こんにちは、シラスです。
統計的検定や品質管理(QC)を勉強していて、誰もが一度はパニックになる用語があります。
- 第1種の過誤(α)
- 第2種の過誤(β)
「どっちがどっちだっけ?」 「生産者危険と消費者危険、名前が逆のような気がする…」
試験直前になっても、この定義がごちゃごちゃになっている人は意外と多いです。 でも、丸暗記する必要はありません。この2つは、「失敗した人間の性格」で覚えると、二度と間違えなくなります。
今日は、統計学に登場する2人の困ったちゃん、「あわてんぼう」と「ぼんやり者」の話をしましょう。
目次
1. 結論:失敗のタイプの違い
まず、定義をスッキリ整理します。検定で「間違った判断」をしてしまうパターンは、この2つしかありません。
「本当は差がないのに、差がある!と騒いでしまうミス」
帰無仮説が真なのに、棄却してしまうこと。
「本当は差があるのに、それに気づかず見逃すミス」
対立仮説が真なのに、帰無仮説を受容してしまうこと。
2. 第1種の過誤:あわてんぼうの「オオカミ少年」
第1種の過誤(Type I error)は、「早とちり」のミスです。
- 状況: 実は何も起きていない(無罪・良品)。
- ミス: 「大変だ!異常発生だ!(有罪・不良品)」と判定してしまう。
なぜ「生産者危険」と呼ばれるのか?
工場の検査員を想像してください。 ベルトコンベアから流れてきた製品は、実は「良品」でした。 しかし、検査員が「あわてんぼう」だったので、ちょっとしたノイズに反応して「これ不良品だ!廃棄しろ!」と判定してしまいました。
- 誰が損をした?
- せっかく作った良品を捨ててしまった「生産者(工場)」がコスト面で損をします。
- お客さんの手元には何も届いていないので、お客さんは無傷です。
だから、第1種の過誤は「生産者危険(Producer's Risk)」と呼ばれます。
3. 第2種の過誤:ぼんやり者の「見逃し三振」
第2種の過誤(Type II error)は、「鈍感」なミスです。
- 状況: 実は異常が起きている(有罪・不良品)。
- ミス: 「うん、特に問題ないね(無罪・良品)」とスルーしてしまう。
なぜ「消費者危険」と呼ばれるのか?
今度は、流れてきた製品が「不良品」でした。 しかし、検査員が「ぼんやり者」だったので、欠陥に気づかず「ヨシ!合格!」と出荷してしまいました。
- 誰が損をした?
- 不良品を掴まされた「消費者(お客さん)」が損をします(クレーム、事故)。
- 生産者は出荷できてラッキー……と思いきや、後で信用を失います。
だから、第2種の過誤は「消費者危険(Consumer's Risk)」と呼ばれます。
4. 実務ではどっちを重視すべきか?
ここがエンジニアとして一番重要なポイントです。 「あわてんぼう(過剰反応)」と「ぼんやり者(見逃し)」、どちらが罪深いのでしょうか?
実はこの2つ、トレードオフ(シーソー)の関係にあります。 「絶対に不良品を出さないぞ!(第2種を減らす)」と基準を厳しくすると、今度は微妙な良品まで「不良だ!」と捨てることになり、第1種が増えてしまうからです。
実務での判断基準は以下の通りです。
→ 第2種の過誤(消費者危険)を絶対に避ける!
例:ブレーキの検査、ガンの診断、火災報知器。
多少良品を捨てるコスト(第1種)がかかっても、不良品の流出(第2種)だけは阻止します。「疑わしきは罰する」姿勢です。
→ 第1種の過誤(生産者危険)を避ける
例:1個100万円する高価な部品や、検査すると壊れてしまう製品。
「あわてて良品を捨てる」のが一番痛いので、確実にクロだと分かるまでは捨てません。
まとめ:性格で覚えよう
最後に覚え方のおさらいです。
- 第1種(α)= あわてんぼう
- 「火事だ!(実は火事じゃない)」と騒ぐオオカミ少年。
- 生産者が無駄な動きをして疲れる(生産者危険)。
- 第2種(β)= ぼんやり者
- 「火事じゃないよ(実は燃えてる)」と見逃す。
- 火事が広がって住民が被害に遭う(消費者危険)。
一般的に、品質管理(QC)の世界では、お客様に迷惑をかける「第2種の過誤(ぼんやり見逃し)」の方が罪が重いとされます。
迷ったら、「自分がお客さんだったら、どっちの検査員に検品してほしいか?」を想像してみてください。きっと、「あわてんぼう(厳しすぎる人)」の方が、まだマシだと思うはずです。