統計学基礎

確率変数の和・差の期待値と分散|「独立でない場合」の共分散・相関係数を完全マスター

※本記事にはプロモーション(広告)が含まれています。

こんな悩みはありませんか?
  • E(X+Y) と V(X+Y) の公式がごちゃごちゃになる
  • 「独立」と「独立でない」で公式が変わるのが混乱する
  • 共分散と相関係数の関係がわからない
  • QC検定の「和・差の分散」の問題が解けない
○ この記事でわかること
  • 期待値・分散の公式を図解で完全理解
  • 「独立」と「独立でない」の違いを水槽のたとえで直感的に
  • 共分散・相関係数の関係を1枚の図で整理
  • 実際の計算例で手を動かしてマスター

この記事の全体像|何を学ぶのか?

確率変数の「和や差」を扱う問題では、以下の3つの知識が必要です。

テーマ ポイント 難易度
① 期待値の計算 単純に足し引きするだけ(独立関係なし)
② 分散の計算 独立なら足す、独立でないなら共分散を加える
③ 共分散と相関係数 「連動の度合い」を測る指標

この記事では、図解を中心にこれらの概念を順番に解説していきます。

① 期待値の計算|独立かどうかは関係ない!

期待値(平均)の計算は、実はとてもシンプルです。

期待値の線形性|足し算・引き算はそのまま

期待値の公式

E(X + Y) = E(X) + E(Y)
E(X − Y) = E(X) − E(Y)
E(aX + bY) = aE(X) + bE(Y)

※ a, b は定数。独立かどうかに関係なく成り立つ!

コインの袋でイメージ
袋Xには平均100円、袋Yには平均50円のコインが入っているとします。
両方の袋を合わせたら? → 平均は 100 + 50 = 150円

「袋同士が関係あるかどうか」は、平均の計算には影響しません。
これが期待値の線形性です。
関連記事
第8回:期待値 - 確率分布の中心を知る →

② 分散の計算|「独立かどうか」で公式が変わる!

分散の計算は、期待値と違って「独立かどうか」が重要になります。

ケース①:XとYが独立の場合

2つの確率変数が独立(互いに影響しない)なら、分散は単純に足すだけです。

独立な場合の分散

V(X + Y) = V(X) + V(Y)
V(X − Y) = V(X) + V(Y)

引き算でも分散は「足す」!(バラつきは打ち消し合わない)

水槽でイメージ(独立の場合)
2つの水槽が完全に別々に置かれていると想像してください。
それぞれの水槽の波(バラつき)は、互いに影響しません。

2つを合わせたときの「総合的な波の大きさ」は、単純に足し算になります。

ケース②:XとYが独立でない場合(ここが重要!)

2つの確率変数が独立でない(互いに影響する)場合、共分散という「連動の度合い」を加える必要があります。

独立でない場合の分散

V(X + Y) = V(X) + V(Y) + 2Cov(X, Y)
V(X − Y) = V(X) + V(Y) − 2Cov(X, Y)

※ Cov(X, Y) は共分散。正なら波が同調、負なら波が逆位相。

水槽でイメージ(独立でない場合)
2つの水槽がパイプでつながっていると想像してください。
片方の波が起きると、もう片方にも影響します(連動する)。

この「連動分」が共分散です。
・同じ方向に波立つ(正の共分散)→ 合計のバラつきは大きくなる
・逆方向に波立つ(負の共分散)→ 合計のバラつきは小さくなる
なぜ「2倍」するのか?
V(X+Y) を展開すると、共分散の項が2回出てくるからです。

V(X+Y) = E[(X+Y-μx-μy)²]
= E[(X-μx)² + 2(X-μx)(Y-μy) + (Y-μy)²]
= V(X) + 2Cov(X,Y) + V(Y)

③ 共分散とは?|「一緒に動く度合い」を測る

共分散は、2つの変数が一緒に動く傾向を数値化したものです。

共分散の定義と直感的な意味

共分散の定義

Cov(X, Y) = E[(X − μX)(Y − μY)]
= E(XY) − E(X)E(Y)
共分散の値 意味 イメージ
Cov > 0 正の関係 Xが増えるとYも増える傾向
Cov < 0 負の関係 Xが増えるとYは減る傾向
Cov = 0 無相関 XとYは連動しない(独立の可能性)
重要な注意点
独立ならば Cov(X,Y) = 0 です。
しかし逆は成り立ちません! Cov(X,Y) = 0 でも独立とは限らないのです。
(非線形な関係がある場合など)
確率とは?意味と求め方・計算ルールをサイコロで図解|計算ツール付き
あわせて読みたい
確率とは?意味と求め方・計算ルールをサイコロで図解|計算ツール付き

確率とは?小学生でもわかる「3つの意味」と計算の超入門

④ 相関係数とは?|共分散を「比較可能」にする

共分散には1つ大きな問題があります。それは「単位がある」こと。値の大きさだけで「強い関係」とは言えません。

そこで、共分散を標準偏差で割って正規化したものが相関係数です。

相関係数の定義

相関係数(母相関係数)

ρ =
Cov(X, Y)
σX × σY

範囲:−1 ≤ ρ ≤ 1

共分散と相関係数の関係(公式変形)

相関係数の式を変形すると、共分散は以下のように表せます。

共分散を相関係数で表す(重要!)

Cov(X, Y) = ρ × σX × σY

問題では「相関係数ρ」が与えられることが多いので、この変換が超重要!

これがQC検定の頻出パターン!
問題文で「相関係数ρ = 0.6」のように与えられたら、
Cov(X,Y) = ρ × σX × σY で共分散を求めて、
それを V(X+Y) = V(X) + V(Y) + 2Cov(X,Y) に代入します。

公式の全体まとめ|これだけ覚えればOK!

期待値の公式(独立・非独立 共通)

E(X + Y) = E(X) + E(Y)
E(X − Y) = E(X) − E(Y)
E(aX + bY) = aE(X) + bE(Y)
E(aX) = aE(X)

分散の公式(独立の場合)

V(X + Y) = V(X) + V(Y)
V(X − Y) = V(X) + V(Y)
V(aX) = a²V(X)
V(aX + bY) = a²V(X) + b²V(Y)

分散の公式(独立でない場合)

V(X + Y) = V(X) + V(Y) + 2Cov(X,Y)
V(X − Y) = V(X) + V(Y) − 2Cov(X,Y)
V(aX + bY) = a²V(X) + b²V(Y) + 2abCov(X,Y)

※ Cov(X,Y) = ρ × σX × σY で計算

共分散・相関係数の公式

Cov(X, Y) = E(XY) − E(X)E(Y)
Cov(X, Y) = ρ × σX × σY
ρ(相関係数) = Cov(X,Y) ÷ (σX × σY)
Cov(aX, bY) = ab × Cov(X, Y)

【実践】計算例で手を動かそう

例題:2つの商品の合計利益

ある会社が商品Aと商品Bを販売しています。それぞれの利益は以下の確率分布に従います。

商品 期待値 E 分散 V 標準偏差 σ
商品A (X) 100万円 400 20
商品B (Y) 80万円 225 15

2つの商品の利益には相関係数 ρ = 0.6 の関係があります(景気が良いと両方売れるなど)。

問:合計利益 X + Y の期待値と分散を求めよ。

Step 1:期待値を求める

E(X + Y) = E(X) + E(Y)
= 100 + 80
= 180万円

期待値は単純に足すだけなので、相関係数は使いません。

Step 2:共分散を求める

Cov(X, Y) = ρ × σX × σY
= 0.6 × 20 × 15
= 180

Step 3:分散を求める

V(X + Y) = V(X) + V(Y) + 2Cov(X, Y)
= 400 + 225 + 2 × 180
= 400 + 225 + 360
= 985

○ 答え
E(X + Y) = 180万円
V(X + Y) = 985(標準偏差 ≒ 31.4万円)
もし独立だったら?
V(X + Y) = 400 + 225 = 625

正の相関があると、分散は 625 → 985 と大きくなります。
「景気が良いと両方売れる」ので、リスク(バラつき)も連動して大きくなるのです。

よくある間違いパターン

× 間違い 正しい
V(X−Y) = V(X) − V(Y) V(X−Y) = V(X) + V(Y)
分散は引き算でも足す!
V(2X) = 2V(X) V(2X) = 4V(X)
定数は2乗される!
独立でないのに共分散を忘れる +2Cov(X,Y) を忘れずに!
問題文の「相関係数」に注目
σ(標準偏差)をそのまま足す 分散に変換してから足す!
σ² = V の関係を使う

まとめ|この記事のポイント

覚えるべき3つのポイント
  1. 期待値:独立かどうか関係なく、そのまま足し引き
  2. 分散(独立):引き算でも分散は「足す」
  3. 分散(独立でない):+2Cov(X,Y) を加える
この記事の理解を深める本と道具
おすすめの本

「確率変数の和・差の期待値と分散」の土台になる統計学を、本でじっくり学び直したいときに向いています。統計学を独学で学べるように書かれた入門書です(ダイヤモンド社、小島寛之 著)。

¥2,420 (2025/11/23 09:57時点 | Amazon調べ)
おすすめの本

「確率変数の和・差の期待値と分散」の土台になる統計学を、教科書で体系立てて学びたいときに向いています。東京大学教養学部統計学教室が編集した、統計学の定番の教科書です。データのまとめ方から確率分布までを、実際の例と図表で解説しています。

¥3,080 (2026/02/23 16:30時点 | Amazon調べ)
おすすめの本

「確率変数の和・差の期待値と分散」の土台になる統計学を、検定まで含めて1冊で学びたいときに向いています。検定から多変量解析・実験計画法・ベイズ統計学までを扱う、統計学の入門書です(オーム社、栗原伸一 著、第2版)。

S
シラス
電験三種 / QC検定1級 / パワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで電気設計と品質保証に携わってきた経験をもとに執筆しています。むずかしい専門用語をできるだけ使わず、はじめて学ぶ人がつまずかないように、図とたとえで説明することを大切にしています。

次に読むべき記事

この記事の内容がわかったら、確率と確率変数の次のテーマに進みましょう。続けて読むと、現場でそのまま使える知識になります。

統計学の勉強ロードマップ|初心者が「データ分析」を武器にするまでの全手順
まずはここから
統計学の勉強ロードマップ|初心者が「データ分析」を武器にするまでの全手順

統計学の勉強ロードマップ。

記事を読む →
この記事の続きはこちら

テーマ別に、もっと深く学ぶ

気になるところから読んでも大丈夫です。どの記事も、はじめて学ぶ人向けにやさしく書いています。

つまずきやすい「違い」を一気に解決
計算力アップ・資格対策

タグ

-統計学基礎
-