- 「再発防止策を書いといて」と言われて、何を書けばいいか手が止まる
- 再発防止と未然防止、言葉は違うけど何が違うのかよくわからない
- 是正処置・予防処置という言葉が出てきて、さらに混乱する
- 書いた再発防止策が「それは再発防止になっていない」と突き返された
- 再発防止と未然防止の違いを一言ずつ
- 是正処置・予防処置との対応関係
- 「対策」と「処置(応急・恒久)」の違い
- 客先に突き返される再発防止策のNG例3つ
再発防止とは「すでに起きた問題が、二度と起きないようにすること」。未然防止とは「まだ起きていない問題を、先回りして防ぐこと」です。ISO(国際的な品質のルール)の用語では、再発防止=是正処置、未然防止=予防処置に対応します。難易度も効果も、未然防止のほうが一段高い取り組みです。
品質の仕事をしていると、避けて通れないのが「再発防止」という言葉です。でも、いざ書こうとすると「これで合ってる?」と不安になりますよね。しかも「未然防止」「是正処置」「予防処置」と、似た言葉が次々に出てきて混乱しがちです。この記事では、これらの違いをスッキリ整理し、「突き返されない書き方」までやさしく解説します。
目次
再発防止とは?「起きた問題」を二度と起こさない
再発防止(さいはつぼうし)とは、その名のとおり「もう一度起きること(再発)を防ぐ」ことです。ポイントは、すでに問題が1回起きてしまっているという点にあります。
流れはこうです。問題が起きる → 原因を突き止める → その原因を取り除く → 同じ問題が二度と起きないようにする。つまり再発防止は、過去に起きた出来事への「後始末」です。
キッチンで水漏れが起きたとします。まず床を拭く(=その場しのぎ)。でもそれだけでは、また漏れます。そこで、漏れの原因であるパッキンの劣化を突き止めて交換する——これが再発防止です。「もう同じ場所からは漏れない」状態をつくることが目的です。
再発防止のカギは「原因を取り除く」こと。原因が残ったまま「気をつけます」で終わらせると、それは再発防止ではありません。ここが、後で説明するNG例の核心になります。

未然防止とは?「まだ起きていない問題」を先回りで防ぐ
未然防止(みぜんぼうし)とは、「まだ起きていない問題を、起きる前に防ぐ」ことです。再発防止との決定的な違いは、まだ問題が1回も起きていないという点です。
流れはこうです。「もしかしたら、こんな問題が起きるかも?」とリスクを予測する → 起きる前に手を打つ → 問題そのものを発生させない。つまり未然防止は、未来に向けた「先手」です。
健康診断をイメージしてください。まだどこも痛くないけれど、将来の病気を防ぐために検査を受け、生活を見直す。これが未然防止です。一方、実際に病気になってから治療し、再発しないよう対策するのが再発防止。「病気になる前」か「なった後」かの違いです。
未然防止は、再発防止よりずっと難しい取り組みです。なぜなら、まだ起きていない問題を「想像して」防ぐ必要があるから。目の前に問題がない分、リスクを見つける力が問われます。でもその分、効果は絶大。問題そのものが起きないので、いちばん理想的な対策です。
つまり、再発防止=「起きた後」の対応、未然防止=「起きる前」の対応。この「起きた前か後か」が、2つを分ける一番シンプルな見分け方です。

用語の対応表|是正処置・予防処置と使う手法
ここまで出てきた言葉を、1枚の表で整理しましょう。「再発防止/未然防止」は日常でよく使う日本語、「是正処置/予防処置」はISOなどの正式なルールで使われる用語です。言い方が違うだけで、中身はほぼ同じだと思ってください。
| 項目 | 再発防止 | 未然防止 |
|---|---|---|
| 問題は起きた? | 起きた(後の対応) | まだ起きていない(先手) |
| ISOでの呼び方 | 是正処置(ぜせいしょち) | 予防処置(よぼうしょち) |
| やること | 起きた原因を取り除く | リスクを予測して手を打つ |
| よく使う手法 | なぜなぜ分析(原因追究) | FMEA・DR(リスク予測) |
| 難易度 | 中(原因がすでに見えている) | 高(想像力が必要) |
「再発防止=是正処置」「未然防止=予防処置」。日本語とISO用語で呼び名が違うだけです。この対応関係さえ押さえておけば、会議で用語が飛び交っても混乱しません。
なお、是正処置・予防処置というISOの正式なプロセス(CAPAと呼ばれます)については、CAPA(是正処置・予防処置)とは?応急処置との違いでくわしく解説しています。ISO監査対応まで踏み込みたい方は、あわせてどうぞ。

「応急処置」と「恒久対策」の違い|その場しのぎで終わらせない
もう1つ、混乱しやすいのが「応急処置」と「恒久対策」の違いです。問題が起きたとき、実は2段階の対応が必要になります。
応急処置(暫定対策)
- まずは「その場を止める」
- 不良品を出荷しないよう仕分ける
- すぐやる「止血」の対応
- 原因は解決していない
恒久対策(再発防止)
- 原因そのものを取り除く
- 仕組みや設備を変える
- じっくりやる「根治」の対応
- 二度と起きなくなる
指を切ってしまったとき、まず絆創膏(ばんそうこう)を貼る——これが応急処置。でも、そもそも「なぜ切ったのか(包丁の置き方が悪い等)」を直さないと、また切ります。置き方を改善するのが恒久対策です。絆創膏だけで満足してはいけない、というわけです。
応急処置(暫定対策)を「再発防止策」として報告してしまうことです。応急処置はあくまで一時しのぎで、原因は残ったまま。ここを混同すると、後で説明する「突き返される再発防止策」になってしまいます。

「それは再発防止になっていない」と突き返される3パターン
ここが、この記事でいちばん役に立つパートです。客先へ再発防止策を報告すると、しばしば「それは再発防止になっていない」と突き返されます。突き返される再発防止策には、共通する3つのNGパターンがあります。
NG①:「作業者に注意した」
「担当者に厳重注意しました」——これが一番多いNGです。なぜダメかというと、人の注意力に頼る対策は、また同じミスを生むからです。人は必ずうっかりします。注意で防げるなら、そもそもミスは起きていません。原因(仕組み)が何も変わっていないので、再発防止になっていないのです。
NG②:「ダブルチェックを追加した」
「2人で確認する体制にしました」——一見よさそうですが、これも突き返されがちです。理由は、2人とも同じように見落とす可能性があるから。しかも「誰かが見てくれる」と思うと、かえって一人ひとりの注意が薄まる(責任の分散)ことも知られています。チェックを1つ増やしただけで、原因は残ったままなのです。
NG③:「再教育を実施した」
「作業者に手順を再教育しました」——これもNGになりがちです。教育で知識は増えても、忙しさや疲れでミスをする状況そのものは変わりません。教育が必要な場面もありますが、それ「だけ」では原因が残るため、根本的な再発防止にはならないのです。
この3つに共通するのは、すべて「人の頑張り」に頼っている点です。注意・確認・教育は、どれも「人がちゃんとやること」を前提にしています。でも人は必ずミスをする。だから「人が間違えても不良にならない仕組み」に変えるのが、本物の再発防止なのです。
「そもそも部品を逆に付けられない形状にする」「間違えるとブザーが鳴る」「作業標準書を実態に合わせて直す」など、仕組み・設備・標準を変える対策です。人ではなく、モノや仕組みを変える。これが合格ラインです。
なぜ「人に注意」で終わってしまうのか、その構造と抜け出し方は、なぜなぜ分析が「人のせい」で終わる理由と対策でくわしく解説しています。再発防止策を書く前に読んでおくと、NGを避けられます。

未然防止の代表手法|FMEA・DR・変化点管理
再発防止では「なぜなぜ分析」で原因を追究しますが、未然防止では「まだ起きていないリスクを予測する手法」を使います。代表的なものを3つ紹介します。
| 手法 | どんな手法か |
|---|---|
| FMEA (エフエムイーエー) |
「どこがどう壊れそうか」を事前に洗い出し、危険なところから先に手を打つ手法 |
| DR (デザインレビュー) |
設計の段階で複数の目でチェックし、問題を作り込む前につぶす会議 |
| 変化点管理 (へんかてんかんり) |
材料・人・設備などが「変わったとき」に注意し、変化から生まれる不良を防ぐ |
これらに共通するのは、「まだ問題が起きる前に、あらかじめ危険を探しにいく」という姿勢です。過去の失敗を待つのではなく、未来のリスクを先回りする。だからこそ、未然防止は難しいけれど効果が大きいのです。
まずは再発防止(起きた問題をきちんと潰す)ができるようになる。そのうえで、未然防止(先回りで防ぐ)にステップアップする。この順番が現実的です。いきなり未然防止を完璧にやろうとすると、リスク予測に慣れておらず空回りしがちです。
未然防止の代表選手であるFMEAの具体的な作り方は、FMEAとは?工程FMEAの作り方でくわしく解説しています。「先回りで防ぐ」を実務に落とし込みたい方は、あわせて読んでみてください。

よくある質問(FAQ)
まとめ|「人ではなく、仕組みを変える」が合言葉
- 再発防止=起きた問題を二度と起こさない(起きた後の対応)
- 未然防止=まだ起きていない問題を先回りで防ぐ(起きる前の対応)
- ISO用語では、再発防止=是正処置、未然防止=予防処置
- 応急処置(暫定)は一時しのぎ。恒久対策(再発防止)とは別物
- 「注意した・ダブルチェック・教育した」は突き返される3大NG
- 本物の対策は「人ではなく、仕組み・設備・標準を変える」こと
「再発防止策を書いといて」と言われて手が止まったとき、思い出してほしい合言葉があります。「人ではなく、仕組みを変える」。注意や確認を増やすのではなく、そもそも間違えようがない状態をつくる。この視点で書けば、突き返されない再発防止策になります。そして再発防止に慣れてきたら、次は未然防止(先回り)へ。一歩ずつ、確実に品質の力を高めていきましょう。

自動車部品メーカーで電気設計・品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。
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