める順番:S・φ→V→F

STEP1:修正項CT(CT)を計算する

分散分析の計算で最初に必ず出てくる謎の記号が「CT」です。
「Correction Term(修正項)」の略で、すべての平方和計算で使う"スタート地点"。
これを最初に押さえれば、あとは芋づる式に表が埋まっていきます。

CTの公式

修正項CTの公式

CT =
T²
N

T:データの合計値(全データを足したもの)
N:データの総数(全データの個数)

CTとは何か?|なぜ最初に引くのか

CTを一言で説明すると、「全データの平均から計算される基準値」です。
実は、CT = T²/N は 「全データの平均」×「データの合計」と同じ意味。つまり「全体の平均レベルが作るバラつきの基準」を表します。

なぜ CT を引くのか?

平方和を計算するとき、本来なら「各データ − 全体平均」を2乗して合計します。
でも、それを毎回やるのは面倒。そこで数学的に式変形すると、
「データの2乗の合計」− CT
という形でラクに計算できることが分かっています。
つまりCTは、「面倒な引き算をまとめて一発で済ますためのショートカット」なんです。

CTの計算例|カレーの試食データで実演

例として、3種類のカレー配合(A・B・C)で各5人が試食して10点満点で評価したデータを使います。

配合A 配合B 配合C
6 8 7
7 7 6
5 9 8
6 8 7
6 8 7
合計 30 合計 40 合計 35

各配合の合計、全データの合計、データ数を出します。

配合A合計:6+7+5+6+6 = 30
配合B合計:8+7+9+8+8 = 40
配合C合計:7+6+8+7+7 = 35
T(全データの合計):30+40+35 = 105
N(全データ数):5×3 = 15

これでCTが計算できます。

CTの計算

CT = T² ÷ N
  = 105² ÷ 15
  = 11025 ÷ 15
  = 735

よくある間違い
CT = T²/N の T を「全データの平均」と勘違いするミスが多いです。
Tは「全データを足した合計値」。平均ではありません。落ち着いて式を確認しましょう。
修正項CTの図。CT=T²/Nで、Tは全データの合計(平均ではない)。面倒な引き算をまとめて一発で済ませる計算ショートカット
修正項CT=T²/N:Tは全データの合計

STEP2:平方和を3種類に分解する(計算の心臓部)

ここが分散分析の計算の心臓部です。
全体のバラつき(ST)を「群間のバラつき(SA)」と「群内のバラつき(Se)」に分解します。

平方和分解の公式

平方和の分解公式(超重要)

ST = SA + Se

(全体のバラつき = 群間のバラつき + 群内のバラつき)
計算の裏ワザ

ST と SA さえ計算できれば、Se は 引き算で出せます。
Se = ST − SA
つまり、計算する平方和は実質「ST と SA の2つだけ」。これがわかると気持ちが楽になります。

① 総平方和 ST を計算する

総平方和 ST は「全データのバラつきの合計」。データ全部を1つの集団とみなしたときのバラつきです。

総平方和 ST の公式

ST = Σx² − CT

Σx²:全データを1つずつ2乗してから合計したもの
CT:先ほど計算した修正項(=735)

カレーデータで計算します。各データを2乗して全部足します。

配合A:6² + 7² + 5² + 6² + 6² = 36 + 49 + 25 + 36 + 36 = 182
配合B:8² + 7² + 9² + 8² + 8² = 64 + 49 + 81 + 64 + 64 = 322
配合C:7² + 6² + 8² + 7² + 7² = 49 + 36 + 64 + 49 + 49 = 247

Σx² = 182 + 322 + 247 = 751

ST の計算

ST = Σx² − CT
  = 751 − 735
  = 16

② 群間平方和 SA を計算する

群間平方和 SA は「グループ平均同士のバラつき」。配合A・B・Cの平均がどれだけ離れているかを表します。
これが「因子の効果」に対応します。

群間平方和 SA の公式

SA =
T1² + T2² + … + Ta²
n
− CT

Ti:i番目のグループの合計値
n:各グループのデータ数(繰返し数)
a:水準数(グループの数)

カレーデータで計算します。

各配合の合計:TA=30, TB=40, TC=35
各配合の2乗:30² + 40² + 35² = 900 + 1600 + 1225 = 3725
n(繰返し数):各配合5人 → n=5

SA の計算

SA = (TA² + TB² + TC²) ÷ n − CT
  = 3725 ÷ 5 − 735
  = 745 − 735
  = 10

③ 群内平方和(誤差平方和)Se を計算する

ここが裏ワザの出番。Se は 引き算で一発です。

群内平方和 Se の公式

Se = ST − SA
Se の計算

Se = ST − SA
  = 16 − 10
  = 6

ここまでの結果を表に書き込む

要因 平方和 S 自由度 φ 分散 V F₀
群間(A) 10 ? ? ?
誤差(e) 6 ? ? —
全体(T) 16 ? — —

平方和の列がすべて埋まりました。SA + Se = 10 + 6 = 16 = ST となっていることを必ず確認してください。これが検算になります。

平方和の分解の図。全体のばらつきST=16を、群間SA=10と誤差Se=6に分け、Se=ST−SAの引き算で求める
ST=SA+Se:誤差は引き算で求める

STEP3:自由度φを求める

自由度(φ:ファイ)は「平方和をならすときに割る数」。
難しく考える必要はありません。引き算で出るだけです。

自由度の3つの公式

自由度の公式

φT(全体の自由度)= N − 1
φA(群間の自由度)= a − 1
φe(誤差の自由度)= N − a

N:全データ数  a:水準数(グループ数)

検算もできる

自由度も平方和と同じく φA + φe = φT が成立します。
計算が合っているかを確認するのに便利な性質です。

なぜ「n−1」「a−1」と1引くのか?

「自由度って何?なぜ1引くの?」は、誰もが一度はぶつかる疑問です。
ざっくり言うと、「平均を1つ計算した時点で、自由に動けるデータの数が1個減るから」です。

例えばデータが5個あって、平均が「7」と決まっているとします。
1番目〜4番目は好きな値を入れられますが、5番目だけは「合計が35になるように」自動で決まってしまいます。
つまり、自由に動けるのは 5 − 1 = 4 個。これが自由度の正体です。

カレーデータで自由度を計算

今回のカレー実験は、N=15(5人×3配合)、a=3(配合A・B・C)です。

自由度の計算

φT = N − 1 = 15 − 1 = 14
φA = a − 1 = 3 − 1 = 2
φe = N − a = 15 − 3 = 12

検算:φA + φe = 2 + 12 = 14 = φT ○

要因 平方和 S 自由度 φ 分散 V F₀
群間(A) 10 2 ? ?
誤差(e) 6 12 ? —
全体(T) 16 14 — —
自由度φの図。平均が決まると最後の1個は自動で決まるので、自由に動けるのはN−1個で、例ではN−1=14
自由度がN−1になる理由

STEP4:分散(平均平方 V)を計算する

ここまでくればゴールが見えてきました。
分散 V は「平方和 S を自由度 φ で割るだけ」。電卓があれば数秒で出ます。

分散の公式

分散 V の公式

V =
S(平方和)
φ(自由度)
分散 V は「平均平方」とも呼ばれる

分散分析の文脈では、V を 「平均平方(Mean Square)」 と呼ぶこともあります。
意味は同じ。「1個あたりにならしたバラつき」のことです。
平方和(バラつきの合計)を自由度(割る数)で割ると、1個あたりのバラつきになる──そう覚えておけばOK。

VA と Ve を計算する

分散分析では、必要な分散は VA(群間分散) と Ve(誤差分散) の2つだけです。
全体分散 VT は計算しなくてOK(だから表でも「—」になっています)。

分散の計算

VA = SA ÷ φA = 10 ÷ 2 = 5
Ve = Se ÷ φe = 6 ÷ 12 = 0.5

ここまでの表

要因 平方和 S 自由度 φ 分散 V F₀
群間(A) 10 2 5 ?
誤差(e) 6 12 0.5 —
全体(T) 16 14 — —
注意:分散は足し算できない
VA(5)+ Ve(0.5)= 5.5 となりますが、これは VT ではありません。
「平方和は足せる、自由度も足せる、でも分散は足せない」──これが分散分析のルールです。

STEP5:F₀を求めてF分布表で判定する

いよいよ最後のステップ。「配合の違いに本当に差があるのか?」を判定します。

F₀の公式

F₀ の公式

F₀ =
VA(群間分散)
Ve(誤差分散)

これは「効果の大きさ」÷「誤差の大きさ」。
F₀ が大きいほど、誤差では説明できない差がある、つまり因子の効果があると判定できます。

F₀の計算

F₀ の計算

F₀ = VA ÷ Ve
  = 5 ÷ 0.5
  = 10

F分布表の使い方|どこを見るのか

F₀ = 10 が出ましたが、これだけでは判定できません。
「F分布表」と呼ばれる表に書かれた基準値(F(φ1, φ2; α))と比較する必要があります。

F分布表の3つの引数

φ1(分子の自由度):群間の自由度 φA
φ2(分母の自由度):誤差の自由度 φe
α(有意水準):普通は 0.05(5%)か 0.01(1%)

F分布表の引き方(実例)

今回は φ1 = 2、φ2 = 12、α = 0.05 で表を引きます。

STEP A

F分布表(α=0.05用)を開く

STEP B

横の列から φ1=2 を探す

STEP C

縦の列から φ2=12 を探す

STEP D

交差点の値を読む → F(2, 12; 0.05) = 3.89

F分布表の例(α=0.05、上側%点)

φ2 \ φ1 1 2 3 4 5
10 4.96 4.10 3.71 3.48 3.33
11 4.84 3.98 3.59 3.36 3.20
12 4.75 3.89 3.49 3.26 3.11
13 4.67 3.81 3.41 3.18 3.03

上の表で、φ1=2 と φ2=12 が交差する場所が 3.89。これが基準値です。

判定ルール

○

F₀ ≧ F表の値

「有意差あり」と判定
→ 配合の違いに本当に差がある
(記号で「**」と書く)

×

F₀ < F表の値

「有意差なし」と判定
→ 差は誤差の範囲内
(記号で「ns」と書く)

カレーデータの判定

判定

F₀ = 10 vs F(2, 12; 0.05) = 3.89

10 > 3.89 → 有意差あり(**)

つまり、3つの配合の間には「偶然では説明できない」差があると判定できます。

注意:「どの配合が一番良いか」までは分からない
分散分析で分かるのは「どこかに差がある」ということだけです。
「A対B」「B対C」など、どの組み合わせに差があるかを調べるには、多重比較法(テューキー法など)を別途行う必要があります。
F分布と棄却域の図。F(2,12;0.05)=3.89より右が棄却域(5%)で、F0=10は棄却域に入るので有意差あり
F0=10は棄却域に入り有意差あり

例題:カレーの試食データで分散分析表を1から完成させる

ここまでの5ステップを一気に通して復習しましょう。
この章では、データを見るところから判定までを1問通しで解きます。手元に紙と電卓を用意して、一緒に手を動かしてください。

問題設定

問題

あるカレー店で、3種類のスパイス配合(A・B・C)を試作し、それぞれ5人の評価員に10点満点で採点してもらった。
配合によって評価点に差があると言えるか、有意水準 α = 0.05 で分散分析を行いなさい。

No. 配合A 配合B 配合C
1687
2776
3598
4687
5687
合計304035
平均6.08.07.0

解答|5ステップで一気に解く

STEP 1:CT

T = 30 + 40 + 35 = 105  N = 5×3 = 15
CT = T² ÷ N = 105² ÷ 15 = 11025 ÷ 15 = 735

STEP 2:平方和

【Σx²の計算】
A:6²+7²+5²+6²+6² = 182
B:8²+7²+9²+8²+8² = 322
C:7²+6²+8²+7²+7² = 247
Σx² = 182 + 322 + 247 = 751

【総平方和】
ST = Σx² − CT = 751 − 735 = 16

【群間平方和】
SA = (30² + 40² + 35²) ÷ 5 − 735 = 3725 ÷ 5 − 735 = 745 − 735 = 10

【誤差平方和】
Se = ST − SA = 16 − 10 = 6

STEP 3:自由度

φT = N − 1 = 15 − 1 = 14
φA = a − 1 = 3 − 1 = 2
φe = N − a = 15 − 3 = 12

STEP 4:分散

VA = SA ÷ φA = 10 ÷ 2 = 5
Ve = Se ÷ φe = 6 ÷ 12 = 0.5

STEP 5:F値と判定

F₀ = VA ÷ Ve = 5 ÷ 0.5 = 10

F(2, 12; 0.05) = 3.89  → F₀ = 10 > 3.89

∴ 有意差あり(**):配合の違いが評価点に影響している

完成した分散分析表

要因 平方和 S 自由度 φ 分散 V F₀ 判定
群間(A) 10 2 5.0 10.0 **
誤差(e) 6 12 0.5 — —
全体(T) 16 14 — — —
おめでとうございます!

これで分散分析表が1から完成しました。
「データを見たら → 5ステップで表を埋めて → F分布表と比較して判定」。
この型さえ覚えれば、データが変わってもまったく同じ手順で解けます。

一元配置の分散分析の5ステップの例の図。CT=735、ST=16・SA=10・Se=6、φT=14・φA=2・φe=12、VA=5・Ve=0.5、F0=10>3.89で有意
分散分析の計算5ステップの数値例

よくあるつまずきポイントと対処法

分散分析の計算でつまずく定番ポイントを5つ、対処法とセットで紹介します。

つまずき①|平方和の検算が合わない

× 症状
SA + Se が ST と一致しない
○ 対処法
まずCTを計算し直す。CT = T²/N で、T は全データの合計(平均ではない)。
次に Σx² を確認。「2乗してから足す」。「足してから2乗」ではない。
最後にSAの式 (TA² + TB² + TC²)/n を確認。グループ合計の2乗を足してからnで割る。

つまずき②|自由度を間違える

× 症状
「N」と「a」と「n」がごちゃごちゃになる
○ 対処法
記号を一覧で整理すること:
N = 全データ数(カレー例:15)
a = 水準数(カレー例:3)
n = 各水準のデータ数(カレー例:5)
そして、N = a × n の関係を必ず確認する。

つまずき③|分散も足し算できると思ってしまう

× 症状
VA + Ve = VT だと思って計算してしまう
○ 対処法
足し算が成立するのは「平方和」と「自由度」だけ。
「分散」と「F値」は足し算できません。分散分析表でも、VT の欄は「—」になっています。

つまずき④|F分布表のφ1とφ2を逆に引く

× 症状
F表で φ1 と φ2 を取り違えて、間違った基準値で判定する
○ 対処法
F₀ = VA ÷ Ve の分子の自由度がφ1(=φA)、分母の自由度がφ2(=φe)。
F分布表は「横軸=分子の自由度」「縦軸=分母の自由度」と覚える。

つまずき⑤|有意差ありで満足してしまう

× 症状
「有意差あり」で結論を終え、「どの配合が一番良いのか」を答えない
○ 対処法
分散分析が言うのは「どこかに差がある」だけ。「Bが一番」と結論するには多重比較法か、各水準の母平均の点推定・区間推定を別途行う。
分散分析はゴールではなく、「次の解析への入口」と覚えておく。
分散分析の計算でつまずく5つのポイントの図。CTのTは全データの合計で平均ではない、N・a・nの自由度を取り違えない、足し算できるのは平方和と自由度だけ、F表は分子がφ1で分母がφ2、有意差ありのあとは多重比較や推定で比べる
分散分析でつまずく5つのポイントと対処法

よくある質問(FAQ)

Q1. 修正項CTを使わずに計算する方法はありますか?

あります。「各データ − 全体平均」を全部2乗して足せば、CTを使わずに ST が計算できます。ただし手計算では非常に面倒。CT方式の方が圧倒的にラクです。QC検定でも統計検定でも、CT方式が標準的に使われています。

Q2. 繰返し数が水準ごとに違っても計算できますか?

できます。ただし SA の式が少し変わります。
SA = TA²/nA + TB²/nB + TC²/nC − CT
(各水準ごとに合計の2乗をそのデータ数で割る)。本記事のように繰返し数が同じなら、全体をnで割れます。

Q3. Excelで分散分析できますか?

できます。「データ」タブ→「データ分析」→「分散分析:一元配置」を選ぶだけで、本記事の表とまったく同じ結果が出ます。ただし手計算を一度経験せずにExcelに頼ると、出力結果の意味がわからなくなるのでおすすめしません。

Q4. 「**」と「*」の違いは何ですか?

慣習として、「*」は α=0.05 で有意(少し差がある)、「**」は α=0.01 で有意(はっきり差がある)を表します。本記事のカレー例では、α=0.01の基準値 F(2, 12; 0.01) = 6.93 と比較すると F₀=10 > 6.93 なので、「**」を付けても問題ありません。

Q5. データに外れ値があるときはどうしますか?

分散分析は外れ値の影響を受けやすい手法です。明らかな異常値(記入ミス、実験ミスなど)は除外する、またはノンパラメトリック検定(クラスカル・ウォリス検定)に切り替えるなどの対応が必要。「データの正規性」と「等分散性」が分散分析の前提なので、事前にヒストグラムや箱ひげ図で確認することをおすすめします。

Q6. 因子が2つ以上のときはどう計算しますか?

因子が2つになると「二元配置分散分析」と呼ばれ、計算量が増えます。基本の考え方(平方和を分解→自由度で割って分散→F値で判定)は同じですが、「交互作用」という新しい概念が加わります。一元配置の計算をマスターしてから取り組むのが鉄則です。

まとめ|分散分析表は「5ステップ」で必ず完成する

この記事の要点
  • 分散分析表は CT → 平方和S → 自由度φ → 分散V → F値 の5ステップで埋める
  • CT = T²/N。全データの合計を2乗してデータ数で割る
  • 平方和は ST = Σx² − CT、SA = ΣTi²/n − CT、Se = ST − SA
  • 自由度は φT=N−1、φA=a−1、φe=N−a。引き算するだけ
  • 分散は V = S ÷ φ。割るだけ
  • F₀ = VA ÷ Ve。F分布表の値より大きければ有意差あり
  • 足せるのは「平方和」と「自由度」のみ。分散とF値は足せない
次の一歩

分散分析表が完成したら、次は「最適水準の推定」へ進みましょう。
「どの配合が一番良いのか?」「その平均値の信頼区間は?」を計算する点推定・区間推定が、分散分析の真の到達点です。

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メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

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