信頼性工学

【完全図解】故障ゼロからMTBFの信頼下限を推定する方法|指数分布×二項分布で「壊れなかった」を数値化する

😣 こんな悩みはありませんか?
  • 新製品を3台テストしたけど、1台も壊れなかった。MTBFはどう報告すればいい?
  • 「故障ゼロ」なら「MTBF=無限大」と言っていいの?
  • 指数分布とか二項分布とか、なぜその式を使うのかピンとこない…
  • QC検定1級の信頼性工学の問題が全然解けない…
✅ この記事でわかること
  • 確率分布の基本(離散型と連続型の違い)
  • 二項分布と指数分布の「なぜ使うのか」
  • 故障ゼロからMTBFの下限を求める公式の導出
  • 具体的な計算例で完全マスター

「3台テストして、全部無事だった!」

これは嬉しい結果ですよね。でも、上司に「MTBFはいくつ?」と聞かれたら、どう答えますか?

「故障ゼロだから、MTBFは無限大です!」…とは言えませんよね。たまたま運が良かっただけかもしれないからです。

この記事では、故障が1回も起きなかったデータから、「少なくともMTBFはこれ以上ある」と言える下限値を統計的に求める方法を解説します。

📐 この記事の結論(先出し)

故障ゼロでも「MTBFは少なくとも○○以上」と言える。その公式は:

μ(下限)=
−nT
ln α

n=台数、T=試験時間、α=有意水準(5%なら0.05)

では、なぜこの式になるのか?を一緒に理解していきましょう。

🗺️ 全体像:この記事で学ぶ「知識のつながり」

まず、これから学ぶ内容の「地図」を頭に入れておきましょう。

この問題を解くには、4つの知識を順番に積み上げる必要があります。

STEP学ぶことこの問題での役割
1確率分布の基本離散型・連続型の違いを理解
2二項分布「n台中0台故障」の確率を計算
3指数分布「1台が故障する確率p」を計算
4信頼下限の導出2つを組み合わせて公式を導く

この「知識の積み木」を、下から順番に積み上げていきます。焦らず、一つずつ理解していきましょう。

📊 STEP 1:確率分布って何?|「バラつき」を整理する道具

🎲 確率分布とは「結果の出やすさを整理した表」

確率分布という言葉、難しく聞こえますよね。でも、本質はシンプルです。

📖 確率分布とは?
「起こりうる結果」と「その確率」を一覧にしたもの

サイコロを例に考えてみましょう。サイコロを1回振ると、1〜6のどれかの目が出ますよね。

出る目123456
確率1/61/61/61/61/61/6

↑ これが「確率分布」です!結果とその確率を整理しただけ。難しくないですよね。

📈 確率分布の2つのタイプ:離散型と連続型

確率分布は大きく2種類に分かれます。今回の問題では、両方を使います。

タイプ特徴
離散型取りうる値が飛び飛び(整数など)サイコロの目(1,2,3...)
故障した台数(0,1,2...)
連続型取りうる値が連続(小数も含む)故障までの時間(3.5時間、100.7時間...)
身長(165.3cm、172.8cm...)
💡 今回使う分布
二項分布(離散型)→ n台のうち「何台壊れたか」
指数分布(連続型)→ 1台が「いつ壊れるか」

🎯 STEP 2:二項分布を理解する|「成功 or 失敗」の繰り返し

🪙 二項分布とは「コイン投げ」のような状況

二項分布は、次のような状況で使う分布です。

✅ 二項分布が使える4つの条件
  1. 結果が「成功」か「失敗」の2択である
  2. 成功確率 p が毎回同じである
  3. 各試行が独立している(前の結果が次に影響しない)
  4. 試行回数 n が決まっている

コイン投げがまさにこの条件を満たしますよね。表が出るか、裏が出るか。毎回確率は50%。前の結果は次に影響しない。

🪙 具体例:コインを3回投げたとき

コインを3回投げて、表が出る回数の確率分布を考えてみましょう。

表が出た回数パターン確率
0回裏裏裏0.5³ = 0.125
1回表裏裏, 裏表裏, 裏裏表3 × 0.5³ = 0.375
2回表表裏, 表裏表, 裏表表3 × 0.5³ = 0.375
3回表表表0.5³ = 0.125

注目してほしいのは「0回」の確率 = 0.125です。これは「3回とも裏」が出る確率。

計算式で書くと:(1 − 0.5)³ = 0.5³ = 0.125

🏭 信頼性試験に当てはめると?

コイン投げを、信頼性試験に置き換えてみましょう。

コイン投げ信頼性試験
投げる回数 n試験する製品の台数 n
表が出る確率 p1台が故障する確率 p
表が0回(全部裏)故障0台(全部無事)
📐 n台すべてが無事な確率
P(X = 0) = (1 − p)n

pは1台が故障する確率、nは試験台数

この式が、二項分布から得られる「n台すべてが無事な確率」です。次は、pの値をどう求めるかを見ていきましょう。

⏱️ STEP 3:指数分布を理解する|「いつ壊れるか」の分布

💡 指数分布とは「待ち時間」の分布

指数分布は、「次に何かが起きるまでの時間」をモデル化する分布です。

身近な例で言うと:

  • 電球が切れるまでの時間
  • 機械が故障するまでの時間
  • コンビニに次のお客さんが来るまでの時間

共通点は、「いつ起きるかランダムだけど、平均的な間隔は分かっている」という状況です。

🔢 指数分布で覚えるべき式(3つだけ!)

指数分布で覚えるべき式は3つだけです。

名前意味
故障率とMTBFλ = 1/μλ:故障率、μ:MTBF(平均故障間隔)
故障する確率p = 1 − e−T/μ時刻Tまでに故障する確率
生存する確率R(T) = e−T/μ時刻Tまで故障しない確率

今回使うのは、2番目の「故障する確率」の式です。

📐 1台が時刻Tまでに故障する確率
p = 1 − e−T/μ

T:試験時間、μ:MTBF(平均故障間隔)

🤔 なぜこの式になるのか?|イメージで理解

「なぜ e のマイナス乗なの?」と疑問に思いますよね。直感的に説明します。

🏥 毎日ちょっとずつ「生存率」が減っていくイメージ

時刻0:生存率 100%(みんな元気)
時刻1:生存率 90%(10%が脱落)
時刻2:生存率 81%(残りの10%が脱落)
時刻3:生存率 72.9%(残りの10%が脱落)

「残りのうち一定割合が減っていく」
→ これを数式で表すと e−λt になる!

e−T/μ は、「毎瞬間、一定の確率で壊れるリスクがあるとき、時刻Tまで生き残る確率」を表しています。

📝 具体例で計算してみよう

電球のMTBFが1000時間だとします。500時間後までに切れる確率は?

ステップ計算
条件μ = 1000時間、T = 500時間
式に代入p = 1 − e−500/1000 = 1 − e−0.5
計算p = 1 − 0.607 = 0.393
答え500時間後までに切れる確率は約39%

MTBFが1000時間の電球でも、500時間で約4割は切れるということです。意外と早く壊れるんですね。

🔗 STEP 4:2つの分布を組み合わせる|信頼下限を導出する

🧩 指数分布と二項分布の役割分担

ここまで学んだ2つの分布を、今回の問題にどう使うか整理しましょう。

分布役割
指数分布1台が故障する確率 p を計算p = 1 − e−T/μ
二項分布n台すべて無事な確率を計算P(X=0) = (1−p)n

ここで重要なのは、1−p = e−T/μ(故障しない確率)です。これを二項分布の式に代入すると:

📐 n台すべて無事な確率(2つを組み合わせた式)
P(X=0) = (e−T/μ)n = e−nT/μ

🎯 信頼下限の考え方|ここが一番難しい!

「信頼下限」とは、「95%の確信を持って、MTBFは少なくともこれ以上ある」と言える値です。

考え方のポイントを、宝くじのたとえで説明します。

🎫 宝くじのたとえ

状況:宝くじを3枚買って、3枚ともハズレだった。

考え方:
・当選確率が50%なら → 3枚ともハズレは珍しい(確率12.5%)
・当選確率が10%なら → 3枚ともハズレは普通(確率72.9%)
・当選確率が1%なら → 3枚ともハズレは当然(確率97.0%)

「3枚ともハズレ」という結果から、当選確率の上限を推定できる!

信頼性試験でも同じ考え方をします。

💡 信頼性試験での考え方

状況:3台テストして、3台とも故障なしだった。

考え方:
・もしMTBFが小さいなら → 故障確率pが高い → 3台無事は珍しい
・もしMTBFが大きいなら → 故障確率pが低い → 3台無事は普通

「3台とも無事なのが、確率α(5%)以下になる」ギリギリのMTBFが信頼下限

数式で表すと:

📐 信頼下限を求める条件式
(1 − p)n < α

「n台すべて無事な確率がα以下になる」ところがMTBFの下限

🧮 式を解く(対数を使う)

e の指数が入った式を解くには、自然対数(ln)を使います。

ステップ計算
1(e−T/μ)n < α → e−nT/μ < α
2両辺の自然対数をとる:−nT/μ < ln α
3ln α は負の数なので、割ると不等号が逆転
結果μ > −nT / ln α
⚠️ 注意:ln α は負の数!
α = 0.05 のとき、ln 0.05 ≈ −2.996
負の数で割ると、不等号の向きが逆転します。これを忘れると答えが間違います!

🔢 具体的な数値で計算してみよう

では、実際の問題を解いてみましょう。

📋 問題の設定
・試験台数 n = 3台
・試験時間 T = 50,000枚
・結果:故障0台
・信頼率 95%(α = 0.05)
・ln 0.05 = −2.996
ステップ計算
公式μ > −nT / ln α
数値代入μ > −(3 × 50,000) / (−2.996)
計算μ > 150,000 / 2.996 = 50,067枚
答えMTBFの信頼下限 ≈ 5万枚
✅ 答え:MTBFの95%信頼下限は約5万枚

「95%の確信を持って、MTBFは少なくとも5万枚以上ある」と言える!

📝 まとめ|この記事で学んだこと

この記事では、故障ゼロのテスト結果からMTBFの信頼下限を推定する方法を学びました。

✅ 知識の流れを振り返り

STEP 1:確率分布 → 離散型と連続型の2種類がある

STEP 2:二項分布 → n台すべて無事な確率 = (1−p)n

STEP 3:指数分布 → 1台が故障する確率 p = 1 − e−T/μ

STEP 4:信頼下限 → (1−p)n < α を解いて μ > −nT / ln α
📐 故障ゼロのMTBF信頼下限の公式
μ(下限)=
−nT
ln α

n=台数、T=試験時間、α=有意水準(5%なら0.05)

💼 実務での意味
故障ゼロのテスト結果を報告するとき、「MTBFは無限大」ではなく「少なくとも○○以上」と言えるようになります。

これは品質保証や信頼性試験のレポートで非常に重要な考え方です。QC検定1級でも頻出のテーマなので、しっかり押さえておきましょう。

📚 次に読むべき記事

📘 第15回:指数分布 - 連続的な待ち時間分布 →

指数分布の詳しい解説と他の応用例を学びたい方はこちら

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