実験計画法

【完全保存版】L4直交表の分散分析|データから最適条件を導く全手順

💡 こんな悩みはありませんか?

✅「L4直交表で実験したけど、そのあとどうすればいいの?」

✅「分散分析って必要なの?何のためにやるの?」

✅「最適条件ってどうやって導き出すの?」

✅「計算式は見たけど、なぜそうするのかがわからない…」

🎯 この記事を読むとわかること

✔ L4直交表のデータから「最適条件」を導く全手順

✔ なぜその計算が必要なのか?を直感的に理解できる

✔ 分散分析表の作り方を1ステップずつ丁寧に学べる

✔ どの因子が「本当に効いている」かを判定する方法

✔ 最適条件での性能を予測する方法

🌟 はじめに:L4直交表の実験が終わったら、次は何をする?

L4直交表を使って実験を終えたあなた。手元には4回分の実験データがあります。

【あなたの状況】

📊 L4直交表で4回の実験を実施

📈 3つの因子(A・B・C)を調べた

疑問:「このデータから、どの因子が効いてる?最適な条件は?」

実は、実験データをそのまま眺めるだけでは、正しい答えは見つかりません。

❌ よくある間違い

「実験No.3の結果が一番良かったから、No.3の条件が最適!」

これは間違いです!

なぜなら、その結果は「偶然」かもしれないからです。

そこで必要になるのが、分散分析です。

この記事では、L4直交表のデータから「統計的に正しい最適条件」を導く全手順を、初心者にもわかるように1ステップずつ解説します!

📋 今回使う実験データ

実験の背景

🧪 実験の目的

製品の「引張強度」を高めたい!

調べる因子(3つ):

🅰️ 因子A:成形温度(A1=低温、A2=高温)

🅱️ 因子B:成形圧力(B1=低圧、B2=高圧)

©️ 因子C:冷却時間(C1=短時間、C2=長時間)

L4直交表への割り付けと実験結果

実験No. 列1
因子A
(温度)
列2
因子B
(圧力)
列3
因子C
(冷却)
結果
引張強度
(kg/cm²)
1 1(低温) 1(低圧) 1(短時間) 45
2 1(低温) 2(高圧) 2(長時間) 52
3 2(高温) 1(低圧) 2(長時間) 50
4 2(高温) 2(高圧) 1(短時間) 49

👉 L4直交表の基本については「L4直交表・L8直交表の使い方」で学べます。

💡 分散分析の全体像:なぜ必要なのか?

分散分析って何?

分散分析(ANOVA)とは、「データのばらつき」を分解して、「どの因子が本当に効いているか」を統計的に判定する方法です。

🎯 分散分析の目的

目的1:どの因子が「本当に効いている」かを見極める

目的2:「偶然」と「本物の効果」を区別する

目的3:最適条件での性能を予測する

なぜ「ばらつき」を分解するの?

実験データには、必ず「ばらつき」があります。このばらつきには2種類あります。

📊 データのばらつき = ❶本物の効果 + ❷偶然の誤差

❶ 本物の効果:

因子A(温度)を変えたから強度が変わった(意味のある変化)

❷ 偶然の誤差:

測定のブレ、材料のバラツキなど(意味のない変化)

分散分析は、この2つを数学的に分離して、「本物の効果」だけを取り出す技術なのです!

分散分析の流れ(全体像)

📐 分散分析の5ステップ

STEP 1:要因効果図を描く(視覚的に理解)

STEP 2:平方和を計算する(ばらつきの量を数値化)

STEP 3:分散分析表を作る(効果を整理)

STEP 4:F検定で判定する(効果の有無を統計的に判断)

STEP 5:最適条件を決定する(性能を予測)

それでは、1ステップずつ丁寧に見ていきましょう!

📈 【STEP 1】要因効果図を描く

要因効果図って何?

要因効果図とは、各因子の水準ごとの平均値をグラフで表したものです。視覚的に「どの因子が効いているか」を把握できます。

💡 なぜ要因効果図を描くのか?

✅ 計算前に「感覚」をつかむため

✅ どの因子の傾きが大きいか(効果が強いか)を視覚化

✅ グラフが平らな因子は「効果が弱い」とすぐわかる

水準別平均を計算する

まず、各因子の水準1と水準2の平均値を計算します。

📊 因子Aの水準別平均

A1(低温):実験No.1とNo.2 → (45 + 52) / 2 = 48.5

A2(高温):実験No.3とNo.4 → (50 + 49) / 2 = 49.5

📊 因子Bの水準別平均

B1(低圧):実験No.1とNo.3 → (45 + 50) / 2 = 47.5

B2(高圧):実験No.2とNo.4 → (52 + 49) / 2 = 50.5

📊 因子Cの水準別平均

C1(短時間):実験No.1とNo.4 → (45 + 49) / 2 = 47.0

C2(長時間):実験No.2とNo.3 → (52 + 50) / 2 = 51.0

要因効果図の解釈

📈 要因効果図から読み取れること

因子A(温度):48.5 → 49.5(差:1.0)

→ 傾きが緩やか。効果は小さい。

因子B(圧力):47.5 → 50.5(差:3.0)

→ 傾きがやや大きい。効果あり。

因子C(冷却):47.0 → 51.0(差:4.0)

傾きが最も大きい。効果が強い!

要因効果図から、「因子C(冷却時間)が最も効果が大きそう」という感覚がつかめました。

でも、これだけでは不十分です。「この差は偶然ではない」と統計的に証明する必要があります。

👉 主効果とは?で要因効果図の詳細を学べます。

🔢 【STEP 2】平方和を計算する

平方和って何?なぜ必要?

平方和(Sum of Squares)とは、「データのばらつきの量」を数値化したものです。

💡 なぜ平方和を計算するのか?

✅ 各因子が「どれだけ強く効いているか」を数値で比較するため

✅ 「本物の効果」と「偶然の誤差」の大きさを比べるため

✅ グラフだけでは「感覚」しかわからないが、数値化すれば「統計的に証明」できる

STEP 2-1:修正項(CT)の計算

修正項(CT)は、すべての計算のベースになる値です。

📐 修正項の計算式

CT = (全データの合計)² / データ数

🔢 計算

全データの合計:45 + 52 + 50 + 49 = 196

データ数:4

CT = 196² / 4 = 38,416 / 4

CT = 9,604

STEP 2-2:総平方和(ST)の計算

総平方和(ST)は、全データのばらつきの総量です。

📐 総平方和の計算式

ST = (各データ²の合計) - CT

🔢 計算

45² + 52² + 50² + 49² = 2,025 + 2,704 + 2,500 + 2,401 = 9,630

ST = 9,630 - 9,604

ST = 26

STEP 2-3:各因子の平方和(SA, SB, SC)の計算

各因子の平方和は、その因子が生み出すばらつきの量を表します。

📐 因子の平方和の計算式

S因子 = (水準1の合計² / 水準1のデータ数) + (水準2の合計² / 水準2のデータ数) - CT

📊 因子A(温度)の平方和

A1の合計:45 + 52 = 97(データ数2)

A2の合計:50 + 49 = 99(データ数2)

SA = (97² / 2) + (99² / 2) - 9,604

SA = (9,409 / 2) + (9,801 / 2) - 9,604

SA = 4,704.5 + 4,900.5 - 9,604

SA = 1

📊 因子B(圧力)の平方和

B1の合計:45 + 50 = 95(データ数2)

B2の合計:52 + 49 = 101(データ数2)

SB = (95² / 2) + (101² / 2) - 9,604

SB = (9,025 / 2) + (10,201 / 2) - 9,604

SB = 4,512.5 + 5,100.5 - 9,604

SB = 9

📊 因子C(冷却)の平方和

C1の合計:45 + 49 = 94(データ数2)

C2の合計:52 + 50 = 102(データ数2)

SC = (94² / 2) + (102² / 2) - 9,604

SC = (8,836 / 2) + (10,404 / 2) - 9,604

SC = 4,418 + 5,202 - 9,604

SC = 16

💡 平方和の比較から見えること

SA = 1(小さい)→ 因子Aの効果は弱い

SB = 9(中くらい)→ 因子Bの効果はまあまあ

SC = 16(大きい)→ 因子Cの効果が最も強い!

STEP 2-4:誤差の平方和(Se)の計算

誤差(Se)は、因子では説明できない「偶然のばらつき」です。

📐 誤差の平方和の計算式

Se = ST - SA - SB - SC

(引き算で求まります!)

🔢 計算

Se = ST - SA - SB - SC

Se = 26 - 1 - 9 - 16

Se = 0

💡 Se = 0 の意味

誤差がゼロ?これは「繰り返し実験をしていない」ため起こります。

L4直交表では、繰り返しなしのため、誤差を直接計算できません。

→ 次のステップで「プーリング」という手法を使います。

👉 プーリングとは?で詳しく学べます。

📊 【STEP 3】分散分析表を作る

自由度を計算する

自由度は、「自由に決められる数の個数」です。

📐 自由度の計算

総自由度:φT = n - 1 = 4 - 1 = 3

各因子の自由度:φ = 水準数 - 1 = 2 - 1 = 1

→ φA = 1、φB = 1、φC = 1

プーリング(誤差への併合)

Se = 0 では分散分析ができません。そこで、効果の小さい因子を「誤差」として扱います。これをプーリングといいます。

💡 なぜプーリングするのか?

✅ 効果が小さい因子は「偶然のばらつき」と区別できない

✅ 誤差に併合することで、F検定ができるようになる

今回は、因子A(SA = 1)が最も小さいので、これを誤差にプーリングします。

🔢 プーリング後の誤差

Se' = Se + SA = 0 + 1 = 1

φe' = φe + φA = 0 + 1 = 1

平均平方(分散)を計算する

平均平方(V)は、「1自由度あたりのばらつき」を表します。

📐 平均平方の計算式

V = S / φ

🔢 計算

VB:9 / 1 = 9

VC:16 / 1 = 16

Ve:1 / 1 = 1

F値を計算する

F値は、「効果」÷「誤差」の比率です。F値が大きいほど「効果がある」と言えます。

📐 F値の計算式

F = V(因子) / Ve(誤差)

🔢 計算

FB:9 / 1 = 9

FC:16 / 1 = 16

分散分析表の完成!

要因 平方和(S) 自由度(φ) 平均平方(V) F値
因子B(圧力) 9 1 9 9
因子C(冷却) 16 1 16 16
誤差(e)
※因子Aをプーリング
1 1 1
総計(T) 26 3

🎉 分散分析表が完成しました!

次は、F検定で「どの因子が統計的に有意か」を判定します。

👉 分散分析表の作り方完全ガイドで理論を深められます。

🔍 【STEP 4】F検定で判定する

F検定って何?

F検定とは、「この効果は偶然ではない」と統計的に証明する方法です。

💡 F検定の考え方

✅ F値が大きい → 「偶然では起こりにくい」→ 効果あり

✅ F値が小さい → 「偶然で説明できる」→ 効果なし

F分布表の「臨界値」と比較して判定します。

F分布表で臨界値を確認

有意水準5%(α=0.05)のF分布表を使います。

📊 F分布表の値

自由度(φ因子=1, φe=1)、α=0.05の場合

F0.05(1, 1) = 161.4

判定結果

要因 F値 F0.05の臨界値 判定
因子B(圧力) 9 161.4 有意でない
因子C(冷却) 16 161.4 有意でない

⚠️ 判定結果

どちらの因子も「統計的に有意ではない」という結果になりました。

原因:データ数が少なすぎる(n=4)ため、誤差の自由度が小さく、臨界値が非常に大きくなっています。

💡 実務での対処法

✅ L4直交表は「スクリーニング(絞り込み)」に使う

✅ F検定で有意でなくても、平方和の大きい因子を重視する

✅ 重要因子がわかったら、繰り返し実験二元配置実験で詳しく調べる

🎯 【STEP 5】最適条件を決定する

最適条件の選び方

F検定の結果に関わらず、平方和が大きい因子は「効果がある」と考えられます。

📊 要因効果図から最適水準を選ぶ

因子A(温度):A2(高温)の方がやや高い → A2を選択

因子B(圧力):B2(高圧)の方が高い → B2を選択

因子C(冷却):C2(長時間)の方が高い → C2を選択

✅ 最適条件

A2(高温)× B2(高圧)× C2(長時間)

最適条件での性能予測

最適条件での引張強度を予測します。

📐 予測式

予測値 = 全体平均 + (A2の効果) + (B2の効果) + (C2の効果)

🔢 計算

全体平均:196 / 4 = 49.0

A2の効果:49.5 - 49.0 = +0.5

B2の効果:50.5 - 49.0 = +1.5

C2の効果:51.0 - 49.0 = +2.0

予測値 = 49.0 + 0.5 + 1.5 + 2.0

予測値 = 53.0 kg/cm²

✅ 結論

最適条件「A2×B2×C2」で実験すれば、引張強度約53.0 kg/cm²が期待できます。

これは実験データの最大値(52)を上回る予測です!

👉 母平均の推定で予測の詳細を学べます。

📝 まとめ

✅ この記事のポイント

🔹 L4直交表の分散分析で、どの因子が効いているかを統計的に分析できる

🔹 要因効果図で視覚的に理解 → 平方和で数値化 → F検定で統計的判定

🔹 プーリングで効果の小さい因子を誤差に併合する

🔹 最適条件の予測で、実験していない組み合わせの性能を推定できる

🔹 L4はスクリーニングに使い、重要因子は追加実験で詳しく調べる

🎓 さらに学びを深めるには

📌 L4直交表・L8直交表の使い方で基礎を復習

📌 直交配列表とは?で直交表の仕組みを理解

📌 分散分析表の作り方完全ガイドで理論を深める

📌 二元配置実験で重要因子を詳しく分析

📌 実験計画法の学習マップで体系的に学習

🚀 次の記事へ

📖 次はこちらの記事がおすすめ!

L4直交表の分散分析をマスターした次は、「より多くの因子を調べる方法」を学びましょう。

👉 次の記事:L8直交表の使い方|7因子を8回の実験で調べる

🔹 L8直交表を理解すると、最大7因子まで効率的に実験できるようになります!

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