統計学基礎

第8回:期待値 - 確率分布の中心を知る

こんにちは、シラスです。

「宝くじは買うべきか?」「保険には入るべきか?」「このプロジェクトに投資すべきか?」
私たちは日々、結果がわからない選択を迫られます。

そんな時、感情や勘ではなく、数学的な根拠を与えてくれるのが「期待値(きたいち)」です。

🎯 期待値の一言定義

「それを繰り返した時に、平均していくら貰えるか?」

確率の重みを考慮した「予想される平均スコア」のことです。

1. 期待値の計算方法(基本)

計算はとても単純です。
「結果の値 × その確率」をすべて計算して、最後に足し合わせるだけです。

例:シンプルなルーレットゲーム

  • 🔴 赤(確率 1/2):賞金 200円
  • 🔵 青(確率 1/3):賞金 150円
  • 🟡 黄(確率 1/6):賞金 600円

計算式:

(200 × 1/2) + (150 × 1/3) + (600 × 1/6)
= 100 + 50 + 100
= 250円

解釈 このゲームの参加費が200円なら「やるべき(得する)」、300円なら「やめるべき(損する)」と判断できます。

2. 残酷な真実:宝くじの期待値

では、みんな大好きな「宝くじ」を計算してみましょう。
(※計算を簡単にするための概算モデルです)

等級 当選金額 確率(イメージ) 期待値への寄与
1等 6億円 約 1/600万 約 98円
2等〜5等 各種 - 約 58円
ハズレ 0円 ほぼ全て 0円
合計期待値 約 156円
💸 結論:半分は手数料

1枚300円の宝くじを買った瞬間、その価値は数学的に「約150円」になります。
残りの150円は「夢を見る手数料(と運営費)」です。投資としては絶対に割に合いません。

3. ビジネスでの活用:投資判断

期待値が本当に輝くのはビジネスの現場です。
例えば、2つの投資プランで迷っているとします。

プランA(安定型)
  • 好況 (30%):+8%利益
  • 普通 (50%):+5%利益
  • 不況 (20%):+2%利益
期待値 = +5.3%
プランB(ハイリスク型)
  • 大成功 (10%):+30%利益
  • 成功 (40%):+10%利益
  • 失敗 (50%):マイナス損失
期待値 = +1.5%

一見、プランBの「+30%」は魅力的ですが、期待値を計算するとプランAの方が優秀(5.3% vs 1.5%)だと分かります。
このように、期待値は「ハイリスク・ハイリターン」の誘惑に惑わされず、冷静な判断を下す基準になります。

4. 便利な性質「線形性」

少し専門的になりますが、期待値には最強の性質があります。
「和の期待値は、期待値の和」というルールです。

E(X + Y) = E(X) + E(Y)

「サイコロ2個の合計の平均」を知りたければ、「サイコロ1個の平均(3.5)」を2回足せばいいだけ(3.5 + 3.5 = 7)。
わざわざ全ての組み合わせを表にする必要はありません。これ、計算を短縮する時にめちゃくちゃ使います。

まとめ

期待値:不確実な未来の「平均的な結果」を数値化したもの。
計算式:すべての「結果 × 確率」を足し合わせる。
判断基準:期待値がコスト(参加費)を上回るなら「GO」、下回るなら「NO」。
注意点:期待値はあくまで「平均」です。実際にはバラツキ(リスク)があります。

例えば、期待値がプラスでも「失敗したら会社が倒産する(-100億円)」ようなギャンブルは避けるべきです。
この「期待値だけで判断してはいけないリスク」を扱うのが、次回学ぶ「分散(ぶんさん)」です。

次は、複数のリスクを組み合わせた時にどうなるか?
「卵を一つのカゴに盛るな(分散投資)」の数学的意味を解説します!

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