「プローブを買おうとしたら、種類が多すぎて選べない…」
オシロプローブを通販サイトで検索すると、こんな名前がずらり並びます:
- 受動プローブ(パッシブプローブ)
- 能動プローブ(アクティブプローブ/FETプローブ)
- 差動プローブ(高電圧差動/低電圧差動)
- 高耐圧プローブ(100:1、1000:1)
- 電流プローブ(CT、ホール、ロゴスキー)
- 光絶縁プローブ
この記事では、すべてのプローブを 1枚の地図 にまとめ、
あなたの測定目的に合った1本を選べるように整理します。
目次
結論:プローブ全種類 早見表
まず、すべてのプローブを 1枚の表 で整理します。詳細は後ほど解説しますが、この表だけ覚えれば9割の選定に困りません。
| プローブ種類 | 測れるもの | 電圧範囲 | 帯域目安 | 価格目安 |
|---|---|---|---|---|
| 受動プローブ(10:1) | 電圧(GND基準) | 〜300V | 〜500MHz | 1〜3万円 |
| 高耐圧プローブ(100:1〜1000:1) | 高電圧(GND基準) | 〜30kV | 〜100MHz | 5〜30万円 |
| 差動プローブ(高電圧) | 2点間の電圧差 | 〜2000V | 〜200MHz | 10〜50万円 |
| 差動プローブ(低電圧) | 高速デジタル差動信号 | 〜数十V | 〜数GHz | 30〜100万円 |
| 能動プローブ(FETプローブ) | 超高速・微小信号 | 〜数十V | 〜10GHz | 30〜100万円 |
| 電流プローブ | 電流(A) | mA〜500A | 〜100MHz | 10〜80万円 |
| 光絶縁プローブ | 完全絶縁での電圧 | 〜2000V | 〜1GHz | 100〜300万円 |
💡 ざっくり覚え方
普段は 受動プローブ、大きい電圧は 差動 or 高耐圧、電流は 電流プローブ、超高速は 能動プローブ。
これだけ覚えれば現場の8割はカバーできます。

① 受動プローブ(パッシブプローブ)|基本の1本
オシロを買うと 標準で付属 してくる、一番ベーシックなプローブです。「プローブ」と言ったら普通はこれを指します。
特徴
- 内部に 抵抗とコンデンサだけが入っている(電源不要)
- 信号を 10分の1 に縮めてオシロに伝える(=10:1プローブ)
- シンプルな構造で 安価・丈夫
- ただしGND基準の信号しか測れない
こんな測定に向いている
✅ デジタル信号(3.3V / 5Vロジック)の観測
✅ 電源回路の出力電圧(GND基準)
✅ 低圧の信号波形の確認
✅ 教育・学習用途
⚠️ 注意
最大入力電圧は 300V程度まで。AC100Vの電源(最大瞬時値141V)はギリ測れますが、AC200Vはアウト。それ以上は 差動プローブか高耐圧プローブ を使ってください。

② 高耐圧プローブ|数千Vを安全に測る
受動プローブの「もっと大きな電圧版」です。信号を 100分の1や1000分の1 まで縮めることで、数千V〜数万Vの信号も測れます。
特徴
- 分圧比が 100:1、1000:1 など大きい
- プローブ本体が大きく、安全のための 絶縁が強化 されている
- 受動プローブと同様に電源不要
- 帯域は受動プローブより少し低め(50〜100MHz程度)
こんな測定に向いている
✅ 高電圧電源回路の出力(GND基準)
✅ X線管・CRTディスプレイの高電圧部
✅ 静電気放電(ESD)波形の観測
💡 GND基準でない場所には使えない
高耐圧プローブもGND基準でしか測れません。「ハイサイドの高電圧」を測りたいなら、後述の 差動プローブ を使ってください。

③ 差動プローブ|2点間の電圧差を測る救世主
パワーエレクトロニクスや電源開発の現場で 絶対に必要 になるプローブです。
特徴
- 2本のプローブ先端(プラス・マイナス)を持つ
- その 2点間の電圧差だけを測る
- オシロのGNDから 電気的に絶縁 されている(内部電源で動作)
- GND基準でない場所も安全に測れる
2種類ある:高電圧差動 vs 低電圧差動
| 種類 | 用途 | 代表機種 |
|---|---|---|
| 高電圧差動 | パワエレ・モーター・インバータ | Tek THDP/IsoVu、Keysight N2790 |
| 低電圧差動 | USB・PCIe等の高速デジタル差動信号 | Tek P7300、Keysight N7000 |
こんな測定に向いている
✅ ハイサイドMOSFETのゲート電圧(VGS)
✅ インバータのU・V・W相間電圧
✅ 商用電源(AC200V〜400V)の波形
✅ 高速通信(USB、PCIe)の差動信号

④ 能動プローブ(FETプローブ)|GHz級の超高速信号用
プローブ先端に 小さなアンプ(FET増幅器) を内蔵した、ハイエンドプローブです。
特徴
- プローブ先端に 増幅器 が入っている(内部電源が必要)
- 静電容量が 超小さい(1pF以下)→ 回路を邪魔しない
- 帯域が広い(数GHzまで対応)
- ただし最大入力電圧は小さい(±数十V程度)
こんな測定に向いている
✅ 高速デジタル信号(クロック数百MHz以上)
✅ 微小なノイズ・小信号
✅ FPGAやCPUなどの内部信号
✅ RF回路(無線・通信)
⚠️ 注意
過電圧(最大入力を超える)で 一瞬で壊れます。1本数十万円のプローブが壊れると痛いので、必ず仕様を確認してから使ってください。

⑤ 電流プローブ|配線を切らずに電流を測る
電圧ではなく 電流(A) を測るための特殊なプローブです。配線を切らずに、クランプ(はさむ)だけで電流が測れます。
3つの方式がある
| 方式 | 特徴 | 用途 |
|---|---|---|
| CT方式 | 交流専用、安価 | 商用電源(50/60Hz)の電流 |
| ホール方式 | DCも交流も測れる | 電源・モーター・インバータ |
| ロゴスキー方式 | 大電流・柔らかいコイル | 大電力機器、太いケーブル |
こんな測定に向いている
✅ スイッチング電源の入出力電流
✅ モーターの相電流(U・V・W)
✅ 突入電流の観測
✅ 効率測定(電圧×電流で電力計算)
💡 電流プローブの便利さ
配線にクランプするだけ=回路を一切いじらず 電流が測れる。これは電圧プローブにはない大きなメリットです。電力測定をするなら必須。

⑥ 光絶縁プローブ|究極の絶縁性能
最も高性能で、最も高価なプローブです。プローブ先端からオシロまでを 光ファイバー で接続することで、電気的に完全絶縁します。
特徴
- プローブとオシロが 光ファイバー で接続される
- 電気的に完全絶縁 → ノイズの影響を 完全排除
- 差動プローブをはるかに超える性能(CMRR)
- 価格は100万円〜数百万円
こんな測定に向いている
✅ SiC・GaNデバイスの高速スイッチング波形
✅ EV・HEVのインバータ評価
✅ 大電力機器の高精度測定
✅ 普通の差動プローブでは見えない微細波形
💡 主力製品
Tektronix「IsoVu」、Keysight「N7000」シリーズなどが有名。大手メーカーの研究開発部門でなければなかなか見かけません。「こんなプローブもあるんだ」程度で覚えておけばOKです。

プローブの役割や仕組みの基本を復習したい方はこちら: オシロプローブとは?「ただのケーブル」じゃない理由 →
迷ったときの選び方フロー
「結局どれを選べばいいの?」という人のために、選定フローチャートを用意しました。
Q1. 電圧を測りたい?電流を測りたい?
└ 電流 → 電流プローブ
└ 電圧 → Q2へ
Q2. GND基準で測れる?
└ Yes → Q3へ
└ No(ハイサイド・2点間) → 差動プローブ
Q3. 電圧の大きさは?
└ 300V以下 → 受動プローブ(10:1)
└ 300V〜30kV → 高耐圧プローブ
Q4. 信号は超高速(数百MHz以上)?
└ Yes → 能動プローブ(FETプローブ)
└ No → 上記の選択でOK
Q5. ノイズ環境が厳しく、精密測定が必要?
└ Yes → 光絶縁プローブ(要相談)
✅ 現場の3本セット
一般的な電子機器開発の現場では、以下の3本があれば9割の測定をカバーできます:
① 受動プローブ(10:1)× 2〜4本
② 高電圧差動プローブ × 1本
③ 電流プローブ × 1本
プローブの種類を知った次は、最もよく使う受動プローブの構造と補償調整を学びましょう: 受動プローブの構造と補償調整 →
差動プローブの詳細はこちら: 差動プローブとは?GND共通の呪縛から解放する救世主 →

よくある質問
Q1. 「受動」と「能動」って何が違うのですか?
受動=中身が抵抗・コンデンサだけ(電源不要)。
能動=中身にトランジスタ(増幅器)が入っている(電源必要)。
能動の方が高性能ですが、価格も高く、過電圧で壊れやすいです。
Q2. 1:1プローブ(減衰なし)も存在するけど、いつ使う?
低電圧・低周波の小信号を測るとき限定です。減衰しないので画面に大きく映りますが、入力範囲が狭く、高周波で性能が悪化します。現代ではあまり使われません。
Q3. 同じ「差動プローブ」でも、高電圧用と低電圧用、どう違う?
高電圧差動は数百〜2000Vを安全に測るためのもの(パワエレ向け)。低電圧差動は数十V以下の高速差動信号(USB・PCIe等)を高精度で測るためのもの。用途が全く違います。
Q4. 高いプローブはレンタルできますか?
はい。レンテック、オリックス・レンテックなどの計測器レンタル会社で、差動プローブや電流プローブを月単位で借りられます。年に数回しか使わない高額プローブは、買わずに借りるのも賢い選択です。
まとめ
✅ プローブは6種類に大別される
✅ 受動:日常使い、付属品。GND基準300Vまで
✅ 高耐圧:数千V以上の高電圧、GND基準のみ
✅ 差動:2点間電圧、ハイサイド測定の救世主
✅ 能動(FET):超高速・微小信号、GHz帯対応
✅ 電流:配線を切らずに電流測定、3方式あり
✅ 光絶縁:最高性能、研究開発レベル
✅ 現場の3本セット:受動 + 高電圧差動 + 電流プローブ
プローブ選びは「測定したい信号の種類」で9割決まります。迷ったらこの記事の選定フローを思い出してください。次の記事からは、日常使いの主役「受動プローブ」を深掘りしていきます。
