検定・推定

バートレットの検定とは?|「オーケストラの音量」で理解する等分散性の最終判定

バートレットの検定とは何か。「オーケストラの音量」で理解する等分散性の最終判定

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この記事でわかること

  • バートレットの検定が「何のための検定か」がイメージでわかる
  • コクラン・ハートレーとの違いがスッキリ理解できる
  • 計算式の意味を「オーケストラの音量」で直感的に理解できる
  • χ²(カイ二乗)分布を使った判定方法がわかる

前回・前々回で、「コクランの検定」と「ハートレーの検定」を学びましたね。

コクランは「最大のバラつきが全体の何%か」を調べる検定。
ハートレーは「最大と最小の比(何倍か)」を調べる検定でした。

でも、こんな疑問を持った方もいるのではないでしょうか?

「最大だけ」や「両端だけ」を見るのって、本当に十分なの?
全部のグループを総合的に判定する方法はないの?

その答えが、今回紹介する「バートレットの検定(Bartlett's test)」です。

結論から言うと

バートレットの検定は、
「3群以上のバラつきが、全体的に揃っているか?」
を総合的に判定する検定です。

いわば、「オーケストラ全体のハーモニー」をチェックする検定です。

分散の等質性をオーケストラにたとえた図。指揮者が弦楽器・木管楽器・管楽器の音量の全体のバランスを見るように、各群の分散のバランスを見る
分散の等質性は全体のバランスを見ること

バートレットの検定のイメージ|「オーケストラ」で考える

バートレットの検定を理解するために、「オーケストラの音量バランス」を想像してみましょう。

3つのパートの「音量のバラつき」

オーケストラには、弦楽器・管楽器・打楽器のパートがあります。
それぞれのパート内で、「演奏者ごとの音量のバラつき」を見てみましょう。

弦楽器

分散: 10

バラつき:小

管楽器

分散: 15

バラつき:中

打楽器

分散: 20

バラつき:大

3つの検定、それぞれ何を見る?

同じデータでも、コクラン・ハートレー・バートレットは見ているポイントが違います。

コクランの検定の視点

「打楽器だけ全体の何%を占めてる?」
→ 20 / (10+15+20) = 44%(3群なら33%が理想)
※「1人だけ取りすぎ」を見つける検定

ハートレーの検定の視点

「打楽器は弦楽器の何倍バラついてる?」
→ 20 / 10 = 2倍
※「両端の差」を見る検定

バートレットの検定の視点

「全パートの音量バランス、全体的に揃ってる?」
→ 全体を総合的に評価して判定
※「オーケストラ全体のハーモニー」を見る検定

比較表で整理しよう

コクラン この記事の「2つの群ならF検定」の節 バートレット
計算式 Vmax / ΣVi
(最大÷合計)
Vmax / Vmin
(最大÷最小)
χ²統計量
(全体を総合評価)
見ているもの 割合
「全体の何%?」
倍率
「何倍違う?」
全体のズレ
「揃っている度合い」
イメージ ケーキの取り分
「1人だけ取りすぎ?」
身長比べ
「一番と最下位の差は?」
オーケストラ
「全体のハーモニーは?」
判定に使う分布 専用の臨界値表 専用の臨界値表 χ²分布
正規性への敏感さ 普通 普通 非常に敏感

バートレットの特徴

バートレットは「最大だけ」「両端だけ」ではなく、全体を見る検定です。
そのため、より精密な判定ができます。
ただし、正規性(データが正規分布に従うこと)に非常に敏感という弱点があります。

分散の等質性検定の3つの方法の図。コクランは突出した分散を探す、ハートレーは最大と最小の両端を比較する、バートレットは全体を判定する
コクラン・ハートレー・バートレットの検定の違い

バートレットの検定の計算式|「全体のズレ」を測る

計算式は少し複雑に見えますが、「何をやっているか」のイメージを掴めば怖くありません。

バートレットの統計量 χ²

公式(直感的な形)

χ² = (各群の分散が「プール分散」からどれだけズレているか)
÷ 補正係数

ここで重要なのは「プール分散(pooled variance)」という考え方です。

「プール分散」を直感的に理解する

プール分散とは、「全群の分散を合体させた、代表的なバラつき」のことです。

「プール」の例え

3つの小さなプール(A・B・C)に、それぞれ異なる温度の水が入っています。
これを1つの大きなプールに合体させると、全体の水温はどうなるでしょう?

プールA

24°C

+

プールB

26°C

+

プールC

28°C

→

合体プール

約26°C

→ この「約26°C」がプール水温(代表値)です。
分散でも同じように、「全群を合体させた代表的なバラつき」を計算します。

バートレットが見ているのは「ズレの合計」

バートレットの検定は、こう考えています。

オーケストラに戻ると…

「全パートの平均的な音量(プール分散)」を基準にして、
「各パートがその基準からどれだけズレているか」を計算。
そのズレを全部足し合わせて、全体のズレ度合いを測ります。

弦楽器のズレ

小さい

+

管楽器のズレ

小さい

+

打楽器のズレ

小さい

=

全体のズレ

小さい
→ 等分散!

全体のズレが小さい → 各パートの音量がだいたい揃っている → 等分散
全体のズレが大きい → どこかのパートが突出している → 等分散でない

計算の流れ(手順)

実際の計算手順を、ステップごとに見ていきましょう。

1

各群の分散を計算する

グループごとに「バラつき(分散)」を計算します。
例:V₁ = 10, V₂ = 15, V₃ = 20

2

プール分散を計算する

各群の分散を「データ数で重み付け」して合体させます。
大きなグループの分散ほど、影響力が大きくなります。

3

χ²統計量を計算する

「各群の分散」と「プール分散」のズレを、対数を使って計算。
さらに補正係数で調整します(詳細は後述)。

4

χ²分布で判定する

計算したχ²値を、χ²分布の臨界値と比較します。
自由度は「群の数 - 1」です。

計算は複雑なので…

実務ではExcelでの手計算は大変です。
RやPython、統計ソフト(EZR、SPSS、JMPなど)を使うのが現実的です。
QC検定では「計算式の意味」と「判定方法」が問われることが多いので、
「何を見ているか」のイメージをしっかり掴んでおきましょう!

プール分散(合同分散)の図。24℃・26℃・28℃の3つの池を合わせると約26℃になるように、各群の分散を重み付け平均した値
プール分散は各群の分散の重み付け平均

具体例で計算してみよう

実際のデータを使って、バートレットの検定を体験してみましょう。

ケーススタディ:3台の機械の精度比較

データ

3台の機械(A・B・C)で製品を各6回ずつ作り、寸法のバラつき(分散)を計算した。

機械 データ数 n 分散 V 自由度 (n-1)
A 6 4.0 5
B 6 6.0 5
C 6 8.0 5
合計 18 - 15

Step 1:プール分散を計算

計算

プール分散 Sp² = Σ(ni-1)Vi / Σ(ni-1)
= (5×4.0 + 5×6.0 + 5×8.0) / 15
= (20 + 30 + 40) / 15
= 6.0

→ 3台の機械を「合体」させた代表的なバラつきは6.0

Step 2:χ²統計量を計算

計算(簡略版)

詳細な公式は複雑ですが、「やっていること」は以下の通りです。

① 「全体の自由度 × ln(プール分散)」を計算
② 「各群の自由度 × ln(各群の分散)」の合計を計算
③ ①から②を引く
④ 補正係数で割る

このデータの場合、計算すると…
χ² ≈ 1.37

Step 3:判定|χ²分布の臨界値と比較

χ² ≤ 臨界値

等分散とみなせる

(帰無仮説を棄却しない)
→ 分散分析に進んでOK!

χ² > 臨界値

等分散でない

(帰無仮説を棄却)
→ 対策が必要!

条件の確認

χ² = 1.37 ≤ 臨界値 5.991

○ 判定結果:等分散とみなせる

→ 分散分析(ANOVA)に進んでOK!

解釈

「3台の機械のバラつき(4.0, 6.0, 8.0)は多少違うけれど、
統計的には『誤差の範囲内』と判断できます。
オーケストラで言えば、全パートの音量は揃っていると言えます」

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計算値1.37<臨界値5.991で等分散OK

バートレットの検定の注意点|「正規性」に要注意!

バートレットの検定には、重要な弱点があります。

正規性に非常に敏感

バートレット最大の弱点

バートレットの検定は、「データが正規分布に従っている」ことを前提にしています。

もしデータが正規分布でない場合、
「等分散なのに『等分散でない』と誤判定してしまう」
という問題が起こりやすくなります。

統計学の用語で言うと、「第1種の過誤(あわてんぼうのミス)」が起こりやすい検定です。

正規性が怪しい時はどうする?

データが正規分布に従っているか怪しい場合は、「ルビーン検定(Levene's test)」を使いましょう。

バートレット検定 ルビーン検定
正規性への敏感さ 非常に敏感
(正規分布が前提)
頑健(ロバスト)
(非正規でもOK)
精度 高い
(正規なら最強)
普通
(汎用性重視)
おすすめの場面 正規性が確認済み
QC検定の問題
実務での汎用的な使用
正規性が不明な場合

実務でのアドバイス

「正規性が明らかに成り立つ」場合 → バートレット検定(精度が高い)
「正規性がよくわからない」場合 → ルビーン検定(安全策)

QC検定ではバートレット検定が出題されることが多いので、
計算方法と判定方法をしっかり覚えておきましょう!

2つの群ならF検定|分散の「比」で等分散かを調べる

比べる群が2つだけのときは、バートレットの検定ではなくF検定(等分散の検定)を使うのが基本です。2つの分散の「差」ではなく「比」を見るのがポイントで、等分散なら比は1に近くなります。

F₀ = V₁ ÷ V₂(大きいほうの不偏分散を分子に) 自由度 φ₁=n₁−1、φ₂=n₂−1
両側検定(「どちらかが大きい」かを問わない)では、F表の上側 α/2 の値と比べ、F₀ がそれ以上なら「等分散ではない」と判定します。

計算例:A機とB機から10個ずつ測り、不偏分散が V_A=0.0040、V_B=0.0016 だったとします。F₀=0.0040÷0.0016=2.5。自由度は (9, 9) で、F表の上側2.5%点は 4.03 です。2.5 < 4.03 なので、「A機のほうがばらつきが大きい」とは言えません。

比べたいもの使う検定
1つの母分散が基準値と違うかカイ二乗検定(χ²=S÷σ₀²)
2つの母分散が等しいかF検定
3つ以上の母分散が等しいかバートレットの検定(この記事)、ハートレーの検定など

F検定で「等分散ではない」となったら、2つの平均の比較はプールした分散を使うt検定ではなく、ウェルチのt検定に切り替えます。

F検定やバートレットの検定で比べるFの値・χ²の値は、自由度ごとの数値表を早見表にまとめています。

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3つの検定、どう使い分ける?

最後に、コクラン・ハートレー・バートレットの使い分けを整理しましょう。

こんな時は… 使う検定
「1つだけ突出」していないか調べたい コクランの検定
「両端の差(倍率)」を調べたい
計算を簡単に済ませたい
この記事の「2つの群ならF検定」の節
「全体的に揃っているか」を厳密に調べたい
正規性が確認済み
バートレットの検定
正規性がよくわからない
とりあえず安全策で
ルビーン検定
2群の比較 F検定

まとめ|バートレットは「全体のハーモニー」を見る

この記事のまとめ

① バートレットの検定の目的

3群以上のバラつきが「全体的に揃っているか」を総合判定
→ オーケストラ全体のハーモニーをチェックする検定

② 計算式の意味

「プール分散(全体の代表値)」と「各群の分散」のズレを測定
→ ズレが小さければ等分散、大きければ等分散でない

③ 判定方法

χ² ≤ 臨界値 → 等分散とみなせる(分散分析OK)
χ² > 臨界値 → 等分散でない(対策が必要)

④ コクラン・ハートレーとの違い

コクラン:最大だけに注目(突出を探す)
ハートレー:両端だけに注目(倍率を見る)
バートレット:全体を総合的に評価

⑤ 注意点

正規性に非常に敏感なので、
正規性が怪しい場合はルビーン検定を使う

覚え方のコツ

バートレット = 「バート」レットは「全パート」を見る

「最大だけ」「両端だけ」ではなく、
全パート(全群)のバランスを総合判定する検定です。

次に学ぶべきこと

コクラン・ハートレー・バートレットで「等分散性OK」と確認できたら、いよいよ分散分析(ANOVA)に進みましょう!

分散分析では、「3群以上の平均に差があるか?」を判定します。

ここまで読んでくださった方へ

「バートレットの検定」、
「全体のハーモニーを見る」というイメージで覚えられましたね!

コクラン・ハートレー・バートレット、
3つの等分散性検定をマスターしました。

分散分析の「前座」として、
しっかり使いこなせるようになりましょう!

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