- ISO9000とISO9001は何が違うの?番号が違うだけ?
- ISO19011って聞いたことあるけど、何のための規格?
- ISO26000は認証が取れないって本当?
- たくさんあるISO規格の関係性がわからない
- ISO9000・ISO9001・ISO19011・ISO26000それぞれの役割と目的
- 「家づくり」に例えた、ISO規格の全体像のイメージ
- 認証規格とガイダンス規格の違い
- QC検定で問われるポイント
「ISO9001は知ってるけど、ISO9000って何?」
「ISO19011は監査の規格らしいけど、ISO9001とどう関係があるの?」
品質管理を学び始めると、「ISO」という言葉と数字の羅列に混乱することがあります。
実は、これらのISO規格にはそれぞれ明確な役割があり、互いに補完し合う関係にあります。
この記事では、品質管理に関わる代表的な4つのISO規格(ISO9000、ISO9001、ISO19011、ISO26000)について、「家づくり」に例えながら初心者向けにやさしく解説します。
まずは「全体像」を掴んでから、各規格の詳細を読むとスムーズに理解できます。順番に読み進めていただくことをおすすめします。
目次
まずは全体像:ISO規格を「家づくり」で理解する
4つのISO規格の関係を、「家を建てる」ことに例えて説明します。
🏠 家づくりに例えると…
| ISO規格 | 家づくりに例えると | 役割 |
|---|---|---|
| ISO9000 | 📖 建築用語辞典 | 「柱」「基礎」「断熱材」などの言葉の意味を定義 |
| ISO9001 | 📐 設計図・建築基準 | 「耐震等級3以上」「断熱等級4以上」などの要求事項 |
| ISO19011 | 🔍 建築検査員のマニュアル | 「検査の進め方」「検査員の資格」などを規定 |
| ISO26000 | 🏘️ 近隣配慮のガイドライン | 「日照権への配慮」「地域への貢献」などの社会的責任 |
🔗 4つの規格の関係性
良い家を建てるためには、これらすべてが必要です。
- ISO9000(用語辞典)がなければ、「柱」の意味が人によって違ってしまう
- ISO9001(設計基準)がなければ、どんな家でもOKになってしまう
- ISO19011(検査マニュアル)がなければ、検査がバラバラになる
- ISO26000(近隣配慮)がなければ、自分だけ良ければOKになってしまう
ISO規格は「バラバラの文書」ではなく「システム」として機能しています。ISO9001だけを見ても、ISO9000の用語定義を参照しないと正確に理解できません。

ISO9000とは?──品質マネジメントの「辞書」
まずはISO9000から見ていきましょう。
📖 ISO9000の正式名称と役割
- 正式名称:品質マネジメントシステム-基本及び用語
- 英語名:Quality management systems — Fundamentals and vocabulary
- 最新版:ISO 9000:2015(JIS Q 9000:2015)
- 認証:なし(認証取得の対象ではない)
ISO9000は、品質マネジメントに関する「用語の定義」と「基本概念」をまとめた規格です。
例えるなら、「品質管理の辞書」です。
📚 ISO9000で定義されている用語の例
ISO9000には、約180個の用語が定義されています。代表的なものを見てみましょう。
| 用語 | ISO9000での定義 |
|---|---|
| 品質 | 対象に本来備わっている特性の集まりが、要求事項を満たす程度 |
| プロセス | インプットをアウトプットに変換する、相互に関連する又は相互に作用する一連の活動 |
| マネジメントシステム | 方針、目標及びその目標を達成するためのプロセスを確立するための、相互に関連する又は相互に作用する、組織の一連の要素 |
| 顧客満足 | 顧客の期待が満たされている程度に関する顧客の受け止め方 |
🎯 ISO9000が必要な理由
「品質」という言葉一つとっても、人によって解釈が異なります。
- Aさん:「品質=不良品がないこと」
- Bさん:「品質=高級感があること」
- Cさん:「品質=顧客が満足すること」
このように解釈がバラバラでは、同じ土俵で議論ができません。ISO9000が用語を統一することで、世界中の組織が同じ言葉で品質を語れるようになります。
「ISO9000を取得しました」という言い方は間違いです。ISO9000は用語集であり、認証取得の対象ではありません。認証を取得するのはISO9001です。
🌟 品質マネジメントの7つの原則
ISO9000では、用語だけでなく「品質マネジメントの7つの原則」も示されています。これはISO9001を理解する上での土台となります。
| 原則 | ひとことで言うと |
|---|---|
| ①顧客重視 | お客様の期待に応え、それを超えることを目指す |
| ②リーダーシップ | トップが方向性を示し、全員を巻き込む |
| ③人々の積極的参加 | 全員が力を発揮できる環境を作る |
| ④プロセスアプローチ | 活動を「プロセス」として管理する |
| ⑤改善 | 継続的に改善し続ける |
| ⑥客観的事実に基づく意思決定 | データや情報を分析して判断する |
| ⑦関係性管理 | 利害関係者との関係を管理する |

ISO9001とは?──品質マネジメントの「要求事項」
次は、最も有名なISO9001です。
📐 ISO9001の正式名称と役割
- 正式名称:品質マネジメントシステム-要求事項
- 英語名:Quality management systems — Requirements
- 最新版:ISO 9001:2015(JIS Q 9001:2015)
- 認証:あり(第三者認証の対象)
ISO9001は、「組織が満たすべき要求事項(やるべきことリスト)」を定めた規格です。
例えるなら、「建築基準法」のようなもの。この基準を満たせば「認証」という形で公的にお墨付きがもらえます。
📋 ISO9001の構成(10の箇条)
ISO9001は、以下の10の箇条(章)で構成されています。
| 箇条 | タイトル | 内容 |
|---|---|---|
| 1〜3 | 適用範囲・引用規格・用語 | 前提情報(要求事項ではない) |
| 4 | 組織の状況 | 内外の課題を把握し、QMSの適用範囲を決める |
| 5 | リーダーシップ | トップが品質方針を示し、責任を持つ |
| 6 | 計画 | リスク・機会への対応、品質目標の設定 |
| 7 | 支援 | 人、設備、環境、知識、コミュニケーションの整備 |
| 8 | 運用 | 製品・サービスの設計、製造、提供のプロセス管理 |
| 9 | パフォーマンス評価 | 監視・測定、内部監査、マネジメントレビュー |
| 10 | 改善 | 不適合への対応、継続的改善 |
ISO9001の構成は、PDCAサイクルに対応しています。
P(計画)=箇条4〜6、D(実行)=箇条7〜8、C(確認)=箇条9、A(改善)=箇条10
🎯 ISO9001認証を取得するメリット
- 対外的な信用向上:取引先や顧客に「品質管理がしっかりしている」と示せる
- 業務の標準化:「誰がやっても同じ品質」を実現できる
- 継続的改善の仕組み:PDCAを回す習慣が組織に根付く
- 入札・契約の条件:官公庁や大企業との取引でISO9001認証が求められることがある

ISO19011とは?──監査の「やり方」を示すガイドライン
次はISO19011です。これは少し毛色が違う規格です。
🔍 ISO19011の正式名称と役割
- 正式名称:マネジメントシステム監査のための指針
- 英語名:Guidelines for auditing management systems
- 最新版:ISO 19011:2018(JIS Q 19011:2019)
- 認証:なし(ガイドライン規格)
ISO19011は、「マネジメントシステムの監査をどのように行うか」を示したガイドラインです。
例えるなら、「建築検査員のマニュアル」。家(ISO9001)の基準は別にあり、それを「どうやって検査するか」を定めています。
🎯 ISO19011が対象とする監査の種類
ISO19011は、あらゆるマネジメントシステムの監査に使えます。
| 対象となる規格 | 分野 |
|---|---|
| ISO 9001 | 品質マネジメントシステム |
| ISO 14001 | 環境マネジメントシステム |
| ISO 45001 | 労働安全衛生マネジメントシステム |
| ISO 27001 | 情報セキュリティマネジメントシステム |
📋 ISO19011の主な内容
ISO19011では、以下のような内容が規定されています。
監査の7つの原則
- 誠実性:正直に、良心的に職務を遂行する
- 公正な報告:事実を正確に報告する
- 専門家としての正当な注意:注意深く判断する
- 機密保持:情報を適切に管理する
- 独立性:監査対象から独立した立場を保つ
- 証拠に基づくアプローチ:客観的な証拠で判断する
- リスクに基づくアプローチ:リスクを考慮して監査する(2018年版で追加)
監査員の力量
ISO19011では、監査員に必要な知識・スキル・行動特性も定められています。内部監査員養成研修などは、この規格に基づいて行われます。
ISO19011は「9000番台」ではありませんが、ISO9001の監査を行う際の必須知識です。QC検定1級では、監査の原則や進め方が出題されることがあります。

ISO26000とは?──社会的責任の「ガイダンス」
最後はISO26000です。これは他の規格とは大きく性質が異なります。
🌍 ISO26000の正式名称と役割
- 正式名称:社会的責任に関する手引
- 英語名:Guidance on social responsibility
- 発行年:2010年(改訂なし)
- 認証:なし(認証を意図しない規格)
ISO26000は、「組織が社会や環境に対してどのような責任を果たすべきか」を示したガイダンス(手引き)です。
例えるなら、「近隣への配慮ガイドライン」。家を建てるとき、自分の家だけ良ければいいのではなく、日照権や騒音など、周囲への影響も考慮すべきだという考え方です。
⚠️ 最大の特徴:認証を意図していない
ISO26000の最大の特徴は、「認証取得を意図していない」点です。
ISO9001やISO14001は、要求事項を満たせば「認証」が取得できます。しかし、ISO26000には「要求事項」がありません。あくまで「こうするとよい」という手引きであり、「これを満たさないと不合格」という基準はありません。
「ISO26000認証を取得しました」という表現は存在しません。ISO26000は認証規格ではないため、取得することはできません。「ISO26000に基づいて活動しています」という表現が正しいです。
🎯 ISO26000の7つの原則と7つの中核主題
社会的責任の7つの原則
| 原則 | 内容 |
|---|---|
| 説明責任 | 自らの決定や活動について説明する責任 |
| 透明性 | 活動内容を明確に開示する |
| 倫理的な行動 | 誠実・公正・正直に行動する |
| ステークホルダーの利害の尊重 | 利害関係者の利益を考慮する |
| 法の支配の尊重 | 法令を遵守する |
| 国際行動規範の尊重 | 国際的な規範を尊重する |
| 人権の尊重 | 基本的人権を尊重する |
社会的責任の7つの中核主題
- 組織統治:意思決定の仕組み
- 人権:人権の尊重と保護
- 労働慣行:雇用、労働条件、安全衛生
- 環境:汚染防止、持続可能な資源利用
- 公正な事業慣行:腐敗防止、公正な競争
- 消費者課題:製品安全、情報提供
- コミュニティへの参画及び発展:地域社会への貢献
ISO26000は「企業」だけでなく、政府機関、NGO、教育機関など、あらゆる組織を対象としています。「CSR(企業の社会的責任)」ではなく「SR(社会的責任)」と呼ばれるのはそのためです。

4つのISO規格を比較する
ここまでの内容を、比較表でまとめます。
📊 ISO規格の比較表
| ISO9000 | ISO9001 | ISO19011 | ISO26000 | |
|---|---|---|---|---|
| 正式名称 | 基本及び用語 | 要求事項 | 監査のための指針 | 社会的責任の手引 |
| 役割 | 用語・概念の定義 | やるべきことの規定 | 監査の進め方 | 社会貢献の指針 |
| 認証 | なし | あり ✅ | なし | なし |
| 最新版 | 2015年 | 2015年 | 2018年 | 2010年 |
| 家づくりの例え | 📖 用語辞典 | 📐 設計基準 | 🔍 検査員マニュアル | 🏘️ 近隣配慮 |
| キーワード | 辞書、7原則 | 要求事項、PDCA | 監査、監査員の力量 | SR、7中核主題 |
🔑 覚えておくべきポイント
- ISO9000:「基本及び用語」、品質マネジメントの7原則
- ISO9001:「要求事項」、10の箇条、認証取得の対象
- ISO19011:監査の7原則(2018年版でリスクベースアプローチ追加)
- ISO26000:「認証を意図しない」、7中核主題、企業以外も対象

まとめ:ISO規格の全体像を理解する
この記事の内容を整理します。
- ISO9000:品質マネジメントの「辞書」。用語と基本概念を定義。認証なし
- ISO9001:品質マネジメントの「要求事項」。これを満たせば認証取得可能
- ISO19011:マネジメントシステムの「監査ガイドライン」。監査の進め方と監査員の力量を規定
- ISO26000:社会的責任の「ガイダンス」。認証を意図しない手引き
- 4つの規格は補完し合う関係にあり、家づくりに例えると理解しやすい
ISO規格は、一つひとつがバラバラに存在しているのではなく、「品質マネジメントのエコシステム」として機能しています。
ISO9000で言葉を統一し、ISO9001で基準を定め、ISO19011で検査し、ISO26000で社会への責任を果たす──この全体像を理解することで、品質管理の本質が見えてきます。
QC検定では、「どの規格が認証対象か」「各規格の正式名称」「原則の数」などが問われます。この記事の比較表を活用して、整理して覚えておきましょう。
📚 次に読むべき記事
ISO9000の7つの原則を詳しく学ぶ
ISO9001の10の箇条を詳しく学ぶ
ISO19011に基づく監査の進め方を学ぶ
