測定技術

オシロプローブの種類完全マップ|受動・差動・電流・FETの選び方一覧

📚 測定・計測の技術第3章 プローブの完全攻略
第3章 - 第2回 / 全12回 ⭐核⭐ シリーズ全体: 17 / 69記事
進捗 25%

「プローブを買おうとしたら、種類が多すぎて選べない…」

オシロプローブを通販サイトで検索すると、こんな名前がずらり並びます:

  • 受動プローブ(パッシブプローブ)
  • 能動プローブ(アクティブプローブ/FETプローブ)
  • 差動プローブ(高電圧差動/低電圧差動)
  • 高耐圧プローブ(100:1、1000:1)
  • 電流プローブ(CT、ホール、ロゴスキー)
  • 光絶縁プローブ

この記事では、すべてのプローブを 1枚の地図 にまとめ、
あなたの測定目的に合った1本を選べるように整理します。

結論:プローブ全種類 早見表

まず、すべてのプローブを 1枚の表 で整理します。詳細は後ほど解説しますが、この表だけ覚えれば9割の選定に困りません。

プローブ種類 測れるもの 電圧範囲 帯域目安 価格目安
受動プローブ(10:1) 電圧(GND基準) 〜300V 〜500MHz 1〜3万円
高耐圧プローブ(100:1〜1000:1) 高電圧(GND基準) 〜30kV 〜100MHz 5〜30万円
差動プローブ(高電圧) 2点間の電圧差 〜2000V 〜200MHz 10〜50万円
差動プローブ(低電圧) 高速デジタル差動信号 〜数十V 〜数GHz 30〜100万円
能動プローブ(FETプローブ) 超高速・微小信号 〜数十V 〜10GHz 30〜100万円
電流プローブ 電流(A) mA〜500A 〜100MHz 10〜80万円
光絶縁プローブ 完全絶縁での電圧 〜2000V 〜1GHz 100〜300万円

💡 ざっくり覚え方
普段は 受動プローブ、大きい電圧は 差動 or 高耐圧、電流は 電流プローブ、超高速は 能動プローブ
これだけ覚えれば現場の8割はカバーできます。

① 受動プローブ(パッシブプローブ)|基本の1本

オシロを買うと 標準で付属 してくる、一番ベーシックなプローブです。「プローブ」と言ったら普通はこれを指します。

特徴

  • 内部に 抵抗とコンデンサだけが入っている(電源不要)
  • 信号を 10分の1 に縮めてオシロに伝える(=10:1プローブ)
  • シンプルな構造で 安価・丈夫
  • ただしGND基準の信号しか測れない

こんな測定に向いている

✅ デジタル信号(3.3V / 5Vロジック)の観測
✅ 電源回路の出力電圧(GND基準)
✅ 低圧の信号波形の確認
✅ 教育・学習用途

⚠️ 注意
最大入力電圧は 300V程度まで。AC100Vの電源(最大瞬時値141V)はギリ測れますが、AC200Vはアウト。それ以上は 差動プローブか高耐圧プローブ を使ってください。

② 高耐圧プローブ|数千Vを安全に測る

受動プローブの「もっと大きな電圧版」です。信号を 100分の1や1000分の1 まで縮めることで、数千V〜数万Vの信号も測れます。

特徴

  • 分圧比が 100:1、1000:1 など大きい
  • プローブ本体が大きく、安全のための 絶縁が強化 されている
  • 受動プローブと同様に電源不要
  • 帯域は受動プローブより少し低め(50〜100MHz程度)

こんな測定に向いている

✅ 高電圧電源回路の出力(GND基準)
✅ X線管・CRTディスプレイの高電圧部
✅ 静電気放電(ESD)波形の観測

💡 GND基準でない場所には使えない
高耐圧プローブもGND基準でしか測れません。「ハイサイドの高電圧」を測りたいなら、後述の 差動プローブ を使ってください。

③ 差動プローブ|2点間の電圧差を測る救世主

パワーエレクトロニクスや電源開発の現場で 絶対に必要 になるプローブです。

特徴

  • 2本のプローブ先端(プラス・マイナス)を持つ
  • その 2点間の電圧差だけを測る
  • オシロのGNDから 電気的に絶縁 されている(内部電源で動作)
  • GND基準でない場所も安全に測れる

2種類ある:高電圧差動 vs 低電圧差動

種類 用途 代表機種
高電圧差動 パワエレ・モーター・インバータ Tek THDP/IsoVu、Keysight N2790
低電圧差動 USB・PCIe等の高速デジタル差動信号 Tek P7300、Keysight N7000

こんな測定に向いている

✅ ハイサイドMOSFETのゲート電圧(VGS)
✅ インバータのU・V・W相間電圧
✅ 商用電源(AC200V〜400V)の波形
✅ 高速通信(USB、PCIe)の差動信号

④ 能動プローブ(FETプローブ)|GHz級の超高速信号用

プローブ先端に 小さなアンプ(FET増幅器) を内蔵した、ハイエンドプローブです。

特徴

  • プローブ先端に 増幅器 が入っている(内部電源が必要)
  • 静電容量が 超小さい(1pF以下)→ 回路を邪魔しない
  • 帯域が広い(数GHzまで対応)
  • ただし最大入力電圧は小さい(±数十V程度)

こんな測定に向いている

✅ 高速デジタル信号(クロック数百MHz以上)
✅ 微小なノイズ・小信号
✅ FPGAやCPUなどの内部信号
✅ RF回路(無線・通信)

⚠️ 注意
過電圧(最大入力を超える)で 一瞬で壊れます。1本数十万円のプローブが壊れると痛いので、必ず仕様を確認してから使ってください。

⑤ 電流プローブ|配線を切らずに電流を測る

電圧ではなく 電流(A) を測るための特殊なプローブです。配線を切らずに、クランプ(はさむ)だけで電流が測れます。

3つの方式がある

方式 特徴 用途
CT方式 交流専用、安価 商用電源(50/60Hz)の電流
ホール方式 DCも交流も測れる 電源・モーター・インバータ
ロゴスキー方式 大電流・柔らかいコイル 大電力機器、太いケーブル

こんな測定に向いている

✅ スイッチング電源の入出力電流
✅ モーターの相電流(U・V・W)
✅ 突入電流の観測
✅ 効率測定(電圧×電流で電力計算)

💡 電流プローブの便利さ
配線にクランプするだけ=回路を一切いじらず 電流が測れる。これは電圧プローブにはない大きなメリットです。電力測定をするなら必須。

⑥ 光絶縁プローブ|究極の絶縁性能

最も高性能で、最も高価なプローブです。プローブ先端からオシロまでを 光ファイバー で接続することで、電気的に完全絶縁します。

特徴

  • プローブとオシロが 光ファイバー で接続される
  • 電気的に完全絶縁 → ノイズの影響を 完全排除
  • 差動プローブをはるかに超える性能(CMRR)
  • 価格は100万円〜数百万円

こんな測定に向いている

✅ SiC・GaNデバイスの高速スイッチング波形
✅ EV・HEVのインバータ評価
✅ 大電力機器の高精度測定
✅ 普通の差動プローブでは見えない微細波形

💡 主力製品
Tektronix「IsoVu」、Keysight「N7000」シリーズなどが有名。大手メーカーの研究開発部門でなければなかなか見かけません。「こんなプローブもあるんだ」程度で覚えておけばOKです。

📘 関連記事
プローブの役割や仕組みの基本を復習したい方はこちら: オシロプローブとは?「ただのケーブル」じゃない理由 →

迷ったときの選び方フロー

「結局どれを選べばいいの?」という人のために、選定フローチャートを用意しました。

Q1. 電圧を測りたい?電流を測りたい?
 └ 電流 → 電流プローブ
 └ 電圧 → Q2へ

Q2. GND基準で測れる?
 └ Yes → Q3へ
 └ No(ハイサイド・2点間) → 差動プローブ

Q3. 電圧の大きさは?
 └ 300V以下 → 受動プローブ(10:1)
 └ 300V〜30kV → 高耐圧プローブ

Q4. 信号は超高速(数百MHz以上)?
 └ Yes → 能動プローブ(FETプローブ)
 └ No → 上記の選択でOK

Q5. ノイズ環境が厳しく、精密測定が必要?
 └ Yes → 光絶縁プローブ(要相談)

✅ 現場の3本セット
一般的な電子機器開発の現場では、以下の3本があれば9割の測定をカバーできます:
① 受動プローブ(10:1)× 2〜4本
② 高電圧差動プローブ × 1本
③ 電流プローブ × 1本

📘 合わせて読みたい
プローブの種類を知った次は、最もよく使う受動プローブの構造と補償調整を学びましょう: 受動プローブの構造と補償調整 →

差動プローブの詳細はこちら: 差動プローブとは?GND共通の呪縛から解放する救世主 →

よくある質問

Q1. 「受動」と「能動」って何が違うのですか?

受動=中身が抵抗・コンデンサだけ(電源不要)。
能動=中身にトランジスタ(増幅器)が入っている(電源必要)。
能動の方が高性能ですが、価格も高く、過電圧で壊れやすいです。

Q2. 1:1プローブ(減衰なし)も存在するけど、いつ使う?

低電圧・低周波の小信号を測るとき限定です。減衰しないので画面に大きく映りますが、入力範囲が狭く、高周波で性能が悪化します。現代ではあまり使われません。

Q3. 同じ「差動プローブ」でも、高電圧用と低電圧用、どう違う?

高電圧差動は数百〜2000Vを安全に測るためのもの(パワエレ向け)。低電圧差動は数十V以下の高速差動信号(USB・PCIe等)を高精度で測るためのもの。用途が全く違います。

Q4. 高いプローブはレンタルできますか?

はい。レンテック、オリックス・レンテックなどの計測器レンタル会社で、差動プローブや電流プローブを月単位で借りられます。年に数回しか使わない高額プローブは、買わずに借りるのも賢い選択です。

まとめ

✅ プローブは6種類に大別される
受動:日常使い、付属品。GND基準300Vまで
高耐圧:数千V以上の高電圧、GND基準のみ
差動:2点間電圧、ハイサイド測定の救世主
能動(FET):超高速・微小信号、GHz帯対応
電流:配線を切らずに電流測定、3方式あり
光絶縁:最高性能、研究開発レベル
✅ 現場の3本セット:受動 + 高電圧差動 + 電流プローブ

プローブ選びは「測定したい信号の種類」で9割決まります。迷ったらこの記事の選定フローを思い出してください。次の記事からは、日常使いの主役「受動プローブ」を深掘りしていきます。

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